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【人】 ピアニスト イングラハム演奏者として恥じない礼装姿のまま 先客にそう声をかけた。 それが始まり。 彼女の反応なんてお構い無しな私は まだ子供のように無作法なままで 彼女が何を思うかなんて知らずに。 「本、好きなの?」 そう言って手元の本に視線をやったりもした。 (20) 2022/02/13(Sun) 16:57:03 |
【人】 患者 アンネロズ どうしてかって? だって、彼の表情はどこか翳っていて。 息苦しそうな気さえ、してしまったのよ。 自由に演奏しているというより どこか型にはめられて窮屈そう。 そんな素人の意見がどこまで正しかったのか 知る機会はあったかしら? (22) 2022/02/13(Sun) 17:49:29 |
【人】 患者 アンネロズ*** [ あたたかな陽の光が照らすその場所で 私と彼は出会ったの。 眩し気に目を細めて、ベンチに腰かけている私と 礼装姿の貴方の出会い。それはただの偶然? ] (23) 2022/02/13(Sun) 17:50:33 |
【人】 患者 アンネロズ[ ふわり、とゆるく口角を上げて。 日焼けしていない白い頬は 少し不健康そうに見えてしまったかしら。 実際、不健康だからここにいるのだけれど。 礼装の彼とは対照的に私の服は病衣。 運命の出会い、というにはあんまりいい恰好は してなかったかもしれないけれど 服装を気にするのも今更よね。 ] (25) 2022/02/13(Sun) 17:52:35 |
【人】 患者 アンネロズ本は……好きよ。 ……ううん、 好きってことにしてる の。あんまりすることなくて。 退屈だから読んでる。 [ 手元の本に視線が移れば 題名が見えるように表紙を見せて。 代わり映えしない日々に退屈してたものだから つい、言わなくてもいいことまで 口走ってしまった私は、右手の指先を唇に当てた。 ] (26) 2022/02/13(Sun) 17:54:05 |
【人】 患者 アンネロズあ、これはひみつ、ね。 皆には本好きのアンネだと思われてるから。 名乗ってなかったわよね。 私はアンネロズ。 アンネって呼んでもらえたら嬉しいな。 (27) 2022/02/13(Sun) 17:54:36 |
【人】 ピアニスト イングラハム病院が慈善活動の溜まり場にされたとして 命懸けで戦う患者からすればいい迷惑だろうに。 そんな承認欲求のために患者を利用する気分は 当然、いいものとは到底思えない。 (28) 2022/02/13(Sun) 18:33:33 |
【人】 ピアニスト イングラハム*** その出会いは、冷えた心には心地いい。 いい天気だという彼女に同意を示し、 隣へと腰かければ見えぬ物も見えてくる。 太陽を知らぬ純白は外界との距離を感じさせ、 その程度は知らずとも、病院にいる理由が 私にもなんとなく分かる程だった。 (29) 2022/02/13(Sun) 18:34:04 |
【人】 ピアニスト イングラハム「退屈、か。」 正直、驚きはしなかった。 少し考えれば想像がつく話なのだから。 それでもってこの事は 周知の事実というわけでもないらしい。 脳裏に浮かぶ「同情」の二文字は ぐっと脳の奥深くへと押しやった。 「その本は僕も見た事がある。 確か本屋でも最近見かけたやつだよね。」 面白いの?そう聞かない理由は、 彼女の言葉がその答えだ。>>26 (30) 2022/02/13(Sun) 18:36:46 |
【人】 ピアニスト イングラハム幸か不幸か、彼女を知らない私は 彼女が造り上げたフィルターが効かない。 本好きのアンネと聞いて首を傾げたのは 言うまでもないこと。>>27 「あぁ、ごめん。最初に名乗るべきだった。 僕はエドワード・イングラハム。 よろしくね、アンネ。」 間違えていた順序を正すと 私は彼女に倣うように自身の名を名乗る。 (31) 2022/02/13(Sun) 18:38:58 |
【人】 患者 アンネロズ[ 慈善が集まることが悪いとは思わないし 音楽だったり人の優しさは患者にとって 勇気にもなりうる。 毒にも、なりうるけど。 私は、同情が入り混じった慈善は 毒だと思っているから 全部を受け入れることは出来ないの。 だからかもね。 全ては見えなくとも横顔だったり纏う雰囲気が 窮屈そうにみえた貴方は多少なりとも 頭の片隅に残り続けていたの。 ] (32) 2022/02/13(Sun) 21:11:57 |
【人】 患者 アンネロズ[ 本好きだ、なんてフィルターを通していないから 本好きのアンネ、なんて言われたら 首を傾げるのも当たり前よね。 そんな様子がおかしくて少し笑っちゃったわ。 ] こちらこそよろしく、エドワード。 [ 名前、全く知らないわけではなかったの。 だって、奏者の名前は コンサートの張り紙で見たもの。 知ってたとしても、本人から直接聞くのが 礼儀かなって私は思うから。 それに、彼が何もフィルターを通さずに 私の事を見ているように 私だって、彼を奏者というフィルターには 通したくなかったのよ。 ] (34) 2022/02/13(Sun) 21:14:47 |
