203 三月うさぎの不思議なテーブル
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お茶会服っていうんだ、これ
王子
[なるほど、王子だ。あらためてチエの服装を見つめる]
あ、今の私おひめさまみたいだった?
しまった、それっぽくするべきだったか
[息を抜くように笑う]
――いつぞや――
んー? 別にそしたらさ、ケイちゃんの有休使わなくても、ボクがケイちゃんのシフトに合わせて取ればよくない?
[よく食べよく遊ぶ健康優良児なので、有休は実はそこそこ余ってる。こないだひとつ使ったけど。
時々パーッと休んで趣味に没頭することもあるけど、今はその時でなく。
……とか言ったくせ、飲食業。
一般的に休みを合わせる土休日にはなかなか都合をつけられず。
参加者の職に甘んじて、平日でどこか合わせようか、なんて話になったんだっけ。
空けられる平日をぽこぽこメッセージで送って、予定調整を任せちゃう末っ子気質。
こんなんだからモテないのよ、なんて自分の中にだけある僻みは、今は聞こえないふり*]
ねえ、一緒に写真撮ろう
可愛い服でこんなに、不安になったり嬉しくなったりしたことない
[挿し色の黒い薔薇。
足元を飾るコサージュが、足を動かすと陽射しで綺羅と糸を光らせた]
[好きこそ物の上手なれ、という言葉がある。
自分に当てはめてみれば、最初は写真の技術だった。
次に、様々な店の料理を食べるようになって、材料や調味料を当てるのが得意になった。
そして、自分でも料理をするようになって、レシピ通りに作るだけではなく、組み合わせを自分で考えて失敗なく作れるようにもなった。
何が言いたいかというと。]
僕は自分が甘やかすのが好きなタイプなんだって
初めて実感してる。
[つまり、これからも技術の向上に期待してください、ということで。]
[彼女に当てはめて言うならば、
料理が得意になって、
神田好みにファッションをアジャストすることを覚えて
おねだりの破壊力はますます上がっているということ!
必殺技、ワンパンどころかオーバーキル。
天然も可愛いけれど、自分に効くと知っていて出されるおねだりも可愛い。
これを間近に浴びていて、自分はよくここまで彼女に対して「待て」を守れていると思う。]
女の子向けの店と違って
キラキラとかヒラヒラはないけどね〜
つまんなそう、じゃなくて
楽しみにして貰えるの嬉しい。
僕はふわふわパジャマショップ行ったらそわそわしそうだけど、
マシロちゃんがあそこの試着室から出てくるのすごく楽しみだからね。
[嫌ではないのだということは言っておく。
因みにこれまでの彼女はあのブランドユーザーだったかもしれないが、お揃いにしようと言われたことはない。]
[昼食の計画は提案が受け入れられる。
浮かれたネーミングのメニュー名は彼女の照れを誘ったようで。
それでも少しは心浮きたつものがあったのではないか?
――反芻する癖が出ているから。]
あ、料理人の顔になってる。
[ライバル心を燃やしている顔も可愛いと知ったので、これからも時々別の店の話題を出してしまうかもしれない。
どこに行ってもうさぎに自分の気持ちと舌は還ると彼女もわかっているだろうから、対抗心が劣等感に繋がることはないだろう。]
[自分は今もすべてが平均的な平凡なモブ男性だと思っているが、彼女を好きになってから知らない自分に気づいたりもする。
自分の中にこんなにも独占欲があるなんて知らなかった。
つきあってまだほんの数週間、「行かせたくない」のはこの夜だけの焦燥ではない。
店では見せることのなかった――というか本人も知らなかったのだから当たり前の「雄」の部分が、彼女が好きになってくれた自分と「違う」と失望させることに繋がらなければ良いのだけれど。
抱き締めたら服の隙間(と評してしまう程度のファッション知識)から小さな肩が覗いて、鼻息から彼女を守る為に天を仰ぐ羽目になる。]
はつこい
私は恋というものがわかっていなくて
これはそうなのかな……? って
[実際は狭義の恋心を持ち合わせず生まれついていたのだとしても、尊敬と親愛はあり。そしてチエのことが好きなのだけど
ただ愛しているのではなくて、チエにだけは、愛されたいと思っていた]
うん
そういうわけなんだ
君でなければ、デートしたいとは思わなかった
[ビーズクッションは好評のようだ。
良かった。
いわゆるちゃんとしたソファはこの家のスペースを考えると置けそうになかったので。
彼女の希望通り、席は立たずに隣に座る。
公園のベンチに座った時よりも更に近い距離。
合鍵が握られた手に手は重なったまま。]
……………そう、か。
[語られたのは、「まだ同じ場所にあるかわからない」実家の母親と連絡を取ったという話。
実家を出てから連絡を取ることがなかったのに、電話番号を捨てていなかったという事実が、真白が自分を雑に扱うような母でも求めていたということを表しているようで胸が苦しい。
閉じた口で歯が擦れる音がした。
電話をした、その結果を聞くのが何となく不安で。]
じゃあ、どこに行こうか
私のしたいことでいいの?
