人狼物語 三日月国


149 【R18身内村】LOVE OR ALIVE

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【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ………こんにちは、蓮司さん? 」


 名前を口にして、
 どこか違和感があったのは何故だろうか
 
     もしかしたら蓮司さん≠ネどと
     私は、呼んでいなかったのかもしれない


 
(52) 2022/05/28(Sat) 13:44:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 その人がこちらを振り向く。
 二色の瞳がとてもきれいで、だけど、私は、


 「 ……?? 」


 何かが、とても違和感で。


 「 目、大丈夫、なんですか 」


 
陽の光の下
、美しく煌めく二色の瞳に、
 何が大丈夫じゃない≠アとがあるというのか
 それもわからないまま、私は本能的に、
 そんな言葉を、口にしていた。 *

 
(53) 2022/05/28(Sat) 13:44:53

【人】 雨宮 瀬里

 

 きっと私はその人に瀬里≠ニ呼ばれていたのだろう
 その呼び方はどこかしっくりときて私は縦に首を振る

 それと同時になにかデジャブのような違和感を感じて
 心の奥底がほんのわずかに軋む



 「 ……そうですね、かっこいいですよ 」


 ほらまただ。
 少し戯けて掛けられた言葉、
 何も文脈としておかしくはないのに、
 なにか、なにかが、ひっかかる。


 
(57) 2022/05/28(Sat) 16:01:41

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 うん。初めましてでは、ないみたい
   でも、憶えてないんです 」


 貴方もですよね、って確認するように。
 
 貴方の声も、顔も、憶えてはいないけれど
 それでも、どこか、穏やかな気持ちで話せたのは。
 やっぱり絆があったから、ということなのだろうか。


 その人に翼はない。
 だけど、手紙の中には「恋矢」が、と書いてあった
 同種であることを前提に、私は話をする。
 これで相手が恋天使じゃなかったら…ふと不安になって
 私は背中の羽を揺らしてみせて、貴方の視線の先を確かめた。

 …羽根が見えていなさそうなら、
 ほんの少し、不安な顔は見せただろう。

 
(58) 2022/05/28(Sat) 16:02:12

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 あの 」


 そうして私は貴方にあの封筒を差し出す。
 恐らく貴方の文字で、瀬里へと書かれた一通の封筒。


 「 貴方に返すのも、なんか違うと思うんですけど
   でも。貴方にも、読んでもらいたくて 」


 封筒には一度開けた跡があるから、
 私が読んだものだということはすぐに分かるだろう
 
 それから、もうすこしだけ、貴方に近づいて
 声を落として、小さくつぶやく

 
(59) 2022/05/28(Sat) 16:02:26

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 あのお爺さんが、
   手違いで、恋矢が刺さって、
   恋矢を抜いたのだと言っていました。

   ……でもここにはお見合い、ってあるし
   何より、これを書いた人の言葉が、
   手違いで恋矢が刺さってた人のものだって
   私、思えないんです。

  たぶん。蓮司さんの字、だと思うんですけど
  ……読んでみて、ください。 」


 手紙を読んでくれるのならば、その傍で。
 言いたいこと、ってなんだったんでしょうね、って
 私は困ったように笑いながら呟いた。 *

 
(60) 2022/05/28(Sat) 16:02:38

【人】 雨宮 瀬里

 

 これは俺≠ェ書いたものじゃない。
 その言葉にどこか落胆の気持ちを抱いてしまったのは
 別に恋心を取り戻したい、とかいう動機じゃない。

 じゃあ私を動かすものはなんだろう?って
 ふと考えたとき、一番に心に浮かんだのは

  私の中に知らない私がいること

 それが、どうしてももやもやするのだと気づいた。

 
(66) 2022/05/28(Sat) 18:21:36

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 いえ。
   恋心を抱いていたらしい、のは
   ここにいる私、ではないので。 」


 好きか?と聞かれて即答した。
 好き嫌い、という感情はどこにもない。

 昨日までの私たちはどこにもいない。
 貴方と過ごしたらしい日々の様々な瞬間が
 私の中からすっぽりと抜け落ちたまま、
 私は、いつかの私の続きを歩いている。

 
(67) 2022/05/28(Sat) 18:21:49

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ありがとうございます。
   ……助かります。 」

 
 ここは一体どこなんだろう、とスマホを見る。
 位置情報から、大体の場所が分かるはずだ。
 ロックを外せば、私と貴方が並ぶ待ち受け画面が見えた。

 
(68) 2022/05/28(Sat) 18:22:01

【人】 雨宮 瀬里

 

