人狼物語 三日月国


149 【R18身内村】LOVE OR ALIVE

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【人】 雨宮 瀬里

 

 夢を見た。

 とても大切な人と手を繋いでどこかへと歩いている夢。
 顔には陰が掛かっていてそれが誰かはわからない。

 私は、誰かの名前を呼んでいるのに、
 それがどんな音なのかわからない。

 聞こえない。自分の声も、誰かの声も。

 
(25) 2022/05/27(Fri) 20:21:14

【人】 雨宮 瀬里

 

 目を覚ますと、私は知らない場所にいた。
 朝の陽ざしがとても眩しく、暑く。

 季節が夏に移り変わっていることを知る。

 
   知らない場所、というのも語弊があった
   私は確かにそこを知っていた。
   知っているはずなのに、思い出せないのだ。



 
(26) 2022/05/27(Fri) 20:21:34

【人】 雨宮 瀬里

 

 私は私のものであるらしい♀唐開ける

 私のものであることはわかっている
 だけど、そう、何かが違う。
 
 鞄の中を開ければそれは顕著で、
 詰められた服はどれもカジュアルなものばかり
 
 だけどそれも、
 どうしてか私のものであることはわかってる。
 ただ、それを着ていた記憶がないだけだ。

 
(27) 2022/05/27(Fri) 20:21:50

【人】 雨宮 瀬里

 

 恋矢を取り除いた貴方と
 それに伴って恋矢が消滅した私と
 その程度に差があったかどうかは神のみぞ知る話

 少なくとも私には
 あの春から今までの記憶が
 ぼんやりと、朧げにしか残っていなかった
 朧げに、残っていたことは、不幸中の幸いか。


 ……いや、思い出そうと思えば
 思い出せることもある
 
 例えば私が、学校を卒業して弟子入りをしたこと
 そういえば着る服が変わったということ
 そう、私は確かにあれから1年以上の歳月を
 雨宮瀬里として生きてきたのだ。

 季節が夏に移り変わっていたことも、
 次第に納得することは、できた。

 
(28) 2022/05/27(Fri) 20:22:27

【人】 雨宮 瀬里

 

 私がそれを見つけたのは、
 たくさんの違和感を抱えながら
 見知らぬ部屋を見まわしているときだ

 一通の手紙。>>1:L0

 瀬里へ、と書かれたそれを、手に取ると
 私はその封を開く。

 見慣れた文字。
 見知らぬ文字。


 「 瀬里へ 」


 小さな声でそれを呟く。
 誰かの声がそれに重なった気がしたけれどすぐに霧散した

 
(29) 2022/05/27(Fri) 20:22:44

【人】 雨宮 瀬里

 


        


        
宮々


        
蓮司


        


        
お見合い


        
記憶



 手紙に書かれた単語が、
 ただの単語として、意味も成さずに滑り落ちていく

 だけど、ここに書かれたことが本当だとすれば……
 私は、暫くその文字をずっと指で辿っていた。 *

 
(30) 2022/05/27(Fri) 20:23:18

【人】 宮々 蓮司

俺は宮々に戻っていた。
そう、体の不調を祖父に相談し、その治療のために。
それを思い出して最悪の気分だった。


とても幸せな夢を見ていた気がする。
どうしてもどんな夢だったか思い出せないが、とても幸せな夢。


だが、其れがただの夢であるとわかればあとは憂鬱だけが残った。
これから陽が高くなればまだまだ蒸し暑くなるだろう。
(31) 2022/05/27(Fri) 22:27:57

