人狼物語 三日月国


221 Pledge ~sugar days~

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【人】 田臥 志麻

[少し二人の時間があった後、
 何種類か広げられたコルセットもガーターベルトも、
 正直、「可愛い」と思わず声に出そうになるほど
 興味を惹かれてしまった。

 やはり威優は自身好みを知り尽くしている。
 これが似合う、と提案されたものは
 どれも頷いてしまうもので
 正直に言って、早く着てみたくてそわそわした。

 シューズも、小物から一つずつ決まっていく。
 自分たちで選んだものが細部まで拘られて。
 ヴェールに選ばれるチュールも
 派手過ぎず上品な光沢に近く、好ましい。]


  うん、良いと思う。
  オレもそっちの方が好き。


[オーダーメイドに関しては格段に詳しい威優に
 まるで光源氏に育てられていく若紫のように、
 彼の好みに育てられている感じがする。]
(55) 2023/08/31(Thu) 2:38:56

【人】 田臥 志麻

[シルクサテンのリボンと同じタイ。
 シンプルな肩口に「可愛い」と「好き」が増えて、
 威優とお揃いになる。
 ポケットチーフとヴェールも重ねれば、
 お揃いがもう一つ。

 彼が出したアイデアに、
 みるみると瞳を大きくして輝かせ。]


  それがいい。
  どっちもしたいっ。

  ははっ、最高。絶対可愛くなる!


[借りてきた猫だった表情が破顔する。
 こくこくと頷いて賛同を示し
 浮わついた心を抑えきれずに手を取ってはしゃぐ。

 重ねた手に嵌っている「お揃い」のリング。
 大好きな瞳と同じ色をした石がきらりと煌めいた。]
(56) 2023/08/31(Thu) 2:39:24

【人】 田臥 志麻

[ブーケは花の種類が分からないから
 色を決めてから、選ぶことになった。

 白いウェディングドレスに映えるように、
 「可愛い」の代表のピンクの花がいいと告げて、
 可愛らしくなり過ぎないように
 ピンク合わせる色にはクールな青系統を選ぶ。

 白いチャペルに白いウェディングとタキシード。
 ブーケは夜に輝く差し色になるだろう。]


  南十字星、初めて見るな。
  夜の海ってちょっと怖いイメージあるけど、
  灯りがない分、空見上げたら星がたくさん見られそう。
  

[威優と出会ったのは夏の頃。
 オーストラリアに行く時期にはちょうど、
 あちらが夏と同じ暑さぐらいの季節。

 きっと、出会った頃を思い出すだろう。**]
 
(57) 2023/08/31(Thu) 2:39:48

【人】 大守 威優

[スタッフは男性である志麻用のドレスの注文にも
怪訝な顔をせず、女性の花嫁に対するのと変わらない態度で
接している。
それでもドレス着用に前向きなことを外に知られることに
気が引けるのか、志麻の口からはデザインや色味に関して
「可愛い」という言葉は控えられていた。

スタッフに出して貰った見本、ウェディング用のコルセットは
白の下に着用することを踏まえて色味は抑えてあるが、
形状はリボンで編み上げるタイプからホックで止めるもの、
ファスナーを使ったものなど様々あった。

勿論コルセットもガーターも、見本は女性用ではあるが、
男性――志麻の身体に合わせて作るのだから、
「試着で入るものを」なんて制限はない。

志麻の好みに合わせてそれを用意するだけだ。]
(58) 2023/08/31(Thu) 19:59:48

【人】 大守 威優

[お揃いがほしい、なんて可愛いお願いに提案したら、
それは彼の気に入るところとなったようで。
思った以上の反応が引き出せて満足の笑みを浮かべた。

やっと心から「可愛い」に対する好意を出してくれた。]


 じゃあどっちもお揃いにしよう。

 リボンは縫い付けるんじゃなくて外せるようにして、
 日本に帰ってから披露宴でアスコットタイとして
 使えるようにして貰えば
 披露宴でも「お揃い」ができるよ。


[リボンとして肩を彩る際は子どもっぽくならないように
幅を狭く折って、アスコットタイにする時には広げれば良い。

折角のお揃いだ、見せびらかしたい。]
(59) 2023/08/31(Thu) 20:00:33

【人】 大守 威優

[お揃いが決定した頃から、志麻の緊張もだいぶ解れ、
希望が口に出やすくなった気がする。

ブーケはピンク主体、己の好みで薔薇を入れて貰う。
一口にピンクと言っても色んな薔薇があって目移りしそうだ。
脇に添えるブルーの花は薔薇を邪魔しないように小ぶりの
ブルースターを。

