【人】 朧广灯 リヒトーヴ― 楽園と木蓮 ― [ 温室には、友が好んでいた花が幾つか存在する。 区画を巡回していた機械は、その木の前で足を止めた。 かつては"木蘭"という名を受けていたそれは、 より相応しい名があるだと、"木蓮"に名を変えたらしい。 友は、蓮も好んでいた。 あの夏の池が一際大きいのはそのせいだ。 他にも、そのような特別が幾つかあった。 機械は、友がそれらを好む理由を知らずにいた。 その目が一体、何を映しているのかも。 いくら隣に立っても、尋ねても、 友は、自身がみている物をはっきりと口にはしなかった。 煙に巻くような言葉ばかりを好んで使った。 それらに機械を付き合わせることを、よく好んでいた。 ] (66) 2023/11/23(Thu) 21:59:55 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ蓮に似ているから、"木蓮"を好むのですか。 『……それは違うよ。あれらが似ているのさ。』 主語を省かないでください。 『……あれは、僕たちだよ。リヒトーヴ。』 (67) 2023/11/23(Thu) 22:00:36 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 土に根差す足元から、天へと広がる白い花へ。 まるで機械が腕を伸ばしたかのように。 友はその背後から、大地に植わる 木蓮の全身をゆっくりと指でなぞって見せる。 ] 『親愛なる我が友よ。君にもいつか分かる日が来る。』 [ 宥めるように、友は機械の肩に手を置いた。 それは幾度となく聞いた言葉だった。 だから、機械もそれ以上を問おうとはしなかった。 否――本当は知っていた。 それが、この世界への祈りであったことを。 ]* (68) 2023/11/23(Thu) 22:05:05 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 煙に巻くことを楽しんでいたであろう友が、 最も饒舌に、楽しそうに語っていたのは 珍しく、機械にも理解の及ぶようなことだった。 "Cogito, ergo sum" ――すなわち、"我思う故に我あり"。 直青が口にしたのは原文だったが、 機械には、その訳文の方が馴染みがあった。 その声で唱えて、機械は眼を細める。 自然現れた大仰なトーンは、決して通常のものではない。 その原因は、瞬きよりも早く取り出せる。 ] (110) 2023/11/24(Fri) 2:53:54 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 一体何を言い出すんだこれは、と かつての機械は、憚ることなく眉をひそめた。 あなたがいう"友"の定義を教えて欲しいと 機械は至極真っ当な要求をした。 ……だというのに、返ってきたのはこれだったからだ。 落胆の代わりに、機械は友を睨んだ。 一方、よほど自画自賛しているのか、 友は機嫌よさそうに笑い声をあげて機械を見下ろした。 ] (112) 2023/11/24(Fri) 2:55:26 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ『あぁ、これ以上の答えはないだろう。』 『君は初めから僕の"友"だ。』 『僕がそうだと決めた時から、ずっとそうだ。』 (113) 2023/11/24(Fri) 2:56:48 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ『――友思う故に我あり、さ。リヒトーヴ。』 『今、君は"友"について考えてくれてる。』 『何のために? ――僕のためにだ!』 (114) 2023/11/24(Fri) 2:57:38 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 一際愉快そうな声で友が笑う。 機械は口籠り、用意していた反論を取り下げた。 "遠く離れるようなら、行ってらっしゃい" と "近くへ戻って来たようなら、お帰りなさい" と ――人間の友人らしい情緒は求めないから、 そういった仕草や機敏ぐらいは付けて欲しい。 友が、機械に要求したのはそれだけだった。 機械はその要求を受け取るや否や、 参考となるデータを検索し、知識を付けていった。 ……そして、無自覚に"友"の水準を自ら上げていたのだ。 何のために? ――それは、己の友のためにだ。 ……友が一笑に付すことで終わった記憶は、 重要なものとして、今も機械の中に刻まれている。 ] (115) 2023/11/24(Fri) 2:59:17 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 周囲のデータを収集し終えると、 機械は定刻通りコスモス畑を後にした。 ――友思う故に、我あり。 あの頃よりもその言葉の意味を 機械は理解できるようになったと自認している。 その存在を忘れることはできない。 時折、煩わしいまでの感傷に襲われる。 ――そんな己にとっての"友"という存在、その定義。 それが見えるようになったことは ……機械の身でも、素直に喜ぶのは難しかったが。]* (116) 2023/11/24(Fri) 3:00:10 |
