205 【身内】いちごの国の三月うさぎ
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[ たった一晩では、互いの好きなこと
好きなふれあい方、全てを知るには至れない。
一つずつ、欠片をつなぎ合わせるように、
知っていく中のひとつ。
恥ずかしそうにしながらも、素直な反応を
示されれば応えるように、笑って。
涙混じりに可愛らしく詰ってくることすら、
自分に届く頃には悦びにかわる。
熱を与える与えられるからという以上に、
よく、顔を赤くすることも、今日知れたこと。
大胆な物言いをするくせに、
すぐに照れて顔を背けちゃうとこも。 ]
[ 淡白どころか、
自分とおなじくらい、欲張りなところも。
愛しくて愛しくて。
口から零れ落ちる言葉くらいは許して欲しい。
熱を上げさせるようなつもりもなく、ただ
知った事を、伝えたいだけなので。
引き抜くときにもまた、艶めかしい声を
上げて。さみしげに、こぽ、と泡だって
白くなったローションをとろりと、こぼして。
唇をなぞり、物憂げに瞳を伏せられたら
喉が鳴りそうになるのを、ぐ、と堪えた。
今日のところはこれ以上、無体を働くような
ことをするつもりはないので。
体への負担も相応だろう、当然。 ]
[ それでも、痛みを苦しみを散らすためとは
いえ、好き放題熱を覚えさせられた、
いとしいからだを、そのままにしては
おけないから。
招き入れて、嬲るように、舌を絡ませる。
目が細まったら、先端をちう、と吸い上げて ]
そんな寂しいこと言わないで
気持ち良くなって?
[ 手と口とで、ゆるゆると快楽を与えながら。
さみしげに、ひくつく蕾にもそっと指を挿し入れた。
一人で試した時には感じられなかったものを
感じ取れるようになったなら、いずれ
ここでしか得られないものも、
拾えるようになるかもしれない。
そうしたらまた、 ]
ン………、
[ 君も知らない、君の姿を、見られるような気がして。 ]
[ 二度も達して、どこもかしこも
敏感になってしまった体、
追い立てるようにしなくても、
勃ち上がり、熱を蓄えていく塊、
待っていたと言わんばかりに、
指を締め付ける、体内。 ]
ふ、……ン、 いつでも、
らして、 ね
[ 口の中に収めたままでは
呂律の回らないような言葉しか
出せないけれど、伝わればそれでいい。
なにかしら、応えるような反応があれば
こりこりと中を引っ掻くようにしながら
奥まで咥え込んで、
添えるだけだった手も、
愛おしげに、君を撫でた。* ]
[裏筋に沿うように舌を這わされて、先端まで。
弱い部分を辿るように、じっくりと。
一番反応があった先端を窄められた口先で吸い上げられて、
腰が思わず浮いて、押し付けるみたいに反ってしまう。]
ン、ンぅッ……、は、ぁッ……
[赤く染まっていく顔を腕で覆い隠して、
唇を噛んで、声を押し殺そうとしても堪えきれない程。
生暖かい感触がダイレクトに伝わって、つらい。
指で擦り上げられた箇所を、丁寧に吸い上げられて、
気持ち良さにぐらぐらと思考回路を崩されながら。
墜ちていい、と促す声に甘えそうになる。]
[口淫だけじゃなく、指が寂しいと訴える後孔に、
ぬぷ、と押し入ってくれば。]
うぁ、ッ……、
く、
ぅンッ……
[か細い犬の啼き声みたいに喘ぎ洩らして、ふると身体を震わせた。
今日だけで何度も埋められて、拡げられた場所が、
悦ぶみたいに指を受け入れて、飲み込んでいく。
伏せた瞳にまた涙が浮かび上がる。
痛い、とは違う、身体を震わせるような快感を伴って。
後孔に指を差し込みながら、下生えの下で揺れる頭。
ぐちゅりと音を立て、淫猥な音を響かせて。
快感に溺れさせようと、甘く誘い立てる。]
[勃ち上がったモノを喉奥で擦られて、血が集まる。
顔を隠す腕とは、反対の手を伸ばして。
腰元を擽る頭に触れて、くしゃりと彼の髪を掻き乱す。]
[喉奥で挟まれたら、咥え込んだ後ろが窄まって、
長い指をあまく締め付けるのに。
もっと、と探るみたいにその指を曲げられて、
かり、と膨らんだ部分を引っ掻かれたら仰け反って。
悦い、と知らせるみたいにびくん、と身体が跳ねる。
滲む視界で、様子を窺う視線と目が合えば、
ぞく、とまたその目に魅せられて。蕩けて。]
[かり、と口元に当てた自身の指を食む。
食んでない、と。淫らに求めてしまいそうで。
ぶる、と達する前触れが襲って、
髪を撫ぜる手に力が籠もる。]
ん、
ぁ、離、してッ……、
ぁッ、……も、ぅ、出そ、ッ、
[睫毛を濡らして、もう何度目か分からない否定を口にして。
緩く首を振っても、射精を促すみたいに。
腰を撫でる手が、窄められる口が、引っ掻く指が。
堪らなくなって、身を起こそうとした時。
中の指が、こり、と曲げられて。]
[ 素直にこうして、ああしてと
ねだってくれたらいいのに。