 見覚えのない車。
 見たことのあるような車。

 躊躇することなく私の足は助手席へ向かい、
 慣れた手つきでその扉を開く。


 「 あの。
   何か、思い出したら。
   ううん、何も思い出さなくても。
   また、連絡してもいいですか。 」


 そう切り出したのは車が発進した後だったか。
 スマホには、ご丁寧に貴方の連絡先も、
 直前までのやり取りも、残っているようだった。

 
(69) 2022/05/28(Sat) 18:22:20

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 恋心があるとか、ないとか、じゃなくて
   ……記憶。ないのが。嫌だなって。 」


 貴方との記憶、じゃない。
 私自身の記憶がないことが、嫌だなって思ったんだって
 私は、貴方に伝えるだろう。


 「 ……自分のこと、
   なんでも自分で決めたいんです。
   だから、昨日までの私が分からないのがすごく嫌。

   おかしいな。
   昔私そういう人じゃなかった筈なんですけど。 」


 昔の私は、自分の意思を持たずに、
 家族に、他人に、自分の評価も意思も委ねていた。
 今の私は、すっかりそうでないと嫌だ、なんて

 …それが、変わった記憶はどこにもないのに。 *

 
(70) 2022/05/28(Sat) 18:23:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 貴方の皮肉には素直に頷いた。
 きっと、昨日までの瀬里≠セって、喜ぶはずだから。

 恋をしたらどうなのか、と私は考えたりはしなかった
 知らない貴方に恋をするつもりもなかった。

 けれど、どうしてだろうか。

 恋をしてはいけない≠フだと、

 そんな気持ちが無くなっていることに、
 私は気づいてはいなかった。
 それは、ほんの少し貴方の状態とは違っていたのかも。


 
(74) 2022/05/28(Sat) 19:38:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 clarity?知ってる、というか、」


 そう。私は確かにclarityを知っている。
 知っているどころか、…と言葉を紡ごうとして
 その先に続く言葉が見当たらないのに気付く。
 多分私はスマホの履歴に「灯歌」という名前を見ても
 それが誰だかあまり思い出せなくなっているのだろう


 
(75) 2022/05/28(Sat) 19:38:37

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……ううん、なんでもない。
   知っている、はず、なんだけど、
   あんまり思い出せないの。
   これも、貴方との記憶が関係しているのかな 」  


 透明な歌声が車の中に響く。
 不安な人を励ますような、優しい歌声。
 大丈夫だよ、って背中を押してくれるような声。

 私は、その声を、確かに、どこかで、

 記憶を呼び起こそうとしても、靄がかかっている
 だけど、記憶を探るように、探すように、
 ぼんやりとした瞳で、私は貴方のことを見た。

     貴方は、どうしてこのひとを知っているの?
     そんなことを問いかけるように。 *

 
(76) 2022/05/28(Sat) 19:38:51

【人】 雨宮 瀬里

 

 ぱちん、ぱちん、と指が鳴る
 そのたびに、何か大切な景色が色づいていく

  『 私ね、変わろうと思って 』

 それは確かに私の声
 変わるための後押しをしてくれたのは…?
 
 透明な歌声、跳ねるような指の音、
 月明りが照らす暗がりの中で、
 明るい光が私の、  
私の……?


      
真っ赤
ななにかが、見えた気がした

 
(79) 2022/05/28(Sat) 20:21:27

【人】 雨宮 瀬里

 

 明るい光に目線を向けようとして、
 
           
       車が動く。
       思考は途切れる。



 「 何か、思い出せそうな気がしました 」

 それだけ言って小さく笑うと、
 私は手元のスマホに視線を落とす。
 車の中。会話などはほとんどないはず。

 
(80) 2022/05/28(Sat) 20:21:48

【人】 雨宮 瀬里

 

 スマホに残されたメールも写真も、
 どれも私の知らない雨宮瀬里だった。
 たくさんの景色や、たくさんの食事や、
 たくさんの笑顔が、そこには残されていた。


 「 楽しそう 」


 私はただの感想を呟く。
 他人事だけど、本当にそれは楽しそうだったから


 「 恋、してたんだなって、分かります
   恋をする人間と、同じ顔、してるもの。 」


 恋をしたい、だとか。
 同じ感情を取り戻したい。とかじゃないけれど。
 スマホに残った、二人の姿は、本当に楽しそうで

 ……だから、私は至極当然の質問を投げかける。

 
(81) 2022/05/28(Sat) 20:22:03

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 どうして、恋矢を抜いてしまったんでしょうね 」


 貴方は知っていること。
 私は覚えていないこと。

 ただの、話のきっかけにすぎない。 *

 
(82) 2022/05/28(Sat) 20:22:14

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 病?
   ………そう。だったんだ。 」


 病によって、恋矢を抜かざるを得なかった。
 そんな話は今、初めて聞いた。

 ううん、瀬里≠ヘ知っていたんだろう。
 知ったうえで、それを受け入れたとき
 私は、どう思ったんだろう。

 うらやましい、の声に私は小さく微笑んだ
 
 
 「 これほど楽しそうに過ごしていたのに
   恋心と記憶が消えてしまったのは……
   ……きっと、悔しかっただろうな。 」


 恋心が消えるときの感情なんてわからないけど
 でも大切にしていたものを喪わざるを得ないときの
 悔しさとかなら、分かる気がするから。

 
(86) 2022/05/28(Sat) 22:39:03

【人】 雨宮 瀬里

 

