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【人】 アジダル[ 擽ったそうに捩る身体をつかまえて、 脚を絡めながら下腹部を緩く撫でる。 僅かに弛んでいた皮膚の触れ心地は、 すっかり本来のすがたを取り戻して、 少し前までそこに命が入っていたと、 思わせないほどになめらかであった。 膨らんだここに耳を当てて語り掛け、 見苦しいほどに頬を緩ませた日々は、 未だ男の記憶の内に根を張っていた。 朝の風が薄手のカーテンを纏い踊る。 その影を受けた揺り籠の覆いの下で、 ありふれた幸せがやすらかにねむる。 十年すら共に過ごせなかった時間の、 何気ないたった一欠片だというのに、 瞼を開かずとも綿密に思い起こせた。 ] (55) 2020/10/11(Sun) 8:43:08 |
【人】 アジダル [ ……。 執着の強い思い出だからこそ、 違和感に対する修正力も強く。 ] ──、ケンブリックのシャツは、まだだ、 もう少し、……ここにいてよCuore mia…… [ 観測者の存在など忘れた故に、 閉じ込めた愛しい人の心地が 多少違ったところで構わずに。 柔らかく感じる髪を指に絡め、 唇の先端で軟骨を食むように 耳の先を撫でつつ愛を囁いた。 「二度寝しよう?」と誘えば、 「ダメ」と叱られるんだろう。 恰も幸福の泉に沈み切っては 呼吸すらする気のないような 熱っぽくも蕩けたその笑顔は、 日常と地続きのルーティーン。 ……観測者が一歩でも動けば 容易に観測点がずれる程度の。 ] (56) 2020/10/11(Sun) 8:43:57 |
【人】 アジダル[ 是が失われることをもう知っていた。 聞き飽きる程の甘さを撒き散らして、 この時全てが終わればよかったのだ。 揺りかごの天使がかわいい声で泣き、 寝乱れた聖母が柔らかく抱き上げて、 それを朝食のラテとビスコッティで 迎えに行って寄り添うばかりだった、 そんな至福の時で。 至福の時だという、のに、 記憶の中ですら陶酔しきれずに。 ] (57) 2020/10/11(Sun) 8:44:06 |
【人】 アジダル[ いつだって忘れきれない光景は光を簡単に呑み、 テレビのチャンネルを移行するように脈絡なく、 鉄臭くも醜悪な景色に切り替わる。 赤い溜まりの中に横たわる黒髪の女と、 その腕の中で良い子に眠る赤ん坊と、 報復の怒りが滲む凄惨な室内。 瞳にそれを映した男は 憎悪と怨恨を湛えた顔で、 泣けもせず観測者とすれ違う。 ]* (59) 2020/10/11(Sun) 8:46:09 |
【人】 志隈[故郷は此処より治安がいい。>>49 同じ価値観を持つことは出来ないだろう。 尤も兵になる前の記憶は大分曖昧ではあるが。] この国に関わった事が無いから、 旅行者と言うのは間違ってない。 [甘く見えようが気にもせず。 それが何か関係あるかと無愛想なまま。] 動物扱いするなとも、許せないとも言った覚えはないがな。 あんたがわくわくしてる姿が、 気味悪さを覚えただけだ。 [人を人と思わない行為は珍しくないが、 表面的に優しく見えるものには眉を顰めた。 優しい訳でもなく、 ここに文句を付ける筋合いも無かったが、 不愉快に思うか?とはあんたが聞いたんだろと そう口にして。] (60) 2020/10/11(Sun) 9:32:50 |
【人】 志隈[どうでもいいと言われれば、顰めた眉を元に戻した。 冷静にはなっていく、 怒るほどではないものでもある。 違和感は拭えないが。] 結果には影響のしない話だな。 理由に関しても、おかしいと思ってる訳じゃない。 あんたはそれでいい。 犬猫と同じに扱うのが気味悪いのは、俺の都合だ。 [価値観が違うのは当然のようにある。 数ヶ月前、合わずに衝突した覚えも。 今でさえ、同じ景色を見てるとは言い難いだろう。 子供は施す側の理由なんて気にしないものだ。 運が良かった、くらいに考えている。 人を人としての価値を認めたがるのは、 ]あの人や自分の価値が過るからか。 それすら思い出せず。 理由なく人助けに憧れる純粋なあんたが見れるかと思ったがな。 これもあんたらしいか。 [瞬間的に忘れていた夢だと言うことを思い出して、 言った所で思想が変わらないように出来てるかもしれないなとも。 説得をするとも、出来るとも思わない。] (61) 2020/10/11(Sun) 9:32:57 |