……ソフトクリーム。 いっこは食べられない
それから
[コインロッカー? あっちにあったよ。
手を握ったままのピンクのぬいぐるみを見下ろす]
あ、この子も連れて行っていいかな
うん。
……うん。
繋がったんだ……
[彼女の母は電話番号を変えていなかった。
しかしそれは娘との繋がりを残したかったという理由ではないだろう。
「縁を切りたい」「切りたくない」と思う程の強い感情を娘に抱いていなかっただけなのではないだろうか。
娘の方は会わない間もずっと忘れられずにいたのに。]
は、意味がわかんない。
[声が怒気を孕んだ。
また金の話。
真白の中では自分の料理やケーキを受け取らなかった理由がそれだったと当たりをつけたようだが、理由があろうが母親が人として最低な行為をした事実は消えない。
自分にわかるのは、真白の母親は自分には理解できない価値観で生きているということだけ。]
[それでもまだ真白が母親から気持ちを離すことができないなら、自分には何ができるだろうと考えた。
しかしそれは杞憂だったと知れる。
幸せを、恋人と生きることを選んだ強い微笑み。]
そっか。
……手放せたんだね。
[嫌いになれないまま、切られることを避けていた気持ちを。]
ホント頑張ったね。
お疲れ様。
[けじめのプロフィールには、ひとつだけまだ手放していないものがある。
正直その文字の並びだけで言うと彼女を表していて素敵なのだけれど。]
……最初の名乗りなんだけど。
近い内に、僕と同じになってくれる?
[それはきっと、同じタイミングで2本の鍵を貰う時に。
指先を伸ばして触れる。
「約束」の指。
彼女の年を聞いた時に、言い出すのはまだ早いかなと思っていたのが嘘のようだ。
真白が「家族」を思う時、それは自分でありたいと強く想った。]
本当はこういう時に用意してあれば良いんだけど、指輪。
サイズも知らないし、ずっと持っててもらうものだから
好みのをあげたいからね。
ここを埋める「印」はもう少し待っててもらうようになるけど。
……ちょっとごめん。
[腰を浮かせ、クッションと一緒に買ったローテーブルの上に置いてある長方形のベルベットの箱を左右に開いた。
銀色のトップのないシンプルなネックレスが出てくる。]
こっちを先に渡してもいい?
指輪、買ってもつけちゃ駄目かもしれないか、ら……。
[銀色のチェーンに通して、仕事中もずっと「印」を傍に置いてほしい。
指輪もないのに先走り過ぎだろうか?
