人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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視点:


道は外れたはずなのに結局同じところに辿り着くのかと、苦笑いをした。

ごめんな、と笑った

「───何だって?」

寝耳に水というには、あまりにも。
自分の思想、その根底を掘り返すような話だった。

己はよく知っているはずだ。それが何を意味するのか。

「……そうか。じゃあ、俺とアリーを攫ったのも……」

20年もの時間。彼の傘下であってもおかしくはない。
ショックは意外と言うべきほど少なかった。
元よりそのつもりだったから。肩書に踊らされず、
この目で何が正しいのか見極めてみせるのだと。

「とんだ古狸だな。
 でも、彼のおかげで今の俺がいるのには違いない」

何なら辞職願を叩きつけたところだったから、
今後の事を考える為には丁度良くすらあった。

ひとつひとつ。縛り付けていたものから決別する。

#収容所

その日の朝。いくらかの人員と共に並べ連ねられた中に、
ほかのどこか作り物めいた捏造を匂わせるでっちあげとは明らかに異なる罪人の名があった。
その男は警察組織に属していながら、墨色の罪に身を浸していたのだという。

かつて貴方がたの上に立っていた、或いは目の上の瘤であっただろう男は、
或いは犯罪組織に属する人間として敵であった、そして話の通じる窓口であった男は、
その裏で全てを欺いて、幼い子どもたちのの切れっ端を売りさばいていたのだという。
ひとつは、路地裏から。ひとつは、幼い子供の遊び場から。
ひとつは、ノッテファミリーの息の掛かった、彼らの敷地であるはずの養育院から。

手引して手足のように使っていたのは街のチンピラや、ノッテのシマを荒らす輩、
島外から参入してきた小規模な国外犯罪グループなどだった。
警察からしてもノッテからしても、力をつけられてはまずい輩だ。
其々に対する反目であり、裏切りであると、挙げられた証拠の全てが物語っていた。
商品はどこからどこへ渡っていたか。この島から、島の外へ。特に、このニ年間に至っては。
"港"の主を欺いて、その影と背に隠れて利権を吸い上げていたのだと、調査が上がる。
長らく窓口として親しくしていた筈の、今は留置所の中の彼をだ。

ほそぼそと続いていた罪はこのニ年で拍車が掛かる。
養育院に寂しい風が通り抜けたように思うほどに、子供の数は徐々に減っていた。
表向きには、もしくはノッテファミリー内の監督者への報告では、
彼らの引き取り手として挙手するものが島外から多くなっていた、ということになっていた。
それが意味する真の意味は、もはや言わずもがなであろう。

幾人の、幾十人の子どもたちが、その未来を奪われてきたのだろう。
その醜聞は瞬く間に人の口にのぼり、午前の内に署内を駆け巡った。
勢いは激しく、疾く。ヴィトーと呼ばれた男の信頼が失墜し、嘲弄に変わるのは早かった。
そのうちに誰もが口にする。今までの、男へ対する不平不満。嫉妬。
さもそれが元よりの評価であったかのように塗り替えられる。
心変わりが早い、否。誰もそれが自分より上に立っていた人間だと認めたくないのだ。

そしてそのうちに、歳を重ねた警察官らからある噂が降りて広がっていった。
ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリアという男が警察になる前、
彼は一体どこから来たのだろうかということだ。

一人の年老いた警官が言った。
警察などになる前は、あの男はスラムの淫売だったと。
痩せた体に見窄らしい衣服をまとって春を鬻いでいたのを自分は知っていると。
一人が口にすれば、既に真っ赤に焼けた土壌に油を注ぐように嘲弄の炎は大きくなった。
やれ、前々からそうなのじゃないかと疑っていたと。
やれ、今の地位にあるのも体で取り入って寝室で成り上がった功績なのだと。
やれ、これまでの活躍と聞いていたのは全てでっちあげなのではないかと。

一度足元が崩れたからには、もう留まることはない。
まともな者が悪意の波を止めるには、人が人を下に見た時の高揚を鎮める術もなく。
その噂はひょっとしたら、留置所の前でももっともらしく囁かれたかも知れない。
それくらい、衝撃的だったのだ。それくらい、認められないものだったのだ。
噂話をするのは不真面目なものばかりではない。真面目なものもそれに従った。
まるで自分が今まで従ってきたものこそが、嘘の姿であったと目を塞ぐように。

笑いものに石を投げるのは、自らを守るためなのだ。
人はだれもが、強い生き物であるわけではなかった。

歌う。君は未だにマフィアとつながりがあるんじゃあないか?

