人狼物語 三日月国


18 【完全身内村】Vampire Holiday

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視点:


【人】 移り気 ジェイド

■キネイと


  ────吸血鬼なんて。

  "なりたい"と憧れを抱かれるような、そんなものじゃない。

  孤独で退屈。
  "あの人"に言わせれば憐れな生き物。

僕は、キネイに小さな布袋を渡し、中を見てと告げた。
袋の中、固く鈍く光るものは、何の変哲もないティースプーン。
────ただし、純銀製。

おかしなところはないか彼自身に確認させ、その後、それを寄越せと己の掌を差し出した。

僅か触れただけで、じゅ、と掌の肉が焼けるような音と、立ち上る腐敗臭。
毒薬を垂らしたように広がり皮膚も肉も腐らせていく醜く黒い染み。

「………………ぅ」

覚悟の上だったけれど痛い事には変わりなく、僕は小さく呻いてスプーンを床にぽとりと落とした。

「吸血鬼について調べたのなら、知ってるだろう?」

「吸血鬼の弱点の一つが、銀なんだ」

「触れると、こうなる。刃物で切られてもすぐ治るけど、この傷はなかなか治らない」

何をどう告げても信じなかったお前の事だ。
ここまで見せても、尚、疑ってくるのかもしれないけれど。
(0) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 9:42:05

【人】 移り気 ジェイド

手品の類じゃないちゃんと見て、と、スプーンが触れた部分だけが醜く爛れた掌をキネイに示しつつ、僕は必死に彼に告げた。

ああ。本当に、僕は"ヒキコモリ"だったから。
伝わるように伝える事は、本当に大変なんだ。

  自分は、お前がなりたいと望む吸血鬼なのだと。
  "設定"とかそんなんじゃなく、真実500年生きているのだと。

  確かに不老不死だけれど、
  長く生きて最後に残るのは空しさしか無いのだと。

「────お前は、お前が慕いお前を慕うコトネを置いていくつもりなの?」

周囲から誰も居なくなる。
家族も友人も、己を知る者全てが自分を置き去りにしていく。
自分だけが時の流れに取り残される。

「一人ぼっちになったら、お前が固執する美しさは何の意味も持たないのに」

今此処にある幸せを、何で捨て去ろうとするんだ。
それは手放したら二度とは手に入らないものなのに。

「────考え直せ、キネイ」

「お前が抱くのがその願いなのなら、僕はそれを叶えさせるわけにはいかない」*


感情書き換え:好敵手(+)→保護(+)
(1) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 9:43:58

【人】 移り気 ジェイド

■コトネと


「────ん?少し、ね」

キネイの元を離れ、醜く黒ずんだ左手に包帯を巻こうとしていたら、コトネに一体何があったのだと見咎められた。ちゃんと手当てしましょうと慌てる彼女に、薬で治るものじゃないから包帯だけで良いと制止して。

「コトネは、今でも彼の力になりたい?」

小さく問う。

彼を応援するという事は、彼との別離の後押しをするという事。
彼は一人、時の流れの中に留まり続け、人ですら無くなろうとしているのだから。

「吸血鬼だって、怪我をする」

「銀のスプーンに触れただけで、この有様だ」

僕のこの手を見たでしょう?と、白く細い布で覆われた左手に視線を落とす。

昨日まで、信じてくれずとも構わないと思っていた。

所詮、ゲームの参加者だ。
勝敗決着はどうあれ、きっともう会うことは無いだろう子供達なのだし。

──────でも、今はそうは思わなかった。
(2) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 9:55:31

【人】 移り気 ジェイド

「僕は、吸血鬼だ。キネイがなりたいと望む、吸血鬼」

「────他の誰でもなく、君にだけは、信じて欲しい」

訥々と言葉を紡ぐ。

「10年くらい前、雪の日に泣いていた子供は、君だったんでしょう」

  賑わう街で。母親とはぐれて。
  僕のコートの裾を握って、離さなくて。

  だから一緒に、母親を探してやった。
  子供を肩車した経験なんて、後にも先にもあれっきり。

今日よりもっとずっと寒い日だったねと、離れた窓の向こうに見える曇天をちらりと見やる。

「僕の願いは、キネイとは逆。────僕は、人間になりたい」

「もう僕は人の血を飲みたくはないし、不老不死なんて要らない」

「キネイに、人の生き血を啜って生きる道を歩んで欲しくない」
(3) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 9:58:40

