205 【身内】いちごの国の三月うさぎ
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[ ちょっとした、興味本位であったことは否めない。
君以外の他人ならば死んでも御免被りたいが
好奇心に勝てず、といったところ。
手首からとろ、と伝ってくる液体に舌を這わせ
僅かな量を口に入れた。
ローションと混ざり、味まではよくわからないし
極少量ではあるが、興奮材料としては、
大きく効果を発揮したと言えるだろう。
それを目の前で見せられる相手が
どう思うかまでは、あまり考えていない。
残りはローションごとウェットティッシュで
拭き取って既にジッパーが降ろされて
引っかかるだけになっているジーンズを
立ち上がって、引き下ろした。* ]
[夢中になるくらい溺れてくれたのかと思えば、
じわりと頬に朱が滲んでいく。
嬉しくて、擽ったくて、恥ずかしい。
忙しない心の動きを悟られぬように。]
……平気。
[少しだけ強がるみたいにそう応えて。
事後処理を済ませようとする動きに、
こちらもずり上がるように、肘を立てて、
少し身を起こすように距離を取る。
見たいという要望にさらりと返されたら、
まるで恥ずかしがっていたこちらが馬鹿みたいに。
"視られる仕事"をしているから、というのも
あるかもしれないけれど、そんな抵抗なく言われたら。
ほんの少し、また、余裕の差を感じてしまって、
悔しいような。気も、ちょっと。]
[ウェットテュッシュで拭い取られていく、
自分の欲の名残を横目に見ていれば。
拭いきれない溢れを、不意に彼が舌で追いかけて、
舐め取って、口に運ぶから。]
……
ちょ
、っ
[ぶわ、と花開くみたい熱が顔に集まって。
慌てて制止するように声を発した。
多分、美味しいものではない。欲の塊。
口に入れてしまった後じゃ、
今更止めるのも遅いかもしれないけれど。
手首の浮いた血管に這う白濁を舐めあげる仕草に、
また煽られるみたいに熱が、灯る。]
……あぁ、……もう、
[くしゃりと自分の前髪を崩して照れを隠して。
参ったというみたいに弱く、頭を振る。
心を掻き乱される。
所作の一つ一つに。
ぱさりと布がまた落ちる音して。
彼の下半身も顕になれば、上半身よりも広く
赤く、斑に散った火傷の痕がはっきりと目に飛び込む。
照明は点けたまま。
ライトに照らされた赤い瑕痕。
真っ更な肌が綺麗というならば、
それはとても、同じ言葉を使えないかもしれないけれど。]
[小さく、息を呑んで。押し黙る。
――――そうして。
そっと、彼の身体に手を伸ばした。
トン、と彼の肩を押しやって、枕側と反対側に押して。
彼がシーツに尻もちをついたなら。
自身も身体を起こして、彼の膝の上に跨るように
身を乗り上げて、股で彼の腰を挟み込む。
乗り上げた分だけ、高くなる視線。
情欲に濡れた瞳で見下ろして。]
景斗さんが、まだ、イってない
[そうして、まだ硬く勃ち上がったままの
彼のものに再び、触れる。]
[一度達しただけじゃ、足りない。
もっと、感じたい。
感じてるところを、見たい。
彼より少し短い指で彼自身を握り込んで、
上下に擦りあげながら、熱の籠もった息を吐き出す。
腰を近づけた分、手を動かしている部分の近くで。
萎んだ自身のものが濡れたまま、息づいていて。]
…… 、ッ
[ず、と腰を更に一歩詰めるように距離を詰め、
膨張している彼のモノと自身のモノを直接触れ合わせ
直接、あなたの熱を感じようと。*]
[ 君の好きなところの一つに、
二人ときだけ見せる顔、がある。
さてこれはどちらなのか。
恥ずかしがり屋の恋人は、
表情や声を隠そうとするきらいがあるから。
平気、と言いながら身を起こした君が
ぶわ、と赤に染まるのを見て、
またぞく、と下肢が騒ぐ。
見られる仕事をしていた、それは
そう、だけどこの瞬間浮かべた表情は
職業病由縁のものであるはずもない。
慌てる声の主へ、流し目ひとつ。
くつくつと笑って、ベッドサイドの
冷蔵庫から、ミネラルウォーターを二つつかみ取り
一本をチェストの上に、一本は封を切り
口に含んだ、味はともかく喉に張り付く
粘液を流し込むために。 ]
[ 封を切った方も、チェストに置いて
服を脱いだ後、小さく息を呑むのが聞こえた
何を思っているかは、分からないが
少なくとも、青褪めて引いていくような
声色でなければ、それいい。 ]
――おっと、
[ 伸ばされた手に肩を押されて、
シーツに体が沈んでいく。
おや?と思ったときには、
君に見下されていただろう。 ]
……うわ、 なんて目で見てるの
出ちゃうかとおもった。
[ 情欲の籠もった視線が体に刺さるだけでも
興奮するのに、まだ、とか言いながら
触れるから ]
俺のことも駄目にしてくれるんでしょ?