そこでようやく、テディベアを投げ捨てた。通信は切断された。

安心した。俺で良かった。

手放さない。

ゆっくりと顔を上げれば。

微笑んで、告げた。

あなたの『  』になりたかった。

月桂樹の葉を贈った

口に指をに突っ込んだ。

セクシャルハラスメントをした。

ならば、その罰が下るように。

手を振る。手錠の鎖が音を立てた。

平時ならちょっぴり遅く開くはずだった本日。朝市が中止になった日の#バー:アマラント
は通常通りの時間に開いた。

客の入りはここ数日で随分と減ってしまったものだけど、
それでも今日も、いつも通りに。

──もしかのもしか、何かがなければ客が一人も来ない明日だって。

片手でリンゴジュースを作った。17くらいコップに入った。

…力を一気に込め過ぎて飛び散った果肉を回収し、今度はゆっくり絞った。

リンゴジュースを客に出した後、カウンターを掃除することになったのだった。#バー:アマラント

腹が減っている。

嫌な予感がした。

ここのご飯はあまりおいしくないですね。

取り調べを受けている。

やわらかな眼差しを向けている。

メモを貼った。

歌う、歌う、歌う。

歌うのをやめさせられた。

牢屋の中のベッドに潜り込んだ。

家族以外に触れられることが、こわい。

アレッサンドロ・ルカーニオ。
裏社会での通称を"黒眼鏡"という男が率いるのは、
ノッテ・ファミリーの活動において、主に物流を取り仕切る部門である。
彼らは密輸や禁制品の販売、人、物──場所を動かすだけで金が発生するもの。
そのほぼ全てに関わり、あるいは自らで全てを賄い動かしていた。

特にアレッサンドロの支配力が強いのは、多くの港湾設備を擁する三日月島周辺。
当然ながら海運業が強く発達したヴェスペッラにおいて、
彼らはいつしか──少なくとも、先代のカポ・レジームの時代には既に――"港"と呼ばれるようになっていた。

元ソルジャーらしさ、というのか。
規律と不正にひどくうるさいアレッサンドロの剛柔組み合わせた監視の下で、
"港"は強く統制されファミリーの地盤を固めるための一角を担っていた。

アレッサンドロ曰く、
「あって当たり前の仕事でミスるとリスクがデカい」
「需要が常にある以上、こちらからリスクを取るより顧客を依存させたほうが稼げる」。
商品がなんであれば、物流とはまるで生物の血管のごとく、
常に物を動かし続けることこそ最大の利益を生む。


そういった理念の下、"港"はそれが非合法的性格を多分に含むことを除けば
ごくまっとうで理想的なビジネスのように運用されていた。

だがそれはあくまで、アレッサンドロ・ルカーニオの影響だ。
従わないもの、自らの運営方針・・・・にそぐわないものに
直接的な脅迫、あるいは暴力をためらいなく行使し、
従うものにはポケット・マネーからの恩賞を躊躇わない。
それが正しいかはともかく、部下にとって「従うことにメリットがあり、従わないことにデメリットがある」ことのみを徹底的に叩き込んだ彼の下であるからこそ、そのシステムは正常に機能していた。

それゆえ、アレッサンドロ・ルカーニオが逮捕されてからの"港"の人員たちの反応は、大きく別れた。

一つは、システムを維持する者たち。
全体の六割を占めるこのメンバーは、思惑はどうあれ数日前と同じことを行い、数日先も同じことを行った。
これが長期化するならばともかく、多少のトラブルで今までうまく行っていたやり方を変える必要はない、と思ったのだ。
勿論中にはアレッサンドロのシステムこそが心地よいと感じるものもいたし、
あるいは「気を抜いた途端に黒眼鏡が戻ってくるのではないか」とバグベア悪妖精に向けるような怖がり方をした者もいるが、
とにかく当面の間大きな動きをすることもないし、する必要もない者たちだ。
それは実に合理的な判断に思えたし、それこそが自然であると信じる者も多かった。