言った後になって前のめりな自分が恥ずかしくなり、顔を赤くして目線を落とした。**]
そそ。まあ、通称みたいなものだけどね。
お茶会、行ってみる? いつか。
そんときはぼくもお茶会服にする。
[アフターヌーンティーのフルセットを、シャミさんが最後まで食べきれるか……というと、若干疑わしいところはあるけれど。
時間かけていいタイプの、入れ替えなしのコースとかなら、行けるんじゃないかな。]
お姫さまの、お出かけって感じ。
いーんだよ、ボクがその服に合わせた結果がこれなんだから、シャミさんの側が変わったらズレちゃう。
[本当にお姫さまみたいなロリータは、ちょっと服を選びそうだし。
……ってのは、口を閉ざして。]
― 高野君と惚気 ―
あ、そうなんだー。
まあ確かに顔だけ知ってるけど
よくよく考えたら話したことない人ちょくちょくいるな…
あはは、それ今度言っとく。
芸能人に華やかって言われるのだいぶ光栄じゃん。
[どこぞで似たよな会話が繰り広げられていたことは知らない。]
そ!手作り!でしょでしょ、綺麗でしょ!
良い思い出になったし高野くんには改めて感謝だよぉ。
お礼になんか一品奢ったげる。好きなの頼みなよ。
[上機嫌に言いながら。]
あ、そう?
[そうして高野の相手のことにも触れれば
さらりとした反応が返って来たので。
そういう感じなら触れても大丈夫かな、と
こちらも少し気を軽くした。
玲羅自身は至ってヘテロの人間ではあるが
色んな嗜好の知り合いがいるので
別に友人がどうであったからどうと言うこともなく。
珍しくしょんぼりする後輩はちょっと見てみたかった気もするけど。愛いやつめ。
]
へえー…… そっかー。
まああれだよねえ、恋してみて新たな自分を知るみたいな。
そういうこともままあるよね。
ってそこに関してはノーコメントだけどさー。
つまり今は追いたくなる相手なわけだ。
ふふ、大事にしなよ。逃げられないようにさ。
[経験豊富を否定されても
またまた〜と思っていた節はあるんだが
そもそも恋愛にそこまで比重を置いていなかったのかもしれない。
そしてそれが今回は崩れたということか。
どこか誰に対してもそつなく見えていた後輩の
情熱的な一面を垣間見た気がして、
揶揄うように表情をにんまりさせ。]
――報告会――
[栗栖が天然鈍感だという話は先程もした筈だが、貝沢関連のこと以外でも何かあったのだろうか。
口を開きかけたところで、唐突にメッセージのことに触れられる。
自分と個人的なチャットはしていなかった筈、と思ったところで、自分だけが反応した桜カクテルの話題を思い出した。
あれはグループ投稿と言いつつほぼ自分宛みたいなものだった気がして、栗栖の反応がないことを特に気にしていなかったのだが、そういえば少し前からトークルームを表示した時に上から下まで栗栖のアイコンが出ないくらいには彼が登場していないなと思い至った。
つまり栗栖と葉月の間で痴情の縺れが生じたということだろうか。
そう解釈できるが、部外者である自分が何ができるという訳でもない。
その内を約束されるなら、頷いて。]
待ってる。
でも無理は駄目だよ。
[誰も悪くなくても抉れる人間関係というものもあるので。
時間が解決してくれないなら、新しい関わり方になるかもしれないことを覚悟する必要もあるだろう。
それはきっと自分が口にしなくても栗栖はわかっている筈で。
だから、それ以上は触れないことにする。]
いいね、写真撮ろう。
プリ撮っちゃう?
[スマホで自撮りして加工でも今や充分いい写真になるけど。
敢えてゲーセン探してプリ撮るのも、またきっといい思い出。
ポーズ決めてメッセージ書いて、デカ目してデコろう。
けど。]
……不安なの、平気?
ちゃんと、似合ってるよ?
[不安って言葉が出ると思ってなくて、足止めて確認。]
え?
[そうして不意にこちらに話を振られたので。
酔ってる玲羅はつらつら話し出すのです。]
んーーとねえ、最初はノリで話しかけたんだけどさあ、
なんか妙に気が合って楽しくてさ〜、いいな〜って思ったんだよね。
だから次一緒にご飯しよって誘って…。
で、よくよく話してみたらさ
私がアイドルしてたこと知ってたんだよ。ファンだって。
でも、なんかそういう…アイドルだったからとかじゃなくて、……
一方的に好きでいるんじゃなくて
素の私の事もっと向き合って知りたい、
って言ってくれて………
その時かな…
やばいまじでこの人のこと好きかも、って思ったんだあー。
[へら、と少し照れくさそうに頬を染めて。]
[専門はグルメなのだが、観察という言葉が出てくるあたり、やはり習性はライターなのだろうか。
というか。]
僕がライターって話、したっけ……?
