203 三月うさぎの不思議なテーブル
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[キャベツはハーフサイズのものがあって良かった。
半分に切り分けて、片方は千切りに。
もう片方は、手でちぎって形を残していく。
次に取り出したのはツナ缶。
少しだけ汁気を切って、残りは使う。
マヨネーズにごま油。
それににんにくチューブを入れてよくかき混ぜたら、
千切りにしたキャベツをプラス。
ツナが少し甘い分、
仕上げのブラックペッパーはたっぷりと振りかける。
器は手のひらサイズのものと、
もう一回り小さなものを借りてそれぞれに盛り付けていく。
ツナとキャベツのコールスロー。
小さな器の方は、
冷蔵庫で冷やして後日に食べてもらうとして。]
[調理器具の中に埋もれていた、明らかに貰い物らしき
シリコンスチーマーがあって良かった。
時短は大事。夜が更けてきたなら尚更。
料理をすることは苦ではないけれど。
彼と話す時間も、できるだけ長く取りたいから。
便利なものは使っていくに限る。
ちぎったキャベツとしらす干しをスチーマーに入れ、
顆粒タイプのコンソメを振りかけ、
サラダ油を大さじに一杯分。
箸でスチーマーの中を掻き混ぜて下味をつけるように
中身が行き渡れば、チーズを散らして。
後は、レンジで加熱するだけ。
時間が経つにつれてレンジの中で溶けていく
チーズとコンソメがキャベツから出た水分と絡んでいく。
しらすとキャベツの蒸し料理。
体型を維持したいと言っていたのは、
聞いたから、蒸し料理でヘルシーなものを一品。]
[顆粒コンソメは割りと便利なもので、
もう一品役に立って貰うために
そのままシンクに残しておく。
薄切りのハム、とろけるチーズを1cm角の長方形に刻む。
白ネギは5cm幅に一度切ってから、縦に四等分。
解けた白ネギが短冊のようになって、チーズと並ぶ。
片手で卵を割るのが格好いいと、
杏を見て思ったのは何歳の頃だったか。
今は慣れた手付きで出来るようになったもの。
卵は二つ。一度溶きほぐしたら、
今度はコンソメと牛乳を入れて混ぜていく。
そこまでで一度手を止め、]
……高野さん、耐熱用の容器ってあります?
[くつろいでいるであろう彼に一言。
彼が来るのを待ちながら、食器棚を眺める。]
[あまり食器は揃っていなかった。
一人暮らしの、料理をしない男性の佇まい。
そこに、前の恋人の影はなかっただろうか。]
……今度。
食器、増やしていいですか?
[探しものを見つけてくれたであろう彼に。
そう、次を匂わせた一面もあっただろうか。]
[無事手に入った耐熱容器は二人分。
ハムとネギは交互に重ね入れて、一番上にはチーズを。
そこにコンソメで味付けされた出汁を注いで、
ラップをふわりとかけて、またレンジへ。
電子レンジは革命だ。
これ一つさえあれば、初心者の一人暮らしには困らない。
美澄が引っ越すというのなら、
引っ越し祝いはグリエレンジにしようか。
なんて、考えているうちに出来上がりの音が鳴る。
一度、軽く加熱した後は、
今度は弱めにじっくり10分ほど。
表面のチーズが蕩けてきて、
出汁が柔らかさを残したまま固まっていく。
これは洋風の茶碗蒸し、といえばいいだろうか。]
[さて、副菜がいくつか出来たなら。
茶碗蒸しが冷めない内にメインを軽く、お手軽に。
パックのご飯をレンジで解凍している間に、
