────さあ、こちらも幕を上げよう。
踊り子の少年の華々しい舞台が幕を引き、
観客は興奮冷めやらぬ様子で口々に鮮烈なショウを讃え
そして、目当てのものを観終わった者から捌けて行く。
それから、次なるお目当てを求めて、観客が減る事など無い。
それらの様子と、今一時の休息の後。
そして再び幕は上がる。
脚付きの台に乗せられた、成人一人よりやや背丈の高い箱
それを運ぶ従業員達を付き従えて、
"怠惰"に身を滅ぼした者が今一度舞台へと上がる。
その装いは一転して"裏切者"であった時と同じ、
白を基調とした上等なスーツに目元だけを覆う簡素な仮面。
けれど誰の趣向か、依然としてその首元には
何かに、或いは何もかもへ隷属を示す首輪が存在を主張している。
「皆様、大変お待たせ致しました
これより演目は従業員テンガンの研修へと移り……
進行は不肖この『ラサルハグ』が務めさせて頂きます」
恭しく一礼をして、箱の傍の従業員へと合図を送る。
「特別協賛者のジェラルド様に、どうか盛大な拍手を。」
そして、破裂するような拍手、腹の底に響くような喝采と共に
パンドラの箱は開かれ、概観悍ましくも蠢く肉塊のような
粘液滴る触手の塊で形作られた生物が姿を顕にした。