葉月さんか貝沢さんから聞いた?
ご飯のこと以外の観察力はポンコツだよ。
観察が好きなのは仕事じゃなくて公にしない趣味。
途端に変態くさいな……。
[ふと疑問に思ったが、同業者の葉月と仲が良いなら聞く機会はあったかもしれないし、そもそも高野が前から自分の職業を知っていたように、貝沢の方も知っていてもおかしくはない。
とりあえず彼氏の栗栖には、自分はパパラッチではないと弁解するつもりが、変な性癖をカミングアウトしたみたいな形になった。
墓穴を掘ったかもしれない。]
んん”、と、とりあえず、
僕は誓ってマシロちゃん一筋なので!
[ということだけは主張しておこう。うん。]
[貝沢と知り合う機会はあるかどうか、その辺りも二人に委ねるとして。
人懐こい栗栖が高野と会話していないという事実には軽く驚いたので、今度一緒の時間に会うことがあれば声をかけると請け負った。
好きな人を好きな人に紹介したくなっちゃう、わかるよ。
この場合前者は栗栖で後者は高野だが。]
きちんと言葉で主張できる関係って良いよね。
マシロちゃんも「ダメ」も「うれしい」も言ってくれる子だから、
それ聞きたくて「していい?」って聞いちゃうとこある。
[惚気?任せて!
そしてちょっと猥談めいた言い回しになってそうなのは気づかない振りをして!]
揶揄いだったんだ?
ちょっと本気にしちゃった。
栗栖くんのすぐ素直に謝れるところ尊敬するな。
[恋愛の意味に限らず、人に好かれる人ってこういうカタチをしているんだなと思う。]
ラムは子羊だね。
マトンより獣臭さが少なくて柔らかい肉だよ。
マシロちゃんの料理は別口で頼むので、
大人しくおにーさんの皿から取り分けしなさい。
[回して貰った気は辞退して、皿に並ぶ骨を両端から二人食べることにしよう。**]
私さ、アイドル辞めた後も
何人かと付き合ってきたのね。
普通の恋がしてみたかったから、
告白されたら割と受け入れてさ。
なんだけど……
なんせ元アイドルでしょ。
そんで、こんな性格してるからかな。
なんか変に先入観もって接させること多くて。
明るくて強くて面倒じゃない女、みたいな……
いや別にそんなでもないですけど、みたいな。
…ちゃんと好きで付き合ってた、つもりなんだけど。
なんかそれで結局うまくいかなくってさ。
[過去の恋の話なんて、
彼氏に聞かせるのはちょっとあれなので
せっかくだしこの場を借りて吐き出させてもらおう。]
……なんかね、そういうの、
この人なら大丈夫かもって思った。
……ただなんでも許してくれるってわけじゃなくて…
私の好きになりたい私を肯定してくれて、
自然体でいられるっていうか……
[最後の方は独白めいていたかもしれない。
ぼんやりと、一方的に語って。]
…てか、そういう高野君は?
どういうとこいいなって思ったわけ?
馴れ初めとか聞かせてよ〜。
[そんな風に話を振り返すのです。**]
そ、っか。
や、でも、うん。それでも好きになってくれたのは、……っていうか。
ボクを選んでくれたのは、うれしいな。
[恋がわからないシャミさんが、唯一デートしたい相手。
そんなに誇らしいことがあろうか。
それに、なんとなくその気持ちもわかるし、さらに言えば知識としては知っている。
……ボクはね、意外と真面目な学生だったんだよ。他人を見返してやるために、だったけどさ。
だから、いろいろな気持ちのかたちを、知っているつもり。
そして本物は、今から学ぶつもり。]
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