様々なことが決まる度に結婚式が楽しみになる。]


 うん、周りに商業施設の光源もないし、
 きっと綺麗に見えると思うよ。


[朝になったら海で泳ごう、とは言えなかった。
男性物の水着で隠れるところだけに
己の独占欲が収まるとは到底思えなかったので。*]
(60) 2023/08/31(Thu) 20:00:48

【人】 田臥 志麻

[仕事として接してくれている女性スタッフたちは
 例え可笑しいと思っていても
 プロだから態度に出すことはないだろう。

 Ω性の男性であっても大半は揃えてタキシードを着る。
 披露宴の時に自身も対外的に着るみたいに。

 LGBTやトランスジェンダーの問題は今や、
 公言しても蔑まれることは少なくなってきているが、
 志麻が消極的なのはそういった根本的な問題以前に、
 骨格が細いとはいえ女性的な丸みのない成人男性である
 自身が可愛いものを着ても似合わないのでは、
 と、誰よりも自分自身が思ってしまうからだった。]
(61) 2023/08/31(Thu) 21:28:04

【人】 田臥 志麻

[威優の可愛いを切っ掛けに視線が上向けば、
 接してくれる女性スタッフたちの表情も良く見えた。
 話を親身に聞いてくれる様子は決して嘲笑うものではない。
 そう気づいたら、随分と気持ちが楽になった。
 最初から拘っていたのは自身だけだったかも知れない。
 そう思えば、少しずつ相談に前向きになれた。

 二人で一から作っていくウェディング。
 ドレスから小物、式場、時期まで。
 たった二人だけで挙げるために。

 話が進んでいくにつれて一生に一度のものが、
 最高になると確信していく。

 リボンのアプローチも一度じゃなくて、
 正式な発表の場でも「お揃い」に拘れるように。]


  そうしたい。
  
  挙式の気持ちを持って披露宴に挑めるなら、
  緊張しないで済みそう。


[もう一つの予定が組み込まれるからには、
 素材選びはまた慎重になりハードルが上がりそうだ。]
(62) 2023/08/31(Thu) 21:29:57

【人】 田臥 志麻

[「愛情」が意味として含まれる花々達の中に
 「かわいらしさ」と「信じ合う心」が含まれる。
 
 自身が選んだピンクに、彼の好みを足せば
 「恋の誓い」が生まれた。
 互いに初めての恋を知った二人によく似合う。]


  知ってる?
  星座の中で一番輝く星って"α星"って言うんだって。
  南十字星には二つもあるらしいよ。


[十字架の前で愛を誓った後、見られるであろう
 夜空の十字に思いを馳せる。
 その中には、威優と同じ意味を持つ星がある。
 
 自身の中でもたった一つだけ、
 誰よりも輝く一番星が────すぐ傍に。*]
  
(63) 2023/08/31(Thu) 21:30:31

【人】 大守 威優

[志麻の緊張が解れてからはスタッフの方も
より熱心に志麻の方に提案をするようになった。
それまでは二人に対して提案し、
己が出しゃばるという形だったので、
志麻の方に近づけにくかったのかもしれない。

こういう場ではスタッフは「ご新婦様」と呼ぶのが
普通だろうが、「婦」という漢字を気にしてか、
「志麻さま」と名前で呼んだ。
スタッフの配慮が伺える。]


 見る度に挙式のことを思い出せるから
 披露宴で思い出し笑いをしないように
 気を付けないとな。


[まだ式を挙げてもないのに、もう思い出し笑いをするような
出来事があると確信している。
その態度も披露宴で思い出して緊張をほぐす一助となれれば良い。]
(64) 2023/08/31(Thu) 22:45:34

【人】 大守 威優

[帰りは夜になった。
商業施設や住居の灯りが邪魔で、
ここでは南半球でしか見られない南十字星はおろか、
他の星座も目を凝らさないと見えない程だけど]


 へぇ、Ω星は?


