224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】
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『泣き喚いて周りの者たちに取り押さえられる人物を、静かに見送った』。
牢獄の中でメモを書く。『L:〇 D:〇 V:u N:〇?』
「現行法ではまだ、
死刑は採用されていなくて助かっています」
薄い暴行の痕が残りつつも、
そんな冗談を言えるくらいは元気そうだ。
「さて、今度は何でしょう。
警察の内部事情は何も知らないと言えって言われてますが」
「
If the sky...that we look upon...Should tumble and fall...♪」
それなりの人々が集まる
#収容所 の一角で。
にぎやかとはとても言えない空気観の中、
露骨に周囲から距離を取られている男がいた。
「
I won't cry,I won't cry, No,I won't shed a tear...♪」
男は鼻歌を歌いながら、壁際でのんびりと脚を伸ばしている。
トレード・マークの黒眼鏡はさすがに持ち込めていないが、それでも彼の顔を知る者は少なくない。
にこやかに話しかけようというものも、そう多くはないだろう。
牢獄の中でメモを書く。『V:△ O:〇 c:〇 f:〇 d:△ a:A』
フィオレ
「それについても知らぬ存ぜぬで通せと上が……」
勿論大嘘だ。一個人の好みを黙らせるほど、
有無を言わさない緘口令が敷かれてるはずはない。
「まあ、特別好きなものはありませんよ。
甘い物から苦い物でも、なんでも食べます。
ああでもこんなところに放り込まれてるのだから、
活力が付くようなものが恋しいですね」
現在の収容所の管理も知れたところだから、
そうしてしゃがみこまれても気にする様子はない。
見つかったらその時はその時で上手い事やるだろう。
| (a3) 2023/09/23(Sat) 23:16:51 |
| エルヴィーノは、大事な人が居ると、その人に不幸が訪れて、僕は一人になるから。 (a4) 2023/09/23(Sat) 23:17:21 |
| エルヴィーノは、自ら独りになりながら、独りになることに酷く怯えていた人間だ。 (a5) 2023/09/23(Sat) 23:17:35 |
フィオレ
「何を不安になる要素があったのやら」
毒が盛られてたってこれ以上物事は悪くなるまい。
「……ふむ、ローストビーフサンド……
気のせいでなければ、なんですが、
ここ最近の俺の生活の周りには食がいつにも増して多い。
まさかとは思いましたが、牢の中でまでありつけるとはね」
お菓子といいジェラテリアといい、
あるいはベーカリーといい。そういう巡りなのだろうか。
「やっぱりあげない、なんて言われたら、
今すぐ大声を上げて係の者を呼び寄せます」
フィオレ
「は〜あ?」
あーんとはまた別種の。
口を開けてはいるものの、食べにかかるのではなく、
デカデカと困惑と疑問を浮かべるような声が出る。
「尻尾を出したなバカめ。たった今バカなことを言ったぞ。
何故俺があんたに食わせられなければならない」
置いていけ、と顎で示す。
手は──背に置いたまま出す様子はない。
時折動かしている様からして、
不自由というわけではなさそうだったが。
フィオレ
「……言ったでしょう。
俺は傷つけあうような趣味は持っていない」
それは、見せれば要らぬ負担を掛けると言っていると同義であり。最大限の譲歩で、引いた線から踏み入らせないようにしている。
信用できないからではなく、
信用しているから。相手の優しさを。その危うさを。
「いいですか。
あんたは勝手に俺の世話を焼いているんです。
感謝なんかしてやりません。甘えもしません」
自分は、自己価値という見返りを求めていた。
花も人も、己に少しでも光を分けてくれるものだった。
けれどあんたは、他に見返りに足るものがあるのかもしれないが───今の俺にはそれが見えない。
「それを食べる前に……ひとつだけ聞かせてください。
フィオレさんは何故。……何故なんです?」
子どもたちのために頑張るのはわかる。
けれど俺の友人として近くにいたこと。
前や、今もこうして食べ物を持ち込んだこと。
質問そのものはまとまらなかったというのに、
その理由が、はっきりとした言葉で知りたくなってしまった。
いっその事全員休んでしまえと、無責任に嘯いていた。
牢の隅。主張が下手な女だから押し出され、
気付けば人の多い地帯に押し込まれていた。
顔には叩かれたのであろう赤い痕が、
腕や足には紫色になった痣が広がるが、
まだ自分は大したことない方だと言い聞かせる。
顔色は随分と蒼白で陰鬱とした空気を身に纏っている。
時折何か呟こうと口を開く素振りはあるが、実際に声は出ず。
ただ、何をするわけでもなく静かに俯いていた。
#収容所
人間、蹲ってぐるぐる考え続けるのにも限度があるらしい。
風邪で気が弱るとか、そういうのもあったのだろう。
牢に入れられて三日目、熱が少し引いて思考がもう少し回るようになった頃。
万が一の感染症疑いが晴れた男もまた、収容所の移動に混ざるようになっていた。
黒眼鏡
……で。
何やら聞こえてきた鼻歌に視線を彷徨わせると、周囲から露骨に避けられてる人を見つける。
姿を認めれば顔を顰め、近づいていって──唐突に鼻歌人の脛を蹴ろうとした。
じゃれ合いよりは強めに、普通にいたいかもぐらい。
当たるにせよ当たらないにせよ、蹴りに行った本人は折れてる手の骨に響いて呻いていたわけだが。情けない声が出てた。
#収容所
アリーチェ
「おう、嬢ちゃん。冗談で言ってたのをほんとにするやつがあるかい」
静かに俯くあなたの傍に、急にしゃがみ込む男がいる。
#収容所
ニーノ
「いって!」
ぴょんと膝が跳ねて、鼻歌が止まる。
「お。元気してるか?
