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【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―コンペ会場・舞台― ―演奏を終えて― [ 演奏を終え。>>2:235 シャンデリアの明かりが付き。 自分達の作った舞台空間は、 現実世界の手に引き渡される。 呆然とした聴衆達の表情が、 舞台のこちら側からでも分かった。 ――そうか。まぁ予想通りの反応だ。 俺らの音楽は万人に受け入れ られるものではないからな。 しかし、次の瞬間湧き起こったのは 拍手と熱狂だった。>>2:256 むろん、中には予想通りの反応を する者達もいたが。>>2:256 『ひとまず、"観客"の心は掴んだようだな。』 全員、緊張が緩んだようにほっと息を吐き。 そして観客達に向かって手を振り、 拍手に応じた。 ] (0) 2020/09/27(Sun) 3:37:46 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 熱狂する観衆の中に 一人、見覚えのある背格好。 スーツで正装していても>>2:227 すらりとした長身と、少年のような短い髪 を、忘れるはずもなく。 工房で出会った彼女は、 見に来てくれていたようだった。>>2:172 拳を振り上げ快哉を叫ぶ若者達に混じり>>2:256 ぽつりと佇む、その姿は なんとなしか、震えているようだ。>>2:268] (1) 2020/09/27(Sun) 3:41:33 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 彼女は泣いていた。 目指したいものを諦めざるを得なかったと 彼女は話していた。 決められた道を歩き…しかし、その先で 自由を知れたと言っていた。>>2:85 国も、事情も、違えど。 親の敷いたレールを不本意に歩かされた という境遇は同じ。 その彼女に、俺らが表現した"解放の物語"は、 きちんと届いただろうか?>>2:235 音への感性が研ぎ澄まされた彼女の、 琴線に触れてくれたのだろうか? ――昨夜の別れ際に、 自分が心に抱いた意思は>>2:196 達せられただろうか? ] (2) 2020/09/27(Sun) 3:42:06 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 状況が許せばすぐにでも 彼女の元に行って話をしたい。 後になってしまえば彼女は涙を拭いて、 いつもの外連味のない口調で 素知らぬふりをしてくるだろうから。 (しかし、今は――。 ) 止むことのない観衆達の歓声に呑まれ。 遠く離れたステージの上から、 涙を流す彼女を見つめるしかなかった。]* (3) 2020/09/27(Sun) 3:42:32 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a0) 2020/09/27(Sun) 3:47:38 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―コンペ会場・舞台― [ 紫のドレスを纏う審査員から、 届けられた言葉。 それは、その人物にとって、 最上級の、賛辞の言葉だったそうだ。>>2:259 …たった40分の舞台だったはずだ。 それなのに彼女の指摘は、 自分達の武器を、メッセージを、 正確に捉え、言葉にして投げかけてくる。 『計算ずくなのね?』と指摘された 不協和音の件も、完全に見抜かれており。>>2:258 日程変更の連絡が入った時点で 会場の見取り図を手に入れ、 ホール内の反響もすべて計測した結果、 音響設備の配置を検討していたという、>>2:210 そんな内なる努力も、 観客達のひしめく中で あっという間につまびらかにされてゆく。] (4) 2020/09/27(Sun) 4:48:28 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 中でも、 最後に演奏した4曲目を一聴して、 『荒削りで即興性』と評価したのには>>2:260 メンバー全員、"ぞくり"とした。 そう、この最後の曲は一夜で仕上げた、 いわば未完成品だ。>>2:234 そして、彼女が続けて言い放った言葉―― 『……この曲は、大事にしておきなさい。 それだけじゃなく あなた達を構成した 音楽、経験、感情──その他全て。 』>>2:260 ] ――!! (5) 2020/09/27(Sun) 4:53:01 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 惜しみなく降り注ぐ賛辞の言葉に、 ――この国の審査員に認められた事実に、 声にならない、溢れる思いを抱きながらも。 ――何故分かった? この疑問が、溢れて決壊しそうになる心に 一筋の風を吹かすように、 冷静な思考を保ち続けさせる。 最後の4曲目に、エリクソン自身の 経験が、感情が。 全てが。込められていることを。 彼女はさも当然のように、 看破していたのだ。 ] (6) 2020/09/27(Sun) 4:54:23 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 彼女にとってこの類の楽曲が、 馴染みのあるものだったとは思えない。 (もしや…あいつが?) 一つの可能性に思い当たり、 自分の周りをかぎ回っていたらしい 第三王子のほうを見る。 彼は苦虫を噛み潰したような顔をして リジィ第二王子と6人組を睨めつけていたが エリクソンの視線に気づくと ぷいとそっぽを向いて、 ホールを出て行った。 それに…本番前に見た彼女の、 全てのものを公正に評価するような 堂々たる目つき。>>2:207 あのこすい王子と結託してる筈もあるまい。 そして…確信する。 ] (7) 2020/09/27(Sun) 4:55:19 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ――彼女は、楽曲を一度聴くだけで、 作曲者や奏者の心境を読むことが出来るのか? 『あなたたちは一体何者なの?』 と妖艶に口角を上げる、>>2:257 この人物こそ。 只者じゃないのは… あんた の方だ。] (8) 2020/09/27(Sun) 4:56:02 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 自分らは、すでに、最大級の賛辞を得た。 一応、受賞者発表もあるが それはそれとして。 他の審査員の仰け反るような反応から、 彼女がここまでの賛辞を与えることが 極めて希少なのだろうということを 物語っている。 しかし…その喜びと同じくらい、 メイレン・シュレグマーというその人物が 持つ、もはや 『透視能力』 とも言えるほどの音楽に対する造詣の深遠さを見て、 世界のあまりの広さに打ち震えた。 この人物の演奏を、聴いてみたい――。 ]* (9) 2020/09/27(Sun) 4:57:39 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a1) 2020/09/27(Sun) 4:59:58 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ひとつの大舞台を終え。 新たに目前に現れた、その人に向かって 彼はマイクを拾い上げ、語りかける。] メイレン・シュレグマー。 あんたの名前は覚えた。 [ 会場内がどよめく。 仮にも爵位を持つ者への不敬とでも言う気か? そんなもの、関係ない。] 俺らが裏で、 ホールの反響を事前に計算しているのを、 見破ったのはあんたが初めてだ。 今度、あんたの演奏も 俺らに聴かせてくれ。 [ そう、言い放った。 自国に帰る船は、2日後に迫っている。 それ迄にこの人物の"正体"を暴きたい ―自分らが彼女にそうされたように― との思いで、そう言い放った。]* (10) 2020/09/27(Sun) 5:24:02 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a2) 2020/09/27(Sun) 5:27:16 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―コンペ会場・舞台― [ 自分達の、内なる戦略を。 楽曲に込めた、秘めたる感情の機微を。 ものの見事に看破した、一人の女。 新たに出現した強者に、 「あんたのことも見抜いてやるぞ」と 叩きつけた、挑発。>>10 その挑発に、 ――『へぇ、光栄ね。』 妖艶な笑みを一片たりとも崩さず 応じる彼女。>>30 服装からして階級はそれなりの人間だろう。 本来呼び捨てなどもってのほか、 まして扇動まがいのことを言うなど 相手によってはその場で切り捨てられる こともあろう。 ] (61) 2020/09/28(Mon) 1:19:20 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ しかし、彼は直感していた。 彼女は 才能 地位も、権力も関心は二の次だろうと。 ただただ音楽を、その才を持つ者を 公正な目で以て評価し、そして、 ───投げつけた挑戦に、 正面から、受けて立ってくれるだろうと。] (62) 2020/09/28(Mon) 1:20:16 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 事実、彼女はその通りの考えを 持っていたようだ。 宮廷楽士として経歴を重ねていく中で、 憧憬され・頭を垂れられることはあれど 対等な態度で臨まれることが 無くなって久しい彼女には、 実情はどうあれ、態度の上では いっぱしの口を聞いた彼に むしろ悦びを抱いていたようだ。>>32>>33 ] [ …だが、彼はその内心など知るよしもない。 彼女の飄々とした態度を見て、 余計に闘志は燃えさかり、 武者震いのような興奮を覚えたのだから。] (63) 2020/09/28(Mon) 1:21:43 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ そして……。 自身も同様、 ホールの反響を事前に計算しているのだと 彼女は打ち明けた。>>31 彼女の楽器が平台、ということはまだ知らない。 しかし推察するに、 電子ではない、"生の"楽器。 電子楽器ならば、 数百のツマミと、装置の向きなどで 物理的な調整が可能だ。 しかし…… 会場に合わせて 生楽器 の演奏を調整するなど並の所業ではないのではないか? ] (64) 2020/09/28(Mon) 1:22:57 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン (65) 2020/09/28(Mon) 1:27:30 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン (───自分の ”計算” を、会場を変えて比べてみろ、ということか。) [ ようやく知った平台奏者という事実。 披露するのは新曲だという事実。 言葉の裏に込められた、『お前達の挑戦に乗った』 というメッセージを噛みしめながら、] あぁ、必ず、『どちらの会場も』見に行こう。 [ 遠く離れた彼女を真っ直ぐに射貫くように、 そう告げた。 その背後で審査員達の苦笑する声が 聞こえた気がしたが、>>36 もう彼の耳には届かなかった。]* (66) 2020/09/28(Mon) 1:28:34 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 審査員長の宣言が会場内に響き渡り、 2日間にわたるコンペは、 終わりを迎える。 