100 【身内RP】待宵館で月を待つ2【R18G】
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ユピテル
「ユピテル」
もう一度名前を呼ぶ。
立ち上がり、振り返る。
自分がしたいのは愛することであって束縛することじゃない。
本当はついて行って後ろから死神の彼に睨みを利かせてやろうかとも考えたけれど。
それで彼女が聞けたいことも聞けなくなってしまうのは本意じゃない。
「信じてる」
でも、それだけじゃ足りない。
「『自分がこうしたい』と思ったことをしてくれ、ユピテル。
俺はどんな選択をしても、お前を応援しているから。
お前が道を選んで進むことを、自分のことのように嬉しく思えるのだから」
ずっと迷って傷ついている貴方を見たが故の言葉。
言葉を重ねながら、拒まれないのなら抱きしめる。もう寒さはどこにもない。氷のような冷たさは、貴方が溶かしてくれたのだから。
我儘を通した罰で動けないのなら此方が許しを与えるまでだ。
チャンドラ
声をかけられそっと目を開ける。
あなたの姿がわかれば、にこりと笑みを浮かべた。
「ここは不思議なところだね。
チャンドラまで居るとは思わなかったな。
これが神隠し……?」
花びらがひらりと舞い、二人の間に1枚、2枚と落ちてゆく。
「もう動けるようになった?
寒くなくなったなら、良いんだけど」
ポルクス
よかった、この赤はやっぱりポルクスのものじゃない。
安心したわたしは、少しだけ緊張を緩める。
「あなた、わたしが見えるのね。
……目を醒ましてから、わたしのことが見える人、ほとんどいなくて」
それが神隠しなのでしょう。わたしは頷く。
「もう、寒くないわ。
むしろ少しあたたかいくらい。……不思議ね」
チャンドラ
「見えるよ。不思議なことを言うね、館にいる皆には俺達が見えなくなってるの?」
未だ館に入ってない俺にはその現象がわかっていない。
けれどもこれが神隠しを経た空間だというのなら、そういうものなんだろうと納得だ。
「寒くない。……そう、それならよかった」
願いは聞き届けられたということだ。
驚いた様子も、ホッとした様子も見せることはなく。
理由を告げるつもりはないのか、静かに答えるのみだ。
ポルクス
「ええ、その通りよ。
誰にも見向きされなくて、最初は驚いたものだけど」
わたしは目を閉じる。
そうすると、このぬくもり
がより強く感じられる気がして。
「ひとりじゃないって、思えたの。
あなたのことも、思い出したわ」
このぬくもり
は、あなたの掌にとても似ている。
あなたがわたしに無償でそそいだ優しさに、とてもよく似ている。
無償でしょう? あなたが言った通り、あなたの望みを叶えるならば、わたしに酷いことをするべきだもの。
| 「 ああ、なんだ、今は──の声を聞いてくれるのかい? 」 (64) 2021/10/23(Sat) 19:03:09 |
| ナニカ は、抱き着かれてそのまま。 あなたを抱き返して浮いています。 「 抱き着くならやっぱり女の子の方がいいよなぁ 」 燃えるようだなんて、そんなものはただのあなたの錯覚で。 ナニカ が与えているのは寒さ冷たさ。 分子が振動する熱量を奪って、 音も眠るような絶対零度へ連れる概念。
それもまた、此処で、今だから起きていること。 「 目をつむりましたよ、できそう? 」 ナニカ は、 目を閉じました 。 あなたは ナニカ に夢を見せられません。 「 君の発言通りの結果に辿り着けそう? 」 ナニカ は、あなたの思い通りになりません。 ナニカ は、 あなたに期待をしていません。 あなたのその期待は、 空振りに終わることが決まっています。 ナニカ に対して、あなたは捕食者ではありませんでした。 (65) 2021/10/23(Sat) 19:04:11 |
チャンドラ
「俺達は死んだのかな。
神隠しに遭った者が帰ってくることはあるようだから、生きてるのかな。
これが死後の世界だというのなら、悪くない」
痛みも苦しみもなく死ねたというのなら、これ以上の死に方はきっとないだろう。
「けど……俺だけじゃなくて君もここにいるというのは良くないね。
思い出してもらえたのは嬉しいけど……君は、もっと生きるべきだ」
底冷えする寒さがあるわけではないが、今、自分には一欠片のぬくもり
も存在していはいない。
自分の魂は兄のものだけど、ぬくもり