見たいだけだろうと言われれば、そうだけれど。
快楽に弱いところがあるのは、
男として諸手を挙げて、歓迎したいところ。
先程から時々、逃げるように、
否定の言葉を言い掛けるくせに、
もっとってねだるみたいに、
押し付けてくれるのが愛おしい。
その刺激に慣れていないのか
――それとも、相手が俺だからか。
]
[ 赤く染まった顔を覆い隠しても、
唇を噛んで声を逃がそうとしても、
抗いきれずに、隠しきれずに、
ちらりと見える赤が、声が。
震える体が、望んでくれると
思わせてくれるから。
誘われるままに――。 ]
[ くしゃりと髪を混ぜる手と
あまく締め付ける蕾、
だめ、と紡ぎながら、
悦いとはねる体。
そのどちらも、愛おしいから、 ]
ン、……ァ ん、 いいよ
[ 涙ながらの離して、
という願いは聞き届けられそうにない。
蕩け切った目をゆるく閉じて、
抱き寄せられるままに、奥の奥まで
迎え入れると、熱い液体が喉へ口腔内へ
飛び散って。
こくり、喉を鳴らしたのはわざとではなく
勢いに負けるような形で。 ]
――んん、
[ 最後の一滴まで搾り取るように、
根本から吸い上げ、ちゅぽ、と音を立て解放してから
もう一度、惜しむようにキスをする。
同時にゆっくりと指も引き抜いた。
刺激しないよう注意を払って。
しかし、その瞬間に締め付けられた力の強さに
入っていたら本当に食いちぎられていたかも
知れないな、と思えば笑って。 ]
いいこ、 疲れた?
[ 体を起こし、頭を撫でながら
封を切ったほうのミネラルウォーターを
片手であけて、こくり、こくり。 ]
那岐くんも、水分とったほうがいい
[ 随分汗かいちゃったから、と
封を切っていないほうを渡して、 ]
お風呂入る?
……立てそう?
[ 難しそうならこのまま、くっついて
一つの生き物みたいに、眠ってしまうのもいい。
だけどすぐに眠ってしまうには、少し惜しい。
そんな顔をしていただろう。* ]
[促す声に導かれるみたいに、集まった熱が爆ぜて。
離して、と乞うた願いは受け入れられないまま、
彼の口腔を自分の吐き出したもので汚していく。
びく、びくっと、溜まったものを吐き出すみたいに
腰が数度揺れてしまうのを止められずに。
吐き出してしまえば、一気に襲ってくる脱力感。
もう一滴も出ない、と思うのに。
先端を吸い上げる唇に、か細く啼いて。]
……ぁ、…… は 、ぁッ……
[ふ、と力んでいた身体が弛緩していく。
きつく指を締め付けていた後孔も、緩んで。
ふやける程皺になった彼の指を解放して。
くたりと、シーツに身を沈めていく。
自慰のときでも、今まで彼女としてきたSEXでも。
こんなに達したことは、ない。]
[荒いだ呼吸のせいで胸を大きく上下させながら、
シーツに沈んだ頭を、あやすみたいに大きな手が撫でる。
その手の大きさを、指の長さを覚えてしまった。
心地よさも、
気持ち悦さも。
]
……ん、
[問い掛けに素直に頷いて、水を嚥下する喉を
力の抜けきった身体でぼんやりと眺め。
喉を鳴らして、動く喉仏がまた色香の残滓を放つ。
水分を促されて、こくん。とまた頷くけれど。
すぐには身体を起こす気になれなくて。
渡された、ペットボトルを一度受け取ったものの。]
[封を開けないまま、横に転がして。
甘えるみたいに、両手を彼に向かって伸ばす。]
……飲ませて、
[そんな子供みたいな、わがままを乗せて。
ン、と唇を突き出すみたいに顎を逸らす。
お風呂に入るのはそれから。]
[ローションと精液でべたべたになった身体のまま、
寝るのは、さすがに少し抵抗が残る。
シーツも汚してしまったから、
変えないといけないかもしれないけど。
もう少しだけ、甘えてもいいかな。なんて。
従姉妹の杏にも見せたことのない。
甘い顔を蕩けさせて、]
それから、一緒に入ろ?
[ワンルームの自宅より広いという浴室。
使うのは初めてだから、使い方を教わるのは、
家主の責任だと言い訳をしても許されるだろうか。*]
[ 一度受け取られたペットボトルは
風が開かれないまま転がされる。
問いかけには頷きを得たが、
よもや起きれない程辛いのではあるまいな
と覗き込むように見て、 ]
ふふ、……ん、
[ 甘えているだけだと分かれば、
またペットボトルを傾けて、そのまま
唇を合わせ、流し込むように少しずつ
唇を開いた。こくり、嚥下する音を聞いても、
啄むように、数度。 ]
転んだら困るからね
[ 一緒にと誘われれば、笑いながら
そう言って。蕩けた顔にまたキスを。
顔を見る度、したくなりそうで、困ったものだが。
一度立ち上がり風呂場までの扉を全て
開いて、給湯のスイッチを入れようとしたところで
いつでも入れるようにしていたことを思い出した。 ]
[ ――そういえばシャワー浴びる間もなく、
なだれこんでしまった、……若さってこわい、
なんて他人事のように思いながら、 ]
しんどいなら抱っこする?
