104 【R18G】異能遣い達の体育祭前!【身内】
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今日も自転車を漕いだ。息が白い。表情は、希望に溢れている。
朝方少しだけ早く、しかし普段通りに、
学校から歩いてすぐ近くで灰色の高級車が停まった。
「じゃあ、また夕方に迎え来て。今日もありがと、御爺」
前日と同じ車から降りた白髪の青年は、
もう一人降りるのを待ってからドアを閉めて、
走り去っていく車を軽く見送る。
ピンポンパンポーン
『おはようございます 朝の放送です
昨日は機材ミスにより、無音の放送だったみたいで
不安にさせてしまった方は申し訳ありません
それはさておき、今日はいくらか静かな朝になりました
休みがちな生徒も増えてきているようです
風邪や流行り病などに、十分に気を付けるよう
耳にタコだと思いますが、……無理をしないように
体育祭当日を盛り上げていきましょう
それでは朝のHRに遅刻しないように
今日も一日頑張りましょう』
ピンポンパンポーン
| >>+0 静 同じ様に車から降りて来たのは、何処にでも居る男だ。 「ありがとうございました」なんて、常よりは幾分か丁寧に 運転手に礼を言って、走り去る車を見送った。 「すっかりお世話になっちまいましたねぇ」 そう、傍らの透静に笑い掛けた。 (1) 2021/11/04(Thu) 21:25:09 |
「ん。広い家の、活用……」
ちょっと誇らしげにしている。
「練習始まるまで、ちょっと一人で散歩、する。
また、後で連絡、してもいい?」
次いで、首を傾げて貴方の方を見た。
「…………」
今日も人目を避けて登校しようとした。
……なぜか周囲の人が少ない気がして、普通に登校する。
少し、落ち着かない。
| >>+2 透 「ええ、勿論でやがりますよ。 それじゃあ、また後で」 「ばいび」と、いつかのあなたの真似をして。 鏡沼は、登校する生徒達に溶け込んでいった。 (8) 2021/11/04(Thu) 21:47:01 |
| >>2 白入先輩 何処にでも居る男は、いつもの様に突然現れて あなたをぎゅっとハグするだろう。 「あー、今日もモフモフでやがりますねぇ」 (9) 2021/11/04(Thu) 21:50:43 |
朝方の車送迎からほんの少しだけ経ち。
登校する人が増えてくる頃、
廊下でぼんやりしている青年に、誰かが話しかけている。
「 ?
……うん、楽しかった」
「うん、そう。 ……これ、何? 栄養ドリンク?」
無記名のラベルが貼られた小瓶を手渡され、不思議そうに首を傾げた。
中にあるのは無色透明の液体のようにも見える。
「応援? 嬉しい。友達に分けてもいい? ……ん、わかった」
嬉しそうに受け取りつつ、
練習行く、と相手に声をかけてどこかへと歩いていく。
誰かに分けるかもしれないし、そのまま持っているかもしれないが。
"それ"を飲んで部活に向かうまでそう時間はかからない。
――ぱしゃん、こぽ、こぽ、
プールへ着いて水着を纏えば、白く細いシルエットが水中へと沈む。
壁を蹴ると普段よりももっと長く、速く身体が動き、
その不可思議さに無言で首を傾げた。
ちらほらと泳いでいる他人の影を眺めながら、
僅かな息苦しさに呼吸をしようと口を開く。
がぽり、溜め込んでいた吐息だけが吐き出される。
『あれ」
息が吸えない。声が出ている。
「え、」
当たり前の事が出来ない。脚から細かな泡が出始める。
「くる、し、」
呼吸をしようと口を開けど、只々何かが出るだけで一向に肺へ入らない。
本能で身体が勝手に動いて、
知識のない頭は青年の頭部を水面から飛び出させた。
大きく咳き込み深呼吸を繰り返す異様さ、
明らかに溺れたような様子
に周囲の視線が向く。
「ッげほ、は、 ……なん、で……」
未だ水に入ったままの両足からは小さな泡が出続け、
漸くの呼吸に胸が大きく動き続ける。
身体が消えたりはしないけれど、泡になったりはしないけれども。