 駅前で車が止まる。
 私が全く知らない駅だったけれど
 きっと家までは帰ることはできるだろう。


 「 ……うん、 」


 貴方の視線がこちらへと向く
 
 ここで、私が車を降りればそれでおしまい。
 時々私から連絡をするかもしれない。
 だけどそれもいつ終わるかはわからない。
 だからと言って何もできないし、何かしようとも ──


      二つの色の違う瞳を
      私のスカートとお揃いの色の左目を
      私が…好きだったであろう、その瞳を、


 
(87) 2022/05/28(Sat) 22:39:48

【人】 雨宮 瀬里

 


 ねえ瀬里
 貴方はこんな終わり方も想定していたの?



 
(88) 2022/05/28(Sat) 22:40:16

【人】 雨宮 瀬里

 


 ──────── ちがうの。



 
(89) 2022/05/28(Sat) 22:40:41

【人】 雨宮 瀬里

 


      頬を流れる涙の意味を、私は知らない
      貴方が見たことのない涙を
      私はきっと、初めて流した。 *


 
(90) 2022/05/28(Sat) 22:41:44

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 …っ、ごめんなさい
   泣くつもりとか、なくて 」


 意に反して流れ出た涙を
 あたたかな指先が拭うなら、
 私は思わずそれを否定するけれど、
 涙は簡単には止まってはくれなかった。

 それでいて、もっと触れていたいと思ったのは
 昨日までの私?それとも今の私?

    それとも、全部、私なのだろうか。


 
(97) 2022/05/29(Sun) 8:44:32

【人】 雨宮 瀬里

 

 洋服の好みが変わっても
 恋矢が刺さって恋心を抱いても
 それがまた喪われて想いが消えてしまっても

 私に起きた変化はすべて、
 雨宮瀬里そのものなのだろうか。

 貴方に出会って、貴方が日常を満たして以降の
 私自身の記憶は喪われたままだというのに


 
(98) 2022/05/29(Sun) 8:45:06

【人】 雨宮 瀬里

 

 こんな終わり方は嫌だ。
 はっきりと音になって耳に届いたそれに
 私はこくりと頷いた。


 「 私も。こんな終わり方は嫌 」


 理由なんて私だってわからない。
 だけど、こんな終わり方は絶対に嫌だというだけ。

 
(99) 2022/05/29(Sun) 8:45:18

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 私ね、記憶を取り戻したい
   どうしたらいいか、わからないけど… 」


 恋をしていた私も、今の私も、私だというのなら
 恋をしていた時の私の記憶を、取り戻したい。
 オーディオからは相変わらず透明な歌声が響いている。 *

 
(100) 2022/05/29(Sun) 8:45:30

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……恋人に? 」


 私が浮かべるのは困惑の色。
 それでも頬に触れた手を避けることもしないまま
 貴方の両の瞳を見つめる。

 恋心とはどんなものだっただろうか
 思い出せぬままに、恋人の振りをするのは

 ──── ああ、それはかつての私。
 そんなことも忘れているくらいに、
 いつの間にか私は変えられていた。

 憶えていないから、きっと貴方のお陰。

 
(103) 2022/05/29(Sun) 11:12:42

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……うん、構わない。
   瀬里≠熈蓮司≠烽サれを望むもの。 」


 流れていた涙が止まったから、
 きっと、そうなのだろう。


 「 ……改めて、っていうのもなんだけど
   雨宮瀬里です。……よろしく……? 」


 きっと2回目の初めまして。
 はにかんだ笑顔は、営業スマイルなんかじゃない。
 
(104) 2022/05/29(Sun) 11:13:20

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 恋人はじめに、もう少し、
   ドライブデート、しませんか。
   歌も、聞いていたいし、
   もう少し、話がしてみたいから。 」


 例えばひとつ先の駅まで。
 例えば乗り換えのターミナル駅まで。
 家までは、少し気が引ける距離だけど。

 もしもドライブデートが叶うなら、
 きっと最初から、お互いを知っていこうかな。
 私が陶芸を生業にしていることとか
 貴方は珈琲を好むとか、きゅうりが嫌いだとか

 他愛のない話を、いくらでも。

 
時間制限はどこにもないから。
*
 
(105) 2022/05/29(Sun) 11:14:33
 




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