[ ベッドまで戻り腰を撫でつつ ]
――そういえば前にもそんな話したね
[ 浴室まで向かって――。
二人一緒に浸かれる浴槽にゆっくりと沈み。
させて?と髪を洗う事や、体を洗う事も
引き受けて、先に浴室を後にした。
汚れたシーツの取替と、ドライヤーで
髪を乾かすのに時間を食うために。
そうしてゆっくりしていれば、夜も更けて。
寝巻きを貸すこともできたけれど、
肌の触れ合う幸福に抗えず、下着だけ纏い
その日は眠りについたのだったか。 ]
[ ――翌昼、君より早く目が覚めて、
ベッドを抜け出そうとすると、むずがるような声。
音を立てずに小さく笑う俺は、
その夜、自分の腹、火傷痕の残る部分に
口付けられたことは、知らない。
だから、掛け布団をめくり、
君の腰のあたりに、吸い付いた。
今度するときには、してね、と言いたげに。
散らした赤を隠すように掛け布団をかけ、
顔を洗い、歯を磨いたあと、 ]
おはよう、よく眠れた?
[ そう声を掛けたのと、コーヒーマシンが
抽出完了の合図をしたのは、同時くらい。 ]
コーヒー飲む?*
―― 忙しい日々の中で ――
[ 時間が取れれば会いに行き、
運が良ければ、二人で帰り道を歩む日も。 ]
泊まってく?
[ そう聞く日もあれば、自然と、
初めての日、よりはスムーズに
ベッドへ誘う事も出来た、だろうか。
ベッドの上では素直に甘えてくれない君の代わりに ]
したい、
[ 直接そう伝えて後ろから抱き込んだ日もある。
あの日だけが特別なわけじゃなく、
いつだって、溺れる感覚はあった。
むしろ体を重ねれば重ねるほど深く。 ]
[ ――だというのに、俺と来たら。
手放してやれなくなる だとか。
普通の幸せを奪ってしまった だとか。
抱けば抱くほど、深みに嵌まるほど、
身勝手な罪悪感を募らせていた。
愛される覚悟というものを
根本的に理解した日もあった。
嫉妬に駆られた夜なんかは、
痛みを感じるほどに抱きしめて、
苛めてしまったというのに。 ]
――……まだ、だよ。
甘やかしてくれるんでしょう?
ね、ここ好きでしょ?
好きだよもっとして、って言ってくれたら
ずっとずっとしてあげるのに。
俺の指、好きだもんね?
こうしてされると、泣いちゃうくらい
やだ、って言っても今日は聞かない。
[ 嫉妬に駆られた日には、
どろどろに煮詰まった愛を囁きながら。 ]
おいていかないよ、
[ 泣きそうな顔で、そう言ったのは、
君があまりにも愛おしげに、生きた証に
口付けたから。
そうして順当に、死んでしまったら
君を一人にしてしまうこと。
大事な人に紹介したいくらい、
君に愛されていること。
一つずつ、覚えて、確かめて――。
明日が旅行当日という日にも。 ]
すっかり綺麗になっちゃって、
……こう綺麗だと、……はい しません
[ 貸し切りや部屋付きの風呂のことはまだ
知らないから。旅行に向けて消えていった
痕を指でなぞり、つまらなそうに唇を尖らせて。
――そうして、旅行当日を迎える頃には、
愛する覚悟、愛される覚悟、
この先ずっと、ふたりで居る未来を、
確定的に捉えられるように、なっていただろう。* ]
[水を飲みたいという甘えを正確に読み取った恋人が、
愉しげに笑う様につられて目を細める。
今度は口に含むだけだから、喉は動かない。
倒れ込んでいる自身に覆い被さるように、
傾いてくる身体に細めた目を軽く伏せて、]
…… ン、ぅ……
[薄く唇を開いて水を招き入れて、こくんと喉を鳴らす。
乾いた喉が水分で潤っていく。
飲み干した後も、触れ合わせたままの唇を
堪能するように味わって、離れていく間際。
つぅ、と舌先で彼の唇を舐めたのは、物足りなさからか。]
[転ぶような覚束ない足元にはなりたくないけれど。
初めて受け入れた、腰はまだ少し異物感が残っていたか。
転んだら、と言い訳するのが少し歯がゆくて。]
そんな理由がないと、入れないんですか?
[なんて、視線を流して揶揄を含ませる。
どうにも理由をつけたがる彼のこと。
キスを降らせる割には、理性が戻ってきたのか。
それとも、別の理由があるのか。
水面下でまだ元気になりそうな気配があると知ったなら、
さすがにこちらも赤面してしまっただろうけれど。
それは預かり知らぬところ。
浴室に向かうのを見送りながら、ようやく。
転がしたペットボトルの封を開けて、
喉を鳴らして、半分ぐらいまで一気に飲み干した。]
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