104 【R18G】異能遣い達の体育祭前!【身内】
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普川たちに運ばれて、保健室へと。思ってたより大変だったかもしれない。
「────……ぅ、…………ん……」
見慣れない天井。
まだ怠い頭で、そんなふざけたことを思いつく。
どうやら、良くなってはきてるらしい。
上体を起こし、辺りを確認……しようとしてずきりと軋む。
頭を押さえるとガーゼ。
切れた額を、処置してくれたらしい。
「……あぁ〜…………」
視線だけで、部屋を確認する。
場所は、わかる。保健室だろう。
誰が居る?
まず考えたのは例の二人。
それぞれベッドに横になっていて、休んでいる?
あ、鏡沼クンは起きてるみたいだ。
それから、もう一人。
僅かな時間ではあったが、誰かがいたような気がする。
……とても確認できるような状態ではなかったが。
多分、男子生徒。
鏡沼
「…………あぁ……今、ね」
声を掛けられた方を、しっかりと向き、返す。
多少の鈍さはあるものの、それは体調からだろうか。
少なくとも、あなたは視えるし聴こえるのは確かだ。
鏡沼
「気分、かい……?
……よろしくないね、最悪と言っていい」
わざとらしく、大きく溜息。
薬なんて使うもんじゃないなと。
ごろりと、寝返りを打つ。
横ではあるものの、あなたを真正面に捉えて。
「…………鏡、か……
うん、だらしない女の顔でも見てやろう
……こうなるのだと、無様な姿を焼き付けてやろうか
ついでに、写真でも撮っておくかい?」
あなたの手元にあったスマホを見つけて。
鏡沼
「薬は、まぁ……
異能の強化とか、そういうつもりじゃなかったんだ
……ただの最後の踏ん切りだよ
どこかで、セーブをかけてしまうかもと思ってね」
事実、あそこまでの孤独な世界は初めてだった。
その点で言えば、狙い通りの効果を得たということだろう。
言い訳のようなものを並べたてるが、幾分かは殊勝な態度。
屋上での一時と比べれば、とてもしおらしい。
咎めるような言葉に困ったように眉を寄せて、
控えめに笑う。
「身嗜みを整えたら意味がないだろう?
かの家康公と、同じことだよ
……見苦しいものを撮らせるなというなら、
少しばかりは整えるが……」
焼け石に水くらいにしかならんよと。
あなたが気を遣ったというのに、
恥じらいなどという乙女なものは持ち合わせてなかった。
鏡沼普川
「ひっどい顔」
けらけらとスマホに送られてきた写真を見て笑う。
自分のことだからこそ、遠慮はない。
……ん、他にも通知があるな?
メッセージを確認して、苦笑。
さらに、扉からの声。
「────ぶふっ……!」
噴き出した。そのままくつくつと、喉で笑う。
風紀委員様に対して、生意気な態度だ。
「ひぃ〜…………後で、また話してやるよ
……いやいや、そこまで酷くはなかっただろ?」
精々、吐いて、流血して……うん、大丈夫だろ!
扉や機材を壊すより幾分かましだ。
鏡沼普川
「……はいはい、また後でなぁ」
凄む風紀委員に、目をぱちくりとしながらも。
去っていく姿に手を振ろう。
割と、考えたつもりだったんだけどなぁ。
「さぁて、しばらくはこの画像を背景にしておきますか
こう、自責の念を込めてね
……そういえば君たち二人がここに運んだのかい?」
重くなかった?
そんな様子で、鏡沼創と、朝日元親を交互に見る。
鏡沼
「へぇ〜……ふ〜ん、はぁ〜…………」
既に去って行ったであろう扉を見やる。
また缶コーヒーでも押しつけてやろうか。
「私が言うのもなんだがねぇ、あんまり無理しちゃいかんよ
誰かに害が及ぶものでもなかったんだ
どこに居るのかも明示したしね
……いや、音が入ってなかったとは思わなかったけど」
つい先ほど知った事実。
そりゃ不安にもなるわな! 私だって心配する!
笑い事ではないので、口には出さないが。
「…………よくもまぁ、見つけてくれたもんだ
……大した後輩だよ」
君と、寝ているのだろうか朝日と。
「……君は、今度は自分から探しにきてくれたんだろう?
