人狼物語 三日月国


26 【身内】朧月夜とお散歩犬【R18】

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視点:


 
[この大きな存在の前で
 自分は、なんてちっぽけなのだろう。

 そう思う時

 羽をもいだ蜻蛉
 腹を開かれたまま逃げ出した蛙
 クスリを飲ませた
 実験動物たちの姿が、浮かんでいた。

 自分もまた
 たくさんの命を
 弄んできた代償なのだろうか。]
 

 
[望んで受け入れたい行為では決してないが
 もしそうならば仕置かれるのは
 仕方ないのだ、と。

 反射的に漏れてしまう悲鳴は
 どうしようもないけれど

 ヤメて、と
 嫌だ、と
 殺さないで、と

 繰り返される死という厳罰を
 否定する言葉だけは
 迸らせてしまわぬよう唇を噛んで耐えた。]



   ───────ッ、  んんん゛…ッ!



[結局、最後には
 礼拝堂の硬く冷たい壁に
 悲痛な叫びを反響させてしまっていたから
 その些細な変化が
 神に伝わったかどうかは、分からない。]
 

 
[もし、もしも…
 赦されることがあるならば、

 己が願うことは、────唯ひとつ。]



   ……タロ、に、…  ッ、

   タロの、とこ‥‥っに、 
      逝か、…せて……ほし‥‥ぃ、



[今も、ずっと
 寄り添ってくれていることに気づけぬまま
 ひたすら、それだけを懇願した。]
 

 
[死の断罪を受け入れ

 ”逢いたい”
 ”追いかけたい”
 ”彼の元へ逝かせて欲しい”

 ひたすらに、それだけを願い続けて
 どのくらいが経っただろう。


 礼拝堂に静寂が戻り
 這う音だけが響くようになった頃、

 ひたすら発作を繰り返すばかりだった青年が
 皮膚を透かす眩しい陽の光に
 ぴくりと瞼を動かした。


 のだが、

 夜毎、繰り返す悪夢には
 救いが訪れる瞬間のことは現れず
 殺され続ける最中で、孤独に飛び起きるのだった。]**
 

 
 ── 目覚めの刻 ──



[起きて…と訴えかける
 悲痛さを伴った懐かしい声音が
 すぐ傍で響く。

 ああ、
 ずっとずっと
 求めて求めて求め続けていた────]



   ‥‥‥っ、  タ、ロ‥?



[掠れた息で呼びかけて、
 手を伸ばす。
 何度となくそうしてきたように。]
 

 
[掴めたとしても、硬く冷えた腕だけだった。

 だが、今回は違った。


 俺の大好きな
 新鮮な
の匂いを溢れさせながら
 熱が、鼓動が、吐息が
 重みを伴って乗り上げる。

 薄く開いた瞼の合間
 指が捉えた肌はぬるりと滑って
 その感触と見た目の美しさに溜息を漏らす。]



   ………あぁ、  綺麗、だ、



[再会の喜びの発露でもなく、
 共に逝けなかったこと
 追いかけるのが遅くなったことを
 詫びる言葉よりも先に

 口から零れたのは、感嘆の響き。]
 


[唇から伝い
 腕からも溢れる真紅で
 彼と、自分が、彩られていく中

 恍惚の笑みを浮かべ
 抱きしめ返す。

 なんとなく感じる違和感の要因に
 気づくよりも早く
 タロの言葉が、鼓膜に届いた。



   …
捌いて
、 
グチャグチャ
に……?



[反芻しながら
 その響きにゾクゾクと背筋を震わせる。]
 

 
[死後の世界が
 どんなところか分からねど

 虫も、動物も
 無益な殺生はするまいと
 繰り返し殺されながら、誓いを立てた。

 己が抱く欲求は
 どうやら
 世の理から外れているらしいから。

 天国でも、地獄でも
 タロと同じところに逝けるのならば
 それら全て、無理矢理にでも抑え込もうと
 考えていたのだが‥‥‥、]

 


 
  望んでくれていることを
  止める必要は、流石にないよな…?


                   ]

[この
狂った欲望

 ただひとり、叶えてくれる存在。

 タロだけが特別で
 タロだけが必要だ。]



   俺の、好きに‥‥シてもいいんだ?

   ああ…、うれしいな。

   タロのことを精一杯
   大切に、大切に、苛んであげる。




[此処を出る、の
 正確な把握もできていないままで
 望んでもらえる未来に
 妄想の翼を羽ばたかせる。

 興奮に沸き立ち
 立ち上がったのは産毛だけではなかったけれど
 厚い布団が開かってくれた。]
 

 
[そんな興奮も

 病室の中に鎮座する
 像の姿を目にした途端に、霧散する。]



   ……、 ッ、 ………ぁ、 ぁぁ…!



[あまりの恐怖に
 呼気を取り込むのも忘れ
 喉の奥に籠もる悲鳴を上げながら
 ガクガクと体を大きく震わせて
 ベッドの上で後退る。

 男の病名は「強度の恐怖症」。
 目覚めたレオを診た、精神科医はそう診断した。]