人狼物語 三日月国


221 Pledge ~sugar days~

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


ルーリ2人が投票した。
大守 威優1人が投票した。

ルーリは村人の手により処刑された。

月が姿を変え、新たな一日が始まった。村人は集まり、互いの姿を確認する。
犠牲者はいないようだ。殺戮の手は及ばなかったのだろうか?

優しい光が村人たちの姿を映し出す……。人狼に怯える日々は去ったのだ!

村の更新日が延長されました。

【人】 田臥 志麻

── *** ──

[───そんな、蜜月は今もまだ続いている。
 
 贈られた浴衣に袖を通すことに慣れた今でも、
 着付けは威優に任せたままだったり。
 弟からのLINEに翌朝になってから気づくほど、
 威優とベッドの上で溺れたりして。

 威優の三週間の長い長い出張も終えた今、
 志麻は────、ダイニングのテーブルに
 テキストを広げて文字の羅列とにらめっこしている。

 試験は来週末。
 問題への予測も出来ているし、9割近くの正解率を
 自己採点では出しているから多少余裕はあれど、
 日が差し迫るとのんびりとくつろいでも居られない。

 専属の家庭教師が、様子を見に来るまでは、
 一人、ワイヤレスイヤホンを耳に付けて
 お気に入りの洋楽を流しながら、
 シャープペンシルをノートに走らせていた。*]
(0) 2023/08/28(Mon) 20:59:27
村の更新日が延長されました。

【人】 大守 威優

――試験前――

[志麻の口から「愛してる」という言葉が自然と出るようになって、
同じ言葉で同じ気持ちを共有する歓びを覚えた。

価値が下がるなんてとんでもない。

寧ろ従妹姪の言う「バフ」効果が付与されている気さえする。]


 捗ってるか?
 
(1) 2023/08/28(Mon) 21:32:54

【人】 大守 威優

[濡れ髪をタオルで拭きながら、ダイニングに顔を出す。

試験が近くなるにつれ、一緒に風呂に入る頻度は落ちた。
一緒に入るとどうにもそのまま志麻の関心を
己だけに向けさせたくなる衝動に勝てないので。]

[覗き込んだノートには、志麻らしい字で書き込みが続く。
志麻は書いて覚える派らしい。

己はテキストを数回通して読むと暗記できるので
あまり書いて勉強をするということがなかったのだが
志麻に教える際には己と同じやり方は向いてなさそうなので
解説も後から読み返せるように大きめの付箋に書いて
ノートに貼りつける方式を取っていた。

付箋であれば、志麻自身が解いた箇所と区別がつきやすく
参照する時に探す時間を短縮できる。
覚えきった付箋を外せば、自ずとまだ学習が完全ではない所が
目立つということだ。

今、見ているページにはもう付箋はない。
追い込みの時期に「見直し」に費やせる時間があるのは良い事だ。]
(2) 2023/08/28(Mon) 21:33:06

【人】 大守 威優



 順調そうだな。
 うちが取り扱う保険の種類や掛け金も覚えてるし、
 解約時返戻率の計算も慌てなければ問題ないだろ。


[冷蔵庫を開けて、瓶とペットボトルを取り出す。
グラスに注いでステアして出すのは、
漢方薬を取り扱う会社の蜂蜜酒の紅茶割りだ。

志麻は酒に強いから、少しのアルコールは勉強の邪魔には
ならないだろう。]
(3) 2023/08/28(Mon) 21:33:20

【人】 大守 威優


 どこか不安なところはあるか?


[今開いている保険分野だけではなく、
英語や地理、法律の試験もある。

中途採用試験は難関大学受験並みの試験勉強が必要なので、
志麻が厭うなら一緒に働くことは断念する心算だったが、
元々の気質が頑張り屋だからだろう、合格点を疑わない程
ここまで順調に試験勉強が行えている。*]
(4) 2023/08/28(Mon) 21:34:18

【人】 田臥 志麻

[イヤホンを付けていても、
 周囲の環境が聞こえるくらいの音量にしかしていない。

 音楽に重なるように威優の声がすれば顔を上げ、
 風呂上がりの彼に、んー……、と。
 返答とも唸りとも取れる相槌を打つ。

 威優よりも帰宅が早い志麻も、
 彼より先にシャワーを済ませていた。

 風呂から上がった後も、浴衣を身に纏ってしまうと
 ついつい、だらけそうになってしまう為に
 外出にも使えそうなシープボアのカーディガンと
 ボトムスのセットアップを着ている。

 一緒に風呂に入りたい気持ちはやまやまあれど、
 ただ一緒に浸かって、だけで済ませられる気はしない。]
(5) 2023/08/28(Mon) 22:34:23

【人】 田臥 志麻

[自身に合わせてくれた威優のサポートもあり、
 ページの進み具合は順調といえば順調だ。
 複数ページについていたメモ付きの付箋も今は
 随分と減って、ノートの厚みも薄くなってきている。

 彼が手書きで書いてくれた付箋は、
 もう見ずとも答えられるが、捨てられないまま
 纏めてエシレのクッキー缶に詰め込んでいた。]


  ……順調といえば順調。
  暗記ものは概ね覚えられたと思うし、
  引っ掛けに躓くほうでもないから。

  ……お、サンキュ。


[暗記する方法はひたすら書いて覚える方が性に合っている。
 その話をすれば、数回読めば覚えると言った威優には、
 出会った時のように、わぁ……♡と、感嘆を零してしまった。
 このときばかりは地頭の良さに少しばかり嫉妬する。]
(6) 2023/08/28(Mon) 22:35:01

【人】 田臥 志麻

[濃茶色から甘い香りがする。蜂蜜だろうか。
 一口、口に含めばふわりとアルコールが広がって。]


  ……あ、これお酒だ?
  うまい。


[蜂蜜の甘さにほっとして表情が緩む。
 両手でグラスを包み込みながら、
 ストレッチ代わりに頸をぐるぐると回しつつ。]
(7) 2023/08/28(Mon) 22:35:13

【人】 田臥 志麻

 
  ほんと、焦ると計算する時にミスりそうでさ。
  どうせ仕事じゃパソコン使うんだし、
  試験でも計算機使わせて欲しい〜……。


[不安、というよりも半ば愚痴めいてしまう。
 ちなみに英語も、法律も。
 仕事で必要な箇所に集中的に絞って覚えた。
 地理だけは好奇心が勝って得意分野となったが。

 いずれ秘書室に就くのであれば、
 英語は必須になるだろう。
 今の会社でも使わないわけではなかったが、
 スキルレベル的には格段に上がっていくだろう。*]
(8) 2023/08/28(Mon) 22:36:29

【人】 大守 威優

[試験勉強が佳境な時期に浴衣を封印したのは
良い判断だった。

寝間着用として作られた浴衣は襟元が乱れやすく、
女性用と異なり伊達締めをしないので
開いた胸元から艶めかしい陥没乳首が覗いた日には
それを掘り起こしたくて仕方がなくなってしまう。

とはいえ今身に着けている部屋着も
小動物に見えてオオカミとしては捕食したくなるのだが。]


 良かった良かった。
 暗記は入社後にも忘れて貰っては困る用語ばかりだから
 試験に出るのは一部でも今全部覚えて損はないよ。


[志麻はアドバイスを素直に聞き入れてくれる。
勿論、採用側でより情報を持っているからというのもあるが、
志麻にしてみたら己の勉強方法は鼻につくだろうに、
そこで「威優にはわからない」と突っぱねずに
やり方は自分なりでありながら此方の言葉に耳を傾けてくれた。

その柔軟性はどの部署に採用されても活かされるだろう。

特に今後は社内においてΩはハンデとはならないのだから。]
(9) 2023/08/28(Mon) 23:21:19

【人】 大守 威優



 そう、勉強のお供だから甘い飲み物の方が
 良いかと思って。
 かといってココアやホットミルクだと
 カロリーも気になるし、眠気を誘いそうだから。


[身体に良い漢方薬やハーブが配合されていて、
純粋な蜂蜜酒に比べ若干の癖があるが、
それを砂糖入りの甘いストレートティーが
緩和してくれている。

リラックス効果が得られると良いのだけれど。]
(10) 2023/08/28(Mon) 23:21:33

【人】 大守 威優



 まあ電子機器の突然の故障にも慌てずにって
 ことなんだろうけどね。
 客先で電卓とスマホ両方が壊れるなんて
 中々ないだろうし、試験内容の見直しは提案してみよう。


[逆に此方が貴重な意見を得たりすることもある。
計算は暗算で大体出来てしまって計算機アプリは
立ち上げることがほぼないので
完全なる視点漏れに反省した。]


 順調なら今晩の「威優先生」の出番はなさそうかな?