審査員達からの裏方増員の申し出を ありがたく受け取りながら、>>37 出番を終えた6人組も撤収作業に取りかかった。 これから審査員同士で合議が行われ 結果が発表されるようだ。 メイレン・シュレグマーとの一件で すっかり忘れていたが、 場内アナウンスを聞いてようやく この旅の目的が音楽祭受賞だったことを 思い出す。>>37 ] (67) 2020/09/28(Mon) 2:15:29 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 浮き立つような熱が冷めぬまま、 足下に広げた踏み板・位相変換器の類いを がさがさと片付けていると、 ] 『ちょっと、お前さ…』 [ やや強めに肩を小突かれる。 洋琴担当のノードだ。] 『俺らの船、明後日の夜出発だろ? 午後には港で荷物積んでなきゃならんのだが。 それなのにお前、あんな大勢の前で メイレン・シュレグマーの演奏聞きにいくとか 宣言しやがって。 どうしてくれるんだよ。』 (68) 2020/09/28(Mon) 2:16:09 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン あっ……。 [ 帰国の予定など、 彼女の、挑戦的な誘いを聞いてから>>34 忘却の彼方に消えていた。 自分の愚かさを隠すように、 そっぽを向いて答える。 ] 別にいいだろ。遅い時間の便に変えるか、 出航自体を遅らせるか、 幾らでも方法あるじゃねーか。* (69) 2020/09/28(Mon) 2:18:37 |
鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a5) 2020/09/28(Mon) 2:45:11 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ そして、もし、そのすれ違いに彼女が 気づこうものなら、 彼女自身にには全く非がないのにも関わらず 「全ての責任は自分にある」として、 自費で損失補填を名乗り出るところだった ようだ。>>76 一方、かくいうエリクソン自身は、 新たな強者、メイレン・シュレグマーから 言外に挑戦の引き受けを言い渡されたのだ と信じて疑わず、 若さゆえなのかただの阿呆なのか、 興奮もしばらく冷めることのない様子。 どうやらこのすれ違いは 解消されることもないまま、 明日の演奏会を迎えることになりそうである。]* (115) 2020/09/28(Mon) 23:32:58 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―表彰式・宮廷 舞踏用大ホール― [ コンペ2日目が終了した、その次の日。 2日目と同じ会場、舞踏用大ホールを使って 表彰式が行われた。 場内は、前2日のコンペ本番にも劣らぬ 盛況振り。 さらにこの国の貴族達や、 審査員以外の宮廷楽士の顔ぶれもあり、>>78 この発表が、この国にきわめて 大きな影響を与えるのだということを 一目で窺い知れるほどだった。 ] (116) 2020/09/29(Tue) 0:55:01 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 6人組はじめ、コンペ参加者は、 審査員たちと向き合う形で、 区画された空間内に、 わらわらと集まっている。 遠目には、 コンペ前日に橋の上で出会い そしてコンペ本番では 奇跡のような歌声を披露し>>1:253 観客たちを熱狂の渦に巻き込んだ あの、教会の娘の姿もあっただろうか。 声をかけようか─── と一歩踏み出そうとしたものの、 ちょうどその時、 宮廷楽長による表彰式開始の宣言 が場内に響き渡る。>>79 あわてて足を引っ込め 舞台のほうに向きなおった。 ] (117) 2020/09/29(Tue) 0:55:20 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン (118) 2020/09/29(Tue) 0:55:53 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ……もう既に、 5位から1位までの全ての受賞者が 発表されたのだろうか。 参列者達が一斉に 手を叩いているのが見える。 彼らの一部は、 どうやら自分たちの方を向いて 拍手を送っている気がする。 うずくまる者の姿や>>83 肩を落とし去って行く者の姿も その視界は捉え。 ] (120) 2020/09/29(Tue) 1:01:22 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン (121) 2020/09/29(Tue) 1:03:01 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン───4位。 ───4位、だった…。 [ もとより宮廷楽士の肩書きが 欲しかったわけじゃなかった。 それでも。 手応えは、あった。 演奏も。観る者の反応も。 かの平台奏者との掛け合いで、 自分が戦う場所はもうこのコンペじゃない、 メイレン・シュレグマーはじめ その道のプロ達と渡り合っていくのだと そう、確信していた。 ] (122) 2020/09/29(Tue) 1:03:44 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 突きつけられた4位という現実に。 さながら、丁寧に積み上げたモニュメントが 一閃の雷で破壊されたように… 昨夜から、まるで夢見のように 抱いていた未来の展望が、 がらがらと音を立てて崩れ落ちていく。] (123) 2020/09/29(Tue) 1:05:09 |
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