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【人】 『ブラバント戦記』────と思われたが。 自領への帝国軍の侵入を確認するなり、 アングレール子爵側は兵を差し向けず白旗を上げた。 数度使者による伝達が行われた結果、 ブラバント帝国は城の明け渡しを要求。 それは二百年前に大部分を焼失した後、 再建されたかつてのシェーンシュタイン城だった。 交渉はその大広間で行われる事となる。 血濡れの婚儀となったその場所で。 (59) 2020/12/03(Thu) 0:15:50 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 使い鳥はこの所頻繁に本国と送り合っていた。 兵站の要求や人員の増量、必要物資の買い付けなど 用途は多岐に渡るが、 数ある中でも一番大きな報せは男児の誕生であった。 ] ( 帰った処で抱いてやれるかも定かではなく、 己に似てゆく成長ぶりを見る事も叶わない我が子。 ならばせめて乱世は俺の代で終わらせよう。 そして泰平の名君となり、その統治の栄えんことを。 ) [ その為には誇り高き家名と、慕う民草と、 豊かな国土と、其れを治める貴族が要る。 故にこの交渉は重要な意味合いを持ち、 彼が下した決断は────…… ] (60) 2020/12/03(Thu) 0:16:18 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム ( 死んで欲しい奴こそ、金で命を買い戻す。 ) [ 穢れた施しは受けぬと心に決め、 腐り果てた精神を隔絶する為に裏切りを選ぶ。 招き入れられた城に武器は持ち込まず、 その代わり……ありったけの“火酒”を振舞おう。 独断での交渉に走った子爵を守る味方はない。 僅かな兵のみが控える城内で 仇敵を一思いに燃やし尽くすのは容易かった。 ] (62) 2020/12/03(Thu) 0:17:10 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 燃え盛る階下。 増設された回廊から大広間を見下ろし…… 其れから床に額を付けた眼前の男に視線を移す。 この二百年シェーンシュタインを支配してきた子爵は 肩書きだけ与えられたに過ぎなかったらしい。 『未来永劫忠誠を誓います』と 上擦った声で命乞いする様には 嘲笑だけを降す。 ] ( 悪意の芽は摘まなければならない。 いつか玉座に着く息子の敵は全て滅ぼし、 その上で汚名は返上し 皇族の立場を確固たるものとする。 ……故に。 ) (63) 2020/12/03(Thu) 0:17:33 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム────貴様がこれまで重い税を巻き上げて来たのは 誰の民だったのだろうな。 ( 冷たく言い下した先の、気に食わぬ髭面が歪む。 懇願が通らぬと知れば歯を剥き出して怒り狂う。 嗚呼、醜く、鼻持ちならぬ、人の子に有るまじき貌。 そんな唾棄すべき様が“見たかった”。 ) [ なれば己は是と思えたから。 ] (64) 2020/12/03(Thu) 0:17:48 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルムもっと深く跪け Mehr knie dich, Scheisse! [ 憎しみの儘に、床を掻く指先を靴底で踏み躙る。 骨が砕ける音が響く迄、悲鳴と嗚咽が言を封じる迄。 ] (65) 2020/12/03(Thu) 0:18:08 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ ────薄汚れた腕を掴み、 片手で軽々と短躯の男を釣り上げれば 廻廊の手摺から業火が渦巻く階下へと放り出した。] 貴様の先祖が好き勝手に造り換えたこの場所は、 いずれ七諸侯が隠し持つ金で再建しよう。 故に、貴様の手垢と靴底の泥が着いた 偽りのシェーンシュタインに────価値などない。 [ 呪われた血に流れる祖先の記憶が この場所を懐かしむ事はなかった。 或いは、感動など既に失くして 人でなくなってしまったのかも知れない。 ]* (66) 2020/12/03(Thu) 0:18:36 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム( 勇敢な人物の死に目には、必ず雨が降る。 天泣という言葉がある様に──── 餞なのだとすれば其れは、 ・・ 実に結構な事だ。 ) [ また一つ、名家が滅びる。 主君に背いてまで独立を志した者達の旗が燃える。 地図から、歴史から……消されていく。 全ての領民と兵の行く末を賭けて 決闘を申し込み、そして破れた男。 その亡骸を雨が濡らしていくのを見据えては 己が胸の内の向き合っていた。 惜しい人間を亡くしたものだと、 この戦争で初めて敵側に抱いた感情。 ] (67) 2020/12/03(Thu) 12:55:55 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 其れでも振り返る為の時間が足りないのは 残るベストラ家の本拠地が山脈の先、 堅牢な自然の要塞の中にある故だった。 21回目の命名日を迎えても、祝う暇もなく。 葬られた墓も、焼けた城も、総てを春の芽吹きの中へ 置き去りにして行軍は続く────…… ] ( 兵は休み休み入れ替わるが、己は違う。 常に前線に立って軍を率いるのは、 気が狂いそうになる程の熾烈さに身を置くことだ。 戦場に出ると悪夢を見ずに済むことは、 血腥い本質ではあるが、幸運とも呼べる。 ) (68) 2020/12/03(Thu) 12:56:17 |
【人】 『ブラバント戦記』723年 風の月5日 第一回の出兵より三年。 獅子戦役最後の攻勢が始まる。 山岳に護られた高巣城を落とすのは至難の技。 ベストラ家は近道となる全ての橋を落とした上で、 魔道部隊が谷間を通る帝国軍を崖の上から迎え撃った。 降り注ぐ氷の礫は火を用いて相殺する訳にもいかず、 傷口に凍傷を作った兵がそのまま凍え死ぬ事もあった。 帝国は丸一年と数ヶ月をかけてこれを攻略。 舞台は城内戦へと移ることとなる。 この戦いでの死者は両陣営合わせて数万人に及ぶ。 魔法によって発生した洪水で行方知れずの者も少なくない。 (69) 2020/12/03(Thu) 12:56:47 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 人間にとってはこの世こそが地獄であると かつて説いたのは何処の誰だったか。 そして時は紡がれ 戦況は刻一刻と姿を変え 最期の仇を前にして、 城壁の外ではまたも冷たき秋の雨が降る…… ] ・ ・ ・ (70) 2020/12/03(Thu) 12:57:35 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ ────迸る焔は怒りそのもの。 向けられた切先に宿る其れは留まる事を知らず、 溢れ出る程に術者の命を削る。 業火に照らされる王の面持ちは対照的に冷たく、 這い蹲る黒衣の男を無感動に見据えていた。>>0:64 ] [ 二百年の記憶を得てしても、 彼等が背いた理由を悟ることは出来ない。 それ程までに欲は歴史を左右し、 同時に歴史書を複雑に変えていく。 戦争の歴史こそが人間の歴史ならば、 その火種である『欲』とはインキだ。 時と共により深く染み渡り、誰にも消すことは叶わない。 ] (71) 2020/12/03(Thu) 12:58:18 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム貴様らは眠っている幼子も、 きょうだいも、その妻も殺した。 唯一落ち延びた我が祖先を錻力の玉座に追いやっては 囃し立て……嘸かし可笑しかっただろうな。 俺は貴様と同じ轍は踏まん。 だがその旗を燃やし、史書から抹消するのは変わらない。 [ 対峙する王は瞳こそ焔の色であれど、 声色は何より冷たく悍ましかった。 ] (73) 2020/12/03(Thu) 12:59:22 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルムでは誰が対価を支払う。天が恵み給うとでも? 貴様の血肉と首に代えねば、 我々に残るのは家名だけだ。 ────貴様らが身勝手に踏み躙り、貶めた家名がな。 [ 受け継いだ記憶がそうさせるのか、 微かに声色に怒りが混じる。 在り方で言えばとうの昔に人間ではなく、 其れは四年に及ぶ戦で表面化していた。 ] (75) 2020/12/03(Thu) 13:00:14 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム死者は蘇らない。これは生者への報酬だ。 再びの栄光を示し、その忠誠が報われたと証明する為の。 ・・・ [ 誰もがお前の死を望むと言わんばかりに 鋭い言葉を用いて言い切る。 国の為、一族の為、家名の為。 ] [ 此処まで殺めて来た。これ程迄に死なせた。 墓標が生者にとっての罪や喪失になるからこそ、 “後戻りなど出来はしない”。 ] (77) 2020/12/03(Thu) 13:01:18 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム奥方の命は保証してやる。 精々西の大陸で慎ましく暮らすが良い。 全てを失った時、命に価値など無いと分かる。 [ 見え透いた問いには答えない。が、 僅かに覗かせたのは生き様への価値観。 まるで自分が“そう”在るかの様に。 ] (79) 2020/12/03(Thu) 13:02:16 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ ────だが、最期の仇を前にして火は揺らがない。 降り頻る雨に掻き消されることもない。 ] [ むしろ落ち着き払った様子で言葉を受け止め、 やがて静かに唇を開いた。 配下達が掲げる篝火の明かりが近付く。 ] ……“我 Wilhelm von Arenberg、 テリウスの指導者にしてブラバントの王。 家名の誇りに懸け、獅子の御旗の許に” “汝、Judas von Bestlaに死刑を言い渡す”。 ( 吐き出せば、重荷は自然と消えた。 而してArrynに然うした様に、首を落とすだけ。 ) (81) 2020/12/03(Thu) 13:03:54 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ 使い鳥に終戦の報せと行き先を託し、 たった一羽、籠から高く送り出す。 もう暗号を用いる必要も、 撃墜される心配をする必要もない。 筆は軽く、迷うことなく進み──── “待っている” そんな一言で締め括られた。 ] (83) 2020/12/03(Thu) 13:07:39 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ 誰かが訊いた。 契約の果たされる時は来たか、と。 ] ( ────否、未だだ。 報せを国に持ち帰る迄。 得た物の処遇と治め方を決める迄。 全て『王』の役割よ。 ) [ 声は脳裏で囁いた。 城に戻れば必ず命を貰う、と。 ] (84) 2020/12/03(Thu) 13:07:56 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ 悪夢は完全に消え去り、 一人の脳が抱えるには重すぎる二百年の記憶は 眠る度に少しずつ薄れて往くのだった。 三週間に及ぶ帰郷の中で誰かの名が消える。 今では古き当主の名が思い出せない。 ] [ 幼い頃から夢の中で継承し、植え付けられて来た記憶が 抜け落ちれば、何も知らない子供に戻って行くかの様。 充たされず、飢えと渇きに支配された獣の如く 思考を占めていた 憎 ( 其の憎しみが誰の物であったのか、 影も形もなければ確かめる術もない。 ……そんなものだ。 ) (85) 2020/12/03(Thu) 13:08:17 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ ────祝賀に飲み交わす兵達の宴から抜け出して、 砦の暖かな寝室に戻る。 従者に火を焚かせ、灯りを付け、机に向かう。 ] [ “もう下がって良い”と告げれば、 目的のものを執筆する為に羽根ペンへと手を伸ばす。 相続に関しての取り決め、領主の割り当て、 功績を立てた者への褒賞、戦死者の弔い、 やるべき事は山ほどある。そして…… 真実を知らぬ息子に宛て、最期の言葉をしたためようと。 ] ( 何も浮かばないのは 疲労の仕業であって欲しい。 ) (86) 2020/12/03(Thu) 13:08:50 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ 考える内に時間は徒らに過ぎ、 窓の外を見遣れば宴の気配も殆ど消えていた。 秋の終わりの長い雨は月の見えぬ晩を一層冷たく、 憂鬱なものに変える。 ] [ 黄金のゴブレットに葡萄酒を注ぐ。 遺書の為にも多少は“馬鹿”になった方が良いだろうと。 薬は既に不要であるから、 代わりにシナモンを加えて温める。 甘く芳醇な味わいが喉を満たした。 ] [ 再び筆を手にしては溜息を吐いた。 背凭れに頭を預け、時折寝室の天井を仰ぐ。 揺れる髪には古びた紙紐。誰かが遺した依代。 彼女の生存を知らせた最も古い手紙の代わり。 ]* (87) 2020/12/03(Thu) 13:09:11 |