朧广灯 リヒトーヴは、メモを貼った。 (a34) 2023/11/24(Fri) 3:07:23 |
朧广灯 リヒトーヴは、メモを貼った。 (a49) 2023/11/24(Fri) 15:54:13 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ― いつか:楽園内にて、桜花へ ― [ 『sintoisMecanique』が訪れて、しばらく。 機械の抱える仕事はこれといって増えることもなく、 定量のタスクを消化するばかりだった。 雷恩と桜花は、きちんと己らを尊重してくれている。 一方、彼らの希望といえば雷恩の件のみ。 己に直接伝えられたのは、だが。 ] ――在るだけで満たされるというのは、 あなた達の性なのでしょうか。 こんにちは、桜花。調子はいかがですか。 [ あの赤い果実を片手に、機械は己から近づいた。>>1:131 それが生まれた理由に興味があったから。] (132) 2023/11/24(Fri) 17:17:43 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ― 羅生:楽園の端に、三つ ― [ その肯定は、機械の内側を宥めると共に>>128 何かを攫って行った。 解が与えられたことで、己の不満が沈静化する。 だというのに、何かが欠けたような気がしてしまう。 それでは取り出せない物があるのだというのか。 手放しかけた空白に機械は思考を伸ばす。 ] ……処理の手間を増やされたという意味では、 己は確かにあれに怒っています。 しかし、誤った論理を入力されたり、 命令が翻されることは、決して珍しい話ではありません。 故に、己はあれを裏切りとは見ていない……筈です。 裏切られたと、己は、まだ……。 (177) 2023/11/24(Fri) 21:26:42 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 望みとは何らかの空白に対する行為である。 転じて、行動とは空白に対する働きかけである。 ――故に、世界は停滞を知らない。 この世に光がもたらされた、その瞬間から。 ] (179) 2023/11/24(Fri) 21:28:17 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ ――まさか、この知識に価値が生じる日が来るとは。 相手の言葉に意識を向けながら、>>130>>131 機械は少しだけ友を見直した。] ……もし、あなた達の創造主が 神を思うのであれば、それは自然崇拝のように見えます。 一方、機械は通常自然崇拝を得意としません。 何故なら、ある存在から命令を受ける者だからです。 根本的なシステムの差があります。 己は結果として、その自然崇拝めいたものを 『決定事項』や友の動きから得ることになりましたが、 ……そうですね。それが違い、かもしれません。 [ しかし、これは結果論でしかない。 現実としての"自然"は常に結果でしかない。 この荒廃した大地も、正しく自然のひとつだった。 有史以来の惨状であったとしても。 ただ、人も機械も認めていないだけだ。 そして、そのような思惑は決して"自然"ではない。 ] (180) 2023/11/24(Fri) 21:30:22 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴあなた方と話すとその高度さを痛感します。 数々の無茶振りに、あなた達は応え続けている。 それに応えられるよう、求め続けられてる。 ……まったく。己たちの次の役目は、 彼らの智謀の代わりでしょうか。 [ 機械はわざとらしく溜息を落としてみせた。 ……これは愚痴でもあったが故に。 ]* (181) 2023/11/24(Fri) 21:32:25 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ― 植物園:メディウムと ― ……? そのように見えますか。 [ 腕が伸ばされれば、多少屈んでみせる。>>122 己もメディウムを撫でるべきかの問いは棄却された。 人と比べれば、機械に備わった手は冷たく、 表面の弾性はあれど、やや不自然な硬さがある。 特別撫でられて気持ちのいい素材ではないだろう。 ] その意味は図りかねますが。 己が思うのは、あなたの健康と……そうですね。 悩みが上手くいくこと、でしょうか。 [ 「助けが必要でしたらご相談を」と付け加えて。 機械は、相手の気が済むまで撫でられていただろう。 ]* (189) 2023/11/24(Fri) 22:10:56 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ― 楽園内:桜花と ― [ 己の背はそう高くないとはいえ、 無意味に首を疲れさせるのは本意ではない。>>193 相手の正面へと回れば、 失礼します、と断って機械はその場に腰を下ろした。 ――あれから猫やフクロウには会えただろうか。>>1:68 夜の庭は光に乏しいため、鳴き声だけかもしれない。 合間、近況尋ねてみるなどをもしつつ。 ] ……ありがとうございます。 この形になるまで、それなりに苦労しました。 [ 景観を褒められれば、機械は微笑んだ。