出来合いの焼き鳥を串から抜いていく。
ねぎまもあったのでちょうどいい。
先程使ったねぎの余りも軽く焼いて足しておく。
ほかほかのご飯を丼に盛れば、湯気がほわほわと温かい。
ご飯の上に、焼き鳥とねぎを乗せて。
鶏ガラスープの粉末をふりかけて湯を注ぎ入れる。
既に味付けされた焼き鳥とねぎから滲み出る味。
湯に溶けていく鶏ガラスープと相性はいいはず。
小口切りにしてある小ねぎを上から、
ぱらぱらと振りかければ彩りもよく。
焼き鳥スープ丼、メインも完成だ。]
[玲羅の言葉に、笑み崩れて。その日の月も綺麗だった。]
[料理の合間に先に出来たコールスローと、
蒸しキャベツは先に運んでおいたから。
先に食べ始めているかもしれない。
待ってくれているのなら、一緒に。
今しがた出来あがった料理をテーブルに運んで。]
……そういえば、昼は気づかなかったけど。
一緒に飯食うの初めてですね。
[いつも料理を食べてもらうことはあっても。
食卓を囲むのは初めてのこと。
座椅子が置かれた、斜め隣に腰を下ろして。
先に彼が食べ始めるのを眺めながら。**]
── 週末のデート ──
[玲羅を一目見て。胸がいっぱいで言葉が出なくなるかと思った。]
……おはよ。
今日も可愛いね。良く似合ってる。可愛い。
……ふふっ。可愛いね。
[ごめんね。俺の語彙力なんてこんなものだ。
でも。柔らかな色のニットもスカートも可愛いし。
デニム地のジャケットは玲羅の明るさや芯の強さを表してるようで良く似合う。
俺は目を細めて。可愛いってたくさん言った。
だって本当に可愛かったからね。]
[時計を見て見ればまだ15分前だ。]
玲羅だって早いじゃん。
俺はアレだ。本当は10分前に着くつもりだったんだけど。
余裕をもって家を出ようとしたら、アレよアレよと乗換が上手く行って、30分前に着いてた。
あははっ。楽しみにし過ぎ。
遠足前の小学生かっての。
[笑いながら。]
[ふと。このまま歩き出すのが躊躇われて。
手を差し出した。]
……行こう?
[手を繋いで歩きたいと思ったんだ。
とても自然に、そう思った。
俺は今胸がいっぱいで。
本当にコレお弁当入るのかな?とか頭を過ったけど。
きっと彼女と2人で食べれば、弁当も美味しいだろう。*]
| ――過日―― こんなにもボクら長い時間を過ごしたのに…… 関係の終わりは突然ね…… [ >>51Love is overを突き付けられて、演技じみたやり取りもおしまい。 栗花落さん >>48には、みんなで行って感想戦楽しいですよ、とも付け足して、仕事に戻ろっと。 予定合わせ? ……まあ、ほんとに4人で行く段階になったら擦り合わせればいいっしょ。気軽な気持ち。] (59) 2023/03/11(Sat) 18:10:22 |
| ――そして今―― 働き過ぎは身体に毒。確かにー。 あれよ、ゆっくり食べるのも勉強ってやつ。 [ >>54それ、どこかの誰かさんにも言ってやってよ。 なんて思うけど、長い付き合いのふたり、もう過ぎたやり取りだったりするのかもしれない。] (60) 2023/03/11(Sat) 18:13:32 |
―― 鴨が流行った夜 ――
[誘惑の一言に戸惑った反応を見て、
くすくすと笑いを零してしまう。
うちのシェフの腕は誰しもお墨付きなので。
どれを選んだとしてもオススメできるのだが。
『おまかせ』は、腕を信頼された証。]
かしこまりました。
鴨は神田さんと同じ鴨南蛮でいいですか?
