人狼物語 三日月国


55 (R18)竜宮城

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【人】 因幡 フウタ

[目を開いた時、理恵はもう願い事を終えていた様だったが、
ちょっと様子がおかしかった。
とりあえずここから退かないと、と思って理恵を促そうとしたら、名を呼んで、左手を握って来る]


  どうしたんじゃ……?


[指輪の触れる感覚にも気をやらず理恵を見降ろすが、
理恵は口を開いたまま動かない。
視線が理恵の顔から下へ落ちる。
腹に当てている右手が気になる……
否、右手が当てている腹が気になるのか……

こちらも口をきけないまま、
しばし時が過ぎる。

ようやく言葉を紡ぎ出した理恵は、
腹の中が動いとると言う。
その意味が理解できないのに、聞き返す事もできず、理恵の顔と腹を交互に見遣る。

左手を導かれるままに理恵の腹の上に乗せても>>27
言葉も、触感も、まだ何も理解できない]
(45) 2021/01/10(Sun) 6:48:38

【人】 因幡 フウタ

[理恵がぶぅと鳴いた後、和らいだ唇で話し掛けた言葉を聞いても、まだ呑み込めない。ぽか、と口を開いて、
のろのろとその意味を紐解こうとして、
そうしてようやくその意味に心が当たれば、]


​  ─────、


[ぼろっと、大粒の涙が零れた。
彼女の前でこんなにはっきり涙を見せたのは初めてだっただろう。

しかし言葉を探している内に時は過ぎていて、
既に何組か入れ替わった後の隣の、人の良さそうな中年女性が「痴話喧嘩はここじゃないところでやった方がいいわよ」とやんわり注意してくれた。
謝ろうかと思ったけどその言葉すら出てこなくて、こくっと頭を深く下げて、理恵の手を引いた。

列からも見えない落ち着ける場所まで来て足を止めて、理恵を振り返る。涙こそ出ていないが、少し情けない顔をしていただろう。
それは、恐れや哀しみからではない。

またしばらく言葉を探して押し黙ってしまったが、理恵をじっと見下ろしていた。
やがて、「あの、」と、カサカサに乾燥した唇を開いた]
(46) 2021/01/10(Sun) 6:48:41

【人】 因幡 フウタ



  あのな………

  俺………
  ずっと、理恵との子が欲しかった……


[「本当に妊娠したのか?」なんて野暮な言葉は出て来なかった。
彼女がそうだと言うなら、きっと本当なんだと。
今までの俺ならぬか喜びを恐れそうなもんだが、彼女の顔を見て、何故か強く確信させられた。

おそろしくて哀しい夢をずっと見ていた。
理恵がいなくなるのが不安だった。
そんな事を過去の話として話す日が、いつか来るかもしれない。
けれど今は喜び合いたい。

彼女は俺との間に、
新しい命を授かってくれたんだ……]


  だから、

 
(47) 2021/01/10(Sun) 6:48:44

【人】 因幡 フウタ

[冷たい左手で、理恵の小さくて白い頬をさする。
幸福で泣いてしまいそうだが、今は笑っていたいから堪えた。

これからもっと彼女を大切にしたい。
労わりたい、力になりたい、支えたい、一緒に幸せになりたい。
新しい気持ちがふつふつとたくさん湧いてきて、
今、俺は新しい自分になった気分だった。

言葉も交わしながら、
長い間、愛おしい人の顔をじっと見つめていただろう。

抱き締めるのもキスをするのも勿体ない様な……
今までにない気持ちだった。*]
(48) 2021/01/10(Sun) 6:48:53

【人】 因幡 フウタ

[宿に戻った後、じゃあ酒は没収な、と亀齢は俺の鞄に移動させた。妊婦に何が駄目か詳しくは記憶していないが、酒が駄目な事は知っていたので早々に取り上げた。帰ったらばあちゃんとちびちび呑むのだろう。

元旦に竜宮城で眠った時、夢を見た。
目の前にかわいいうさぎがいる、あ、理恵か、と思ったら理恵が毛繕いをしてくれる。ぶぅぶぅと気持ちよさそうに鳴く声が聞こえて……あれ?と思ったら、俺の目の前、床にもふもふの両手が置かれていた。なんと俺もうさぎになって理恵に頭をぺろぺろ舐められていた──という、よくわからない初夢を見たのだった。
まぁ他に切ない要素もなかったので良しとしよう……
閑話休題。