だけはあなたに遺して行こうと思ったことは後悔もしていない。
そこに取引も駆け引きも欲望も、ひとつもありはしない。
ただただ一方通行の感情でしかなかった。
ポルクス
「言われてみれば。
死んだっていう発想は、しなかったわね」
死後の世界なんてものを信じていない。
夜でないなら、わたしたちにはその権利すらない。
わたしたちは夜にしか生きられないの。
「……ポルクス。
それはあなたは死んでもいいと、そう言っているの?」
常昼のこの館で死後の世界を信じないわたしは、自分が生きていることを疑わない。
もちろん、あなたも。
あなたの望みは知っている。
それは叶っていないと思っている。
同じくらい、叶わない方がいいとも思っている。
あなたの言葉を借りるなら、わたしはあなたに生きてほしいと思っている。
チャンドラ
「わからない。
この花弁が教えてくれたから……兄もこの館に来ていたこと、館であったこと、兄が得たもの、兄が捨てたもの」
今更捨てたものを欲しなどしないだろう。
ならば俺の行き場はどこにあるのだろうか。
「でも……一度捨てようとした命だから、あまり惜しくはないかな」
ポルクス
「……お兄さんが?」
偶然か、双子の神秘がそうさせたのか。
でも偶然にしてはできすぎていて、わたしは驚いていた。
追うものと追われるもの。
あなたとお兄さんの関係は、聞いた話ではそんなもの。
それなのに、先にこの館に来たのはお兄さんの方。
そしてあなたが追うようにここを訪れた。
とんだ運命の悪戯ね。
それともこれも、館の主の意志かしら。
「惜しくはない……あなたはそう、思うのね」
ひとつ知る。
お兄さんの影がなくなって尚、あなたを蝕むもの。
わたしが思っていたとおり、そしてあなたの話していたとおり、あなたの中のお兄さんの存在はとても大きい。
ポルクス
「わたしはそうは思わないわ。
命は粗末にするべきではないもの」
ひとつ知ったなら、次はわたしの番。
わたしはわたしの道徳を語る。
そしてこれはわたしだけの道徳では決してない。
「命を危険に晒しても、やりたいことがあるなら別よ。
わたしはそれは、粗末とは別と思うもの。
わたしはあなたに、命を粗末にして欲しくないわ」
わたしは探して欲しいと言う。
どうせなくなってもいい命なら、それを賭けてでもやりたいことを。
叶うかは、また別の話。
それでも目標のために冒険する時間は、きっと有意義なもののはずだから。
チャンドラ
「ここに来ることが俺の到達点だったとしたら、何も悔いなんてありはしないんだ」
兄と分かれた魂を一つにしようと思ったことも、君にぬくもりを遺したことも。
「ここが通過点だったとしても、
自分がやった事に悔いはないけど。
だけど……俺は兄さんと違って、何も見つけてやしない」
半身を捨てて、手にできるものは何もない。
俺の中に空いた穴が大きすぎて、それは塞ぎようもない傷痕。
兄に返そうとしたもの全てが、きっと今の兄には一つも必要がないものだ。
「……そうだね、これから生きる時間があるのなら……
生きる理由を探すために生きてみるのは悪くないかもしれない」
| 「 冷たいって思う? やさしくしてはいるつもりなんだけどなぁ。 まぁつもりっていつでも“つもり”ですからね。 」 ナニカ は、異形だなんてこともなく、 案外普通に、人間の形をしています。 握手の手から窺えた通りに、 男性の特徴を持っていると思いました。 だから、あなたは ナニカの頬を撫でられました 。ナニカ も、触らせる気があったので。 ナニカ にその気がなければ、 相手から触れることは出来ません。 「 ズルいねぇ──ってば。口惜しいかぁ。 ごめんね? オアズケみたいなことしちゃって 」 「 罪滅ぼしでもないけれど、 そのもう少しは構いませんよ子猫ちゃん 」 自身の存在をしっかりと確立させているあなたは、 その通り、離れてしまえばこの冷たさをなくしてしまうでしょう。 「 これは夢、夢、夢。 最初から、そこになんてなかったのさ 。 」 あなたの意識が 寒さ に刈り取られてしまうその時まで、 この冷たい抱擁は、戯れは、続けられていたのでした。 (73) 2021/10/23(Sat) 20:56:08 |
| (a61) 2021/10/23(Sat) 20:59:53 |
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