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【人】 アクスル[けれど、ここではダメだ。 こんな場所では完璧じゃない。 彼の言う通り場所を移ってから――、 それと、用事を済ませてからだ。] ……、少しだけ我慢してね [公の場に相応しくない色を帯びた瞳を サングラスで覆った。 我慢、をするのは果たしてどちらだろう。] (42) 2020/10/10(Sat) 17:17:35 |
【人】 アクスル[1時間と2分の距離。 排気ガスを吐き出さない車が走った。 自分で運転を出来たなら 車内で少しくらい触れ合えたのかも知れないけど 運転の免許は取ったきり 身分証明書としてしか役に立っていない……。 今日を彼の命日にするのは大問題なので 普段通り運転手を頼んであった。 せめてと、車内では後部座席で並んで座り 黒い蝶柄の手袋を外した素手で彼の手を握っていた。 ……かえって、もっと触れて欲しくなったけれど 離すことなんかできなかった。] (44) 2020/10/10(Sat) 18:39:45 |
【人】 アクスル[窓の外の風景は都会的なものから 自然が目立つものへと変化していき 軈て車は、森の中に聳える古城の門を潜り 敷地内で停止した。 会社も家も、先代のものだ。 気に入っているけれど、自分は引き継いだだけ。] (45) 2020/10/10(Sat) 18:39:51 |
【人】 アクスル[治人が嫌がらないようなら 中から出てきた使用人達に荷物を託してから 繋いだままの手を引いていく。 案内する先は、地下室だ。] 逢わせたい人が居るって言ったでしょう ……これまで誰も紹介したことがないから 少し緊張するなぁ…… [暗い階段を降り、 静脈、虹彩、厳重な認証を経て扉が開く。 部屋の中からは冷気と、強い花の芳香が漏れ出てて] (46) 2020/10/10(Sat) 18:40:07 |
【人】 アクスル[二つある寝台のうち一つの上に ドレスを着て横たわる姿がある。 僕と同じ金色の髪は抜け落ちたものを集めて ウィッグにして被せたものだ。 ぴくりとも動かぬ肌は青白い。] ……彼女が僕の母だよ [見かけの美しさにのみ囚われて生き、 そして息子の手で永遠を得た哀しき女性。 空いている方の寝台に眠ることは 僕自身の願いではなかった……、彼女の願いだ。 そしてもう僕は、望んでいない。] (47) 2020/10/10(Sat) 18:41:02 |
【人】 アクスル……母さん、紹介するよ 日本から来てくれたHerr 在原治人 ......Er ist mir lieb und teuer. [大切な人だと伝える仕草には、照れが混じった。 母の理想とは異なる道を選んだ僕を、 どうか、許して欲しい。**] (48) 2020/10/10(Sat) 18:41:19 |
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