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113 【身内】頽廃のヨルムガンド【R18G】
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撫で……な、撫でられるのは嫌いではないですが、その分エドゥアルトを撫でてあげてください
修羅場ってたいへんだなあとおもいました。せんせ元気そうでよかった。
レイ
「そうか……
」
力強い肯定を受けたので、これはチキンらしい。
とにもかくにも、チキンはチキンらしい。
路地裏育ちには細かい品種による肉の違いがわからぬ。
つまり結局これは鳥だからチキンなのだ。
「……まあ、何人かは尋問を受けたわけだからな。
口答えしてやったら随分手厚く饗されたよ」
何気ない疑問には、誰に言うでもない呟きだけを零して。
まだ温かいレモネードの嵩をちびちびと減らしながら、
のろのろとチキンだのシチューだのつつく。
ご機嫌な夕食だ…喉さえ痛めていなければ。
踵を返す死霊術師の背を見送った。有意義な取引である事を願う。
「消毒ついでに酒でも飲んでろだとか
そういう事を言われなくて正直ほっとした。
自分で自分を痛め付ける趣味は無いんだ俺は」
役者は廃業で正解だ。
きっとこのご時世では三文芝居は流行りもしない。
生きていれば、喜劇も悲劇も勝手に舞い込んで来るのだから。
「一度尋問を受けてしまえばもう尋問に怯える必要は無い。
気楽なもんだな…下手な事さえしなければ。」
かつん、首元の枷を爪の先で叩く音。
元役者は、それが何であるかをよく知っている。
レイ様
「出てきたからには、ちゃんとしてないといけないのです。…こうやって、心配をかけてしまうのも、よくないのですよ……
ラベンダー…なら、持ち合わせがあるのです。1本だけで、ちょっと申し訳ないのですよ」
香りが、と繰り返して 少し何やら考えた後。
綺麗な形が保たれたままのお花を手渡しすることでしょう。
代金を受け取り、それを報酬袋にゆっくりしまいました。
「エデュアルト様、お手柄なのです?大きい鳥さんなんて、きっと大変だったに違いないのです……感謝して、頂くのですよ。
実は、ちょっとお腹空いてたのです。レイ様、お声掛けしてくれてありがとうなのですよ」
妖精は、ほろほろと煮込まれた鳥の肉を口に運びます。
普段食べているチキンとは何だか違う味。でも、その温かさが身体にしみて。
ほっとしたような気持ちになるのでした。
段々、普段の様子を取り戻しているようです。それは、傍目で見ていてもわかる事でしょう。
レイ
「嫌がるからか、単に煩かったのか。
あの手合いのことだ、両方かもしれないな。
…どうせ大人しくしていても温情なんか掛けられないんだ
なら、暴れてやった方が気分が良い」
それで負う痛手と見合うかは諸説あるものの。
結局は大人しく痛め付けられるという事が
どうにも我慢ならない人種なのだ、これは。
大人しくしていれば、と期待ができないだけかもしれないが。
「…………」
それから、ころり。
目の前に転がった飴を見て、少し考える。
他人は、信用できない。
けれど、ある程度腹の底を見せ合った相手なら?
未だ距離感は一定を保ち、けれど他人とも言い難い。
これは、互いの目的や意図に対する信用とそう変わらないのではないか。
…ほんの少し考えたのち、飴は受け取る事にした。
いたいにゃん…(
#'-') 不満が空気に滲んでいる……。
己の周囲の人々に必要なものは、黄金の欠片ではない、と思っている。
一皿のシチューと、なんでもない今日の話を、そこにいる彼らに望んだだけ。
ただ貸し借りを帳消しにしただけだ。そしてこれからも同じこと。
それを知ったのなら、己の状態の如何にかかわらず、することは決まっていた。それに、
為そうと決意したことがあった。その為の行動を、起こすのは遠くない。
夜のこと。
首を傾げる姿に頭をかいてため息をつく。
本当に何を言い出すんだ。脈絡もない。
旦那とはスカリオーネのことだろうか、目立つ年上の取引相手は彼になる。はて、突然好意の比較対象にされる覚えがない。
「スカリオーネの旦那のことなら、
好きだの嫌いだの言える人ではありません。
どっち言っても妙じゃないですか……強いて言えば、…………
?
」
何も浮かばなかったとは言わないが何も正しい言葉がでない。
本人がいない場だから助かったが、この心に思い浮かんだサウダージをなんとも説明ができないのだ。
顔が見えないのをいいことに、眉をしばらく顰めながら。
くるりと指で帽子を回してから席を立つ。
「ああ言えばこう言う……わかりましたよ。
飲みたくなくて手が滑ったんです。
やかましくしてすみませんでした」
「あたくし、嫌いな人間は相応に気にかけているんです。
好きでないのに嫌えますか。無関心ですよ、嫌な奴は。
気遣いは受け取りましたので、大丈夫です。それでは」
言葉を流れるように吐き出し鈴の音を鳴らし。
銅貨1枚をエアハートの手元へと投げて。
そのまま、軽く挨拶をしながら男は階段を登っていっただろう。
ミズチに、自分たちが掃除をするのだからそれ以上ゴミを増やさないようにといい含めた。
レイ
そちら
「……あなたには"灯屋"のほうが天職だったのかもね」
少なくとも、先代と比べてしまえば苛烈さはないのだから。
生者のために働いているほうが、よっぽど向いているのではと。
穏やかに死者を眠らせるには、この都市は絢爛が過ぎる。
それから死者を守るには、あなたはいささか人が良すぎる。
……いつからなんて憶えてはいない。
あなたに感じていたものは、ずっとそんなものから変わらなかった。
……決して、それが嫌いなわけではないのだけれど。
死霊術師は、小さく何かを想うように目を瞑り、開いて。
「……それじゃあ、迎えに行ってくるわ。私の、大切な相棒を」
あなたにもそう伝え、踵を返して酒場を後にするのだった。
| (a32) 2021/12/17(Fri) 0:19:19 |
| エアハートは、「レモネードより中毒性がって何ですか!引き合いに出すとか許しませんよ!」と怒った。 (a39) 2021/12/17(Fri) 4:25:50 |
彼の発言を聞いて、後回しにする要素が見当たらなかった。そこで止められたらそれはそうなる。
悪い可能性をほとんど口にしない。可能性を断ち切るように、目指すものを言う。
ミズチもあの時、同じくしてローダンセの花を手にしたのだ。
なんとなくカウンターの花瓶に、スミレの花を挿しました。
そういえば、羽のない今なら 気兼ねなくお風呂に入れるのでは?
でも傷が痛むかもしれないのです。
アイシャはちょっと悩んでいます。
煙の魔女と取引をした。ついでに、己が探されていたことも聞いた。
「……このままいなくなるのなら、私も仕事がしやすくなるかしら」
大人しくその時を待っている姿を見て、何気なしに呟く。
「……いえ、やることは変わらないか。私も、誰も、彼も」
フェリックスに舌打ちをしてその背を見送る。「そんなことわかっているんですよ、だから信じられないんです」
それでも、貴方は私のひかりです。そう信じています。
「…………」
役者騙りの騎士は、誰かと二人連れ立って。
暫くの間、何処かへ姿を消した後。
夜には酒場へ戻って来て、適当な席で茫としていた。
何処かへ消えていた武器は二つ、再び在るべき場所へ。
がり、ごり。
甘いものは、好きな方であるはずなのに。
乳白色の飴に歯を立てても、今は何も満たされない。
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