具合は?」
呻くあなたの様子に気づいているだろうに、なんだか気軽な様子。
#収容所
この男もその場にはいたはず。
隅の方で壁に寄りかかって腕を組んでいた。
その姿はほかの収容者と比べて不自然に傷がなかった。
金色の瞳は相変わらず面々の方に向けられているのだが、
突っかかっていく様子は見られない。
その辺りはそういうふうに言い含められてでもいるのだろう。
規則には従順な男のことだ。
#収容所
フィオレ
「この……常軌を逸するほどの物好きめ」
向こうもそう言っているだろうに。
最初から、それは示され続けていたのに。
それでも聞いてしまったなんて、焼きが回ったのだろうか。
「あの時も、今も、俺は変わっていません。
あんたに対してさほど思入れはない。
全部、全て、そっちが勝手にやってるだけのこと」
「それでも、貰ってしまったものは……
少しは返さないといけないだろう。
路辺でただただ静かに咲いていたらよかったのに」
負け惜しみのように告げて、
それから大口を開けて、差し込まれたサンドイッチを齧る。
咀嚼している間も拗ねたような表情を見せていて。
「あんたは花の内の例外です。
俺がただ一つ愛さない、押し付けがましい毒の花」
「それでも枯れるまでは面倒を見なくてはならない。
本当に───難儀なことだ」
黒眼鏡
「…… アレッサンドロさん。
……そうね、困ったわ。何をしていたかバレたら、
それが冗談でも再逮捕されかねないわね、わたし」
少々"共犯"という響きがこの状況では不味すぎる。
それは女にもわかったのか、顔を上げて気落ちのまま笑う。
アリーチェ
「マジで墓参りで捕まった…ワケじゃなさそうだな」
周囲から避けられているのをいいことに、
そのままあなたの隣にどすん、と座ろうとする。
その様子はなんとも軽々しく、追い返せばどっかいくだろう。
「話し相手? 懺悔室の…アー…神父? 抱き枕?
それとも涙を拭くハンカチーフ…いやなんでもいいが。
俺が助けになれることはあるかい」
黒眼鏡
「突然捕まるし熱出るし痛いことされるしサイアク」
むっす〜と頬膨らませて拗ねた様子。
手に響かない程度にもう一度蹴った、まあ八つ当たりだ。
「ファミリーの幹部にでもなれば、
こんな状況でも鼻歌歌ってられるの?」
げし。
#収容所
ニーノ
「体調崩したのか?
おめー、一応拘留されてても診察受ける権利はあるぞ。
ちゃんと看守に言えよ。
通じるかわからんけど」
無遠慮に手を伸ばし、様子を確かめるようにべちぺたと頬や肩を叩く。
「いや、俺がスペシャルにタフガイだからだ。」
止めることも無くそのまま蹴られながら、
ハハハ、なんて笑う。
「お。なんだ、随分耳聡くなったな。偉いぞ」
#収容所
黒眼鏡
「どうせいつもの熱だし、なんかもうそこまで頭働かなかったし……」
頬は多少熱いがピークは越えたところ。
無遠慮に伸ばされた手を嫌がる様子は無いが、眉間の皺は深まっていた。
慮るそれに近いと分かっていたから。
「崖から落としてもぴんぴんしてそうだもんな」
嫌味、ひとつ落としたあと。
「嫌でもなるだろ、ここにいるんだから」
「えらくない、別に」
「……なあ」
足を止めて、笑みを見上げた。
「なんでマフィアしてるの」
#収容所
ニーノ
「そうか。ったく、無理すんなよ。
飯はちゃんと出てるだろ?