【人】 志隈[近くに感じる匂いは毒のようだ。>>53 数ヶ月前感じたものとは違っても、 どうしてか、他の人間とは違うように思えてしまう。 朝日の差し込む世界で、 寝ぼけていると言うなら何時でもそのままにした。 何も思ってない事はよくわかっているなら、 意味はない。 ──無いのは解ってる。 それでも触れるものに甘さがあれば余計に身を固くした。 開いた物は更に指がかかって開かれてるんだろう。 好ましいと感じて、 その姿を向けられたいと願って… 悪い冗談だと思う。 過去に愛した女性がいるのは何も思わない。 だが、そうやってあんまは愛せる人間だから、 何時か誰かを思い愛するのだろう。 それが堪らなく嫌なのだ。 ]幸せを願ってるくせに、手放したくない。 あの人が自分を忘れて結婚して幸福になった事は、 後悔もないし良かったと喜んでいるのに、 どうしてかあんたの幸せから跡形もなく消えるのは── (63) 2020/10/11(Sun) 9:33:08 |
【人】 志隈[どん、と突き飛ばすように動いた時には、 赤い世界が広がっていた。>>59 愛してたものを失う痛みはどれくらいのものなのだろう。 娘は生きていると聞いたから、腕の中の子は無事だろうか。 憎悪と怨恨の顔の方が頭が冷えていって、 息を吐く。 そうまで思うなら娘の側にいて欲しかったが、 難しい事だとは聞いた。 戦争をすれば、 勝者が敗者から略奪するのは珍しい事ではない。 この光景だって、そこまで苦しみは呼ばず。 苦しみを越えて前を向いて欲しいと願うのは酷いことだろうか。 声はかけずに彼が動くなら付いて行って、 そのままであるなら女と子供の顔をじっと見つめた。 代わりに与えられないものを与えようとするくらいには、 子供は大切らしかった。 何時か再会出来れば、あんたは笑うのだろうか。]* (64) 2020/10/11(Sun) 9:33:41 |
【人】 在原 治人[貴方の吐いた息を そのまま吸えてしまう距離。 気を抜けば燃え盛ってしまいそうな欲を 誤魔化すように、] あ、そういえば 飛行機 すごかった…! [シートが、食事が、サービスが… 空の旅の感想を音にした。 世界中を飛び回る この美しいひとにとっては日常で 俺にとっては大冒険の時間を、 はじめてのおつかいを 達成したばかりの子どもみたいに語る。 高揚や興奮 ────欲情 を懸命にすり替えて 62分の距離を、どうにかやりすごした。] (68) 2020/10/12(Mon) 6:55:19 |
【人】 在原 治人[そうやって辿り着いた ”Friend's house”の規模と形状は あまりにも規格外で、またもや度肝を抜かれた。>>45 ネットで検索している時に 彼のことを王子に見立てて書かれた 夢小説なるものも目にしたが……] ここが、アクスルの家、 いや城、か‥‥ [世界が違うとは、まさにこのことで。 はー…っと呆けていると、 自分からは離す気のない繋いだままの手が引かれた。>>46 貴方の居るところになら どこまでだって共に。 向かう先に、 驚きの連続の今日を あっさり塗り替えてしまう衝撃が 待っているとも知らないまま、寄り添って──…]** (69) 2020/10/12(Mon) 6:56:44 |
【人】 新郎 小林 友[千代紙の花が芽吹き、 古びた本が蝶へと変わり、 ラッコが空を飛んだ日。 あの日から、俺は菜月の温もりや声を知った。 手を繋ぐと力強く握り返してきて たまに手が痛くなるのとか、 案外涙もろいのとか、 キスしよう、と言うとちょっと目が泳ぐのとか。 あの日から菜月の新しいところを知って 多分、菜月も影じゃない俺のことを 毎日少しずつ分かってくれていくのだろう。 何せ、俺は別な世界からの住人だ。 手紙が窓から羽ばたいた夜から 今日に至るまでの長い長い物語は 千夜語っても語りきれない。] (73) 2020/10/12(Mon) 14:01:01 |
【人】 新郎 小林 友[だから、初めてデートに行くのなら 一緒に本屋に行きたいと思う。 めいっぱいオシャレした 菜月の姿をこの目で見てから 改めて「君が一番可愛い」って言いたい。 それから、一緒に読むための本は 相変わらず小川未明の童話集。 紙越しじゃなくて、隣で 君と他愛ない感想を言って笑いたい。 そしたら、喫茶店でお茶でもしよう。 フラミンゴのマドラーと一緒に 意味深に、ストローが二本付いたドリンクを前に 俺は多分もにょもにょ言ってしまうけど 君が「一緒に」と言うならば 必ず俺はそう、するから。] (74) 2020/10/12(Mon) 14:01:22 |