[グラスを持って横に座り、肘をついた。
横顔を見ているだけの簡単なお仕事――
にはならない。
愛しい彼は己を叱るのが上手だから。**]
(11) 2023/08/28(Mon) 23:21:52

【人】 田臥 志麻

[威優の地頭の良さは出会ったときから感じていたが
 生活を共にするようになり、家庭教師を任せた頃から
 より強く感じるようになった。

 勉強法が違うのはもちろん、要点の纏め方や
 教え方も相手に分かりやすく手法を変えている。
 地頭だけでなく性格由来のものも多分にあるだろうけれど。

 彼の好感が持てるところは能力をひけらかさらない点だ。
 ここまでくれば妬むどころか尊敬を覚えてしまう。

 まだ直接上司と部下の立場になったわけではないが、 
 威優なら間違いなく上司として、夫として、誇れるだろう。]


  そっか。
  最初は見慣れない単語ばっかりだったけど、
  新しいこと覚えるのって結構好きだから
  調子が上がってくれば勉強も楽しいよ。


[肩肘張らず、強がらなくてもいい。
 そんな環境下の中で集中できるのは有り難い。

 それは他でもない威優が与えてくれたものの一つだ。]
(12) 2023/08/29(Tue) 1:07:55

【人】 田臥 志麻

[こうして手渡してくれるさりげない労いも
 心が温まる心地で表情が緩む。]


  ホットミルクはたまになら嬉しいんだけど、
  実はちょっと甘過ぎて苦手。
 
  ああ、でもミルクにも蜂蜜入れるな。
  どうしても甘いものが欲しいときとか。

  これはちょっと苦味もあって好きだな。
  ……嬉しい。


[いつから用意してくれていたのだろう。
 大げさでもない、優しい励ましが心地良い。
 こくん、ともう一口飲めば、
 紅茶の奥に蜂蜜独特の癖が広がった。]
(13) 2023/08/29(Tue) 1:08:12

【人】 田臥 志麻

[電子機器は脆い。故障すれば自力で解決する他ない。
 威優の言い分も最もだけれど、小さく唸った。]


  そりゃそうなんだけどさー……。


[と、項垂れつつも続いた言葉には
 ぱっと表情を明るくしてマジ!?と声を弾ませた。
 とはいえ来週末に迫った試験に間に合うかは別の話。]


  んー?教えること?


[冷えたグラスを頬に添えて涼みながら、
 軽い調子で答えつつ、隣の威優を見遣った。

 「先生」の響きに、ふと悪戯めいた案が浮かぶ。]
(14) 2023/08/29(Tue) 1:10:21

【人】 田臥 志麻

[威優と話し始めた頃にワイヤレスイヤホンは
 外して、脇に寄せていた。
 今はスマホから細やかな音量の洋楽が流れている。

 試験箇所のお浚いはとうに二順している。
 追い込みと言っても切羽詰まった程じゃない。

 だったら、今必要なのは──、]


  ……じゃあ、
  
『格好いい専務を骨抜きにする方法』

  教えてくれる?

  威優せーんせ



[隣の"教師"に視線を合わせて、にやりと笑う。
 グラスを頬に当てたままあざとく小首を傾ければ、
 ガラスの中の氷がカランと、揺れた。**]
(15) 2023/08/29(Tue) 1:12:14

【人】 大守 威優

[試験勉強の時間は、一緒に仕事をする予習にもなった。

初めは志麻を前にして己が理性を保てるか、
本当に勉強になるのか不安な面もあったが、
役割を演じるのは幼い頃から慣れているから
勉強中、中断していかがわしいことに及ぶことはなかった。

飲み物を用意することも覚えた。
大体はコーヒーメーカーからマグカップに移すだけの
子どものお手伝いレベルだったが。

もう少し何か出来ないかと部下に相談したところ
紹介されたのが簡単カクテルだったのだ。

紅茶にブランデーを入れたり
コーヒーにコアントローを入れるのも考えたが

せっかくなら志麻があまり知らなさそうな組み合わせを
試してみたくて。]
(16) 2023/08/29(Tue) 11:11:55

【人】 大守 威優



 この酒はミルク割も推奨してるみたいだから
 残りで試してみようか。


[ホットミルクにしないのは正解だったらしい。
苦手なものを出して志麻に気を遣わせるのは忍びない。

まだまだ知らない好みがある。
二人でいると貴重な時間を惜しむように抱き合ってしまうことも
多いが、会話で互いを知ることも疎かにはしたくない。]
(17) 2023/08/29(Tue) 11:12:16

【人】 大守 威優

[試験はもう来週末。
今の段階で「わからない」部分があれば焦るが、
どうやらその心配はなさそうで、
家庭教師役も終わりかなと思って横に座れば、

「教え子」がワルイ顔をして此方を見た。

スマホから流れる洋楽がまたドラマのワンシーンのようだ。]


 それは君の方が詳しいだろう?

 俺の身体も心も、どう攻めれば俺が夢中になるか
 俺よりもよく知ってる癖に。


[己のグラスは置いて、彼のグラスを取り上げる。
頬についた水滴を手の甲で撫でながら、
反対の手でグラスの中身に口をつけた。]
(18) 2023/08/29(Tue) 11:12:38

【人】 大守 威優



 間接キス。


[雰囲気の割に随分幼いことを言う。
情緒の成長が遅かった己のこうした子どもっぽさも
志麻にはお見通しだろう。**]
(19) 2023/08/29(Tue) 11:12:52

【人】 田臥 志麻

[試験勉強中のコーヒーの差し入れは、
 どちらが決めたわけでもないのに威優の役割となった。

 その時間を目安に休憩を入れる。
 一度のめり込んでしまえば集中は切れることはなく、
 威優が隣りにいても目の前の問題集に
 意識が向いて、浮ついた気分にはならずに済んでいた。

 もしコアントローを出されていたなら、
 喜んで口にしただろう。
 コーヒーとオレンジは相性がいいから。

 スナック菓子などは最近は食べない。
 代わりに、勉強の合間の糖分補給のために
 チョコレート掛けのオレンジピールや、
 ドライフルーツを常備していることを
 キッチンにも立ち始めた威優なら知っているだろう。]
(20) 2023/08/29(Tue) 17:48:06

【人】 田臥 志麻

[試験までの家庭教師役が終わっても、
 日常会話が通じるぐらいまでの英会話は引き続き
 教わるつもりでいる。
 そのことはまだ本人には確認していない。]


  ん、じゃあその時は威優の分も一緒に。


[美味しいと感じたものを二人で分け合うのも、
 二人で暮らし始めて当然のようになってきた。
 
 蜂蜜の香りがするお酒のように、
 威優との会話は酩酊感があって癖になる。]
(21) 2023/08/29(Tue) 17:48:22

【人】 田臥 志麻

[世界で30億再生も流された結婚式の定番のラブソングが、
 70歳になっても君を愛していると歌っている。

 「先生」よりも詳しいと指摘された生徒は、
 反応に笑いながら、少しだけ口を尖らせた。]


  だーめ、威優は今「先生」なんだから、
  オレにちゃんと教えてくれないと。


[取り上げられたグラスを視線が追いかける。
 間接的なキスでときめいているのが可愛らしい。
 ふふ、と思わず声に出して笑い。

 添えられた手の甲に甘えるように頬を寄せる。]
(22) 2023/08/29(Tue) 17:48:42

【人】 大守 威優

[志麻の集中力は高く、それだけに教え甲斐もあった。
英語の勉強中は不意に英語で話しかけたりもしたから
面接で突然英語の質問が来ても慌てずに答えられるだろう。

この後は海外で挙式する心算だし、
英語は話せるに越したことはない。
教える、というよりは錆びないように二人で練習する、
といった感じだろうか。]


 ん、勿論一緒に飲むよ。
 つまみは?今日はどうする?


