203 三月うさぎの不思議なテーブル
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それは、……うん。
分かります。
夜綿さんの好みに合わせるの、楽しいから。
……そっか。同じですね、気持ちは。
[ うん、ちゃんと分かりましたよ、と頷いた。
謝っても気にしても職業故のすれ違いは変わらないし
受け取り方を"苦じゃないと思える"ようにしてくれた
彼の言葉はなんだか魔法みたいだ。
ちなみに魔法といえば、日曜朝に戦隊ものと別枠で
放送されている某女児向けアニメもその類だが。
ふわもこパジャマの話を振った時の彼が
マスコットキャラに選ばれた主人公の反応みたいで。
面白いような、「そんな縁遠いかな…?」と
疑問符が頭上へひとつ、ぽこん、と浮かぶような。 ]
[ 過去に彼女がいたことは知っているけれど、
その人たちはあのブランドユーザーでは無かったか。
いや、お揃先に選ばなかっただけなのか。
む、と考えながらも 露骨に目を泳がせる彼へ
「だめですか……?」と言いたげな瞳を向けた。
完全にこれはわざとである。先に言っておく。
ちょっとしょんぼりしながらおねだりすれば
多分いけるのでは、と大咲が覚えた必殺技(?)だ。
決定打の理由はどうあれ、ちゃんと同意は取り付けた。 ]
男性向けのショップ、入ったことないので。
どんな感じかちょっと楽しみです。
[ 通販サイトにメンズ向けで出てくる服やブランドを
何気なく流し見たくらいの記憶しか出てこない。
今更ながら服を選ぶことへの緊張感が滲んできた。
後でちょっと勉強しておくことを決意して。 ]
[ カップル、プレート。
……カップルプレート。大咲の脳内で二度放送された単語は
三度目は口から声になって飛び出てくる。 ]
────カップルプレート、ですか?
……ぅ。なんかちょっと、照れちゃいますね
はい。一緒に食べたい、です
…………取材して美味しかった他のお店の味
ちゃんと知っておきたいですし。
[ 美味しいものが好きという気持ちも、
仕事を私情で邪魔する気も更々ないのだが。
それはそれ、これはこれ、だ。
理由は違えど"笑顔"を求めた彼の昔話を思えば
とてもそんなことは思えないし、思わない。
ただ対抗心を抱いてしまうのは許してほしい。 ]
[ いつまでも律儀に"待て"をしてくれる彼の理性を
心底信用している大咲は、完全に無警戒で誘いに乗った。
というより、長く一緒にいたい気持ちが勝って
したごころ …のことまで考えなかった方が近いか。
そうして手渡された、彼のマンションの合鍵は。
大咲にとっては、ごく普通なんてことはなく
特別で 大切で 片想いの頃は考えも出来なかったような
軽いのに何よりも重い、そんな存在になる。 ]
──…じゃあ、今だけの特別ですね。
ふふ。
[ 違う鍵になったら、最初から貰う数は二つ。
その意味を理解しては、照れたようにわらって。 ]
[ 後はもう、中へ入ってしまえば二人の箱庭。
やっぱり髪を触るの好きなんだなぁ、と
"限定"対象は知らないまま微笑ましい気持ちになり。
帰したくないなどではなく。
行かせたくない、と、帰る場所をここだけにするような
その言葉には腕の中で若干動揺を見せた。
あの、もしかしてもしかしなくても、
私が想像している以上に、私のこと、好き…です、か。
それにお客様だった頃の印象と違って
独占欲とか、結構強かったりするのでしょうか。
今更過ぎる疑問は、正解ならとても嬉しいけれど。 ]
[ やがて話を切り出すために、そ、と意思を示せば
くっついていた体温が離れていく。
合鍵を握ったままの手を包まれ、促されるまま
前より少しすっきりしたようにも映る彼の自室へと。 ]
わ、クッション! やわらかいやつ!
[ 大きな白いビーズクッションが鎮座しているのを見て、
ややはしゃいだ声を上げ、二人並んで腰を沈め。
何か飲むかを尋ねてくれる彼の腕をくい、と引き
ふるふると首を横へ動かした。 ]
ううん、……隣、いてください
[ 渡された合鍵は、もう片方の手の中。 ]
[やがて待ち人を見つけたら]
やあ
今日も可愛いけど……格好良いね
[座ったまま、甘やかな少年めいた衣装へ眩しげに目を細めた]
イメチェンだ。すごく素敵
…………お母さんに、電話、してみたんです
[ 過日、勇気を出して打った数字たち。
学校の書類に書かなければならない緊急連絡先の番号を
大咲は未だ、覚えていた。 ]
正直、縁を切られたのか、切ったのかも分かんないし
まだあの家に住んでるのかも知らないし。
知ろうとしなかったから 当然なんですけど。
でも、夜綿さんが私を幸せにしたいって言ってくれて
──…実際、ほんとうに、幸せばっかり教えてくれて。
同時に ふとした時、昔のことも頭を過るんです
……それって不誠実だし、自分でも、嫌で。
だから、私もその気持ちへ、ちゃんと誠実でいるために
逃げてきたことへのケジメつけなきゃなって。
[ 繋がるかも分からない電話番号への発信は。
確かに、大咲の母へ届いた。 ]
なんかね、元気そうでした。
あんな声聞いたの初めてだなぁって思うくらい。
恋人が出来て、一緒に住むつもりなんだって言ったら
何て言ったと思います?