[なんて言いながら、繋いだ手に力を込めた。
星のない夜でもどこにいるかわかる、
彼にとってのたった一つの一番星になりたい。]
(65) 2023/08/31(Thu) 22:45:50

【人】 大守 威優

――挙式当日――

[前日から泊って時差ボケを直した後、
万全の体調で式に臨む。

花嫁である志麻は己よりも準備にかける時間が長いから、
己は自分の着替えを終えた後、そわそわしながら待つ時間が長い。

ドアがノックされた。]


 ――はい。

 ありがとうございます、お義父さん。


[二人だけの挙式をしよう、と言っていたが。

たった一回の挙式、バージンロードを一人で歩くのは
やはり寂しいと思い、志麻の家族を呼んでいた。

両親は志麻が幼い頃女の子の服を着ていたことを
知っている。
知られたくない訳ではないと思うが、
一応サプライズ登場はチャペルの前ではなく
準備中にしてほしいと頼んだのだった。]
(66) 2023/08/31(Thu) 22:46:17

【人】 大守 威優

[程なく志麻の支度部屋の扉がノックされる。
まずは、父親だけが。

許されるなら母と弟も。

内緒で呼んでいるので、志麻の心の整理がつかなければ
予定通り二人だけになる。*]
(67) 2023/08/31(Thu) 22:46:31

【人】 田臥 志麻

[威優が居なければ相談もまともにできないまま、
 既製品でいいと言っていたかもしれない。

 「志麻さま」と呼ばれ続ける中で、
 たった一度だけ「ご新婦様」と言いかけた
 スタッフが恐縮して名前に呼び替えた。


 「大丈夫です、呼びやすい方で。」


 と、照れくさいながらもそう答えられるくらいには
 余裕も生まれて、打ち解けていく。]


  無理。
  リボン見たら絶対ニヤけちゃうもん。

  その時は一緒に笑って。


[どんな思い出になっても
 威優となら良い思い出になることは間違いないから。
 挙式も、披露宴も、笑顔で迎えられたら良い。]
(68) 2023/09/01(Fri) 1:46:26

【人】 田臥 志麻

[街灯が綺麗に並ぶ中を手を繋いで歩く帰り道。
 海の近くのように星は見えないけれど、
 その代わりに冬のライトアップが美しい。]


  Ω星はないんだ。

  オメガ星雲ってΩの形をしたやつならあるけど。
  星雲は星じゃなくて、塵やガスの集まり。

  ああ、でも恒星の光を反射するんだよ。


[冬の空気に冷えていた手が彼の手で暖かくなる。
 自身の星はなくとも、一番星の。
 彼の光を受けて、光ることなら出来るだろうか。]
(69) 2023/09/01(Fri) 1:46:35

【人】 田臥 志麻

── 来たる挙式当日 ──

[初めての海外に戸惑いながらも、
 現地の天気は心を映し出すように晴れやかで。
 一人前の食事の量の多さに感動しながら、眠った翌日。

 最終調節のためになんどか試着を重ねた
 完成されたドレスをお披露目するときがきた。

 ウェディングドレスを着るのなら、
 素っぴんとは行かない。
 ドレスに見合うようにメイクを施されて。
 ベイスメイクはもちろんのこと、
 薄いのチークにマスカラ、色づいたピンクのリップ。

 鏡の中の白いドレスにメイクをした人物は
 まるで自分じゃない、ドラマの中の人みたいだ。

 憧れていた『お嫁さん』の形になっている。
 想像していたよりも遥かに美しく、
 立派なドレスを纏っていた。

 メイクを施された後も、
 鏡の前から離れられずに入れば、ノックが響く。]
(70) 2023/09/01(Fri) 1:47:00

【人】 田臥 志麻


  どうぞ。


[威優かと思い、促して扉の先を見てみれば。
 威優と共に、父の姿がそこにあった。

 みるみる志麻の目が見開かれていく。]


  ……と、うさん……、?

  え、なんで。
  ……えっ、……


[二人だけと聞いていたからその姿を見たときは、
 本当に驚いて、咄嗟に声も出なくて。
 説明を求めるために父と現れた威優を見つめる。]
(71) 2023/09/01(Fri) 1:47:17

【人】 田臥 志麻

[彼の前では穏やかな父がにこやかに笑顔を浮かべて、
 綺麗だね、と感極まったように呟くから。]


  そ、それは威優の言うやつだろ……!?