【人】 ピアニスト イングラハム*** 分かるよ、と共感を示すべきか? 生憎と消毒薬に満ちた病室の虚無感を 私は知らなければ、知ることも無い。 私が知っていることはただひとつ、 共感こそ毒に他ならないことのみだ。>>32 毒を毒に思わせない器用さがあれば 少しはマシなことも言えたかもしれないが。 「確か、恋愛小説だったっけ。 僕も詳しくは知らないんだけどね。」 表紙とタイトルからの予測だったから その辺はあまり自信がなく答えてしまった。 それなら読んでみようかなって そう思う理由は、秘密だ。 (35) 2022/02/13(Sun) 22:27:23 |
【人】 ピアニスト イングラハム恐らく他者とアンネの間にとって 本好きというのは演劇の役であって それでいて私とアンネの間に演目はない。 笑うアンネの姿に尚更首が傾くばかり。 それから思いついたように目を見開いて 「せっかくだし、エドって呼んでもいいよ。 僕と仲のいい人は皆そう呼ぶんだ。」 彼女が私にアンネと呼ぶことを望むなら それと同等のことを望んでいたい。 そんなわがままを伝えてみせただろう。 (36) 2022/02/13(Sun) 22:28:23 |
【人】 患者 アンネロズ*** [ それから後、両親には出会った彼のことを 軽く話して、次また来てくれた時のために チョコレートを用意したい、なんて わがままを言ったりもしたわ。 それくらいなら、って喜んで両親は 私のわがままを叶えてくれた。 お友達と仲良くね、って両親に言われて 頬が緩んでしまったのは彼には内緒。 ] (38) 2022/02/14(Mon) 0:38:59 |
【人】 患者 アンネロズ[ さて、冷蔵庫の中のチョコレートが 貴方の目に触れるのはいつだったかしら。 私の病室に貴方が訪ねてきてくれたなら 笑顔で出迎えて、座って?って 椅子を指し示しながら、冷蔵庫からチョコを出した。 貴方が来るときのために用意してたの、 って少しだけ得意げにね。 ] (39) 2022/02/14(Mon) 0:39:44 |
【人】 患者 アンネロズ来てくれてありがとう。 お話の続きをしましょう? [ 貴方と向かい合うようにベッドに腰掛けて 話し始めることにするの。 そうね、この前の本は読み終わったとか そんな話を最初にすることになるかしら? 前は貴方の事を聞いて終わったから 私の事を聞かれるのなら、 病気のこと以外なら 何でも答えるつもりよ。 ]* (40) 2022/02/14(Mon) 0:40:20 |
【人】 ピアニスト イングラハム仲間入り。言い得て妙な話だ。>>37 こちらの意図を丁寧に読み解く姿に 私は驚きを隠すことが出来なくて。 「そういうことになるね。 正しくは、仲良くなりたいと思うくらい 君に興味を惹かれてるってところかな。」 そういう意味では仲良しの人よりも 特別なのかもしれないね、と。 楽しげに笑っているアンネに私は告げる。 (41) 2022/02/14(Mon) 3:02:01 |
【人】 ピアニスト イングラハム*** 私が彼女に会いに行った回数など 両手両足の指を足しても及ばない。 彼女の両親に会うことがあったのなら プロの演奏家らしく礼儀正しく振舞っただろう。 しかし彼女の前とあっては私も流石に気が緩む。 見舞いに来る度に彼女に何を話そうか 次第に考えることが楽しみになっていた。 (42) 2022/02/14(Mon) 4:36:12 |
【人】 ピアニスト イングラハムいつの日だったか。 お見舞いにと持ってきていた果物を 冷蔵庫へとしまおうとした時に 私はそのチョコレートを見つけた。 「これは?」と尋ねてみれば どこか得意げにチョコを準備するアンネがいて 私は嬉しさのあまり思わず笑ってしまったのは 今でも記憶に新しい。 (43) 2022/02/14(Mon) 4:38:50 |
【人】 ピアニスト イングラハム「ふふ、僕のためにか。 それなら今度から紅茶を持ってこよう。 アンネが紅茶が苦手なら他のお茶でもいい。」 優しさと気遣いに何も添える物がないのは すこしばかり寂しい気もするからと その日を境に見舞いは小さなお茶会へと変わる。 (44) 2022/02/14(Mon) 4:40:34 |
【人】 ピアニスト イングラハム重ねられるお茶会の時間。 アンネが楽しそうに聞いてくれるから 最初はほとんど私の話ばかりだった。 もちろん彼女の事を聞こうとしていても なんだかんだで自分の話をして時間切れだ。 またいつものように迎えてくれるアンネに 私は微笑みかけて、あの時の本の話を始めると 読み終わったと彼女が言っていたものだから。 (45) 2022/02/14(Mon) 4:41:55 |
【人】 ピアニスト イングラハム「本の見所を聞いてもいいかい? 本の内容は流石に聞けないけど... 君がどんな場面が好きだったか、 君が見たままで聞いてみたいんだ。」 本を読む前に聞くのはタブーだったかな、と アンネのリアクション次第では今のは無しと 取り下げることになるだろうが。 頭にチラつくのは病気のこと だかその話題は繊細なもので こちらから聞くことは、本来許されない。 (46) 2022/02/14(Mon) 4:42:21 |
【人】 ピアニスト イングラハム好きな食べ物のことなど アンネに聞かれたことはお返しにと 聞き返すことがほとんどだった。 後は...そうだね。 どんな演奏を聞いてみたい?とか どんな場所に行ってみたい?とか 話はどんどん病院の外のことへと 渡り歩いていくことになっただろう。 (47) 2022/02/14(Mon) 4:43:48 |
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