人狼物語 三日月国


225 秀才ガリレオと歳星の姫

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視点:




   自分と似たような人物がいたとして
   自分に変化したということになるが、
   その意味とは?エウロパとの関係は?

   点と点が次々と生まれていく中、
   それらを線で繋げることは今は難しい。

   調べたところで
   ユスティがどうこうすることはないが
   シトゥラが何かを調べたいようなら
   素直に任せておくことにする。

   この手の情報調査は実はユスティの苦手分野だ。





   それよりも心を締め付けるのは
   幼い日のエウロパの苦悩。

   ユスティにとっては罪の始まりで
   ほろ苦い炭の味がする。

   凡人でも空を飛べると
   たかだか秀才でも星に手が届くと
   そう思いたかっただけだというのに
   その道すがら一番大切なものを傷つけ
   あの森に置き去りにしてしまったのだ。






   「分かっているよ。

      けれどボクはまだ
      傷つけてしまった姫の赦しを貰っていない。」





   「いい歳して、ごめんねの一言も、言えなくてさ。」





   シトゥラの前で苦笑するユスティは
   身体だけが大きなただの少年だ。





   シトゥラがユスティの手を掴むと
   その意図を察して直ぐに従う。

   怪我の具合をせめて見せろと
   そう言われたような気がした。



    「情けないよね。
     たった数分でこの有様だ。」



   自虐の詩を奏でながら
   シトゥラに自分の状態を見せると
   不甲斐なさにため息をついてしまったが
   一時間残されていると分かると
   その表情もすぐに元に戻る。





   「十分。

      むしろ、優秀な小人に感謝したいよ。」





   薬を受け取ったユスティは
   シトゥラに礼を伝えると医務室を出ていったのだった。

   これくらい無茶のうちには入らない。上等だ。**






   次第に痛みが出てきた腕を抑えながら
   屋上の壁に背を預けると、
   さっきシトゥラから貰った薬を使う。

   身体の回復はあまり見込めないが
   それでも気分はかなりよくなったし
   なにより三十分ほど過ぎた頃には
   手のひび割れもほとんど目立たくなっていた。

   流石は薬学に精通しているだけあって
   ユスティが求める効果が的確に現れている。
   これならば後は徐々に回復してきた魔力を
   緩やかに全身に馴染ませればいい。





   ユスティの返答を聞いて、
   誰かが化けていたらしいと推測を立てれば
   シトゥラは嫌そうに顔を顰めてしまう。
   変身薬を作るのはそう簡単ではない。
   となれば、誰かに頼んだのでない限り
   作った人など限られてくる。


   そして、変身薬を使う目的なんて
   ろくでもない物の方が圧倒的に多い。


  



   ……ユスティよりこの手の調査は得意だし   
   エウロパが無事ならそれでいいと思えるほど
   シトゥラは寛容にはなれなかった。


   



   とはいえ、今大事なのはエウロパのこと。
   苦笑するユスティにかける言葉はそう多くはない。
   エウロパならきっと許してくれるだろう。
   でも、言いだしにくい気持ちも分かる。
   自分が悪いのだと分かっているなら余計に。


   「大事な人が離れようとすればするほど
    彼女は傷ついていくんだと思うけど。」



   自分は離れるつもりはない。
   ただ、本当にいて欲しい相手は自分ではない。
   シトゥラはそう思っていたから
   少し困ったように笑って。


  



   「情けなくなんかない。
    それだけ必死で守りたいって
    そう思ってたってことじゃない?」


   そして、共倒れにならずに帰ってきた。
   どこが情けないというのか。
   本当はユスティも一時間と言わず
   もっとゆっくり治療するべきで
   シトゥラからしたら
   かなりの無茶を言ったつもりだったのだが。