【人】 新郎 小林 友[それから、それから───── ああ、やりたい事は山ほどある! 君に伝えたいことも。 一日がたったの24時間なのが惜しくて つい、伝えられない気持ちのまま いきなり君を引き寄せて、キスしてしまったり。 そう打ち明けたら、君は笑ってくれる?] (75) 2020/10/12(Mon) 14:01:57 |
【人】 新郎 小林 友[今は笑って指さしてくれたって構わない。 いつか、君が隣にいるのが当たり前になった時 ちゃんと言葉で想いを伝えたい。 消えないよう、心の中に。]** (76) 2020/10/12(Mon) 14:04:50 |
【人】 アジダル[ 嘲笑うでもなく、呆れるでもなく。 戻ってきた言葉たちに肩を竦めただけに留める。>>60 自分の事を知っているかのような口ぶりには>>61 僅かに警戒するような反応は見せていた。 ] 気味悪い方がここいらじゃ真っ当なんだよな。 人助け結構。施すもご自由に。 ただしそんなものを受け取りたいかと思うかは また別の話しなんだぜ。 [ タダより高いものはなく、 純粋な感情ほど信用ならないものはない。 今や廃墟になった教会の、 Take freeの篭に入ったパンよりも 生ごみ袋の減りの方が速かった。 悪意と策略に篭絡された街に於いては 下心がある程度が丁度いいのだ。 それは例え味方の内であったとしても。 ] (77) 2020/10/13(Tue) 0:06:50 |
【人】 アジダル[ 画面の向こうにいた英雄は太陽を背負っていた。 真っ新な拳を祈るように振るい、 守る手を開いて弱きものに伸ばしていた。 それを取れるのは守られる人が他人を信じられるからだ。 生憎と路地裏ではそんな感情は疾うに売り切れている。 ] それに、もう俺は人を殺しているし。 [ 路地裏の角裏、伸びる影に隠れて立つ体を見降ろせば 真っ新な服を赤に濡らした昨日が見えて 奪うばかりの人間がうつっていた。 英雄を名乗るには黒に潰され過ぎているが 取引をするには十分な信用が見えるのだろう。 精一杯の振る舞いを糾弾する良心を殺したから、 小さくかぶりをふって。 ] (78) 2020/10/13(Tue) 0:06:56 |
【人】 アジダル[ 人にやさしくされた分だけ。 生き延びて嬉しかった分だけ。 ただ他人に受け渡してやりたいとはあまりに不遜な感情。 ただそれが真実であるという事実だけが 片付け忘れた死体のように重く転がっている。 ] いい加減、 がっかりしたか?[ どうでも良さそうな声色は何重にか重なって さっさと通り過ぎ。 ] (79) 2020/10/13(Tue) 0:07:00 |
【人】 アジダル[ …………。 当然の報いだと理解していた。 男はそれだけの事をしてきたのだ。 捕虜の口を割る役目を担い、 酷なことを他人に強いてきた。 同じ宿に二人で入り、 一人だけ出るようなことだってあった。 けれど。 彼らなりの落とし前としての行動だったのだろう。 拷問にしては甘い遺体の損壊具合と ほどなくして泣きだした赤子の健康状態を見れば いっそやさしくされていた方だと気づいていた。 けれど。 それは勝者を定める戦争でなく、 雌雄を決する諍いでもなかった。 ワンターンずつ入れ替わるゲームのように、 規定も、協定も、権能も、目的も、条件も、何も。 何もない。 子供の喧嘩よりも単純な癇癪で、 蹂躙されてしまったのは、。 ] (81) 2020/10/13(Tue) 0:07:08 |
【人】 アジダル[ だからヒーローには相応しくなかった。 過ちと知って尚、怨恨の連鎖を断ち切るのが 取るべき道だと理解しておいて尚、 男は銃を捨てようとはしなかった。 ] (82) 2020/10/13(Tue) 0:07:13 |
【人】 アジダル[ 観測者の姿が目に入りなどしないかのように景色は廻る。 ふらふらと歩みながらあらゆる反撃を行い、 暴虐と呼ぶに相応しい復讐を撒き散らし。 自分のボスに潰れる程殴られても、 生まれて初めてめぶいた自分だけの殺意を 持て余しているかのように関係者を根絶やした。 最後の一駒を撃ち抜いた空虚を背負い、帰った拠点。 こちらに手を伸ばして笑う娘を見て、 漸く一粒涙が、落ちる。 ] (83) 2020/10/13(Tue) 0:07:18 |
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