[蜂蜜の酒にも、彼がストックしているドライフルーツは
合うだろう。
希望なら持ってくるし、この後もう勉強を再開しないなら
酒だけでも良いかもしれない。]
(23) 2023/08/29(Tue) 20:02:08

【人】 大守 威優

[落ち着いたメロディーの歌詞に少し耳を傾ければ
まるで己の心を出力したよう。]


"every single day"か、


[ふ、と微笑んだ。
every dayでは伝えきれない、「この一日、一日」毎度恋に堕ちる気持ち。
それを伝えずにはいられない気持ち。]


 はは、それで、優秀な教え子は、
 「先生」の言うことを素直に聞いてくれるのかな。


[ごっこ遊びはまだ継続らしい。
甘えてくる頬の感触が愛しくて笑った。

これくらいでは酔いの気配もないだろうに。]
(24) 2023/08/29(Tue) 20:02:48

【人】 田臥 志麻

[今まで海外に大して興味が湧かなかったから、
 英語も学校で教わった程度の知識しかなく、
 英会話となれば実践での使い方の違いに驚いた。

 まずはヒアリングからを意識して、
 映画は字幕版を見るように意識し、
 普段何気なく聞き流していた洋楽も
 意味を調べるようになれば曲に深みが出てくる。

 不意に威優から投げかけられる英語での呼びかけに
 最初は「Please say it again」ばかりを
 繰り返していたときもあった。]


  今日はもう止めとこっかな。 
  マンゴーのドライフルーツまだ残ってるよ。


[一度途切れた集中力を再び湧き起こすより、
 時間を置いたほうが気分転換にもなる。
 
 短い夜の貴重な時間、
 威優と共に居られる時間も、作っておきたい。]
(25) 2023/08/29(Tue) 21:29:07

【人】 田臥 志麻

[ふと威優が歌詞の一部を口にした。
 プレイリストに入れていたお気に入りの一曲。
 彼も気に入ってくれたなら、嬉しいけれど。]


  毎日君に恋してるってやつ?
  聞いてると落ち着くんだよね、この曲。


[彼が口にしたフレーズを和訳で繰り返し、眼を細める。
 翻訳するまで意識していなかった音楽は、
 つい口から溢れてしまうほどの愛の歌だった。

 「先生」を強調し続けていれば、
 生徒の悪ノリに威優が乗ってくれる。]

  
  先生の教え方が上手ければね?


[などと、挑発めいた言葉を口にして。]
(26) 2023/08/29(Tue) 21:29:25

【人】 大守 威優

[日常的に学ぶ機会がなければ知識というものは往々にして
抜けていくものだ。
志麻は社会人2年目、まだ学生時代の知識貯金がある程度残って
いるとはいえ、専攻ではない英語の、それも会話をしろというのは
難しかったようだ。

まずは慣れる為と二人で見る映画を日本語字幕にして
ストーリーを一度頭に入れてから今度は英語字幕で見る。
音楽は癖の強くない歌い方をする歌手を中心に。

耳が慣れたらスピーキング。

 「単語が出て来なければ、そこに拘るよりは
  自分が知っている英語でそれを伝えようとする方が良い。
  黙ってると相手には「単語がわからないから止まってる」より
 「会話を終わらせたい」と取られかねないからね。

そんなアドバイスをしたら、随分と発言の流暢さに磨きがかかった。
自分の知っている言葉で伝えようとしてくれたら、
相手から「これ?」と答えが返ってきたりする。
その推察が当たれば相手の機嫌も良くなるし、
良いことづくめだ。]
(27) 2023/08/30(Wed) 0:06:39

【人】 大守 威優



 オッケー。
 志麻が食べないなら俺も止めておこう。


[今夜の勉強は切り上げ。
テーブルの上の消し滓を卓上クリーナーに吸わせて
台拭きで更に拭く。
こうした小さな掃除も一人暮らしの時にはして来なかった。
今は二人の時間を確保する為に、外注を少し減らしている。]
(28) 2023/08/30(Wed) 0:06:52

【人】 大守 威優

[流れて来た英語の曲をきっかけに、
「先生」を求められて英語で返す。

先生の教え方の巧拙は、30分後の己を見ればわかるだろう。

70歳にはまだなっていない己は、
彼の脚も腰も軽々と持ち上げられる。

そうするように仕向ける手管は
教え子は既に持っている筈だが「教えて」欲しいらしい。]
(29) 2023/08/30(Wed) 0:07:05

【人】 田臥 志麻

[英会話を話すときには無理に単語を探すより、
 知っている英語で会話を続けられるように。

 威優にそう教わってからは随分と気が楽になった。
 知識量とのしての単語はまだ足りないけれど
 伝えたいことを優先する為に、
 ボディランゲージや表情を変えてみたり。
 
 時には食事中は日本語禁止にして遊んでみたりもした。
 苦戦しつつも伝わったときの嬉しさを覚えてからは、
 英語でのコミュニケーションも増えている。]


  そう?
  じゃあお酒だけもうちょっと飲もっか。

  ……サンキュ。
  

[気にせず食べてもいいのに。と勧めるけれど
 この台詞は大抵の場合威優が言うものだ。
 何しろエンゲル係数は高いのはオレの方なので。

 テキストを片付ければ威優が後片付けを手伝ってくれる。
 つくづく気の回る男だと感心してしまう。]
(30) 2023/08/30(Wed) 3:00:09

【人】 田臥 志麻


[英会話の中で確認し合ったのは、日常会話だけではない。

 ベッドの上で試してみた日本語禁止は、
 喘ぎが演技じみていて、普段の喘ぎの方がいいと
 クレームをすぐにもらって腹を抱えて笑った。

 自身も威優の言葉をオートで脳内変換するのに
 時間がかかり、そんな余裕もないので、
 10分と続かなかったのもエピソードのひとつになっている。]

 
(31) 2023/08/30(Wed) 3:00:48

【人】 田臥 志麻

[毎朝毎夜のように交わすキスはまだ忘れる間もないくらい
 威優の愛の味を覚えている。
 今し方もその味を味わったばかりだ。

 70歳になるまでには知らないことなどないぐらいに
 威優の全てを知りたい。

 何で悦ぶのかも、どこが好きなのかも。
 どうされると嬉しいのかも、全部。]  
(32) 2023/08/30(Wed) 3:01:16

【人】 大守 威優

[日によっては志麻が食べなくとも己だけつまむが
今日はもう志麻の転職用の勉強も切り上げなので。

奪ったグラスを返して、二人で飲み干す。
元々の度数が高い蜂蜜リキュールが、腹の底で熱を帯びた。]
(33) 2023/08/30(Wed) 19:56:16

【人】 大守 威優

――数か月後――

[新婚旅行も兼ねて、2週間程海外に行くことになった。
大守一族を交えての披露宴との兼ね合いをどうするかは
当主や母親と話し合いを重ね、挙式を先にするという我儘を通した。

披露宴にはメディアも入る。
そうなれば志麻の顔も広く世間に知られることとなり、
動くのに煩わしさを感じることになるだろう。

その前に、二人だけの式を挙げたくて。]
(34) 2023/08/30(Wed) 21:18:39

【人】 大守 威優

[オーダードレスに関しては
ごく一部の信頼できるスタッフにしか依頼主が明かされないように配慮して貰った。

ドレスの型紙は往々にして女体が着ることを想定して
作られている。
従って、既存のものを直すよりは最初からパターンを引いて
貰い、身体に合うものを作って貰おうということになった。

志麻の体格を考えれば、パニエを入れてふんわりさせる形は
あまり似合わないだろう。
しかしウェディングドレスの形は崩したくないので
トレーンは絶対長くしてほしい。

カウンセリングシートにはそう記入して貰う。]
(35) 2023/08/30(Wed) 21:19:25

【人】 大守 威優



 志麻は?
 デザインとかこだわりがあれば言って。
 一生に一度のものだから、後悔ないものを作って貰おう。


[二人で採寸に訪れた日、アトリエに飾られた
色とりどりのウェディングドレスに囲まれながら
志麻の想いを聞いた。

勿論、決めきれなければお色直しをしても良い。
メディアの入る披露宴では、タキシードを着ることになるし、
ドレスは少数のスタッフと己が見るだけだ。*]
(36) 2023/08/30(Wed) 21:19:40

【人】 田臥 志麻

── 式に向けて ──

[海外旅行に行ったことは一度もない。
 興味がなかったという点も理由の一つではあるが、
 他にも理由は二つある。
 
 一つは仕事で多忙な両親の為に
 年の離れた弟を一人放っておけなかったこと。
 もう一つは、旅行先で偶発的なヒートに
 見舞われたときの対処法が思いつかなかったこと。

 懸念材料を理由に足が遠ざかっていたけれど、
 その二つは威優がいとも簡単に取り除いてくれた。
 彼との日々の英会話も重ねてきた今では、
 実際に試したいこともあり積極的になっている。

 初めてのパスポートはつい先日手に入れた。
 記載されている名前は自身の名字も
 今では威優と同じ大守に変わっている。]
(37) 2023/08/30(Wed) 22:03:17

【人】 田臥 志麻

[転職に合わせて籍も入れたものの、
 披露宴やメディア自体にはまだ発表されていない。
 新しい職場はモラルがある人達ばかりで、
 口の前に戸を立てずとも
 自身の立場は対外的に漏れていないようで感謝しか無い。

 入社したばかりなのに休暇も申請受理されて、
 今から上等なお土産を考えるばかりだ。

 その旅行でのメインであるウェディングドレスの準備は、
 旅行準備よりもずっと前から始まっていた。
 
 威優に連れられて大守系列の服飾メーカーに赴き、
 全身のサイズを測られた後は、
 生地の素材や、デザイン、全て。
 一からオーダーメイドで作るという。]
(38) 2023/08/30(Wed) 22:03:43