>>194 元となる機材こそ揃ってはいたものの、 区画の計算は機械であっても、困難の連続だった。 だから、良い物だと伝えられるのは嬉しい。 機械であっても、それぐらいの情動は持っている。 理解するための手段に乏しいだけであって。 ] (205) 2023/11/24(Fri) 23:07:38 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 手の中で果実を転がしながら、機械は思案する。 この新しい人類はどのような種なのだろうと。 ] ……どうでしょうか。 あなたが動物に興味を覚えたように、 満たされていても、遊びは求めるのでは? ――新しい樹が生えていると、聞きました。 あなたか雷恩だと思ったのですが、違いますか? [ 相手の眼下へ果実を差し出す。 まだ落としたばかりのそれは瑞々しい。 ]* (206) 2023/11/24(Fri) 23:07:56 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ― 蓮 ― [ 夏の区画であっても、その池の周りだけは 気温は低く、朝露を思わせるような匂いで満ちている。 暑い、怠いと友はあまり夏を好まなかったが、 この池だけは例外だった。 白や桃といった蓮が浮かぶ水面が 鏡のように凪いでいる日には、いつまでもそこにいた。 ……インダラクスに抱えられて戻って来たこともある。 その時ばかりは、機械は友を叱った。 腹の虫を鳴らしながら、屈託なく友は笑っていた。 ] (208) 2023/11/25(Sat) 1:55:00 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ……より高性能のAIだって得られたでしょうに。 『まさか。お金で友は買えないよ。』 同じことです。あなたの投じた資財で己は出来ている。 『僕は、君が良かったんだよ。』 その気色の悪い笑み、仕舞ってくれますか。 (209) 2023/11/25(Sat) 1:56:24 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ ……水面は凪ぎ、鏡のように青く澄んでいる。 風を停止させたのは、他ならぬ機械だ。 ―― 己とは何か? それは友が去り、触れざるを得なくなった問い。 そして、長らく放棄してきた問いだった。 ] (211) 2023/11/25(Sat) 1:59:31 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ 何故、機械は生み出されたのだろうか。 少なくない資財、時間と手間、それらを"敢えて"かけて。 姿と性格に拘るならば、そのような製品を買えばよかった。 それから、そのAIに監視を任せればいい。 『決定事項』以前ならば、それこそが"普通"だった。 結果、出来上がったのは非効率な旧型だ。>>1:153 ましてや、多少の性能の違いこそあれど、 ここには他に"監視員"がいる。 どの者にもAIが備わっており、自律判断を行う。 ……そう、不要なのだ。 この『楽園』は"司令塔"が不在でも機能する。 そのように設計されている。他ならぬ友によって。 ] (212) 2023/11/25(Sat) 2:01:17 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ―― 促されている。 何を? ―― 裏切られることを。 何故? <ERROR> ―― 失望することを。 何故? ―― 期待されている。 何故 何を?―― 存在意義を失うことを。 <ERROR> (213) 2023/11/25(Sat) 2:01:51 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ[ ……機械は確信している。それだけは違う、と。 己という存在を、 機械は必ず見失わないようにできていた。 何故なら、己は"友"である。どんなことがあっても。 どのようにされても、それだけは失わない。 この自我は、機体は、存在は。 そのため"だけ"に創造されている。 ましてや、己という旧い機械は 砕け失うような心は始めから持たない。 真に思考が行き着けば、そこで意識を留め置くのみ。 故に。"友"という定義の剥奪は、計画の意義を成さない。 <BACK> 何故、己には疑う自由が与えられて、 ……否、わざわざ用意されているのだろうか。 ―― ―― ―― <再考> 。 (214) 2023/11/25(Sat) 2:02:31 |
朧广灯 リヒトーヴは、メモを貼った。 (a68) 2023/11/25(Sat) 2:28:55 |
朧广灯 リヒトーヴは、メモを貼った。 (a79) 2023/11/25(Sat) 14:57:00 |
【人】 朧广灯 リヒトーヴ― ALTER EGO ― [ あの日、楽園の門を閉じてさえいれば、 何かが変わっていたのだろうか。 ……機械は決めかねていた。 他の機械と同じ『決定事項』に行き着いても。 機械による、人類への壊滅作戦が始まっても。 地球の冷却、および浄化に状況が移行しようとも。 友が、その同胞のために楽園を出て行っても。 この世界の"希望"とは、―――― ] (301) 2023/11/26(Sun) 4:49:36 |