【人】 宮々 蓮司

着替えを済ませて離れを後にした。
昨日は顔を合わせなかったが、いつまでもそうではいられないだろう。

父と母、そして弟と妹。
祖父を除けばそれが家族と呼べる者たちだ。
本音を言えば顔も見たくない。


気が重い。
足取りも。

ここへ来るときは、そんなことほとんど気にしなかったのに。
なぜだろう、わからない。
(32) 2022/05/27(Fri) 22:28:16

【人】 宮々 蓮司

瀬里の部屋の扉を誰かが三度叩いた。


 『 雨宮瀬里さん、と言ったか。
   よく寝られたかな? 』


扉を開ければそこにいたのはひとりよ老人だった。
好々爺といった感じで笑みを浮かべた物腰柔らかな老人。
髪は白く、皺は深く、そして両の瞳は紅く。


 『 朝から突然すまんの。
   いきなりじゃが、

   あんた、
   ……ここに来た理由を覚えておるか? 』


ニコニコとした笑顔。
だが、その目は決して笑ってはいなかった。*
(33) 2022/05/27(Fri) 22:29:09

【人】 雨宮 瀬里

 

 扉が3回叩かれる。
 そこに立っていたのは見知らぬ老人だった。
 ほんの少し、身構える。

 人のよさそうな顔つき、白い髪、刻まれた皺
 そして ────── 紅い瞳。


 「 ……あの、えっと。
   ここに来た理由…?
   いえ、覚えていません。 」


 不安げな表情を浮かべながら、
 私はその老人に答える

 紅い瞳が、どうにも心をざわつかせる。

 
(34) 2022/05/28(Sat) 0:40:45

【人】 雨宮 瀬里

 

 答えながら、私は老人にさらに問いかけるだろう
 手に持っていた封筒を見せながら。

 手紙を見せはしないが、
 いわゆるラブレターというやつに近い。
 他人に中身を見せるものでもないだろうから。


 封筒の表面には「瀬里へ」と書かれており、
 裏面には「蓮司」と書かれているはずだ。


 「 手紙は、蓮司、という人からのものでした
   私は、……ちょっと、わからなくて。
  
   あの、ここは、どこなんでしょうか。
   あと、この、宮々、というのは、その… 」


 言葉を紡げない。
 宮々が何を指すのかはわからないし、
 矢継ぎ早に聞いた質問の答えは、
 この目の前の老人が持っている、そんな気がした。

 答えを待つのが正解だ、と。

 
(35) 2022/05/28(Sat) 0:41:22

【人】 雨宮 瀬里

 


 私は、気づかなかった。
 
 その名前を、滞ることなく宮々いえみやと読めたことに。

 かつて冗談でもなんでもなく
 雨宮瀬里という人間は、その名前を初見の時に
 みやみやさん、と呼んだというのに。 *


 
(36) 2022/05/28(Sat) 0:41:51

【人】 宮々 蓮司

老人はその答えに目を細めた。
崩れぬ笑みはその胸の内を明かさない。


 『 そうか。』


短くそう言うと老人の背中に純白の翼が現れる。
恋天使の翼。老人は女に自分が同類であると示したのだ。
小さな身体に似合わないかなり大きな翼。


 『 宮々はその蓮司≠フ家じゃよ。
   今のあんたには知らん男だろうがな。』


相変わらず口元には笑みを浮かべたまま、笑わぬ目を女に向けていた。
(37) 2022/05/28(Sat) 9:41:59

【人】 宮々 蓮司

老人は少しばかり逡巡するようを見せた。
飄々とはしていたが何か迷いのようなもの。


 『 恋矢についは知っておるな?
  蓮司≠ヘあんたの恋人≠カゃった。

   ……手違いでな。

   それでわしがその手違いを元に戻したのじゃよ。』


老人は言う。
ちょっとした事故で二人は恋矢に結ばれてしまったと。
宮々にはそれをなかったことにする方法があって、二人の同意のもとにそれを行ったのだと。今はその影響で少し記憶に混乱が生じているだけなのだとも。
(38) 2022/05/28(Sat) 9:43:10

【人】 宮々 蓮司

 
 『 朝食が済んだら駅まで送らせよう。』


老人の赤い目が笑う。
その背の大きな翼をはためかせながら。*
(39) 2022/05/28(Sat) 9:43:29

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ………手違い 」


 私はただその言葉を繰り返す。
 ちょっとした事故、恋矢をなかったことにする、
 その言葉を頭の中で繰り返した。

 
 「 そう。なんですね。でも、 」


 でも、の言葉の先を紡げない。
 この頭にこびりつくほんの少しの違和感はなんだろう。

 
(40) 2022/05/28(Sat) 10:06:13

【人】 雨宮 瀬里

 