【人】 田臥 志麻

 
  ……一度しか着ないのに?
  既存のものでもいいけど……、


[と、最初は戸惑ったものの威優の考えは違うらしく、
 最終的には良いドレスを着たい気持ちを
 上手く唆されて首を縦に振っていた。

 マーメイドドレスや、ミニドレス、Aライン。
 どれもメディアで見たことがある憧れのデザイン。

 レースやドレープがたくさんついたものもあるが、
 自身の見た目的にはシンプルなものが
 似合うのではないかと思い至り、
 デザインよりも、生地に拘っていくようにした。]
(39) 2023/08/30(Wed) 22:04:11

【人】 田臥 志麻

[フィッティングルームの前に並ぶ、
 数百着以上のドレスの間を、渡り歩いていれば
 目移りしてしまう。
 女性用の服、ましてやドレスに関しての知識もない。
 一生に一度、と反芻しつつ。]


  ……色は白一色、が、いい。
  トレーン?を長くするなら
  デザインはすごくシンプルなやつで
  あと……、

  やっぱり、ちょっと照れくさいから、
  ヴェールで顔隠したい……



[ウェディングドレスは憧れが詰まっている為に、
 はしゃぐ気持ちもあれば、
 腰が引けてしまう思いも、少し。*]
(40) 2023/08/30(Wed) 22:05:18

【人】 大守 威優


 プレタポルテだと身体に完全にフィットしないだろ。
 折角なら合わせてコルセットとかガーターもオーダーしよう。


[ドレスの提案をしたのは志麻の気持ちを慮ったというよりは
志麻が着ている姿が見たいという100%私欲だと
よくわかるはしゃぎよう。

靴はヒールにするか、それともトレーンで見えないから
履きやすさ重視でヒールのない白靴にするか、
胸元は膨らませるか、自然に任せるか、など、
前のめりでデザイナーの説明を聞いていた。]
(41) 2023/08/30(Wed) 22:39:52

【人】 大守 威優



 やっぱり白が良いな。
 生地は一番良いものを。

 ヴェールも長くして貰おうか。
 ドレスがシンプルなら、ヴェールは柄入りで……
 色は白なんだけど、光できらって光るチュールがいい。


[恥ずかしがる志麻の頬骨にそっと触れる。
赤らんだ顔は特に可愛いから、ヴェールで隠すのは賛成だ。]
(42) 2023/08/30(Wed) 22:40:05

【人】 大守 威優

[そんなこんなでドレスの打ち合わせをして、
並行して式場を決める。
規模は大きくなくても良い。
ただ、「チャペル」として、ヴァージンロードが存在する方が良い。]


 ここ良いんじゃないか、海がよく見える。
 ナイトウェディングなら観光客の目に晒されることもないし。


[志麻が少しでも周りを気にせずに済むように。
チャペルの資料を見ながら提案する。

ガラス張りの教会は自然の中にいる気分にもなれそうだ。*]
(43) 2023/08/30(Wed) 22:40:16

【人】 田臥 志麻

 
  プレ……、なに?
  コルセットも着るの?ガーターも?

  
ガーターベルトはなんかエロい感じがする……。 



[そんなもの弟の漫画でしか見たことがない。
 下着と合わせると良さそうだなという邪念が過りつつ、
 いやいや、と首を振った。

 説明を聞きながら自身よりも前のめりになって
 威優が意欲的に聞いている。
 まるで威優が着るみたいだ、と笑いつつ。

 ヒールは履き慣れないのでフラットシューズに。
 可愛らしいレース素材の透けているものを選ぶ。
 
 ヒールを履いて同じ目線になるのもいいが、
 威優を見上げる角度が好きだから。]
(44) 2023/08/30(Wed) 23:20:49

【人】 田臥 志麻

[ありのままの姿を好きだと言ってくれたから、
 胸元もそのままに。
 白を選んだら威優も賛同してくれる。]


  うん、長い方がいい。
  靴がレースっぽいものだから、
  ヴェールもレースを足して……チュール?
  光が反射するのはいいかも。


[威優の手が伸びてきて頬を撫でる。
 人前だとどうにも面映ゆくて視線を伏せてしまう。

 こんな状態でメディアの前に出る頃には
 対応できるだろうか。
 以前ならもっと慇懃無礼な態度を取れていたはずなのに。

 威優の所作一つにこんなにも心が跳ねる。]
(45) 2023/08/30(Wed) 23:21:17

【人】 田臥 志麻

 
  あと、……どこかは一つ。
  威優とお揃いがあると、嬉しい。


[ウェディングドレスとタキシード。
 作りや素材も違うだろうから、そういった注文が
 罷り通るかは分からないまま口にする。

 もし無理な注文であれば、
 薬指で光るものが同じであるからそれも問題ない。]
(46) 2023/08/30(Wed) 23:21:48

【人】 田臥 志麻

[オーダーメイドというものは
 何から何まで自分で決められるらしい。

 威優が普段着ているスーツも確かそう言っていたか。
 だから、慣れている部分があるのかもしれない。
 こちらは初めての体験に戸惑いつつも、
 一緒に悩んでくれる人が居たから胸を撫で下ろせた。

 初めて尽くしのことに質問を重ねながらも、
 希望を汲み取ってくれるところが嬉しい。

 式場も自宅でもタブレットを二人で駆使しつつ、
 絞っていき、何度か相談した上で
 彼が指し示した資料を横から覗けば、
 ガラス張りの教会の写真が目に飛び込んでくる。]
(47) 2023/08/30(Wed) 23:22:37

【人】 田臥 志麻

 
  どれ? ……へえ、綺麗だな。
  夜なら海に来る人も少ないだろうし。

  式が終わったあと、砂浜歩けるかな?


[子供のような提案をして少しはしゃいでしまう。
 十字架まで続くヴァージンロード。
 夜になれば南半球の満天の星も見れるだろう。

 聖域に相応しい場所で、愛を誓えるのなら。
 それは夢にまで見た光景だ。*]
(48) 2023/08/30(Wed) 23:22:54

【人】 大守 威優

[見える部分だけではなく、その下も。
見える部分だけしか気にしない性質ならば、
毎日機能性よりデザインを重視した下着を身に着けては
いないだろう。

ドレスはシンプルでもコルセットにはラメを入れて煌びやかに。
ガーターは下着と調和が取れるように裾だけレースを入れて。

小さく「エロい」と言ったのは聞こえていたが、
目の前に他人がいるので「脱がせたいから」と
本音を言うのは止めておいた。

全く、オオカミに豹変できない場所で
あまり可愛いことを言わないでほしい。]
(49) 2023/08/31(Thu) 0:14:39

【人】 大守 威優


 ああそのシューズは良いな。
 歩いていてチラッと見える時にレースが覗くのは、
 ドレスの裾がシンプルな分よく映えるだろうし。

 そう、これはパール糸が編み込んであるチュールらしい。
 ラメよりはパールの少し控え目な反射が好きだな。


[ヴェールの長さはセンチメートルではピンとこなかったので
後でまたメジャーを身体に当ててイメージしてみよう。

軽い触れ合いだけでも志麻が恥じらう様子を見せる。
こんなの、電波に乗ってお茶の間に届いてしまったら、
一体どれだけの人間が目を奪われることか。

いっそ今決めたヴェールを被って披露宴に出て貰おうか。
タキシードにはマッチしなさそうなのが残念だ。]
(50) 2023/08/31(Thu) 0:15:02

【人】 大守 威優


 お揃い、お揃いか……。


[タキシードの生地とドレスの生地は全然違う。
モチーフを入れるか?とも思ったが、
ウェディングドレスのシンプルな美しさに
モチーフは浮いてしまう気がする。]


 例えば、こう……
 ドレスの肩にリボンをつけてもらって、
 それが俺のタイと同じシルクサテンとか、

 俺のポケットチーフを志麻のヴェールと同じ
 チュールで飾るとかは?