旅行から帰ったらばあちゃんに新年の挨拶をして、
それから、理恵が妊娠したと思うと伝えた。
ばあちゃんの紹介で婦人科を受診して、改めて妊娠していると告げられる。
そうだと思ったから取り乱しませんとも。
嬉しそうな顔を隠せてはいなかった様で、医者がよかったね!おめでとう!とめちゃめちゃ祝ってくれたが。

仕事仲間に報告……というより、
顔がふにゃふにゃだぞって指摘されて話す事になった。
「お前指輪なんて買ってる場合じゃねーじゃん」と言われて「……本当じゃな」と真顔で返したら仲間たちは笑って祝ってくれた。
稼がなければいけないのは本当で、
でも理恵との時間が削れるのは不本意だったので、
短時間でキツイ仕事なんかを主に請け負った。

毎日二人共必死で大変だっただろうけれど、

きっと時は、
あっという間に過ぎ去って、]
(49) 2021/01/10(Sun) 8:00:11

【人】 因幡 フウタ

[──ガラガラと、慎重に人力車を急がせる。>>3:0

もうすぐ子供が産まれるという彼女を乗せて車を走らせる手は、足は、緊張で汗が滲む。震えそうになる筋肉を奮い立たせて、平常心を胸に言い聞かせて……
時折苦しそうな声を漏らす彼女を振り返る。
彼女は気丈に頷く。何度でも。
こちらの方が元気付けられてしまった。

しかしそれも、この時限りか]
(50) 2021/01/10(Sun) 8:00:20

【人】 因幡 フウタ

[そこから、出産のその時までの時間は壮絶だった。>>33
理恵が悶え苦しんでいる姿は、
これまで見たどの姿よりも痛々しくて、弱々しい。
自分は痛みを味わっている訳でもないのにばくばくと心臓が騒いで、毛が逆立って、背筋が震える。
こんなの普通じゃないじゃろと医者や付き添ってくれたばあちゃんに喚いたが、どうやら一般的な分娩なんだという。

痛みに助けを求める理恵に顔を歪ませた。
「理恵、理恵」と何度も名前を呼んで手を握って勇気づけたつもりだが、気休めにもならない事は、理恵の様子を見ていてわかる。
己の無力さに打ちひしがれながらも、
何かできる事はないかと思い巡らせる。
そしてまた無力な自分を思い知り、心が確かに削れる。
それを繰り返しながら、理恵の要望にも応える。怒られるのは平気だ。何を言われても受け止めた。けれど、腰を揉む強さが全然弱いと文句を言われて驚く。かなり力を込めているのに、これ以上の痛みなのか、と想像するしかできない痛みを、呪う。

こんなに大事に守ってきた理恵を、己の子にとはいえ傷つけられている光景に、何故なんだとか、理不尽だとか、やめてほしいとか、俺がこんなにしたんだとか、俺が理恵にこんな痛い思いをさせているんだとか、様々な負の感情が俺を襲って、目を逸らしたくなる。

理恵が苦しんでるのに泣いていられないと、涙こそ流さなかったが、酷い顔をしていたんだろう。
途中でばあちゃんに「フウタちゃんも少し休んでらっしゃい」と言われたけれど、水を少し飲んだだけで、ずっと理恵の傍に居た。

理恵は……本当に綺麗な顔をしているのに、
今は美しい髪をぼさぼさに乱して、涙と汗で肌を汚している。
痛みに暴れている時は腰を揉んだりくらいしかできなかったが、ふと、眠ったのか、目を閉じた理恵の頬を濡れたタオルで拭う。
しかしそれもほんの短い間の事。
またここを涙が通るんだろうと思うと、胸が苦しい。

でも、本当にこんな事しかできなかった]
(51) 2021/01/10(Sun) 8:00:23

【人】 因幡 フウタ



  とき……

  理恵……


[胎動を俺にも伝えてくれた彼女の事を想う。
彼女と彼女の名前を決めた時の事を想う。

 時間そのものが、
 理恵の中で育ってる……

そうならば、
二人と逢える時間を、どうかこの世にもたらしてくれ。

理恵の小さな手を両手で握り込んで
二人の無事を祈った後、少しだけ眠ってしまった様だった。

理恵が遠くにいってしまう夢ではなくて、
小さな子を間に、三人で手を繋いでいる夢を見た気がした。**]
(52) 2021/01/10(Sun) 8:00:26

【人】 ははうさぎ 理恵

[痛みの間隔が十分おきになり、やがて五分を切った。ずっと握り続けている手も、腰をさする感覚も、痛みのあまり認識できなくなった。フウタを呼ぶこともできなかった。
 名前も、過去も、理恵としての自我さえ剥がれ落ちた。最後に残ったのは、産むという意志だけだった。そのためだけに自分の肉体が存在していた。