 恋天使のお見合いのことは知っている。
 蓮司という人が手紙に書いていた、
 お見合い、というのはそのことだろう。

   恋天使のお見合いで
   手違いなどが起こるだろうか


 手紙が本当であるならば
 蓮司という人は、私を愛していてくれたらしい
 記憶を喪っても、取り戻したいと思うほどに。

   一番私が引っかかっているのは
   その感情を目にしても、
   何も嫌な気持ちが起こらないということ。
   私が恋に抱いていたはずの忌避感を
   なぜか抱いていないということ

 ── まさに、私は恋をしていたのだろう。
    そしてそれが、嫌な感情でなかったことだけは
    どうしてか、今も思い出せるのだ

 

 
(41) 2022/05/28(Sat) 10:06:42

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……あの。
   蓮司さん?に、会うことはできますか 」


 私はまっすぐに紅い瞳を見つめて問う。
 
やっぱりこの紅い瞳は私の心をざわつかせる。


 会ってもわからないかもしれない。
 会っても思い出せないかもしれない。
 思い出しても、何の意味もないのかもしれない

 だけど手紙のそのひとは、私に会いたいと望んでいた
 それが、そのひとと記憶にない私が望んだことならば
 せめて叶えるくらいは、……そう願って。 *

 
(42) 2022/05/28(Sat) 10:07:02

【人】 宮々 蓮司

老人は目を伏せた。
先ほど広げられた翼は折り畳まれている。


 『 会ってどうする?
   既に恋矢は抜き取ったあとじゃ。
   二人ともそれはよくわかってるはずじゃろうに。』


口調が少しだけ棘を帯びた。
恋矢が結びつけた二人の恋。
それがなくなったのだから、二人はもはや恋人でも何でもない。
赤の他人になったのだと、老人はつげていた。
(43) 2022/05/28(Sat) 10:47:24

【人】 宮々 蓮司

記憶の混乱。
なぜここにいるのかその理由すらわからず、突然恋人がいたのだと言われればその混乱は益々深まったことだろう。
それをどうにかしたいと思うのは、極自然のこととは言え。


 『 あまり混乱はさせたくないんじゃが。」


老人が渋っているのは明らかだった。


 『 まずは朝食を摂りなさい。
   その間に蓮司に会うかどうか聞いておく。』


老人はそういうと女の意向など気にもせずに部屋を後にする。
蓮司≠ェ会うと言うのならば会わせる。
そうでなければ──── *
(44) 2022/05/28(Sat) 10:47:57

【人】 雨宮 瀬里

 

 広げられた大きな翼
同族の証
が畳まれる
 残ったのは紅い瞳のそのひとだけ。

 
 「 それは…… 」


 会ってどうする?の問いには言葉を詰まらせる
 話しがしたいという気持ちもないし
 会っても知らない人だろう、という想いは強い
 赤の他人になった、そう告げる老人の声は、
 まぎれもなく事実だった。

 それは今の私にとって≠サの通りの意味を持つ
 
だけど前までの私≠ノとっては?


 
(45) 2022/05/28(Sat) 11:32:10

【人】 雨宮 瀬里

 

 手紙が残っていたことと、
 手紙にお見合いと書かれていたこと
 恋に対する忌避感がないこと。

 それらは確かに私に恋人≠ェいたのだろう事実を
 浮かび上がらせる。

 老人や、この手紙の主が嘘を吐く理由もない…筈だ。
 老人が渋っているのもそれが真実だからだろう。

 そして老人にも、私が戸惑っている様子は
 そのまま伝わるに違いない。

 
(46) 2022/05/28(Sat) 11:32:22

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ……だけど、
   会わないのは、後悔すると、思うから。
   多分記憶が混乱する前の私だったら、
   会いたい、って願うような、そんな気がするんです 」