[胸元を盛らないとなると、上半身の視線を誘導する場所がなく少し地味に見えるかもしれない。
番の証を隠したくはないから首元は空けて貰う予定で、
何かアクセサリーをするかとも思っていたが、
それだと首裏がチェーンで邪魔されてしまうのが
悩みの種だった。

肩口をシンプルなノースリーブではなく
リボンをあしらえば「可愛さ」を諦めないデザインにでも
できるのではないか。

志麻の反応はどうだろう。]
(51) 2023/08/31(Thu) 0:16:04

【人】 大守 威優

[普段のスーツや靴で己は慣れているが
志麻は家庭事情もあってここまで細かいオーダーで
仕立てるのは初めての経験らしい。

迷う人向けのセミオーダーというのもあるが
どうせなら時間がかかってもたくさん悩んでも
ふたりの胸の内から出てくるものを形にしてもらいたい。

ドレスが終われば次はブーケも選ぶ必要がある。
リングもオーダーが良いと駄々をこねて
シルバーのシンプルな細い指輪に
二人の誕生石であるダイアモンド――
瞳の色に近いブルーイッシュグリーンの
カラーダイアモンドを埋め込んでもらった。

それも「お揃い」のひとつだ。]
(52) 2023/08/31(Thu) 0:16:23

【人】 大守 威優

[式場の候補は条件を入れたら自ずと絞れてきた。

男同士の挙式が出来ること、
日本人観光客が周囲にあまり来ないこと、

そしてナイトウェディング。]


 海が近いところの強みだな。
 ここだと砂浜から南十字星も見えそう。


[日本では見えない星も探せそうでわくわくしてくる。
夜間の写真に強い写真家のスケジュールも
押さえておかなければ。**]
(53) 2023/08/31(Thu) 0:16:35

【人】 田臥 志麻

[コルセットと聞けば中世の女性が苦しそうに
 着ているのが印象深いから、耳にしたときは
 "痛いのでは?"という想像が真っ先に浮かんだ。

 威優と自身の話を聞いていたスタッフが、
 ご覧になってみますか?と声をかけてくれたので、
 少し挙動不審になりつつ、はい、と頷いた。

 普段履いているランジェリーは
 全てネット通販で購入している。

 だから女性の前で女性ものの衣類の話をするのは
 今回が初めてだったりする。

 少数精鋭のスタッフに絞ってくれているとは、
 威優から聞いていたがまだ気恥ずかしさが残り
 声をかけられた時も咄嗟に、
 傍に居た威優の裾を掴んで背中に隠れてしまった。]
(54) 2023/08/31(Thu) 2:38:07

【人】 田臥 志麻

[少し二人の時間があった後、
 何種類か広げられたコルセットもガーターベルトも、
 正直、「可愛い」と思わず声に出そうになるほど
 興味を惹かれてしまった。

 やはり威優は自身好みを知り尽くしている。
 これが似合う、と提案されたものは
 どれも頷いてしまうもので
 正直に言って、早く着てみたくてそわそわした。

 シューズも、小物から一つずつ決まっていく。
 自分たちで選んだものが細部まで拘られて。
 ヴェールに選ばれるチュールも
 派手過ぎず上品な光沢に近く、好ましい。]


  うん、良いと思う。
  オレもそっちの方が好き。


[オーダーメイドに関しては格段に詳しい威優に
 まるで光源氏に育てられていく若紫のように、
 彼の好みに育てられている感じがする。]
(55) 2023/08/31(Thu) 2:38:56

【人】 田臥 志麻

[シルクサテンのリボンと同じタイ。
 シンプルな肩口に「可愛い」と「好き」が増えて、
 威優とお揃いになる。
 ポケットチーフとヴェールも重ねれば、
 お揃いがもう一つ。

 彼が出したアイデアに、
 みるみると瞳を大きくして輝かせ。]


  それがいい。
  どっちもしたいっ。

  ははっ、最高。絶対可愛くなる!


[借りてきた猫だった表情が破顔する。
 こくこくと頷いて賛同を示し
 浮わついた心を抑えきれずに手を取ってはしゃぐ。

 重ねた手に嵌っている「お揃い」のリング。
 大好きな瞳と同じ色をした石がきらりと煌めいた。]
(56) 2023/08/31(Thu) 2:39:24

【人】 田臥 志麻

[ブーケは花の種類が分からないから
 色を決めてから、選ぶことになった。

 白いウェディングドレスに映えるように、
 「可愛い」の代表のピンクの花がいいと告げて、
 可愛らしくなり過ぎないように
 ピンク合わせる色にはクールな青系統を選ぶ。

 白いチャペルに白いウェディングとタキシード。
 ブーケは夜に輝く差し色になるだろう。]


  南十字星、初めて見るな。
  夜の海ってちょっと怖いイメージあるけど、
  灯りがない分、空見上げたら星がたくさん見られそう。
  

[威優と出会ったのは夏の頃。
 オーストラリアに行く時期にはちょうど、
 あちらが夏と同じ暑さぐらいの季節。

 きっと、出会った頃を思い出すだろう。**]
 
(57) 2023/08/31(Thu) 2:39:48

【人】 大守 威優

[スタッフは男性である志麻用のドレスの注文にも
怪訝な顔をせず、女性の花嫁に対するのと変わらない態度で
接している。
それでもドレス着用に前向きなことを外に知られることに
気が引けるのか、志麻の口からはデザインや色味に関して
「可愛い」という言葉は控えられていた。

スタッフに出して貰った見本、ウェディング用のコルセットは
白の下に着用することを踏まえて色味は抑えてあるが、
形状はリボンで編み上げるタイプからホックで止めるもの、
ファスナーを使ったものなど様々あった。

勿論コルセットもガーターも、見本は女性用ではあるが、
男性――志麻の身体に合わせて作るのだから、
「試着で入るものを」なんて制限はない。

志麻の好みに合わせてそれを用意するだけだ。]
(58) 2023/08/31(Thu) 19:59:48

【人】 大守 威優

[お揃いがほしい、なんて可愛いお願いに提案したら、
それは彼の気に入るところとなったようで。
思った以上の反応が引き出せて満足の笑みを浮かべた。

やっと心から「可愛い」に対する好意を出してくれた。]


 じゃあどっちもお揃いにしよう。

 リボンは縫い付けるんじゃなくて外せるようにして、
 日本に帰ってから披露宴でアスコットタイとして
 使えるようにして貰えば
 披露宴でも「お揃い」ができるよ。


[リボンとして肩を彩る際は子どもっぽくならないように
幅を狭く折って、アスコットタイにする時には広げれば良い。

折角のお揃いだ、見せびらかしたい。]
(59) 2023/08/31(Thu) 20:00:33

【人】 大守 威優

[お揃いが決定した頃から、志麻の緊張もだいぶ解れ、
希望が口に出やすくなった気がする。

ブーケはピンク主体、己の好みで薔薇を入れて貰う。
一口にピンクと言っても色んな薔薇があって目移りしそうだ。
脇に添えるブルーの花は薔薇を邪魔しないように小ぶりの
ブルースターを。

様々なことが決まる度に結婚式が楽しみになる。]


 うん、周りに商業施設の光源もないし、
 きっと綺麗に見えると思うよ。


[朝になったら海で泳ごう、とは言えなかった。
男性物の水着で隠れるところだけに
己の独占欲が収まるとは到底思えなかったので。*]
(60) 2023/08/31(Thu) 20:00:48

【人】 田臥 志麻

[仕事として接してくれている女性スタッフたちは
 例え可笑しいと思っていても
 プロだから態度に出すことはないだろう。

 Ω性の男性であっても大半は揃えてタキシードを着る。
 披露宴の時に自身も対外的に着るみたいに。

 LGBTやトランスジェンダーの問題は今や、
 公言しても蔑まれることは少なくなってきているが、
 志麻が消極的なのはそういった根本的な問題以前に、
 骨格が細いとはいえ女性的な丸みのない成人男性である
 自身が可愛いものを着ても似合わないのでは、
 と、誰よりも自分自身が思ってしまうからだった。]
(61) 2023/08/31(Thu) 21:28:04

【人】 田臥 志麻

[威優の可愛いを切っ掛けに視線が上向けば、
 接してくれる女性スタッフたちの表情も良く見えた。
 話を親身に聞いてくれる様子は決して嘲笑うものではない。
 そう気づいたら、随分と気持ちが楽になった。
 最初から拘っていたのは自身だけだったかも知れない。
 そう思えば、少しずつ相談に前向きになれた。

 二人で一から作っていくウェディング。
 ドレスから小物、式場、時期まで。
 たった二人だけで挙げるために。

 話が進んでいくにつれて一生に一度のものが、
 最高になると確信していく。

 リボンのアプローチも一度じゃなくて、
 正式な発表の場でも「お揃い」に拘れるように。]


  そうしたい。
  
  挙式の気持ちを持って披露宴に挑めるなら、
  緊張しないで済みそう。


[もう一つの予定が組み込まれるからには、
 素材選びはまた慎重になりハードルが上がりそうだ。]
(62) 2023/08/31(Thu) 21:29:57

【人】 田臥 志麻

[「愛情」が意味として含まれる花々達の中に
 「かわいらしさ」と「信じ合う心」が含まれる。
 
 自身が選んだピンクに、彼の好みを足せば
 「恋の誓い」が生まれた。
 互いに初めての恋を知った二人によく似合う。]