君に触られたら、すぐ駄目になっちゃうよ
見てて、
[ 僅かな年の差があったところで、
ぶってるだけで、余裕なんてないんだ。
好きな人が、自分を悦ばせようとして
触ってくれるのだから、 ]
………ん、 きもちい、
[ 自分より少し短い、彼の手が
熱の塊を握り込んで、擦りながら
欲情しているみたいな目でこちらを見ている。
繊細な料理を作るその器用な手で、
与えられる快楽に、打ち震えてしまいそうで ]
俺の触りながら、興奮しちゃった?
すっごい、エロい……
ぁ、いい、……このままして、
[ 距離を詰めれば、僅かに触れ合う熱。
僅かに上体を起こし、短く息を吐きながら
触れ合う熱に片手を伸ばし ]
っ、……ん、 ぁ
[ 没頭するように、熱の籠もった息を、
声を、吐き出した。* ]
[ついぞ出た声に返された反応は、
やはり、余裕の残る視線を流されるだけに見えたから。
熱くなった頬を掌で覆うみたいにして顔を背けた。
飲むな、とは言わないけれど。
さすがに動揺は隠せなかったから。
愛液と確かに同じようなものかもしれないけれど。
自身の身体から吐き出したものを、含まれるのは。
あの日、心臓を食べられると思った、
デザートを口運んでいた時の感覚と少し似ている。
口を漱ぐのを横目に、少しホッとしたのは。
自身のものを残したままの彼と、
もう一度キスするのは、少し躊躇いがあったから。
それは、心の内だけ閉まっておくことにして。
]
[肩を押して、乗り上がった膝の上。
唐突にそんなことをすれば、驚かせてしまったかも。
体制を崩した彼が、意表を突かれた声を落とす。
いつもとは違う視線の角度。
見上げていた表情が、今は見下ろす位置にある。
情欲に濡れた瞳は透けていたらしい。
指摘する声に、薄く笑みを浮かべて。]
そんな顔させたのは、景斗さん、でしょう?