 なまあたたかい水があふれ出した。液体は太ももを濡らし、敷かれたタオルに吸い込まれた。
 痛みのありかたが変化した。子供が膜越しに頭で押し広げていたものが、直接になり、鋭い痛みとなった。子供がいつもいた場所を離れて、降りてこようとしていた。外におくりだすため、腹筋に力を入れて、いきんだ。
 痛みに間隔がなくなり、肉体に存在し続けた。自分の意志ではコントロールできない力が体内にあった。自分の肉体から子供の出ようとする意志を感じた。母親はその摂理に従うしかなかった。降りてくる波に合わせ力を込めた。涙がずっと止まらなかった。

 西日が窓から差し込んだ。初日の出が、初めてときを認識した日の景色が、幻の中にふっと浮かんだ。
 来年は三人で見れるだろうか。

 泣き声が、部屋の中に響いた。]*
(53) 2021/01/10(Sun) 8:30:01

【人】 ははうさぎ 理恵

[お腹の上に赤ん坊が乗せられた。
 生まれたばかりの子供は、兎にしても亀にしても大きすぎた。そのくせ人間にしては小さかった。
 自分の力で動いていて、柔らかく、ぐにゃっとしていた。
 最初は青かったが、少しずつ赤みがさしていった。
 自分とフウタから血と肉を受け継ぎ、離れていった、一つの命だ。]


 本当に、腹の中に子供がいたんじゃな……


[少しずつ大きく育っていく腹を持ちながら、元気に暴れまわる胎動を感じながら、一方でどこか冗談じゃないかと思う自分もいた。

 赤ん坊は、芋虫のような腕と足を動かしていた。
 虫眼鏡がないと見えないくらいの小さな爪が、指の一本一本の先に、確実についていた。
 こんな細かいところまで気を抜かずに作られている。
 何か、自分たちの認識できない大いなる存在を、我が子の小さな爪の中に見た。

 腕の中の赤ん坊が、理恵の胸に頭をくっつけた。
 倒れ込んだと言った方がいいかもしれない。
 この頼りない命は、まだ自分の力で頭を支えることもできなかった。
 心臓の音を聞いているのか、やがて泣き止んだ。

 母乳をあげるために乳首を吸わせた。
 赤ん坊の小さな口が、必死に吸い付いてきた。
 何一つこの世界のことが分からなくても、生きようとしているのだ。
 愛おしさがこみあげてきた。]
(54) 2021/01/10(Sun) 9:20:22

【人】 ははうさぎ 理恵

[満身の力を込めていた拳が、すっかり白く強張っていた。同じようにフウタの手も。
 フウタは今までになく酷い顔をしていた。フウタを呼ぶ声はがらがらとかすれた。
 彼の手も真っ白に血が通っておらず、出血の痕さえあった。
 握力の無い自分が、万力でフウタの手を握り潰し、爪を食い込ませて傷つけていたことに、初めて気づいた。
 フウタは、傷める腹を持たずして、共に出産していたのだと知った。]


 撫でてやれ……お主の子じゃ。


[まだ感覚も無いだろう手を、小さな命へと導いた。
 胸にあたたかいものがこみ上げるのを感じながら、大きな手が我が子に触れるのを、見つめていた。]
(55) 2021/01/10(Sun) 9:25:20

【人】 ははうさぎ 理恵

[いつか、フウタに話す日が来るだろうか。
 まだ、ときを知るずっと前に、子供に忘れ形見としての役割を期待していたことを。
 自分が、おばあちゃんが、フウタよりもずっと先に死んでしまっても、フウタの孤独を癒してくれる希望として、子供を望んでいたことを。

 だけど、胸の中の小さな命が教えてくれた。
 この子はそんなことのために産まれたんじゃない。
 孤独を癒す力も持っているかもしれないが、そんなものはただのおまけだ。