  知ってる?
  星座の中で一番輝く星って"α星"って言うんだって。
  南十字星には二つもあるらしいよ。


[十字架の前で愛を誓った後、見られるであろう
 夜空の十字に思いを馳せる。
 その中には、威優と同じ意味を持つ星がある。
 
 自身の中でもたった一つだけ、
 誰よりも輝く一番星が────すぐ傍に。*]
  
(63) 2023/08/31(Thu) 21:30:31

【人】 大守 威優

[志麻の緊張が解れてからはスタッフの方も
より熱心に志麻の方に提案をするようになった。
それまでは二人に対して提案し、
己が出しゃばるという形だったので、
志麻の方に近づけにくかったのかもしれない。

こういう場ではスタッフは「ご新婦様」と呼ぶのが
普通だろうが、「婦」という漢字を気にしてか、
「志麻さま」と名前で呼んだ。
スタッフの配慮が伺える。]


 見る度に挙式のことを思い出せるから
 披露宴で思い出し笑いをしないように
 気を付けないとな。


[まだ式を挙げてもないのに、もう思い出し笑いをするような
出来事があると確信している。
その態度も披露宴で思い出して緊張をほぐす一助となれれば良い。]
(64) 2023/08/31(Thu) 22:45:34

【人】 大守 威優

[帰りは夜になった。
商業施設や住居の灯りが邪魔で、
ここでは南半球でしか見られない南十字星はおろか、
他の星座も目を凝らさないと見えない程だけど]


 へぇ、Ω星は?


[なんて言いながら、繋いだ手に力を込めた。
星のない夜でもどこにいるかわかる、
彼にとってのたった一つの一番星になりたい。]
(65) 2023/08/31(Thu) 22:45:50

【人】 大守 威優

――挙式当日――

[前日から泊って時差ボケを直した後、
万全の体調で式に臨む。

花嫁である志麻は己よりも準備にかける時間が長いから、
己は自分の着替えを終えた後、そわそわしながら待つ時間が長い。

ドアがノックされた。]


 ――はい。

 ありがとうございます、お義父さん。


[二人だけの挙式をしよう、と言っていたが。

たった一回の挙式、バージンロードを一人で歩くのは
やはり寂しいと思い、志麻の家族を呼んでいた。

両親は志麻が幼い頃女の子の服を着ていたことを
知っている。
知られたくない訳ではないと思うが、
一応サプライズ登場はチャペルの前ではなく
準備中にしてほしいと頼んだのだった。]
(66) 2023/08/31(Thu) 22:46:17

【人】 大守 威優

[程なく志麻の支度部屋の扉がノックされる。
まずは、父親だけが。

許されるなら母と弟も。

内緒で呼んでいるので、志麻の心の整理がつかなければ
予定通り二人だけになる。*]
(67) 2023/08/31(Thu) 22:46:31

【人】 田臥 志麻

[威優が居なければ相談もまともにできないまま、
 既製品でいいと言っていたかもしれない。

 「志麻さま」と呼ばれ続ける中で、
 たった一度だけ「ご新婦様」と言いかけた
 スタッフが恐縮して名前に呼び替えた。


 「大丈夫です、呼びやすい方で。」


 と、照れくさいながらもそう答えられるくらいには
 余裕も生まれて、打ち解けていく。]


  無理。
  リボン見たら絶対ニヤけちゃうもん。

  その時は一緒に笑って。


[どんな思い出になっても
 威優となら良い思い出になることは間違いないから。
 挙式も、披露宴も、笑顔で迎えられたら良い。]
(68) 2023/09/01(Fri) 1:46:26

【人】 田臥 志麻

[街灯が綺麗に並ぶ中を手を繋いで歩く帰り道。
 海の近くのように星は見えないけれど、
 その代わりに冬のライトアップが美しい。]


  Ω星はないんだ。

  オメガ星雲ってΩの形をしたやつならあるけど。
  星雲は星じゃなくて、塵やガスの集まり。

  ああ、でも恒星の光を反射するんだよ。


[冬の空気に冷えていた手が彼の手で暖かくなる。
 自身の星はなくとも、一番星の。
 彼の光を受けて、光ることなら出来るだろうか。]
(69) 2023/09/01(Fri) 1:46:35

【人】 田臥 志麻

── 来たる挙式当日 ──

[初めての海外に戸惑いながらも、
 現地の天気は心を映し出すように晴れやかで。
 一人前の食事の量の多さに感動しながら、眠った翌日。

 最終調節のためになんどか試着を重ねた
 完成されたドレスをお披露目するときがきた。

 ウェディングドレスを着るのなら、
 素っぴんとは行かない。
 ドレスに見合うようにメイクを施されて。
 ベイスメイクはもちろんのこと、
 薄いのチークにマスカラ、色づいたピンクのリップ。

 鏡の中の白いドレスにメイクをした人物は
 まるで自分じゃない、ドラマの中の人みたいだ。

 憧れていた『お嫁さん』の形になっている。
 想像していたよりも遥かに美しく、
 立派なドレスを纏っていた。

 メイクを施された後も、
 鏡の前から離れられずに入れば、ノックが響く。]
(70) 2023/09/01(Fri) 1:47:00

【人】 田臥 志麻


  どうぞ。


[威優かと思い、促して扉の先を見てみれば。
 威優と共に、父の姿がそこにあった。

 みるみる志麻の目が見開かれていく。]


  ……と、うさん……、?

  え、なんで。
  ……えっ、……


[二人だけと聞いていたからその姿を見たときは、
 本当に驚いて、咄嗟に声も出なくて。
 説明を求めるために父と現れた威優を見つめる。]
(71) 2023/09/01(Fri) 1:47:17

【人】 田臥 志麻

[彼の前では穏やかな父がにこやかに笑顔を浮かべて、
 綺麗だね、と感極まったように呟くから。]


  そ、それは威優の言うやつだろ……!?


[嬉しいけど、……
嬉しいけど!

 混乱と照れ臭さと嬉しさでつい親子の素が出てしまう。
 だって二人きりだって!言ったから!
 その台詞は威優から先に聞きたかった。
 
 その父から母と弟も一緒に来ていることを伝えられ、
 更に困惑を広げながらも、
 最終的には威優の方へと眉尻を下げて。]


  
こ、こんなの……聞いてない……、



[と、気恥ずかしさを浮かべながらも。
 複雑な表情を浮かべて、花嫁とは思えぬ動揺を見せた。**]
(72) 2023/09/01(Fri) 1:48:17

【人】 大守 威優

[現地は快晴だった。
式の当日とはいえ、招待客がいる訳でもなし
(この時点ではサプライズのことはおくびにも出していない)
エステやマッサージを受けてのんびりしていた。

そして準備の為にそれぞれ別の部屋に入る。
窓の外、夜の帳が降りていく。

日が完全に落ちれば、結婚準備の帰り道に志麻から聞いた
「α星」や「オメガ星雲」も観測できるようになるだろう。

式の後、ゆっくり星空を見る余裕が出来るのは
何日か後かもしれないが。]
(73) 2023/09/01(Fri) 20:51:41

【人】 大守 威優

[義父と一緒に志麻の部屋へと向かった。
義母と義弟には部屋で待機をしてもらっている。

道中、緊張しているのか無言だった義父は、
志麻の姿を見るなり「綺麗だね」と呟いた。

志麻がドレスを着ることは、義家族には伝えていなかった。
それでも開口一番その言葉が出るということは、
息子の晴れ姿に対する含みはないということだ。]


 似合ってる。
 俺の奥さんが世界で一番綺麗だ。


[どうやら義父の言葉は己の口から聞きたかったようで。
順番は譲ったが、特大で特別な賛辞を贈った。]
(74) 2023/09/01(Fri) 20:52:04

【人】 大守 威優

[困惑の強い志麻に、呼んだ理由を説明する。]


 式をするにあたって、調べたんだ。
 バージンロード――英語ではウェディングアイルって言うんだけど、
 花嫁のこれまでの人生を表すんだそうだ。
 教会の扉が開いて、俺が待つ祭壇まで。
 小さい頃から今までの人生を振り返りながら歩いてくる時に、
 志麻の隣にはお義父さんがいてほしいと思ったんだよ。

 愛されて育ってきた。
 愛をきちんと受け止めて歩んできた人生で、
 俺と出逢ってくれたんだ。


[義父は、突然のことで驚かせてしまったことへの謝罪と、
どうか参列させてほしいという懇願を口にする。

加えて、もし志麻が望まなければ、
このまま部屋に戻って式が終わるまで見ない、と。
部屋でずっと幸せを願っている、と。]
(75) 2023/09/01(Fri) 20:52:33

【人】 大守 威優


 どうかな、志麻。


[外はゆっくり暗くなっていく。
チャペルの外のガーデンに灯りが灯り、
国花であるミモザが明るく浮かび上がった。*]
(76) 2023/09/01(Fri) 20:53:02

【人】 田臥 志麻

[エステもマッサージも綺麗になる為の準備。
 一人で受けるのではなく、二人で施術を受けたから、
 気分も楽ですっかり気持ちも解れていた。

 その時も威優は全くいつも通りに話していたのに
 裏でこんな下準備をしていたとは驚かされた。

 「連れてきてくれてありがとう、威優くん」
 なんて、嬉しそうに感謝を伝える父。

 父の傍らに立った威優が、
 期待していた言葉を口にする。
 (しかもさらっと奥さんって言った!)]