[店長の腕はランチでも保証済み。
今は滅多に表に出てこないけれど、
俺に料理を作る切っ掛けを教えてくれたのは彼女だった。
鴨南蛮に使うロースはランチが終わった後に、
しっかりと、薄皮と脂を取り除いて、
じっくりと、焼いて煮込んだものがある。
鰹は美澄が作ったタタキを少し、分けてもらおう。]
[杏の手元で綺麗にスライスされていく鴨ロース。
食べごたえがあるぐらいの厚みを残している。
切っただけで、少し肉から染み込んだ汁が溢れる。
隣に並んで青い部分を切り落としたネギを
斜め切りにして。
フライパンを用意したなら杏がその前に立った。
投入されたネギに焼き色がついていく。
同じフライパンで鴨肉を焼けば
ネギの風味が肉にも移っていく。
その間にこちらは細打ちの蕎麦を茹でる傍ら、つゆ作り。
だし汁と醤油とみりんを足して濃い目に。
そこに焼いたネギと鴨肉を合わせたら、
味が染み渡るまで、少し時間を置いて。]
[ざる上げしたそばを、シンプルな白の器に盛る。
熱々のつゆとたっぷりとつゆを含んだ
ネギと鴨肉を乗せたなら、]
鴨南蛮です。七味はお好みで振ってくださいね。
[待ちかねていた神田と高野の前に、それぞれ置いた。]
[カツオは美澄が途中まで仕上げたタタキを貰う。
しっかりと焼き目の付いたカツオに
摩り下ろしたにんにくと酒を行き渡らせて、
そこに醤油と生姜汁を少し。
しっかりと和風の下味を付けた後は、
汁気を軽く切ってから、片栗粉をまぶして。
170度の油で揚げていく。
ぱちぱちと小さくなる油の音。
カラッと仕上がるようにあまり時間は掛けずに。
軽く茹でたグリーンアスパラと春人参は
箸休めに一緒に添えて、レモンも。
つけ塩にはオススメの琉球で取れた『雪塩』を乗せた。
その後もいくつか料理は頼まれただろう。
和食が好きなことはもう知っている。
その度に、彼が喜びそうなものを考えるのは、
好きな時間の、一つになる。
]
[料理を提供する側とされる側から、
少し、変化があった後。
またひとつ、仕事の合間に挟まれた誘いの言葉。
その時は、彼の家に招かれた後だっただろうか。
配信機能は最近ではネット回線を繋げれば、
テレビでも観れるようになったとか。
自宅で独りで見る時には、
タブレットを使っていたけれど。]
どんな映画ですか?
[観るとするなら大型のテレビがあった
彼の家になるだろうか。そんなことを考えながら。
また、一つ、約束を交わして。]
[そんな、いつかの帰り道。
早上がりで珍しく一緒になった帰路の時間。
振動が続くスマホに今にも舌打ちしそうな高野から、
その通知の数の多さの原因を知ったなら。
仲の良さにくすりと笑って、
隣を見上げただろう。]
別に、いいですよ。
葉月さんなら。
[度々、店内で二人がテーブルを共にする風景を
目にしていたので、嫌だと拒否する事もなく。]
[春先の
桜
の下を歩きながら。
人気の少ない夜道。
そっと、手を伸ばして
彼の指の隙間に自身の指をするりと、
絡
ませる。]
なんて、紹介してくれるんですか?
[通りすがる人も居ないから。
傾けた首の先、そんなことを尋ねながら。
月明かりの下に浮かぶ横顔を眺めていた。**]
| あん、見てたのアレ。 [ >>55そりゃそうだ、人目憚らなかったしね。 料理のことなら。気に病むことなくねと言われて、笑う。 わかってる。わかってるけど自己嫌悪だから、たちが悪い。] ん、そう言ってもらえるのは嬉しい。あんがと。 でも、うん。 たぶんね、ちょっと自信がなかったんだ。 [ケイちゃんもそう言ってくれるんだから、多少は自信を持ってもいいのかもしれない。 だけど、その段階はもう先に立たない後悔なのだ。 あのとき、そこで自惚れられたら、どんなによかったろう。 >>57囁きが続きそうになったところでシャミさんがケイちゃんに声をかけたら >>46、するりとそばを離れよう*] (66) 2023/03/11(Sat) 18:32:48 |
― デートの日 ―
ふふふふ。ありがと。
[会うなり可愛い、を連呼する彼に
自然と表情が緩んでしまう。
照れくさそうに頬を染め、
目を細めて礼を言った。]
いや私も早く着いたけど、それ以上に早いじゃん。
30分前!あははは。
いや余裕もって家出るのはいいことだし
それだけ楽しみにしてくれてたのは嬉しいけどさ。
[からからと一頻り笑った後。
ごく自然な仕草で手が差し伸べられる。]
………うん。
[一度顔を見上げてその手を取り、
するりと指先を絡めてきゅ、と握る。
いわゆる恋人繋ぎと言うやつだ。
大きな掌のぬくもりに気分が浮つくのを感じながら
今日晴れてよかったねえ〜
などと笑いかけ、のんびり歩き出す。
目的地の公園へは駅からバスに乗って少し。
ぽかぽかと温かい気候の中桜も更に花開いて、
きっとあの日の夜桜とは
また違う風景が広がっていることだろう。
そう、絶好のお花見日和。というやつだ。**]
― ところで ―
[恐らくこのデートの日よりはあとのこと。
玲羅は普通にあれからも、
別段デートの名目ではなくとも
会社帰りに一人でうさぎ穴に顔を出すだろう。
そしてその時高野が居たのなら、
(そして取り込み中ではないのなら)
やっぱり気楽な調子でカウンターの隣席に座って
彼から貰った招待券が無事役に立ったこと、
あの日の恋の相談が上手くいった報告などをすると思う。
飲みながら、高野君の方は最近どう?デート誘えた?と
進捗を聞いたりもした。そんな夜があったかもしれないな。**]
[
ちょっと?!指とか絡められたんですけど?!!
