また、攫われてくれるだろうか…


　

　
［犯行予告を書き記すための
　四角を選びながら、目を細める。

　手繰っている束の中には
　前回、屋敷から連れ去った時の貴方が
　息づいている。

　視線が交わるものもあれば
　不意打ちで捕まえたもの
　眠りに落ちている間に囚えたものも、ある。

　連れ帰ってきた貴方は
　どれをとっても
　果てしなく尊くて、愛おしいから

　────迷う。］
　

　
［悩む時間も楽しいから良いのだけれど‥‥

　日が差し迫って
　万が一、配達に遅延でも生じれば
　意味が無くなってしまうから。］



　　　やはり、……これかな、



［散々、迷った末に抜き出した１枚は
　きっと他人には
　何なのか理解できないだろう。

　屋敷の別の誰かが受け取って
　開けてしまったとしても
　私だけに晒してくれた特別な表情を
　盗み見られることがないように───。］
　

　
［前回は、
　画面の端にわずかに
　黒と灰色の毛先が映り込んだだけの
　失敗作だったけれど。

　今回のは、敢えて
　ぎりぎりまで寄せて切り取った
　身体のパーツの一部だ。

　疲れて眠ってしまっていたから
　シャッターを切ったことには
　気付かなかっただろうが、

　見えるところに咲かせておいたから
　この赤の意味するところは
　彼だけが分かる筈。］
　

　
［また、────そんな意味も込めて



　　　



　裏にサインペンを走らせた。］**