何かお礼をしなくてはな」
私が出来るものなら、一つ、なんでもしてあげよう。
鏡沼
「…………ま、そうだねぇ」
目を閉じ、焼き付いた白い世界を思い出す。
ぞわっと、肩が震える。
重くのしかかる空気を振り払うように、深く息を吐く。
「……無茶、か
いや、そうだな……結果的にはそうなってしまった
……やはり、異能なんてものは手に負えるものではない
少なくとも、……私はそうだったみたい」
ふっと、小さく笑う。
寂しそうに、小さく小さく。
鏡沼
「まぁね」
軽く肯定を。
こちらだってずっと感じてきたものだ。
「……少しくらい、抗ってみたかった
ただそれだけだよ
……はぁ〜、ほんと……よくわからんもんだねぇ」
君たちも、私自身も。
「…………とりあえず、今日はもう出席出来そうにないな
大人しく、ここで待っているさ
……そういえば、鏡沼クンは大丈夫かい?
わざわざ私が目覚めるのを、
待っていたわけじゃあないだろう?」
鏡沼
「…………まぁ、いいかぁ
色々あって、誰かの為に異能を使えると証明したかった
最後くらい、ね
全部自分の意地の為、だよ」
それで、他人を巻き込んでりゃ世話がないなと。
苦々しく思う。
「へぇへぇ……それは悪う……
…………私、以外にも薬を口にした?」
言い様に、何かが引っ掛かった。
生殺与奪の権を他人に握らせるな。
なんて、近頃良く聞く言葉を思い出しながら『薬』を飲む。
頭の奥がずしりと重くなる感覚も、ずっと重いままなら慣れるもので。それよりもまともに考えが追い付くこと、喋れることの恩恵と比べればあまりにも軽いデメリットで。
「ぼくの生き死には柏倉先輩次第……か」
楽を知らぬまま不便の中を踠いて生きている状態と、一度楽を知ってしまった後で不便に戻るのとでは話が大きく違う。
自分は強い人間じゃない。今から前の状態に戻ればきっと『踏み外す』。物理的にか倫理的にかはその時にならないと分からないが。
なんにせよ、二者択一の選択肢から外れるためには、とるべき行動はひとつしかない。
異能を制御する。
今まではできないと思っていたし、実際できなかった。
けど薬で異能が封じられると言うことは、少なくとも特定条件を揃えられれば異能を止められる、ということでもある。
とはいえ独力では取っ掛かりすら掴めないのも事実。
柏倉先輩の親を頼るか、同類異能らしい鏡沼先輩を頼るか、とりあえず同じクラスの面々にツテを聞いてみるか。
……いいや、該当者の中で最初に見つけた相手に聞いてみよう。なんて肝心なところを雑に決めながら、神谷は廊下を歩いていく。
鏡沼
誰に、とは言わない。
わかっている。
それよりも、だ。
「────本当かい?」
疑うような鋭い視線。(当社比)
自分が馬鹿を見て、それで終わりだと片付けた事件。
……被害者じゃなくて、加害者なのだとしたら?
犯人からの取調べが行われそうになる。
「…………私が、意識を失った後、
何があったのか、聞いてもいいかな?」
瞳が揺れる。
鏡沼
「じゃあ、今ビンタされるのと
後でビンタされるのとどっちがいいかな?」
もっと大きな理不尽で返してきた。
何でもないのであれば、敢えて外すようなこともするまい。
乾いた笑いに対して、瞳は湿っていく。
「────お願いだ
鏡沼クン、教えておくれ
……それとも、言えないようなことがあったのかい?
そうじゃないのなら、私を安心させて……?」
| 時刻は昼下がりを過ぎて。 いつものように、投げ掛けられた生徒の声に応じる。 そんないつも通りの道すがら。 ──今朝の放送、変じゃなかったですか? 「ああ、恐らくは機材の不調でしょうかね。 放送部からの要望も、検討し直すべきかもしれません」 ──放送室で何かあったみたいですけど…。 「いえ、特別何かがあったとは聞いておりませんよ。 その事は風紀委員が対応にあたっていたようですから。 そちらから、特に連絡が無いという事は きっと大きな問題は無かったのでしょう。」 柏倉陸玖の両親は、異能の研究を手掛けている。 少々耳聡い生徒であれば、そんな噂を聞く事もあるだろう。 だから異能に関する相談にも自ら応じるのだと。 そして、良くも悪くも。 だからこそ、生徒会副会長なのだろう、とも。 (83) 2021/11/04(Thu) 19:21:46 |
| (a93) 2021/11/04(Thu) 20:11:44 |
| (a94) 2021/11/04(Thu) 20:12:33 |
ピンポンパンポーン
『もうすぐ下校時間になります
校内に残っている生徒は作業を中止し、
速やかに下校の準備を始めてください』
『繰り返します』
『もうすぐ下校時間になります
校内に残っている生徒は作業を中止し、
速やかに下校の準備を始めてください』
ピンポンパンポーン
| 柏倉陸玖は、これからは、それも改めなければならないのだろうな、と思う。 (a95) 2021/11/04(Thu) 20:47:36 |
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