[嬉しいけど、……
嬉しいけど!

 混乱と照れ臭さと嬉しさでつい親子の素が出てしまう。
 だって二人きりだって!言ったから!
 その台詞は威優から先に聞きたかった。
 
 その父から母と弟も一緒に来ていることを伝えられ、
 更に困惑を広げながらも、
 最終的には威優の方へと眉尻を下げて。]


  
こ、こんなの……聞いてない……、



[と、気恥ずかしさを浮かべながらも。
 複雑な表情を浮かべて、花嫁とは思えぬ動揺を見せた。**]
(72) 2023/09/01(Fri) 1:48:17

【人】 大守 威優

[現地は快晴だった。
式の当日とはいえ、招待客がいる訳でもなし
(この時点ではサプライズのことはおくびにも出していない)
エステやマッサージを受けてのんびりしていた。

そして準備の為にそれぞれ別の部屋に入る。
窓の外、夜の帳が降りていく。

日が完全に落ちれば、結婚準備の帰り道に志麻から聞いた
「α星」や「オメガ星雲」も観測できるようになるだろう。

式の後、ゆっくり星空を見る余裕が出来るのは
何日か後かもしれないが。]
(73) 2023/09/01(Fri) 20:51:41

【人】 大守 威優

[義父と一緒に志麻の部屋へと向かった。
義母と義弟には部屋で待機をしてもらっている。

道中、緊張しているのか無言だった義父は、
志麻の姿を見るなり「綺麗だね」と呟いた。

志麻がドレスを着ることは、義家族には伝えていなかった。
それでも開口一番その言葉が出るということは、
息子の晴れ姿に対する含みはないということだ。]


 似合ってる。
 俺の奥さんが世界で一番綺麗だ。


[どうやら義父の言葉は己の口から聞きたかったようで。
順番は譲ったが、特大で特別な賛辞を贈った。]
(74) 2023/09/01(Fri) 20:52:04

【人】 大守 威優

[困惑の強い志麻に、呼んだ理由を説明する。]


 式をするにあたって、調べたんだ。
 バージンロード――英語ではウェディングアイルって言うんだけど、
 花嫁のこれまでの人生を表すんだそうだ。
 教会の扉が開いて、俺が待つ祭壇まで。
 小さい頃から今までの人生を振り返りながら歩いてくる時に、
 志麻の隣にはお義父さんがいてほしいと思ったんだよ。

 愛されて育ってきた。
 愛をきちんと受け止めて歩んできた人生で、
 俺と出逢ってくれたんだ。


[義父は、突然のことで驚かせてしまったことへの謝罪と、
どうか参列させてほしいという懇願を口にする。

加えて、もし志麻が望まなければ、
このまま部屋に戻って式が終わるまで見ない、と。
部屋でずっと幸せを願っている、と。]
(75) 2023/09/01(Fri) 20:52:33

【人】 大守 威優


 どうかな、志麻。


[外はゆっくり暗くなっていく。
チャペルの外のガーデンに灯りが灯り、
国花であるミモザが明るく浮かび上がった。*]
(76) 2023/09/01(Fri) 20:53:02

【人】 田臥 志麻

[エステもマッサージも綺麗になる為の準備。
 一人で受けるのではなく、二人で施術を受けたから、
 気分も楽ですっかり気持ちも解れていた。

 その時も威優は全くいつも通りに話していたのに
 裏でこんな下準備をしていたとは驚かされた。

 「連れてきてくれてありがとう、威優くん」
 なんて、嬉しそうに感謝を伝える父。

 父の傍らに立った威優が、
 期待していた言葉を口にする。
 (しかもさらっと奥さんって言った!)]


  …………〜〜〜〜〜ッ、

  あー、もうっ……!
二人共ありがとっ!