  …………〜〜〜〜〜ッ、

  あー、もうっ……!
二人共ありがとっ!



[ヴェールを下ろした後では
 乱雑に髪を掻き乱すこともできない。
 頬に触れるのもメイクを崩してしまいそうで。
 二人の視線から逸らすみたいに顎を逸らして
 上を向く天に投げかけるみたいにお礼を告げた。

 そうしないと瞳がまた潤んでしまいそうだったから。]
(77) 2023/09/01(Fri) 21:35:51

【人】 田臥 志麻

[バージンロードの意味は威優の口から語られるまで
 調べたことはなくて、初耳だった。

 ドラマや映画ではそのシーンを何度も見てきたけど。
 父親役の人と腕を組んで、
 新婦が新郎の元まで送り届けられる意味。
 それは、家族のバトンを受け渡す意味があるのだろう。

 ────家族から新しい家族へ。

 そのバトンをちゃんと受け取りたいと
 考えてくれた威優と、役目を担ってくれる父に。
 堪えていた涙腺がまた瓦解しそうになってしまって。
 唇を噛み締めて二人の話を聞き、
 彼らの言葉が途切れた後、
 自身の返事を待つように少し沈黙が、落ちた。]
(78) 2023/09/01(Fri) 21:36:35

【人】 田臥 志麻

[今日は笑っていたいから。
 深く、息を吐きだして感情が落ち着くのを待つ。

 それから、二人を見て。]


  ……威優のところまで、
  父さんが、エスコートしてくれる?


[頷く代わりに目尻に皺を作ってみせれば、
 やっぱり、少しだけメイクが崩れてしまった。]
(79) 2023/09/01(Fri) 21:36:51

【人】 田臥 志麻

 

  母さんも、莉久も呼んで。

  ……うちの家族が来るなら、
  威優のお義母さんも呼べばよかったな。


[最後は威優にそう言って笑った。

 赤く燃えていた空が夜空に変わっていく。
 青と緑に囲まれた中で白いチャペルが一層映える。

 立ち上がると威優と拘った
 トレーンの刺繍が綺麗に床に広がった。*]
(80) 2023/09/01(Fri) 21:37:23

【人】 大守 威優

[ありがとう、と聞くまでは
義父も己もどこか胸に不安を抱えていたと思う。

先に打診したらどうかと義父には言われたが、
その場合受けるも断るも、志麻の心に影響が出そうで
己の我儘で隠し通させてもらったのだ。

「自分がΩだから苦労をかけた」と思っている志麻は、
家族の為にと度々実家で家事を担っていた。
家族が来ると知ったら「自分だけの為」ではなく、
家族がどう思うかを思考の基本に置いてしまうのではないか、
それを懸念していた。

逆に二人だけだからと断れば、
見たいと願った家族の想いを無碍にしたと
罪悪感を抱いてしまうだろう。

その点、この土壇場で断るなら
己が黙っていたことの所為にできる。


――と。]
(81) 2023/09/01(Fri) 22:21:29

【人】 大守 威優

[涙を堪えるように天を仰いだ礼の後、
沈黙が漂った。

その間、花嫁の支度を担ってくれたスタッフも
空気を呼んで部屋の隅でじっと大人しくしていた。

退室はしないだろう。
どんなに堪えても、堪えた分だけお直しの必要がある。

己が話すバージンロードの意味を聞く間、
噛み締めていた唇に引かれた「可愛い」リップや、
父親に向けた瞳の端でよれた発色の良いファンデなど、
整えて貰ってから手を取りたいし、手を取ってほしいだろうから。]
(82) 2023/09/01(Fri) 22:21:47

【人】 大守 威優



 うちの母には良かったら写真を送らせて。
 忙しくしてないと死ぬ病なんだあの人。


[志麻が了承してくれるなら、
世界一美しい花嫁を自慢したい。
この姿を見たらきっと母は今度は孫が見たくなる。

そうして生きてほしいのだ。
どんなに野心に溢れ親族との間に溝があった男だったとしても
愛していた、たった一人の番がいないこの世界で。]
(83) 2023/09/01(Fri) 22:22:58

【人】 大守 威優



 じゃあ、祭壇で待ってる。
 メイクを直して貰ってからおいで。

 一度ベールを上げてもらうから、
 下ろすのはお義母さんに。

 ベールダウンは「子育てを終える」って意味で
 母親にしてもらう習わしがあるそうだよ。


[そう言えば、またメイクを直す場所が増えるだろうか。

義弟にはフラワーボーイを頼んである。
花嫁が悪魔に攫われないように道を「護る」役を、
もう「護られる」だけの存在ではないのだと
兄に安心してもらえる姿を見せられるように。]
(84) 2023/09/01(Fri) 22:23:16

【人】 大守 威優



  [パイプオルガンが荘厳な音を奏でる。
   ゆっくりと扉が開いた。      *]
 
 
(85) 2023/09/01(Fri) 22:23:56

【人】 田臥 志麻

[二人だけの挙式にしたいと言ったのは、自身の方。
 威優もその意図を汲み取ってくれていた。
 
 人に見られるのが恥ずかしいというところから
 始まった挙式への準備。
 二人で作り上げてきた計画は
 ウェディングドレスの素材から式場、
 どれもこれも拘って選んできたものだった。

 威優が「可愛い」と言ってくれたことは、
 己を卑下していた自己肯定にも繋がる。

 当初からの計画が二人で、だっただけに。
 家族には見せることはないと思っていたけれど。

 いざ目の前に家族が現れたなら、
 見て居て欲しいという想いに繋がっていく。

 苦労や心配をかけてきた自身が、
 自ら選んで番となった人と手を取り合っていく瞬間を。
 小さい頃からの夢であった
 「およめさん」になった姿を──。]
(86) 2023/09/01(Fri) 23:16:10

【人】 田臥 志麻

 
  わかった。
  威優とオレが一番気に入ったやつを送ろう。


[長男の門出の涙につられて涙腺が緩んだ
 父の背中を撫でて微笑む。

 威優と父を送り出したら、
 母と莉久が入れ替わりでやってきた。

 メイクを直してもらいつつ鏡越しに莉久と視線が合えば、
 父と全く同じセリフを口にしたので
 また笑ってフェイスパウダーがよれそうになった。

 フラワーボーイなんて出来るのか?と揶揄えば、
 威優から聞いたのだろう役目を誇らしげに語る。
 
 「威優さんの元に辿り着くまでしっかり護るよ」

 庇護の対象だった弟からそんな言葉が出てくるのが感慨深い。]
(87) 2023/09/01(Fri) 23:16:51

【人】 田臥 志麻

[元の唇がほんのりと色づくくらいのピンクのリップ。
 最後に仕上げてもらえば、鏡に映るのは最高の自分。

 祭壇で待つ彼の隣に立っても恥じない姿で、
 胸を張っていられるようになりたい。

 母が目の前に立ち、ヴェールを両手に取った。


 「志麻、夢が叶って良かったわね」

 
 レース越しに見える母が口にしたその言葉に、
 覚えていたのかと僅かに目を見開いた。]

 
  ……もう、メイクを直したばかりなのに。


[外で待つ威優と父を、
 更に少し、待たせることになってしまっただろう。]
(88) 2023/09/01(Fri) 23:17:41

【人】 田臥 志麻

[荘厳な音と共に扉が開けば、
 真っ直ぐ続いていく真っ赤なアイルランナー。
 莉久が散らしていく「清め」の花が絨毯に落ちる。

 隣に立つ父と目線を合わせ、
 腕を添えて、一歩、一歩、進んでいく。
 人生を歩んできたみたいに。
 
 十字架に近づけば母の姿が見える。
 また、震えそうになる唇を引き結んだ。

 愛している家族に見守られながら、
 愛しい番の元へ、導かれて。
 祭壇の前、白いタキシードに身を包む威優と目が合う。]
(89) 2023/09/01(Fri) 23:17:53

【人】 大守 威優

[現在、婚姻関係を証明するのは戸籍であり、
挙式の有無は公的に何も関係しない。

では何故挙式をするのか?