差し出した手に自然に指が絡まる。
俺は玲羅を見て、手を見て、それから真っ赤になった。]
も〜〜〜〜〜〜。
[ヤバい。どうしよう。急に手汗とか気になって来た。
さっきまでは、遠慮なく朗らかに笑う玲羅
と一緒に笑ってたのに。
赤い顔でジト目で見ても、俺が負けるんでしょ?
知ってる。経験者は語るだ。だいたい俺は玲羅に勝てない。
それでも負けず嫌いは反抗くらいするぞ。
ジト目で見て……
それから愛おしくて笑み崩れてしまった。]
[バスに乗って向かった公園は大きくて。
広々とした緑が広がっていた。]
晴れて良かったね〜。
[俺もそう返して。]
日頃の行いかな。
[とか。戯けた事を返した。
どっちの?両方のです。
暖かな春の陽気の中で、のんびり歩いて。
お花見をしながら、ここでも手は繋いでた。
あんまり歩き回って、靴擦れさせても嫌だから。
歩きやすい道を、ゆっくり歩こうね。]
……綺麗だなー……。
[俺は青空の下の桜を見上げて。ポツリと呟いた。
公園とか、神社とか、緑の多い場所は好き。
聞かれたら玲羅にもそう答えるし。
玲羅の好きな場所も聞きたい。]
玲羅は、公園とか好き?
……他にも好きな場所とかあったら、教えて?
たくさん知りたい。玲羅の事。
[のんびり歩きながらお隣に微笑んで。
お弁当を食べるのに良さそうな場所も見繕う。
椅子に座っても良いし、敷物を敷いても良いよ?
玲羅スカートだから、ベンチ探そう。
ぽかぽかの陽気。隣に好きな人。幸せだなって思った。]
[ふと。キスしたいなって思ったけど。
これ歩きながら突然したら怒られそう。
キスのTPOとか知りません。
お店じゃ無いし許されるかな?
思わず繋いだ指先をすりっと撫でて。
玲羅の事をみちゃったけど。
目が合ったら愛おしくて。幸せそうに笑った。*]
[スウェットのひと悶着を経て、車で一駅先の真白の家へ。
仕事先が郊外のこともあるので買った白の新車は小回り重視の軽自動車。
ハイルーフだから、小柄な彼女が乗ってもそんなに窮屈ではない筈。
消臭剤はアクアの香りとパッケージには書いてあった。
自分はもう慣れてしまったので何も感じないが、彼女の嫌いな香りでなければ良いなと思う。]
車酔いする方?
平気なら、今度ドライブもしようよ。
歩きだとちょっと難しいけど、
車があるなら山桜も見に行けるし。
シーズン終わる前にいちご狩りもしたいな〜。
[話すのはデートの計画。
そのデートが「彼女が希望して取る2日間」のことを指すのかは言わない。
連休を取るには予め交渉が必要だろうから、今月の話にはならないかもしれないし。
それに、その二日間の前にも休みがあって、特に彼女に予定がないならその時間を貰えたら嬉しい。]
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