[長い前髪の上から額と、こめかみに、
ちゅ。と音を立てて、キスを贈る。
ベッドに入る前の言葉を引き合いに出されて、笑い。
見てて、と言われたなら手元に視線を落とした。]
[達したばかりでも、感情が昂ぶっているからか。
再び、擡げ始めている自身のモノ。
それ以上に張り詰めている彼の熱。]
……ン、
[彼の先端から溢れた汁気と自身で出したものと、
ローションの名残を借りて、くちゅりと音を立てる。
最も敏感になっている箇所を、重ね合われば。
また、気持ち良さに身体が小さく震えて、
その先の高揚感に、唇から熱を解けさせる。]
[感じている声を聞けば、握り込んだ手の動きを
少し早めようと、動きを変える。
二人分じゃ手が届ききれなくて、殆ど彼のモノばかり
擦り上げながら、足りない分は自ら。
腰を擦り付けるみたいに揺らして、快楽を得ていく。
は、と籠もった息を吐き出しながら、
煽るような声が、意地悪く囁くから。
それだけで、ぞく、と震えが走って。]
……ン、 ……興奮、した
………… ぁッ、
[従順に瞳を伏せて、こくんと小さく首を縦に揺らす。
こんな性に貪欲な自身が居たなんて、初めて知った。
支えのない腰が、手の動きとタイミングがズレて。
ずるんと、擦れ合う昂りから外れたら、
もう一度、繋ぎ合わせるみたいに腰を押し付けて。]
[高め合っていく気持ち悦さに酔い痴れていく。
このまま、という声に浅く頷いて。
手を緩めないまま。
自身の再び勃ち上がったモノと、彼のモノを
自身の手の上から彼の手が覆い被さって、
もっと、と煽られるみたいに手が往復する。
足りなかった箇所を、埋められるみたいに。
満たされたら、堪えきれずに、あえかな声を洩らして。]
ぅ…… ン、ッ……
[我慢出来ないみたいに額に額を擦り合せ、
くしゃりと重なった前髪が交わって、乱れる。
間近で響く色香のある声に、つられるみたいに。
我慢していた声が、喉元から突いていく。
段々と、快楽しか追えなくなっていく。
自身の姿態がどう映るかも余裕がないぐらい。*]
そうなの?
なら、嬉しいね
[ 押し倒される想定は、あまりして
いなかったから。素直に驚いた表情へ
贈られたキスを、擽ったいような気持ちで
受け取った。
見てて、と言えば視線はそこに、
固定されただろうか。
もう少し、その瞳で見ていて欲しい、
けれど。
待ちきれないとばかり、先走りに濡れる
そこは、触れ合う熱に酔い切っているようで。 ]
[ 擦り上げられるたびに、短く息を詰めて。
素直に、興奮した、と告げられたら、
ぎゅ、と眉間に皺を寄せて、 ]
俺も、
……うっ、……
[ 支えのない腰が、一度ずるりと
離れると、上体を起こして、
腰に手を回した。
先程よりも素直に漏れる声に、
抑えきれない興奮がそろそろ限界だと
音をあげて、 ]
も、……
イく……、 ん、ァ………
[ 微笑む余裕すらないまま、
熱を押し付けるようにして、吐精した。
びゅく、と吐き出すたびに、
切なげに眉根を寄せて、体を大きく
揺らしながら。
それでも、離れないでと言いたげに
腰に回した手はそのままにしていたから
振動は君にも伝わったことだろう。
同時、でなければ吐精後の緩んだ顔のまま
勢い良く飛び散った白濁を塗り付けるように
君の、を握り込んで、 ]
[そうなの、なんて。本当に気づいていなかったのか。
自覚のなさに思わず、口が開いてしまった。
一人ならこんなに感じたりもしない。
単調な動きで溜まったものを吐き出して終わらせるだけ。
躊躇っていた羞恥を殺してまで見られる事も、
許してしまうのは貴方だからと気づいて欲しい。
……それには、こちらの言葉の足りなさもあるけれど。
割りと態度には出しているつもりなのに。
まだ片思いを続けているような素振りすら、
未だに見せたりもするものだから。
近いうちに彼の考えを改める必要がありそうだ、と
心内でひっそりと画策するのは、彼には秘密の話。
]
[素直に伝えた告白に、合わせるように彼からも一言。
息を詰める様子が、彼の余裕のなさを伝える。
淫らに揺らした腰が、滑ったら。
引き止めるみたいに腕が腰に回って。
大きな掌が脇腹を捕まえるから、
近づいた分だけ動きに制限も掛かってもどかしい。]
……ン、 出して