[ヴェールを下ろした後では
 乱雑に髪を掻き乱すこともできない。
 頬に触れるのもメイクを崩してしまいそうで。
 二人の視線から逸らすみたいに顎を逸らして
 上を向く天に投げかけるみたいにお礼を告げた。

 そうしないと瞳がまた潤んでしまいそうだったから。]
(77) 2023/09/01(Fri) 21:35:51

【人】 田臥 志麻

[バージンロードの意味は威優の口から語られるまで
 調べたことはなくて、初耳だった。

 ドラマや映画ではそのシーンを何度も見てきたけど。
 父親役の人と腕を組んで、
 新婦が新郎の元まで送り届けられる意味。
 それは、家族のバトンを受け渡す意味があるのだろう。

 ────家族から新しい家族へ。

 そのバトンをちゃんと受け取りたいと
 考えてくれた威優と、役目を担ってくれる父に。
 堪えていた涙腺がまた瓦解しそうになってしまって。
 唇を噛み締めて二人の話を聞き、
 彼らの言葉が途切れた後、
 自身の返事を待つように少し沈黙が、落ちた。]
(78) 2023/09/01(Fri) 21:36:35

【人】 田臥 志麻

[今日は笑っていたいから。
 深く、息を吐きだして感情が落ち着くのを待つ。

 それから、二人を見て。]


  ……威優のところまで、
  父さんが、エスコートしてくれる?


[頷く代わりに目尻に皺を作ってみせれば、
 やっぱり、少しだけメイクが崩れてしまった。]
(79) 2023/09/01(Fri) 21:36:51

【人】 田臥 志麻

 

  母さんも、莉久も呼んで。

  ……うちの家族が来るなら、
  威優のお義母さんも呼べばよかったな。


[最後は威優にそう言って笑った。

 赤く燃えていた空が夜空に変わっていく。
 青と緑に囲まれた中で白いチャペルが一層映える。

 立ち上がると威優と拘った
 トレーンの刺繍が綺麗に床に広がった。*]
(80) 2023/09/01(Fri) 21:37:23

【人】 大守 威優

[ありがとう、と聞くまでは
義父も己もどこか胸に不安を抱えていたと思う。

先に打診したらどうかと義父には言われたが、
その場合受けるも断るも、志麻の心に影響が出そうで
己の我儘で隠し通させてもらったのだ。

「自分がΩだから苦労をかけた」と思っている志麻は、
家族の為にと度々実家で家事を担っていた。
家族が来ると知ったら「自分だけの為」ではなく、
家族がどう思うかを思考の基本に置いてしまうのではないか、
それを懸念していた。

逆に二人だけだからと断れば、
見たいと願った家族の想いを無碍にしたと
罪悪感を抱いてしまうだろう。

その点、この土壇場で断るなら
己が黙っていたことの所為にできる。


――と。]
(81) 2023/09/01(Fri) 22:21:29

【人】 大守 威優

[涙を堪えるように天を仰いだ礼の後、
沈黙が漂った。

その間、花嫁の支度を担ってくれたスタッフも
空気を呼んで部屋の隅でじっと大人しくしていた。

退室はしないだろう。
どんなに堪えても、堪えた分だけお直しの必要がある。

己が話すバージンロードの意味を聞く間、
噛み締めていた唇に引かれた「可愛い」リップや、
父親に向けた瞳の端でよれた発色の良いファンデなど、
整えて貰ってから手を取りたいし、手を取ってほしいだろうから。]
(82) 2023/09/01(Fri) 22:21:47

【人】 大守 威優



 うちの母には良かったら写真を送らせて。
 忙しくしてないと死ぬ病なんだあの人。


[志麻が了承してくれるなら、
世界一美しい花嫁を自慢したい。
この姿を見たらきっと母は今度は孫が見たくなる。

そうして生きてほしいのだ。
どんなに野心に溢れ親族との間に溝があった男だったとしても
愛していた、たった一人の番がいないこの世界で。]
(83) 2023/09/01(Fri) 22:22:58

【人】 大守 威優



 じゃあ、祭壇で待ってる。
 メイクを直して貰ってからおいで。

 一度ベールを上げてもらうから、
 下ろすのはお義母さんに。

 ベールダウンは「子育てを終える」って意味で
 母親にしてもらう習わしがあるそうだよ。


[そう言えば、またメイクを直す場所が増えるだろうか。

義弟にはフラワーボーイを頼んである。
花嫁が悪魔に攫われないように道を「護る」役を、
もう「護られる」だけの存在ではないのだと
兄に安心してもらえる姿を見せられるように。]
(84) 2023/09/01(Fri) 22:23:16