【人】 移り気 ジェイド

もっと、冷静を務めて話すつもりだったのに。
ぽつ、と膝上に1粒水滴が落ちてしまえば、止まらなかった。

ぼろぼろと頬に冷たいものが伝っていくのを半ば呆然と受け止めながら、呟くように言葉を投げる。

「……吸血鬼、は。好きな人に好きと伝える事も、出来やしないんだ」

ああ、情けない。
こんな子供の前で、初めての涙を流すことになるなんて。*

感情書き換え:執着(-)→恋情(+)
(4) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 9:59:13

【人】 移り気 ジェイド

>>10 キネイ

「お前も吸血鬼になれば、その態のままで吸血鬼になるんだろうに」

"ファファファ"でも無ければ貴族でも無いだろと嘆息する。

聡いけれど狭い世界に生きる幼い子供。
そんな彼を、"なってみないとわからない"という程度の認識のまま僕の同族にさせられる訳が無い。

「────変化を望まない気持ちは、理解できる」

なんでだろう。
腕を掴まれても、数日前に頭に触れられた時のように驚きもしなければ拒否感も沸いてこない。

「でも、吸血鬼になることは、賛同できない」

「────ねえ。ひとりぼっちになって生き続けたいわけでは、無いんでしょう?」

どこか雰囲気が似ているコトネとキネイ。
そう感じるのは、多分、背の高さや身体の細さが近しいから。

この年頃の子供は、どこか妖精じみている。

ぽすんと彼の頭に怪我のない方の手を乗せれば、猫の毛のようなさらさらした髪が指を滑っていった。
(17) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 19:47:21

【人】 移り気 ジェイド

「他の願いを探すんだ、キネイ」

  "吸血鬼になりたい"じゃなく。

  お前が幸福になれて、
  コトネを不幸にはしない願い。

────それなら僕は応援してやらない事もない。

最後の言葉は口にはしないまま。*
(18) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 19:47:40

【人】 移り気 ジェイド

■コトネへの返事 >>15 >>16


「────そうかな。もう、判らないんだ」

何かにつけ思い出すのはあの人の声。あの人の言葉。
でも、そろそろ記憶の中の顔は朧気なんだ。

彼女をかつて好きだったとして。
その顔を忘れてしまうなんて、僕は薄情すぎやしないだろうか。

「…………僕、は」

もう誰も好きにはならないよ、と言いかけたところで、両頬をぶにょりと押された。
何をと瞬く僕に、"結構好きよ"と、喜んで良いのか何なのか判らない事を告げられて。

  そんな"好き"は欲しくない。
  君が本当に好きなのは、明らか、あの少年だろ。

  八百屋に並ぶトマトに対するみたいな
  そんな"好き"なんて、僕は要らないんだ。

「うん。──────それで良いよ」

君は君の信ずるもののために戦えば良い。

思い悩んでいるよりも余程に君らしいよと、僕は僅かに目を細めた。*
(20) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 20:20:16

【人】 移り気 ジェイド

■キネイへの返事 >>19


「…………多分ね。お前の記憶にあるのなら、きっと僕らは会っている」

見た目が変わらぬゆえ、一つところに長く留まれない自分。
それでもこの国には折に触れ訪ねてきていた。

あの人が生まれ育ち、そして骨が埋まっているこの国。
あの人の面影を、血縁を求めて街を彷徨い歩いたのは数え切れない程。

「"もじゃもじゃ"になっても、僕は、人で在れる方を選ぶよ」

いつかしわしわになっても。腰が曲がっても。

だから僕は本当には、彼が恐怖するものを理解できては居ない。
彼と話していると心底それを思い知らされる。

「────僕もね、お前が羨ましいんだよ」

  ────だって、お前は。
  僕の持てぬ全てを持っているじゃない。

僕のその感情もまた、キネイが理解できるものでは無いのだろうし。*
(23) Valkyrie 2019/12/30(Mon) 20:45:31