 理恵が、フウタが、そのほかの全ての命がそうであるように、ただ愛されるためだけに産まれてきたのだと。]*
(56) 2021/01/10(Sun) 9:25:53

【人】 因幡 フウタ

[理恵の腹に命が宿っていると知った時から今までの月日より、
病院に着いてからの時間の方がずっと長かった様に感じる。
我が子の顔を見たいという気持ちより、
理恵の苦痛をはやく終わりにしてほしいという気持ちが正直大きかっただろう。

けれどどんな気持ちであったって、
理恵の為にできる事は増えはしない。
分娩台に上がってからも理恵に寄り添って、
もう俺の名を呼ぶ事もなくなってしまった理恵の手を握り、名前を呼び、弱い言葉で励ますだけ。
助産師が「大丈夫ですよ」と俺にも声を掛けてくれるが、理恵がいなくなってしまう想像は常につきまとった。

理恵の身体に次々と起こっている変化は、俺にはわからない。
医師たちが連携を取ったり理恵に教える為に状況を説明して、
俺はそれを聞いて理解をするだけ。

これまで何度も気持ちが通じ合う感覚を経験したのに。
幸せを分かち合ってきたのに、痛みを分けてもらえない事が酷くもどかしい。

理恵の涙が溢れては流れ、溢れては流れ……
このままじゃ干からびてしまう、と間抜けな心配をした時、

ふと、
水が沢山あった、あの竜宮城が脳裏によぎった。
こんな時に何を、と思う間もなく色んな景色を瞼の裏に見て……

あの日の、あの光と見紛う光が差し込む部屋の中で、
聴いた事のない声を耳にした。>>53]
(57) 2021/01/11(Mon) 3:09:44

【人】 因幡 フウタ

[ぼうっとしている間に、
医師たちによって様々な処置が施されたか。
じんわりと泣き声が耳でこだましていて、
「おめでとう」とか言われている声が届かない。

理恵に乗せられた物体を見て……
理解していくと共に、徐々にこの目が見開かれた]


  理恵ッ……


[あぁ、産まれたんだ、本当に。
本当に腹の中にいた、という理恵>>54の気持ちに共感しながら「ありがとう」と涙声で伝えたり、「平気か?平気じゃないよな」とかおろおろ挙動不審になったりした。
理恵の方が痛くて苦しくて大変だったろうに落ち着いて……否、疲れ切っているんだろうけれど、赤ん坊を見つめ、支え、早速乳をやる姿に驚き、感服した。
支える手は白く変色してなお、優しく赤ん坊に添えられている。
理恵が神々しい存在に思えてならなくて、薄らと目を細めた。

自分では気持ちは少し落ち着いたと思っていたが、今鏡に自分の顔を映したら自分で驚くくらい、まともな顔ではなかった様だ。
理恵も突っ込むほど余裕がなかったろうから、
教えてくれる人はいなかっただろうが]
(58) 2021/01/11(Mon) 3:10:43

【人】 因幡 フウタ

[嗄れた理恵の声に名を呼ばれて>>55
ぴくっと肩を跳ねさせる。
撫でてやれと言われて、何も出来なかった俺が触れていいんだろうかと一瞬、躊躇う。
けれど俺の子だと続けられれば、

あぁ、と、返事とも感嘆ともつかぬ声を漏らす。
理恵に見つめられながら、手を伸ばした。

持ち上げて視界に映した時。ようやく自分の手も理恵の様に白く、それから、理恵の手にはない傷がある事に気付く。

そうか、理恵が。

それだけ痛かったのだという事を知ると同時、
自分自身の手ではなく、俺の手に頼って傷を残してくれた事を、嬉しく思った]
(59) 2021/01/11(Mon) 3:10:50

【人】 因幡 フウタ

[伸ばした手は、理恵の頭に触れる]



  ありがとう、理恵。

  本当に……ありがとう。



[そうしてもう片方の手を、ときの頭に。

手の感覚はなかなか戻って来ない。
けれどお構いなしに、長い間二人の頭を撫でていた。

両の指先に、両掌に彼女たちの体温が戻ってくれば、
両手にいっぱい幸せをもらった気になって、小さく俯いた。
どんな言葉をもってしてもこの気持ちは言い表せられないんじゃないかとも思うが、もし何事かと聞かれれば、「……嬉しいんじゃ」と、小さく震えただろう]
(60) 2021/01/11(Mon) 3:12:37

【人】 うさぎとかめの子 因幡 とき

― 数年後、もしくは夢の未来 ―

[見知らぬ人間が突然あらわれた。
おばあちゃんが招き入れた。
明るい髪色はきれいだったけれど、
知らない人は怖い。いや、怖くないけど。

サッと理恵の後ろに隠れる。
でも何だか心許無くて、ササッとフウタの後ろに移動する。

見知らぬ人間が、自分の事を話している。名前を名乗る。
「み?」とおそるおそる聞き返せば、もう一度名乗ってくれる]


  みおん……?