「お祝いは幾らがいい?」ですって。
……あの人の中では、お金を渡すことが
愛を渡すのとイコールだったんだって気付きました。
ケーキも料理も、それなら受け取りませんよね。
[ 寂しいひとだな、と思ったし。
──けれどそれが免罪符になるわけでもないと感じて。
だから大咲は、ひとつ、踏ん切りがついたのだ。 ]
だからね、私も受け取らないことにしました。
お金はもう要らないから、私は私なりに前向いて、
好きな人と幸せになるねって言って。
──…だから、あの日曖昧に答えちゃいましたけど。
今改めて、教えていいですか。
大咲真白。23歳、実家はもう縁を切りました。
いつまでも過去のこと考えるより
夜綿さんと未来を見て、生きていきたい、…です!
[ その覚悟も準備も、ちゃんと固めた後で良かった。
大咲はそう言って いつものように心から微笑んだ。* ]
[花も似合うなぁ、とぼんやり思ってから、花、とはたと気づく。
あ、どうしようそこまで気合い入れたプレゼントにしてない。
用意してないものは仕方ないけど、距離が縮まるまでの間を、ちょっとした申し訳なさを花束の代わりに抱えてたら。]
……シャミさんは、すっごい可愛い。
可愛い。絶対似合うって思ってた。
[自分を褒められたことより、好きな人がボクの選んだ服を着て、それが似合ってることが何より嬉しい。
可愛い、が口から溢れてくる。]
[自分に触れるのは、その後だ。]
イメチェン。っていっても、甘めだけどね。
たまにはいい、でしょ?
[今日のスタイルは、どこにもピンク色はない。
ワンピースと合わせたグリーンと、黒がベース。
見せるようにくるり回れば、ロングベストの裾がひらり。]
格好良くなれてたら、嬉しいな。
……隣、立つのに。似合うボクになりたかったから。
[どうでしょう。
頭のてっぺんからつま先まで、隣にシャミさんが立つことを考えたコーデ。]
[あ。足先といえば。]
あの、あのさ。
ちょっと、渡したいもの?あって。
そのままちょっと、立っててくれる?
[バッグの中から、小さな箱を出し。]
……絶対上向かないから、安心して!
[そう宣言してから、シャミさんの足元、膝をつくようにしゃがむ。]
[真剣に作業に打ち込む彼の傍ら
自分も同じ作業で工程を進める。
あんな風に微笑まれたら
飛び切り良いものを作らないと、
なんて気合も入ろうもの。
そうして出来上がった槌目のリング。
やすりをかけて光に反射するそれは
何だか少し鱗みたいだな、って思った。
ようやく一頻り作業が終わり、
刻印をお願いするべく先生に預けて
やっと一息ついた。
ふと彼の方を見れば目が合って、笑った。]
あ〜〜〜、こんなに集中したの久々かも。
うん、楽しみ〜!いい感じだと良いな〜!
[片付けしながらのんびり待っていると
程なくして刻印が終わったらしい。
頑張って作っただけに思い入れもひとしおで。
出来上がった指輪を目を輝かせて見つめる。]
わー………
[彼が手を取って、それを嵌めてくれる。
過不足なくぴったりと指輪が収まった薬指ごと
左手を思わず光に翳して見つめた。]
………綺麗。
[大胆で力強く、それでいて繊細に
きらきらと模様が刻まれたそれ。
彼が想いを込めて作ったもの。
思わず見入って感想が零れる。
一頻りそうして眺めた後
そっと彼の左手を取って、
薬指に自分が作った指輪を嵌めようか。]
― 白うさぎとラム肉の日 ―
[ 美澄指名でのカクテルのご注文が耳に届いても
そわそわ見守らずに済むようになった。
郷に入っては郷に従えを強制するつもりはないので
人体の差に合わせる作り方さえ覚えてくれるなら
元の能力には特に、不安も心配もないものだし。
可愛い子ライオンは一瞬で壁を登り終えた。
代わりに大咲が尻尾を振って懐いている先輩から
"揚げ物ヘルプコール"が飛んでくる。
]
はーい、シャミせんぱーい!
今私を呼びました?