なかったら俺が訴えてやるからちゃんと食えよ」
がしがしと、あなたの髪を持ち上げるように掻く。
乱暴な指先が頭皮にがつがつとぶつかって、けっこう痛く感じるだろう。
「崖は無理だ。3階…いや、4階からならイったことあるが」
大真面目に答えながら、片膝を立てて腰を下ろす。
どすんと乱暴に動くさまは、牢獄暮らしの癖に力がありあまっているようだった。
心なしか血色もよく、あの狭く油臭いカウンターの裏で味気のないパンをかじっている時よりも健康そうだ。
…ここが性に合っているのかもしれない。
「なんで、か。
んー……」
霧の中を悩み探るというより、
つるはしでガンガンと記憶をひっくり返すように
眉間に力を入れてから。
「喧嘩が強かったから…だな!」
グ、と力こぶをひとつ作り、にっと笑った。
#収容所
「あ〜いってえ……」
腹の辺りを抑えながら収容所をよたよた歩く。
「あのバカ野郎マジで蹴りやがったな……
肋骨とか折れてたらどうすんだっつの……
いや、怪我はお互い様か……」
呟く顔にも傷はあるし、白衣のあちこちに血はついてるし。
包帯は巻いてるし、髪も所々くすんだ赤が付着している。
何をやったのかはさておいて、ふらつく足取りから
まあ"それなりに"やりあったのは確実だ。
一応、見知った顔を幾つか見つける度、
両手に嵌められた手錠ごとふりふり手を振った。
#収容所
カンターミネ
「よう、おしゃべり。
ここでは流石にちょっとは静かか?」
手をひらり、声をかける。
痛々しい様子がなかったら、肩でも組んでバンバン叩いていそうな勢いだったが、
流石に遠慮したのか距離が遠い。
#収容所
黒眼鏡
「カフェのマスターは元気そうだな……羨ましいぜ。
散々喋ったんで疲れたんだよ、はーあ……」
手を振り返し、のそのそ寄る。いや、距離は遠いけど。
だってバンバンされたら今流石にキツいし。
「嫁入り前の乙女にこんな傷負わせる奴いるか?
信じられねえよなあぁ〜……」
#収容所
カンターミネ
「人と話すのが仕事だからな。
お前ほどには舌が回らんが」
寄ってきたなら、座れ座れと壁際を指す。
幾分か距離を保ったまま、自分はつま先立ちでうずくまった。
「あーあー痛そう。
もうちょいちゃんと手当しろよな〜?
あー、まあいいんじゃねえか、嫁に行く予定もないだろ暫く」
ノンデリだ…。
#収容所
黒眼鏡
「よく言うなホントに」
主に現状を指している。
座り込むのにものそのそ、一旦壁に背中をつけてから
ずりずりと降りていくようなザマだ。
「俺だって手当したいんだけどねちゃんと。
死ぬ程痛いし。マジで。また腹立ってきたな。
じゃああんたは結婚式には呼んでやらん。」
痛くても軽口を言ってないと死ぬ病にかかっているのかも。
げほ、と咳き込んではいってえ、と呻いている……。
#収容所
黒眼鏡
「飯は今日から食べてるけど……いったいって」
雑な撫で方がなんだか懐かしくて鼻の奥がつんとした。
そういう気遣いもいつもと変わらないから、誤魔化すみたいにやっぱり睨み付けた。
とはいえその手を払い除けたりはしない。
「四階って……」
そして嫌味に対し事実の一つが返ってきたのならじっとりとした視線を向け……
向けていたら、問いに対しての答えに最後、返る。
作られた力こぶに、満面の笑みに。
普段出さない声が出た。
「あ〜〜〜〜〜」
それだけかよ、ああでも。
「……もぉ〜〜〜〜〜〜」
なんだ、それだけか。
[1/2]
#収容所
「……」
頬に平手と殴られた痕がある男が気怠そうに声の方を眺める。
あのおっさんと美女がいる空間には行きたくねえなと思って通り過ぎた。
#収容所
黒眼鏡
「…………つかれた」
「にいさん
のお陰で、散々だ」
本人に会って。
そうなのだとようやっとの確信を得て。
それでもまだ貴方を変わらず呼べた。
だからそういうことだった。
隣に腰を落とす。
畜生、と零しながらもそちらに身体を傾けた。
つかれたなあ、なんでそんなに元気そうなんだか。
[2/2]
#収容所
カンターミネ
「そう褒めるなよ」
ワハハ、と明るい笑い。収容所で上げるタイプの笑い声ではない。
その様子を見ればまた、あーあー、なんて声。
「ここでひん剥いてよければ手当してやるがね、
俺も紳士だから淑女に対する配慮ってもんを持っているからな。
氷だけでも貰って来てやろうか?
ハァ〜、冷たい部下を持って俺は悲しいよ。
部下の結婚式で泣いてやるのが俺の夢だったのに」
軽口をお手玉みたいに飛ばしながら、
それでもあなたが咳き込むと静かに言葉を切って、落ち着くのを待つ。
「寝転んだ方がよければ、シーツひっぺがしてくるぞ」
#収容所
収容所の中、どこかで見かけた白衣に気が付けば。
条件反射で「ぅゎ」の声が出たものの、怪我が酷いと理解し大丈夫かな……の心配に切り替わる。
とはいえすごい喋ってるし手も振ってるし大丈夫そうか……?
遠巻きに眺めている。
#収容所
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