絵本の最後、それが人魚としては在れなかったように。
人魚姫が水中に居られない、ただの人間に成ったことは、
もしかすると一つの噂程度にはなるのかもしれない。
| (a6) 2021/11/04(Thu) 22:29:15 |
監視の目の一つが手がかりをつかんだ。かれこれ数日続けていた調査がやっと実を結ぶ達成感、後輩の身を案じる気持ち。募る疲労、貧血。万全とはいいがたい状況だった。そんな状況で、かかった罠を確認しに行けば──。
罠にかかるのは己の方だ。
背後から抑え込まれ、強引に薬を押し込まれる。意識は深い闇におちてゆく。
まだ朝のHRがはじまる前だろうか。
意識は引き戻される。頭の中をかきまわされるような感覚によって。記憶が、光景が、走馬灯のように巡って行く。昨日のことのように思い返される。頭が痛い。けれど、それ以上に、目が痛い。
瞼が重い。開かない、暗い。ここはどこ──。
立ち上がることもままならないほどの混迷の中。手探りで様子を探ってみれば、音を立てて金属製の何かが落ちる音。下手に動かないほうがよさそうだ。
そうしてただ静かに光が戻るのを待つ。NowLoading……。
Connection Succeeded
瞳を開けばそこは薄暗い、使われてない倉庫のようだ。女子をこんなところに閉じ込める所業には憤慨を覚えたが。直ぐにそれどころではないことに気が付いた。
視界が歪む。窓が、扉が、
穴と認識できる、視界内の全てが
ありとあらゆる場所とLinkする。先週行ったショッピングモール、今年の夏の海、子供のころに行った遊園地、幼少期を過ごした小学校。縁日のあった神社。
ポータルを生成する。
まずい、目を覆えない、閉じられない……。人通りこそ少なかったが、異様な光景に興味を示す生徒がいない保証はない。
「やめて!! 戻ってこられなくなる!!」
そう叫んで、倉庫の中に逃げ込もうとして、扉を開ければそこは数年前に立ち寄ったケーキ屋さん。
どこにも行かないように、どこにもいかせないように、走り出した。
| >>+6 静 あなたが泳げなくなったと聞き、プールへと向かう。 まだ、其処に居るだろうか。 居なければ、探す手段は幾らもあるけれど。 例えば、あなたが「“鏡沼創”に傍に居て欲しい」と願えば それだけで、男は其処に現れる。 (15) 2021/11/04(Thu) 23:00:53 |
| >>14 柏倉先輩 忙殺されるあなたの傍に、いつもの様にその姿は在った。 文字通り、拾う目や耳など、幾らでもありそうな男が 当たり前の様に、生徒会会計として其処に居る。 しかし、常にいつも通りである筈のその男は。 纏う雰囲気が、何処となく、いつもと異なっていた。 「どうかしちまいました? 浮かねぇ顔してやがりますが。 流石の柏倉先輩も、過労気味になっちまってます?」 口調も表情も、いつも通りである筈なのに。 (17) 2021/11/04(Thu) 23:02:49 |
「おー、なんか大変そうだねぇ」
朝の放送を終えて校舎内を歩けば、憂鬱そうな同学年。
「猫の手も借りたいってんなら何かしら手伝うよ」
適当に。誰かしらに向けて。
登校してすぐに、友達から栄養ドリンクのお裾分けを貰った。
“それ”が何なのか、まだ気づいていない。気づくのはもう少し後のことだ。
| >>+10 笹原 「あー……こりゃまた面白い事になっちまってますねぇ」 何処にでも居る男は、それこそ何処にでも居るので。 何処に通じているかもわからない、開いたままの扉を 実に悠々と潜って行こうとして、消えた。 そして即座に、少し離れた場所に現れた。 まるで、残機製のゲームの如き挙動である。 「……そうじゃねぇかと思ってましたが、これ僕が通るには 一人じゃ出来ねぇですねぇ」 (19) 2021/11/04(Thu) 23:11:39 |
鏡沼
息継ぎを一度も経験していない青年は、この状態ではまともに泳げない。
驚きはしたものの、大人しくプールサイドの隅に腰掛け、