[そう、と見知らぬ人間は頷いた。
「あなたは?」と、みおんが言った]


  そ、……
  そこの りえ と、こっちの ふーた のむすめ。

 
(61) 2021/01/11(Mon) 3:17:31

【人】 うさぎとかめの子 因幡 とき



  ときのなまえは

  いなばとき!


[ふんっと胸を張った姿は、誰かさんに少し似ていただろう]
(62) 2021/01/11(Mon) 3:17:37

【人】 うさぎとかめの子 因幡 とき

― それからまた数年後、もしくは以下略―

[使い古された黒い人力車の横に、一回り小さく、又、お洒落な花の柄が彫ってある人力車が到着した。
運転しているのは、小柄な少女だった]


  ありがとーございました、
  お菓子、ゆっくり見ていくといいぞ。


[駄菓子屋の前に自分より大きな女性と子供を降ろして、
それから、向こうにまた別の女と男の姿を見付けるか]
(63) 2021/01/11(Mon) 3:22:51

【人】 うさぎとかめの子 因幡 とき



  二人でおでかけか?
  山のふもとまで送ってやるぞ。

  ……いや、
  やっぱりとーちゃんは重いからやめじゃ。

  かーちゃん、乗っていいぞ。
  お話しながらのんびり行こう。


[ふふっと笑いながら同じく小柄な母親の手を取って、花の柄に囲まれた座席へ案内した。

花の名は、アルテルナンテラ。

年中ここ、この座席に咲いて、人力車の浮くような独特の乗り心地と、そこから見える特別な景色を共にお客さんに魅せる。

母親に似て小柄ではあったが、
父親に似て力持ちな少女は、
「人力車を操る姿はまるで変身したみたいだ」と、
お客さんから愛されただろう]
(64) 2021/01/11(Mon) 3:23:45

【人】 因幡 フウタ



  やれやれ……


[本当に置いていかれて肩をすくめる。
と、駄菓子屋の入り口からひょい、と覗く顔が見えた。
やり取りを聞いてはいたものの、ばあちゃんの手伝いをして接客中だったんだろうか。そんな顔をしている]


  一緒に行くか?
  ふもとまでかけっこでもするか?
  

[手招きすれば、目を輝かせてこちらに向かって来た。
よしよし、と頭を撫でれば、頬を染めて嬉しそうだ]


  男は男同士で、ってやつじゃな。


[ふっと笑って少年の背を押してから、共に山を駆ける。
ふわりと、深緑色の年季の入ったマフラーが舞った。
山道の途中で、ときの人力車の背中を見付ける。
遠くて、遠ざかっていく理恵の背中を追い掛け走って……

ガシッと車の後方にしがみついたら、「わっ」とときが声を上げて足を止める。ぶーぶーと子供達二人から文句を言われながらも、横から身を乗り出し、理恵を抱き締めた]
(65) 2021/01/11(Mon) 3:27:58
村の設定が変更されました。

村の設定が変更されました。

【人】 因幡 理恵

[除夜の鐘を聞いたって煩悩まみれなのは変わらない。
 御簾でごろごろしながらの問いかけに、フウタの喉がこくり、と鳴る。>>41
触れ回る熱い手が、いやだったことなど無い。
ワンピースの裾から手を差し入れられて、畳の上に組み敷かれれば、今度、こく、と喉を鳴らしたのはこちら。

 ──という時を過ごしたのちに初詣に向かう。
 千円以上あるたのもしい亭主とともにあちこちぶらぶらし、昆虫標本みたいに背中に棒がぶっ刺さった亀の像を撫でては「冬眠中の亀は触っちゃいかんのか、なおさらお主冬眠するなよ」と一本線で隠された感情>>43に気づかずに大真面目に釘を刺したり。
 フウタの絵馬が見れなくてぶぅと唇を鳴らしたが、せっくすの意味を教わって「つまり、理恵たちが昨日とさっきしたやつもせっくすじゃの?」とそれなりにデカい声で納得した。集める視線が一気に増えた。「あぁ一昨日も」その辺にしておいた。