始まりは番の可愛いドレス姿を見たいと思ったところから。
準備をする内に、結婚の実感が湧くという利点を「実感」した。

結婚式について調べる内に、
志麻をここまで育ててくれた家族には
やはり「関わってほしい」という想いが強くなった。
大切な家族を送り出す役割を得ることで
心の整理がつくものではないかと考えたのだ。

花嫁の支度部屋には今、田臥家の4人がいる。
正確にはもうパスポートには"Oogami"と書かれているが、
これが最後の「家族水入らず」だ。]
(90) 2023/09/02(Sat) 0:08:56

【人】 大守 威優

[花嫁の一歩は一年に相当すると言う。

一歩、二歩、三歩、
四歩、五歩、六歩、 ――女の子だと思って生きていた時間。

七歩、八歩、九歩、 
十歩、十一歩、十二歩、 ――男の子の制服に戸惑っただろう。

十三歩、十四歩、十五歩、――体つきが男になって、

十六歩、十七歩、十八歩、――Ωとしての人生になった。

困難を抱えながら受験をして、就職して、]
(91) 2023/09/02(Sat) 0:09:30

【人】 大守 威優

[丁度二十四歩で辿り着いた訳ではない。
だから、二十五歩を数える前に立ち位置を変えた、、、、、、、、
この位なら誤差だと開き直る。

引き継いだ志麻の手を受け止めて、祭壇へと。]


 "Will you love
him
, comfort, hornor and keep him
so long as you both shall live?"
(92) 2023/09/02(Sat) 0:10:48

【人】 田臥 志麻

[自身の人生の数だけの歩幅を歩む。
 
 十九歩、二十歩、  ──まだ藻掻いていた時期。

 二十一歩、二十ニ歩、──妥協を知った。

 二十三歩、     ──全てを諦めたようとした。


 威優が少し立ち位置を変える。

                そして──、]
(93) 2023/09/02(Sat) 1:53:51

【人】 田臥 志麻

[少しだけ足を止めて、目を見合わせて微笑む。
 レースの手袋に包まれた手を彼の腕に添えて。

 二十五歩、二十六歩、その先も。

 これからの人生のように、威優と並んで歩いて。
 
 たった三人しかいない参列者。
 静謐な空気の中で、儀式が行われていく。

 威優が誓いを立てれば、自身の名前を呼ばれた。]


  "Will you love him, comfort, hornor and keep him
so long as you both shall live?"
(94) 2023/09/02(Sat) 1:55:10

【人】 大守 威優

[相手が「彼」なので、一言一句同じ言葉が繰り返される。
そして志麻の口からも、己と同じ言葉が。

万感の想いで、鼻の奥がツンと痛んだ。
ああこれは、どうやら己は泣きそうになっているようだ。
最後に泣いたのがいつだったか思い出せないが、
きっとそうだ。
人は悲しくなくても泣くのだ。

涙こそ出なかったが、喉が熱い感覚がずっと続いている。

神父に促され、ベールを持ち上げて]


 愛してるよ、志麻。


[躊躇なく唇にキスをした。
閉じた瞼裏に、出逢った時のことを思い浮かべながら。]

[讃美歌と共に式が終わる。
扉が開かれ、ガーデンに出るよう促された。]
(95) 2023/09/02(Sat) 19:53:26

【人】 大守 威優



 写真、撮ってもらうか?


[ガーデンには、ミモザのアーチが設置されていて、
そこで写真を撮ることが想定されているようだ。

二人で撮って貰うのは予定にあったが、
折角なので3人とも撮ったらどうかと提案した。

ドレス姿の結婚写真は、
親族には見せることはないかもしれないが、
家族が時折開いて思い出に浸る為には
手元に残しておきたいだろうから。*]
(96) 2023/09/02(Sat) 19:53:41

【人】 田臥 志麻

[同じ方向を向いて、同じ言葉を並べて。
 神に誓いを立てる。

 十字架の奥に海から顔を出す月が見える。

 いつかの日にも見た丸い形をした満月が
 太陽の代わりに、細やかな明るさを齎していく。

 神父の言葉が終わり、彼と向かい合う。
 威優の手がヴェールを持ち上げれば、
 倣って視線を上げ、愛おしい翠緑の瞳を見つめた。

 少し、潤んでいただろうか。
 気づきはしたけれど、自身も同じくらい。
 それ以上に、視界が滲んでいたから笑うだけに留める。]
(97) 2023/09/02(Sat) 21:12:48

【人】 田臥 志麻


 
  オレも、──愛してる。


[何度もつっかえた言葉を、
 今はもう澱みなく伝えられる。

 距離が狭まっていくのに、そっと瞼を下ろして。
 誓いのキスを交わす。]
(98) 2023/09/02(Sat) 21:13:14

【人】 田臥 志麻


[月が海から完全に顔を出して、空に浮かぶ頃。
 教会を出て、ガーデンを歩く。
 夜でも写真が撮れるように照明が点いている。

 家族との記念写真を威優に促され、]


  ……うん、そうだな。
  せっかくだし。


[頷いて両親と弟に声をかけた。
 三人とも笑顔で喜んでくれた。

 ブーケを手にしたままアーチの下に立つと、
 傍らに母が、その隣に父が。
 そして、自身を挟んで反対側に弟が立つ。
 
 プロのカメラマンが撮ろうとする前に、
 莉久がスマホでも撮りたい!と新郎である
 威優にお願いしに行ったことには、
 こらっ!と兄の顔をして叱った。]
(99) 2023/09/02(Sat) 21:14:04

【人】 田臥 志麻

[少し気恥ずかしい、一生に一度の記念写真。
 何枚か納めた後は、家族の代わりに威優が喚ばれる。

 スマホを威優から受け取った莉久が、
 ちゃっかりカメラマンの横を陣取り、
 自身もカメラマン気取りでレンズを構える。


 「ほらもっと、威優さんの傍に寄って。
  新婚らしく、ほっぺにちゅうとかする?

  大丈夫、ここ海外だから!」


 ポーズまで指定してくるはしゃぎっぷりに、
 呆れながらも、誓いのキスとは違う写真用は 
 些か嬉しさよりも、照れ臭さのほうが前に立つ。]
(100) 2023/09/02(Sat) 21:14:17

【人】 田臥 志麻

 

  ……ごめん、莉久が浮かれてる。


[隣に立つ威優を見上げつつ、
 指定通りに隣の距離を詰めながら、
 何とも言えない表情を浮かべて眉根を寄せる。

 
 「せっかくだからリングも見せて!」


 更にもう一つ、注文がついた。]


  お前ね……プロの人に任せなさいよ。


[言いながらも注文に答えるように、
 左手を胸元に持ち上げながら。*]
(101) 2023/09/02(Sat) 21:17:38

【人】 大守 威優

[「愛してる」と言えるようになるまで。
志麻には少し時間が必要だった。

その間、彼の気持ちが違うと思っていたことはない。
言葉には出さなくても、態度で、身体の反応で、
己を愛しているとずっと示してくれていた。

言葉に出来なかった理由は、志麻が話したければ聞くし、
無理に聞きだす心算はない。

大切な場面で、周囲の目が合っても、
淀みなくまっすぐ伝えてくれた。

その事実で充分だ。]
(102) 2023/09/02(Sat) 21:43:49

【人】 大守 威優

[唇を介して心の声が聞こえた気がした。]
(103) 2023/09/02(Sat) 21:44:36

【人】 大守 威優

[ガーデンでは、荘厳な空気から解放されたからか、
義弟がいつも以上にはしゃいでいた。

4人家族の写真をスマホで撮れば、
撮影係はお役御免で花嫁の元に促され。

カメラマンを差し置いて色々とポーズの注文をつけるのに、
ケラケラと笑いながら応える。

頬へのキス、二人でハートマークを作る、
お姫様抱っこ、そしてリングを嵌めた手を並べて。

大きな満月が海にゆっくり溶ける時間、
義弟が満足するまで撮影会は続いたのだった。]
(104) 2023/09/02(Sat) 21:44:50

【人】 田臥 志麻

[撮影会は弟の注文のお陰で賑やかになった。
 
 お姫様抱っこは自宅でもされているが、
 人前で、しかも家族の前とあっては
 さすがに照れが勝ってしまう。

 けれど、腕の中で暴れたらドレスを汚してしまいそうで、
 莉久を睨みつけながら渋々大人しくした一場面もあった。

 翌日からは家族は観光に回るという。
 ガイドも威優が手配してくれていたらしく
 それならば、と安心もした。]
(105) 2023/09/02(Sat) 22:17:38