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![]() | 【人】 鬼 紅鉄坊……一体、何処に行ったんだ [ 山は何処までも静まり返っている。 どれ程歩いても、痕跡は見つけられなかった。 同胞が騒いでいないのなら、つまり襲ってはいない。 雪はとうに降り止んでいる、 途中からでも隠されていない足跡がある筈だ。 陽の傾き始めた空を木々の合間から確認し、ふと気づく。 ああ、 そういえば性別も名前も聞いていなかった。 ]* (52) 2021/07/01(Thu) 1:57:19 |
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![]() | 【人】 鬼 紅鉄坊[ 人の善意を信じる鬼は、何の情報もなく未だ彷徨い続けようとしていた 何処からか怒号のように響き渡る、 育ての父たる男の声がその歩みを漸く止める。 直ぐに同胞が狼狽え囁き合うような気配を、あちこちから感じた。 ] まさか…… [ 鬼は漸く気づく。 山に棲まう妖らにとっても想定外の、非常事態が起きている。 迷子など、何処にもいない。 ] (59) 2021/07/01(Thu) 2:02:28 |
![]() | 【人】 鬼 紅鉄坊[ 輿入れの季から時は過ぎ、 鬼の知る彼らしい振る舞いをしていた薬屋の店主。 その傷は決して癒えないものだとしても、 裏で何を考えていたのか、思いもしなかった。 体躯に似合わぬ速さの走りが、鬼の焦りをありありと表す。 己を傷付けることなど無い枝や草など押し退け、 道無き道を駆け、最悪の想像を払う為に寺を目指す。 ] (60) 2021/07/01(Thu) 2:02:43 |
![]() | 【人】 紅鉄坊男が二人、何かを話している。 息を殺し足音を潜め近づき、様子を覗っているが その内容が聞き取れる位置に来ても、意味がよく分からない。 こんな寂れた資料館なんかに、強盗が入ったというのか。 どれ程建物が新しく見えても、金があるわけがないだろう。 大昔は山ばかりだったという、過疎化の進んだ田舎町だが 夜遅くだって、いくらでもコンビニやガソリンスタンドがあるのに。 自分から見て正面に開け放たれた窓、左右に展示物が置かれている 差し込む光により、それを眺める男達の輪郭が浮かび上がる。 一人は黒い短髪の大柄な男、青緑色の上着越しにも筋肉が分かる。 もう一人は脱色したのか白い髪の小柄な男で、やけに着込んでいた。 (106) 2021/07/02(Fri) 23:07:44 |
![]() | 【人】 紅鉄坊侵入経路は明確だが、窓に鍵を忘れていたのだろうか。 今までそんなことは一度も無かったし、 警報装置が起動していないのも奇妙だ。 だが、凶器の類は見当たらない。 懐にあるとしても、こちらは直ぐに然るべき場所へ連絡が出来る。 何が目的かは未だ検討も付かないが、 その現代社会を舐めた行いをすぐ後悔することになるだろう。 踏み込み、彼らを手持ちのライトで照らしながら叫ぶように言った。 (107) 2021/07/02(Fri) 23:07:57 |
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![]() | 【人】 紅鉄坊驚いたように両者の身体が反応し、こちらへと振り返った。 そして、そして──……これはなんだ? 続ける言葉も思考も足も、何もかもが停止してしまう。 自分は休憩室の机に突っ伏して、居眠りでもしているのか? そう思ってしまう程、信じられないことだった。 (109) 2021/07/02(Fri) 23:08:22 |
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![]() | 【人】 異形 紅鉄坊男達が一瞬で、まるで普通の人と思えない姿に変わったなどと。 奇特なコスプレイヤーという言い訳すら出来ないじゃないか! 勇敢な警備員ぶろうとしていた筈が、腰を抜かして座り込む。 大柄な──より異形が強い方が何か弁明する言葉など、 耳にも入らないどころか、必死に距離を取ろうとしてしまう。 その時、小柄で白い方が動いた。 一歩、一歩。この状況など意に介さないような軽い足取り 目前まで近づいて、屈んでこちらを紅い片目が凝視した。 男達はどちらも片方しか目が開いていなくて、 紅色をしていることも同じらしい。 補い合うように左右対称のそれの意味を考えてしまったのは、 恐ろしさでついに後退ることも出来なくなった現実逃避なのか。 (111) 2021/07/02(Fri) 23:09:03 |
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