ふふん、任せちゃってくださいよ〜っ
[ 下準備やらなにやらは全部遠藤が熟したようだが。
過日の共同作業のように、揚げ代行は大咲をご指名らしい。
頼ってもらえたみたいで嬉しくて、
大咲は「おねがい」へ張り切った声を上げた。 ]
[箱に入っていたのは、黒をベースにした様々な布地をひとつに縫いまとめた、バラのコサージュがふたつ。
異素材を合わせた花は、ところどころ青みがかっていたり、金糸が混じったり。
クリップピンで止めるタイプのそれを、ピンクベージュのサンダルに左右それぞれ挟んで、つける。]
……うん、やっぱり可愛い。
それ、あげる。
[グリーンの落ち着いたワンピースから、足先がヌーディなイメージになるのを、引き締めてくれる。
挿し色でバランスが取れて、むしろこの組み合わせなら華やかだ。
このサンダルにするなら、挿し色で繋ごうと思ってよかった。
どうでしょう、と立ち上がってから、目線をあわせる*]
[ 厚切り大根は、やや大きめの一口サイズ。
染み込んだスープもあって更に崩れやすい素材である。
しっかり水気を拭き取ろうと、
舌でも潰れるくらい柔くなった大根は固くはならない。 ]
シャミ先輩、結構難題言いますねぇ……?
[ 良い感じに揚げて! と最後全投げされた時も思ったが
いけるかいけないかの瀬戸際を攻める、その難易度。
まあ大咲も? 三年は先輩の背を見て育ったので?
余裕
(と思われて褒められたい)
なんですねこれは〜! ]
[ 衣の片栗粉に、味を引き立てるための塩胡椒。
カツのように徐々に少しずつではなく、一気に衣をまぶし
時間との真剣勝負、素早さ競争。対戦者は大根。
────先輩せんぱい!
大咲ちゃんと勝ちましたよ!
まで思って我に返る。一体何と戦っていたのか?
……強いて言うなら自分自身か。なんだこれぇ。
とかなんとかなっている大咲はともかくとして。
オーダーが続くなら大咲は再戦も受けて立ちますし
ラムは羊ですよ、同士よ。認めてないけど。 ]
[ 猥談再来(ではない)は露知らず。
ついでに惚気(これは確かにそう)の横流しも知らず。
大咲は良いラム肉の仕入れでややご機嫌な店長を
ふ、と思い返し、そういえば──と。 ]
( まあ、スタッフ全員かわいいんだけど
店長はどちらかというと綺麗の方が近いような )
[ 大人のお姉さんと聞けばまず真っ先に
店長を大咲は思い浮かべてしまうので。* ]
[模様は恐らく気持ち彼のものよりも
細かな模様が沢山ついている感じになったろうか。
裏には R to Eと刻印が入っている、筈。
指の付け根までそれを通し、彼の顔を見て。
自分の手を彼の手に並べる。]
………ふふふ。
なんか、ちょっと感動しちゃうね。
[頬を染め、嬉しそうにはにかんだ。**]
うん……本当に可愛いね。すごく可愛い
生まれて初めてだよこんなに可愛いの
[少し内踝をこすり合わせる]
チエのイメチェンもすごくいいよ。こんなに雰囲気が違うと……
[緊張してしまうな、と]
あ、そうか。緑。並んで立つコーデだ
[足元にしゃがむ仕草に目を見開いて。
下がろうとする体を、浅い呼吸で止める]
あの……
[なんだろう。スネ? スネを出してるのはダメ?]
あ
[片足を下げる。
重心を後ろに。チエの膝の近くに残された片足が見える]
…… すごい
[最初からそうであったみたいに、しっくりと馴染む薔薇。
すーすーするような、なんとも心許ないような感覚が消えていく]
すごいね──
[立ち上がったチエと視線が交わった]
そうだ。これを
──君に
[花束のメインは赤。
背が高いのは淡い色の桃の花、落ち着いた赤いフリンジ咲きのチューリップ。グリーンのラナンキュラスと霞草。
ミモザは含んでいない]
はじめて。好きな子ができたら
花束を持って行ってご覧って、昔ね、友達が
[その人、ゴリゴリの欧米人だけども]
チエ、最初に言うけど
私は君に恋をしている かもしれない
[この気持ちもまた、恋と呼ばれるものらしいから]
そうするとね
年甲斐もないんだけど、これは初恋ということになるのかも
なので
おかしなことを口走っても、大目にみてもらいたいな
二人っきりだし君は素敵だし──
[本物のデートに慣れてないからね、と*]
[玲羅と目が合って。微笑み合う。]
俺も〜〜。こんな集中したの試験以来かも。
いや、もしかしたら試験以上かも。
ね〜〜。玲羅に似合うと良いな〜。
[笑い合って。待って居た。]
[彼女の指に嵌った指輪。
左手ごと、光に翳す姿。
魅入ってしまって、胸が熱くなる。
『綺麗』なのは、君の方だ。]
…………っ。ああ。
[魅入っていたから、玲羅が俺に向き直った時。
一瞬反応が遅れた。
彼女が俺の手を取って、指輪を嵌めてくれる。
ぴたりとおさまる指輪。
見えないところには、彼女と自分のイニシャルが刻印されている。]
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