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【人】 メカニック ゾズマ【夜明けの刻限、その直前】 [“やれるうちに、やれること”を完了したゾズマは、大量のファイルを――データではなく物理のそれを抱えて自室を出た。 艦内の各装置や設備などの、使用方法やメンテナンスについて詳細に纏めた(そして、素人にも極力解り易くなるよう解説を添えた)紙冊子を個別に収めたプラスチック製のファイル。昨夜の成果たるコールドスリープ用のそれ>>2:386>>2:387>>2:391の紙媒体版も、当然このファイルの束の中に在る。 ……この作業のお陰で、ゾズマがコールドスリープに向かう時刻はこの通り、アンテナに指定された「夜明け」の一歩手前になってしまった。] (244) 2022/07/16(Sat) 11:27:57 |
【人】 メカニック ゾズマ[データ化したマニュアルであれば加筆修正の際の手間も減り、またかさ張らずにも済むところだったが、閲覧の際に艦内エネルギーを必要とするというデメリットがある。 余程のエネルギー枯渇でも無い限りはさして気にすることではなかったが、外部からの補給が見込めない現状、その“余程”の事態が無いとも言い切れなかったため、端末共有用のデータ>>166>>221のスペアという形で残せるなら残すに越したことはなかった。 だからゾズマは、担当した全てのマニュアルを、わざわざ紙の形態でも残すことにした。 幸い、生命維持装置や観測機器など艦に固定された装置に関してはコールドスリープ装置と同様、予め紙媒体のマニュアルが存在していたため、それへの加筆だけで済んだ。] (245) 2022/07/16(Sat) 11:28:46 |
【人】 メカニック ゾズマ[さて、このマニュアル文書化の作業であったが。 ダビーと分担する形になったことで負担が減った(互いに負担を減らせた)という有難い面もあった。] 『今日の予定は、修理が必要な設備の早急な修理と 各種引き継ぎに、データ入力・解析・マッピング作業。 最後のはスピカの負担を極力減らすためにも できるところまでやる心算。 提案には賛成。 コールドスリープ装置のマニュアル化は完了済み。 その他生命維持系・観測・解析系はこちらでやるから 操縦・動力・通信系のマニュアル化はダビーに任せる』 [そのメッセージ>>143を見た時にダビー宛てに返したのは、こんな事務連絡。 分担の内訳についての具体的な打ち合わせがあったならば、それに応じた連絡および作業を行っただろう。] (246) 2022/07/16(Sat) 11:29:06 |
【人】 メカニック ゾズマうん、やれるところまでやった。 徹底的に、やった。 [整備について、本来なら体で覚えるのが一番だろうとはゾズマも考えていたが、限られた時間の中でこの理想は貫けない。あとはこの整備指南書と、アンテナも含めて残されたクルーの働きを信じるしかない。 スピカに引き継いでもらった重要事項の他に、バーナードのコーヒーサーバーの件と同様に整備ノウハウの幾つかに関しては今日のうちに既に誰かに伝授していたかもしれないが、その場合であっても、残していくマニュアルが役立つ場面があるかもしれない。 なお、この“徹底的に”というのは、優先度がとりわけ低く、けれども“人間的な”生活にはあるに越したことがなく、かつ既存のマニュアルが手元に無かったささやかな器具――それこそコーヒーサーバーだとか一般的な音楽プレイヤーだとかのマニュアルも作成した、ということである。 これらは全て手書き、かつ本当に必要最低限、しかもページ全体の(35)1d50%に誤字脱字が見られる解説書になってしまったけれども。] (247) 2022/07/16(Sat) 11:29:30 |
ゾズマは、35%の誤字脱字ならそれなりに解読できる筈だ。多分。おそらく。 (a72) 2022/07/16(Sat) 11:30:49 |
【人】 メカニック ゾズマ[こうして多量のマニュアルを抱えながら、コールドスリープルームに入る前に一度いくつかの場所に赴く。 まず向かったのは、メインデッキ。 コールドスリープ装置以外のマニュアルの山を、手近な机にどんっと置いておく。 本来なら各設備ごとにその付近に冊子型マニュアルを配備しておきたいところだったが、そこまで艦を巡る時間は取れなそうだった。コールドスリープ装置だけは、これから必ず向かう場所だったから、自分の手でマニュアルを配備しに行くことにして。 それから、メインデッキ奥の艦長室>>1:267へと足を運ぶ。 アンテナは、プライベートに関わる空間以外であればどこでも、いつでもクルーを見聞きできるけれども。 これから果たしにいく用件は、ヒトガタの“彼女”と相対して伝えなければ、と。] へーい、キャプテン。 スリープ刻限のギリギリってとこで 来ちゃってアレなんだけど――… (248) 2022/07/16(Sat) 11:31:28 |