 マフラーを交換してお互いの匂いを嗅ぎ合って、賽銭箱に小銭を投げ込んで、腹の中の存在に気づくか。]
(66) 2021/01/11(Mon) 7:21:07

【人】 母ちゃん兎 理恵

[フウタが何か言ってきたが>>45、腹に気を取られて全く頭に入ってこない。
 やがて自分の体に起きた変化に気づいて、フウタに伝える。
 やっぱり腹に気を取られて、意味が分からぬ様子のフウタを、しばし置いてきぼりにするような形になってしまったが。それすら少し可笑しくて。

 けれど、フウタの瞳から流れる雫>>46に、言葉を失った。

 大粒の涙は頬を伝い、日の光を集めて落ちる。
 何か言葉を言う前に、中年女性に注意されたか。ちわげんかの意味は分からなかったが、フウタに手を引かれて離れた。
 
 少し離れたところは、夏祭りの日に初めて結ばれた場所とよく似ていた。
 じっと見下ろすフウタの手を、ずっと握っていた。
 片手はフウタと握ったまま、もう片方の手は腹に当てたまま、フウタの言葉を待つ。
 いつもよりもずっと長いこと言葉を探した後に、出てきた言葉>>47に。

 ぽろ、と呼応するように涙があふれた。]


 なら……何で泣いたんじゃ、
 おかしな亀じゃのぅ……


[頬を流れる雫が、フウタの冷たい手を伝う。

 ぽろぽろと涙をこぼしながら、同時に満面の笑みを浮かべて、ずいぶん長いこと見つめ合っていた。]*
(67) 2021/01/11(Mon) 7:22:04

【人】 母ちゃん兎 理恵

[理恵、と呼ばれて>>60、ぼうっとフウタを見上げる。
 痛みで半狂乱になって、ずいぶんとやつあたりして、途中からは返事も認識もできなくなった。それでも一緒に居てずっと手を握ってくれていたのだと、やっと気づく。
 腕の中の子は女の子だ。この子もいつか自分と同じような痛みを味わうのだろうか。
 そうであれば、フウタのような存在が、隣にいてくれればいいと願った。

 大きな手が、理恵の、ときの頭を撫でる。
 
 あぁ、と、そのぬくもりに、すっぽりと収まる小さな頭に、思いを寄せる。
 やっと二人のことを伝えられた、と。

 彼は気づいていただろうか。
ふたりを撫でるその表情が、どうしようも無いほどに、父親の顔になっていたことに。]
(68) 2021/01/11(Mon) 7:38:25

【人】 母ちゃん兎 理恵

[そして、時は流れ。]


 おー、みおんか>>61? 今日はみおんのおっとはおらんのか?
 久しぶりじゃの。かりっとまんじゅうあるぞ、食ってけ


[ふんと胸を張ったとき>>62を適当に撫でながら、おばあちゃんの客人をそう歓迎した。
 数年を経て、彼女とその夫とは、ある程度の関わり合いは持っていたか。

 だけどそっと、自分とときの尻を隠した。

 おばあちゃんの孫に会うと、なんか尻尾がそわそわする。]
(69) 2021/01/11(Mon) 7:40:54

【人】 母ちゃん兎 理恵

[さらにさらに、時は流れ。]

 時間を刻んだ黒い人力車の横に、真新しい人力車が並ぶ。>>63

 娘に座席へと案内されながら、にやにやとフウタを振り返った。]


 ……だ、そうだ。
 まぁ、のろのろしか来られんのなら、待っててやるから頑張って来い。

 
(70) 2021/01/11(Mon) 7:57:30

【人】 母ちゃん兎 理恵

[そうして、花咲く座席に乗りながら、話にも花を咲かせただろう。

 こんなに小さな体で、父親譲りの運転をする娘に運ばれていても、
 あっという間に自分よりも力持ちになって、すばしこく駆け回るたくましさを見てもなお、目をつむると、今でも小さな赤ん坊の姿が蘇ることを。

 寝返りを打っただけで喜んで、立ち上がれば驚いて。
 そんな健やかな成長を思い起こせば、いつもフウタも映り込む。
 ずっと、一緒に居たから。]
(71) 2021/01/11(Mon) 7:58:07

【人】 母ちゃん兎 理恵

[そう、いたずらっぽく笑い合っていたが。
 座席が大きく揺れて>>65、「うひゃっ」ときと同時に叫んだ。]
(72) 2021/01/11(Mon) 7:59:04