 そのひとの気持ちはわからない。
 今の私の気持ちでもない。

 だけど今までの雨宮瀬里≠セったら。
 そうしたい、と望むだろうから。

 気の強い、私のことだから。
 20年以上この心で生きてきた。
 記憶がなくても、私のことくらいはわかる。


 朝食を食べろという声には頷いて、
 私は蓮司≠フ意向を、老人の答えを、待つことにする
 
(47) 2022/05/28(Sat) 11:33:31

【人】 雨宮 瀬里

 

 恋人だった人との記憶はないけれど
 私が確かに変わった、という事実だけは、
 私の中に薄ぼんやりと残っている

 以前のような洋服を着なくなったこと
 母親とはそれでも良好な関係を築いていること
 家を出て、陶芸の道に私が進んだこと

 それは蓮司≠ニ関係ない部分だから
 記憶の混乱が起きていないのだろうか

 それでもその変化≠キるきっかけは思い出せないから
 それをくれたのは、まぎれもない、その人なのだろう。 *


 
(48) 2022/05/28(Sat) 11:33:57

【人】 宮々 蓮司

彼女の答えは会いたい≠セった。
そして自分はそれを聞いてもまだ迷っていた。

雨宮瀬里。
名前を聞いても、恋人だったと聞いても顔も思い出せない。
2度目のお見合いで出会ったらしい彼女。
わからない。


何も覚えていない元恋人に会ってどうするのか。

それでも。
祖父が伝えてきた言葉が背を押した。
「彼女に会わせてほしい」
それが恋矢を抜く前の自分が頼んだことらしい。

(49) 2022/05/28(Sat) 12:54:53

【人】 宮々 蓮司

朝の時間が過ぎて、昼よりも前の頃。
外の温度はたいぶ上がって汗ばむほどになってきていた。

瀬里が案内されたのは敷地内の広い庭。
そこには男がひとり佇んでいる。

風景には馴染まない洋装で。
短めに切り揃えられた髪。
男が瀬里の方を向くと、左右で色が違う瞳が彼女を捉えた。*
(50) 2022/05/28(Sat) 12:55:25

【人】 雨宮 瀬里

 

 昼よりも前のころ、
 空には高く陽が昇り、木々の緑を美しく照らす
 案内された庭には洋装の男性がひとり佇んでいる

 私は白のブラウスと赤紫のスカートを纏って
 その人のほうへ近寄っていく

     それはいつ手に入れたものなのか
     私は、憶えていない。
     そこにも貴方との記憶があるのだろう


 その人の背中を後ろから見たとき、
 会うのが怖い、と思ってしまった

     怖い、という感情が、
     いつかの感情に重なった気がしたけれど
     それはいつのことだったのかわからない


 
(51) 2022/05/28(Sat) 13:43:51

【人】 雨宮 瀬里

 


 「 ………こんにちは、蓮司さん? 」


 名前を口にして、
 どこか違和感があったのは何故だろうか
 
     もしかしたら蓮司さん≠ネどと
     私は、呼んでいなかったのかもしれない


 
(52) 2022/05/28(Sat) 13:44:12

【人】 雨宮 瀬里

 

 その人がこちらを振り向く。
 二色の瞳がとてもきれいで、だけど、私は、


 「 ……?? 」


 何かが、とても違和感で。


 「 目、大丈夫、なんですか 」


 
陽の光の下
、美しく煌めく二色の瞳に、
 何が大丈夫じゃない≠アとがあるというのか
 それもわからないまま、私は本能的に、
 そんな言葉を、口にしていた。 *

 
(53) 2022/05/28(Sat) 13:44:53

【人】 宮々 蓮司

その子は現れた。
白いブラウスに赤紫のスカート。
モノトーンの自分とは違うその姿に、何故か少し違和感があって、だけどとても似合っているように思えた。



 「 雨宮瀬里 」


口にしたその響きにどこか懐かしさにも似た感じがある。
記憶にはなくとも初めてではないからか。


 「 瀬里……
   あ、瀬里≠ナいいか? 」


そう、一度呼び方を確かめた。
(54) 2022/05/28(Sat) 14:40:15
 




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