一つは、これを機であると動き出す者たち。
アレッサンドロは部下たちに十分な利益還元を行っていたが、
十分なんてものはない・・・・・・・・・・
逮捕の報をきいて早速自らの利益を拡大しようと、種々様々な活動が行われた。
そしてそれがうまくいくかどうかは置いておいて、アレッサンドロは"港"が自分の指揮下から外れた際、こういった活動を咎めるような仕組みまでは構築していなかった。
彼のことをよく知る部下曰く、「好きにやるならそれはそれでいいと思っていたのでは」──などというが、果たしてどうだろうか。
元々がマフィアという、法とは利益をどうやって味わうかのドレッシングに過ぎないと思っているような連中だ。
これらの数もそれなりに多く、後にファミリーが調べたところによれば全体の三割がこういった"独立"にいそしんでいたという。

そして残った、全体の一割程。
彼らは一見普段通りに業務を進めていたが、ときたま妙な振る舞いをしていた。
普段入らない場所に入り、普段しないことをする。
それはほんの少しだけ、ちょっとだけ足を延ばす程度のことで、
けれどそれをする意味も必要もないことだった。
それを見とがめられるものもいたが、「アレッサンドロからの指示で」と言えば大抵の場合は見逃される。
そしてそれは、別段長く続くものではない――ほんの少し、たとえば荷物を運ぶだけ。
そのことに気が付くものが、はたしてどれほどいただろうか?
いたとして、それが何を意味するのか、組み立てられるものはいるだろうか。
多くの者は、「アレッサンドロが釈放されでてくれば分かるだろう」と気に留めることもなかったが。

──とにかく。
総合すれば、"港"は七割が普段通り。つまりはビジネスにおいて影響は無視できない程度ではあるものの、これまで通りに営業を続けていた。
ヴェスペッラの海には今日も、静かに白と青が揺蕩い踊っている。

三日月島の朝焼けはあの日も今日も、変わらずに美しい。

男がその知らせ を聞いたのは、それが署内、或いは島中を駆け巡ったより幾らか後のこと。
またいつものように・・・・・・・牢を空にしていたその男は、ねぐらに帰る最中にそれを聞いたのだ。

ヴィンセンツィオ・ベルティ・デ・マリア。

その名は当然男だって知っていた。話したことさえあった。
同じファミリー・ネームのよしみ。広範な人間関係を築くのが不得手なこの男のためにと、気を配ってくれたのを覚えている。
その時の悠揚な笑みを覚えている。


────
がん。

がん。

がん。
がん。


それは憤りだった。
男の義憤が牢を打ち檻を揺らした。
食い締めた歯がぎりと鳴る。奪われ消された子どもたちのことを思ってまた心が逆立った。

「────くそ野郎が」


呻きに似た響きが落ちる。
まったく男は正義の徒であった。

真面目な警官・・・・・・だ。自他ともにそう認めるように。

『お前じゃ無理だ』と笑う。吐いて、汚れて、まだ笑う。

冷たい牢の奥で毛布に包まり蹲る。
熱と、痛みの波に耐える為の仕草だった。
浅く呼吸を繰り返す最中に耳にする。
看守の噂話、は。

──君が目を塞いでしまざわるをえないことが、私は一番悲しいよ。

「……ヴィトー、さん」


自分の道を見つめていたい。
目の前にあるものをちゃんと見ていたい。
でも、もう。

だれの、いつの、どんな。
笑顔や言葉を信じたらいいんだろう。
わからないのに、信じたいと願うのはどうしたらいいんだろう。
一つを疑えば全てを手放してしまいそうで、それがこわかった。

ならその前に瞼を伏せてしまった方が、ずっと。

#収容所

十九年の人生で自分がした、悪いことを数えている。

この現実がこれまでの罰であるなら、帳尻が合うはずだから。