他人の邪魔にならなさそうな場所で足だけ水に入れたりしつつ、
ぼうと空を眺めている。
男子の方のプールサイドが騒がしいことに首をかしげた。
| >>+12 静 あなたの、泡が上る足に視線を落とす。 「…………それ、痛かったりはしねぇんです? 逆に、感覚がねぇですって事は?」 表情こそ貼り付けた様な笑みだが。 纏う空気は、何処か重い。 人魚から、海を奪った者が居る。 その事実が、重く圧し掛かる。 この人魚が、今以上を求める筈も無いと知っているからこそ。 騙し討ちしか有り得ない。 (21) 2021/11/04(Thu) 23:26:05 |
「……どうしたんだろ」
そこかしこが静かで、喧しい。
| >>20 柏倉先輩 「ええ。もう何が無理で無理じゃねぇか、わっかんねぇですよ」 それは本音の欠片か。 そもそも、この男に本音なんて在ったのか。 「早く終わってくれやがりませんかねぇ、こんな状況。 でねぇと、僕も何しちまうかわかんねぇですよ」 声の調子は、いつもの軽口だ。 内容が少し、不穏なだけ。 (22) 2021/11/04(Thu) 23:31:36 |
「絵莉……?」
ふと、窓を見る。
繋がるはずのない居場所に歪曲するように繋がる場所を見る。
それがあり得ない光景で、どこからか繋いできたようなものだから……見知った人の顔が浮かんだ。
鏡沼
「……ん? うん、平気。
しゅわしゅわ、炭酸に漬けてるみたい、擽ったい」
特に問題はなさそう。
見た目の変化も水中で小さな泡が出る程度で、
大きく何かが変わったかといえば、水中で呼吸ができない辺りか。人間としては当然ではあるのだが。
「今日は、泳げなさそう。
他の人みたいに、息継ぎする方法、知らないから」
「授業始まるまで、やること、なくなった……」
降って湧いた空き時間に、困り顔になった。しょも……
発熱で欠席ということになっている。自分で学校へそう連絡した。
「…………」
今日も僕は早朝から登校していた。
教室で本を読みながら、朝の放送を聞くと窓の外を見る。
「……」
気のせいか、騒がしい。
3日連続、身の回りで騒動があったんだから流石に何となく想像もつく。
嘆息した僕は、日常って儚いな……なんて柄にもないことを思っていた。
| >>+15 静 「大事ねぇってんなら、構わねぇんですが」 ────何が? 「……なら、取り敢えず髪でも乾かしてどっか行きましょうか? 今、僕すげぇドライヤーしてぇ気分でやがりますんで。 させてもらって構わねぇです?」 (24) 2021/11/04(Thu) 23:46:35 |
鏡沼
「……? うん、わかった」
プールを見て少し物足りなさそうにするものの、
泳げない以上長居はできないと思ったのか、素直に更衣室へ向かった。
そして"彼の持つ、火の異能"をそっくりそのまま、真似てみせた。
| >>25 柏倉先輩 「利用できるもの……でやがりますか。 まるで、ご自分がそうみてぇな事言うじゃねぇですか」 いつも通りに、鏡沼は微笑んで──── 否。 これは、無表情だ。 微笑みの形の無表情。 「根掘り葉掘り聴取を受けてぇだなんて、そんな気持ちは とんとねぇですよ。ただ、そうでやがりますねぇ」 ▼ (26) 2021/11/05(Fri) 0:05:34 |
| >>25 柏倉先輩 「利用って、信頼は兎も角、信用は置ける間柄でねぇと 成立しねぇと思いやがりません? 頼った先に引っ繰り返されんのも、利用しようとした先に 寝首掻かれんのも、僕は 真っ平御免でやがりますよ 」 其処に在るのは、猜疑心と怒りだ。 陥れられるモンならやってみやがれ と言わんばかりの敵愾心。 「何かに、誰かに頼りゃ“上手くやれる”だなんて、 随分とまあ胡散臭せぇ話じゃねぇですか。 世の中、そんなに甘めぇ訳ねぇでしょうが」 (27) 2021/11/05(Fri) 0:06:27 |
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