[限界を訴える声に、裏筋をなぞリあげる。
先端をぐり、と指の腹で押して煽り立てれば。
彼も俺を煽るみたいに、手の動きが早くなる。]
ッ、 ふ、……ぅッ、
[煽るつもりが煽られて、熱に侵されて。
どくどくとまた熱が中心に集まっていく。]
[低く、小さく、低い声が耳朶に響く。
少し、痛いと思うほど額を擦りつけ合って。
先に限界を訴えたのは彼の方だった。
熱い迸りが重なり合った手の内で弾ける。
彼の体温と同じ熱さが手を汚して、数度に分けて。
吐き出されていくのを掌で抑え込んで、受け止める。
彼が達する度に、動く身体が
膝の上に乗る自身の身体を揺らすから。
そんな些細な揺れすら腰を伝って、快感に変わる。]
…… ぁ、 ッ……
[ぐっと腰を引き寄せられて、達したばかりの
屹立がぐちゃりと卑猥な音を立てるぐらい密着すれば。]
[いくらかあった此方の余裕も剥がれていく。
ぬるさを保った粘液を塗りつけ、握り込まれる。
イったばかりの身体に、その刺激はあまりにも強烈で
緩んだ表情の奥に濡れた欲を魅せられたら、
心臓が、ドクン、と激しく波打つ。]
ぁ、……ッ、ぅ……、
……ッン、
だ、め……ッ、まだ、
[さっき見せたばかりなのに、もう筋を浮かべる程に、
張り詰めている自身が恥ずかしい。
こんなにも欲を感じたことはない。
吐き出したい気持ちと、羞恥がまた襲って。
弱く、首を揺らすのに。
ねだる声が、甘いから許してしまいそうになる。]
[長い指が逃さないというように包み込む。
先端の弱い部分を、親指で強く押し潰されて。]
……ァ、ッ ……
そこッ、
ンッ……、また、
[汚れた掌を拭う余裕もなく、
両腕で彼の背を抱き寄せたのは許して欲しい。
その隙きを与えてくれなかったのは貴方だから。
額を突き合わせたまま、また一際大きな波が来る。
吐息も、声も、表情も隠せないまま。
彼に縋って、ぶる、と身震いが走って、
堪えきれずに白濁がまた、彼の手を汚した。*]
[ 直接与えられる快楽とは別に、
視覚、聴覚から得る興奮でそうなってしまう。
自分に覚えがある事だとしても、
相手がそうとは限らない、から。
もしも触れ合うことを許してくれたら
目一杯、気持ちいいことだけ、
してあげたい なんて傲慢な考え方を
見透かされたような気がした。
――テレビを通して、何万人もの人が
己を見て、理想として、恋をしてくれていたとしても
ただ一人に、愛される覚悟に、持ち合わせが
なかったのかもしれない。
自分が相手を愛したいと思うのと、同じくらい
相手もそう、思ってくれていると。 ]
[ 信じたいから、今。
ここで触れ合っているのにね。 ]
[ 淫らに揺れる腰を、がしりと
抱きとめて、限界を訴えると、
弱いところがなぞりあげられて、ますます
呼吸が乱れていく。
声を拾った耳が熱くなる。
下肢に集中していく熱が、全身に回って
いくように、 ]
ぅ……あ、……ンンッ……
[ 溜まった熱が迸るように吐き出されて、
君の手を汚していく。
全て出し切った後、大きく息を吐いて
ねだるように、名前を口にする
まだ体内の温度を覚えている精液ごと
包んだ手に、イッたばかりの体への気遣いなど
なく、激しく上下に動かして。
情欲に濡れた声を受け止めながら、
射抜くように、跳ねる体を、上り詰める表情を
見届けた。 ]
[ 一番近くで、その願いは無事聞き届けられたのに
己はどこまで欲張りになるのか、少し
恐ろしい。
吐精されたそれを見て、諦めるような色を持った
ため息を零した。 ]
………すごい、良かった。
のに、
[ 互い達した後で、まだ敏感になったまま
そっと抱きしめれば、伝わってしまうだろう。
萎えるどころか、未だ硬さを保ったままで
いるということに。 ]
[ 若さで言えば、彼のほうが盛りと言えようが
自分の年齢とて、まだ衰えを感じるには
至らないところ。 ]
……今日はね、気持ちいいことだけ
しようって、言うつもりだった。
男同士でするってなると、
痛い思いさせたりしたりするかなって、
だから、抱くとか抱かれるとかまでは
しなくてもいいかなって、
だけど、
[ 背を撫でる手の優しさだって、真実なのに、 ]
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