【人】 メカニック ゾズマキャプテン。 もしも、スピカを最後まで残す心算ってなら。 [ヒトに似た形のメカのヒトミを、真っすぐに見つめて] スピカのこと、――――、 アナタとアタシのトモダチのこと、頼む。 最後まで。アイツの側にいて。 手、握ってあげて。 [「頼む」「側にいて」だけであれば、この艦そのものたる艦長に対して言うまでもないといえば言うまでもないこと。けれども「手を握って」というのは、はっきり言わなければきっと伝わらないと思って。 スピカとアンテナ――スピカが“キュー”を重ねて見ている相手>>1:425――の心中を望む意図がゾズマにあった訳ではない。そもそもキューのことについて自体、ゾズマは知らない。 ただ単純に、スピカの“友人”どうしとして、友の後を託すという想いからの願い。] (249) 2022/07/16(Sat) 11:31:43 |
【人】 メカニック ゾズマ―――――…、うん。 [ここまで努めて冷静に構えた心算だったが、流石に、堪えた。 スピカにあの時、「むしろ来ないで」>>149とまで言い置いたのは正解だった。あくまで業務の話――コールドスリープ装置のマニュアルの見直しの件も含めて>>156>>239――に留めておいて良かった。 こんな調子で、この後彼女に見送りにでも来られたら、何か、何か自分の内側のものが崩れてしまいそうな気がしたのだ。 まるでどこかの誰かさん>>2:221>>2:224みたいに――という思考までは、その当時もいまこの時も、浮かばなかったけれども。 「またね」といって別れながらも、その「また」がもう二度と来ない可能性。“いま”の自分がいくら思い巡らせたところで、自分一人ではどうしようもないこと。 その未来を諦観して受け入れてしまうことだって、こんな自分ならできてしまうかもしれない、けれど――。 “受け入れてたまるか”と、己の本音>>1:369と、バーナードの“終わるから死んでもいいって話じゃない”>>1:373が告げている。] (250) 2022/07/16(Sat) 11:32:19 |
【人】 メカニック ゾズマ[……そもそも、ゾズマが本気で全ての悲劇を諦観して受け入れられてしまう性質であったならば。 あの2年前の事故で挫けかけることだって、なかったのかもしれない。それはさておき。] っと、……。 別にスピカじゃなかったら 最後まで側にいなくていいとか そういうワケじゃないから! [アンテナの思考回路にどこまでファジーな要素があるか否か、そのアンドロイドの開発陣でないゾズマには測れない。 故に「念のため」といった態で、他のクルーについても明言することにした。] ドクターでも、サダルでも、 ヒロミでも、あんなバーニーでも、 最後まで残すやつのことはきっちり頼むよ。 嫌がられなかったら手だって握ってあげて! [誰に対しても絶対的に“あの人なら大丈夫”とは言い切れない。そこまで人間観察に長けている身だと、自分自身についてゾズマは考えていない。それでもある程度の想像くらいはある。] (251) 2022/07/16(Sat) 11:33:01 |
【人】 メカニック ゾズマ[船医であり、それこそ凄惨な事故現場の当事者でもあったチャンドラ。人の精神、人の心について誰よりも長けている筈のサダル。このふたりにはある程度“最期を待つ者”としての心得があると思えた――否、思いたかった。 ヒロミ。この艦の技術に関わっているとはいえ一介の研究者であり、自分とは似ているようで異なってもいる“夢追い人”と言える彼は大丈夫ではないかもしれない(たまに気になる衛生面の問題>>209を別としても)。専門外の(とゾズマは思っていた)料理もこなせる程度なんだからある程度は踏ん張れるかも、とは思えども。 バーナード。彼について、ヒロミとは別の意味での気掛かりは確かにあった。すなわち、飼い主に不調を隠すという猫の習性が如き“たぶん大丈夫と言って実は大丈夫じゃなかった疑惑”だ。それでもおそらく“最期を待つ”役になる心構えはあるだろう>>1:373――あの時>>1:379の割り切れなさは未だにあったけれど。 (彼が殿を務めた場合に何の策を採ろうとしているかまでは、ゾズマは知らないままだった)] (252) 2022/07/16(Sat) 11:33:18 |
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