54 【半再演RP】異世界温泉物語【R18】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
―― アルバイトの理由 ――
ごめんお姉ちゃんそろそろ行かなきゃ。
[ え〜やだやだもっと遊ぶと、見事な甘ったれに
育った妹は不満そうな顔をするけれど。 ]
良い子で待ってて。
お土産に柚理の好きなアイス、買ってくるからね。
[ わかったとニッコリする辺り、血の繋がりを感じる。
とても、現金。そっくり。
可愛い。
父と妹にいってきます、と言って家を出る。
向かう先は父のよく知る蕎麦屋さん。
アルバイトを始めるに辺り、父とした約束は三つ。
土日祝日のみ、夜八時までに家に帰れるようにすること。
成績を大きく落とさないこと。
決して無理はしないこと。
母は、欲しいものもあるんだろうし好きにしなさい
とだけ言った。
それから私は約束を守って、アルバイトに行っている。
お昼少し前に蕎麦屋に到着すると仕込みのお手伝いをし、
19時には仕事を終えて帰路へつく。 ]
天ざる、おまたせしました。
お茶のおかわりご用意しますか?
[ ふた月もすれば、仕事はある程度身についたし
女将さんも大将も、同僚も、そしてお客さんもとても
良くしてくれた。
家に居ると、否が応でも妹にひっつかれるし、
――嫌ではないんだけれど。
母があれこれと私にさせるものだから、
息が詰まる時もあった。
それに気づいていたからこそ、父はアルバイトを
許可してくれたのだろう。 ]
はーい、ただ今参ります!
[ 呼ばれて駆けつけると、いつぞやに
おじさん、と呼んでしまった客が居た。
あのときのことは誠心誠意謝ったし、
向こうが気にしていないようで、
時たま雑談することもあるくらいだから ]
今日はどうしますか?
いつもの南蛮蕎麦ですか?
[ 気さくに問いかけると、うん、と返事をくれる。
――尚、まだ20代らしい彼曰く、妹のように
思っているだそうで。 ]
「真里ちゃん毎週いるよねぇ、そんなに働いて……
なにか欲しいものでもあるの?」
[ そう聞かれた時に、迷わず ]
会いたい人がいるんです、少し遠いので
旅費と、もうすぐ誕生日なので、
驚かせたいんです。
[ そう言った。その時はそっかぁ頑張って、とだけ
言われたので、はいと元気よく頷いた。
――このお客様が後程、女将さんから
なにやら忠告されていたということは、
私は知らないし、これからも知ることはないだろう。 ]
う〜〜ん………
[ 二十代後半の男性が、欲しいと思う
大事にしてもらえるようなもの。
なんだろうと考えて考えて考えても、
答えは出てこない。
リサーチしようにも、相手に心当たりもなく。
雑貨屋、服屋、楽器店、気になる所には
手当り次第入ってみたけど、これといって
気になるものもなく。
アルバイトをして得たお給料は、
ときどき、妹にプリンやアイスを買ってあげる
くらいで他には使ってないから、蓄えはあるけども。 ]
あんまり、高価なものにすると気を遣わせそうだし
かと言って安っぽいのも、やだな。
[ 親身になってくれた店員さん達、ごめんなさい。
決めかねてしまって。大きな大きなため息をついた時、
小さな子供が足にどすんとぶつかってきた。 ]
わっ、ごめん、前みてなくて
怪我してない?
[ 子供は風の子とはよく言ったもので、
小さな男の子は、へーーーきぃーーと言って
またぴゅんと風になって消えていく。
その後ろ姿を見た時、 ]
――これだ!
[ ふわふわもこもこのファーコートを着ていた
その男の子を見て、思い出した。
兄は寒がりだったし、あまり家から出ない。
だからこれしかない、って。
それから家に帰って、タブレットで
あれこれ素材やら吟味し、選び取ったのは
"肩のこらない""でもとてもあったかい"
黒のロングガウン、着る毛布。
本当は、カシミヤのほうが手触りが良さそう
だったけれど、気兼ねなく受け取ってもらえる
値段のものをチェックし、翌週には実物を見に
生活雑貨店へ行き、即購入。
当日には間に合わなかったけれど、
翌々日くらいにはきっと届くだろう。
時間指定はなく、メッセージカードはつけず
手紙だけ、同封した。
やたらとうきうきしていたものだから
誰かへのプレゼントですか、とコンビニの
お姉さんに聞かれてしまったの、
少し恥ずかしいけれど、きっと私は誰かに
言いたかったから、 ]
兄です、誕生日なので――……
[ そう答えて、荷物をお姉さんに預けた。
どうか、寒がりな貴方を、あたためてくれますように。
喜んでくれますように、と願いながら。* ]
悔恨
―とある少年のXX―
[幾度となく説得を試みたものの、
母からの返答は芳しく無く、
おざなりに生返事をよこすだけだった。
話しにくいのならば自分から話すと伝えたところで、
それは親の役目と譲らないのでは打つ手がなかった。
――少しだけ、少しだけ。
もう会わない人間に割く労力が無駄、と、
そう思っているような気がして、嫌な想像をしたと首を振る。
こどもだった、と思う。お互いに。
いっそ、もう少し自分を押し通すだけの幼さがあったなら。
結果は、違っていたのだろうか。]
……あっちについたら、住所を教えて。
[それは、幾ら言っても無駄だと悟る少し手前の悪足掻き。
ここのところ対話を拒否し続けていた母親が、
漸くそこで反応を見せた。心底、嫌そうに顔を歪めて。]
「なにする気? 来なくていいから。
里心がついたら可哀想でしょ。
それに、あたらしいパパが出来るのに、
アンタが居るからって懐かなかったらどうする気?」
……は、
[絶句した。
その言いぐさに、懸念が正しかったことに、そうして、
やはり、母親にとって、自分は不要な存在だったのだと。]
[自分はどう戦えばよかったのだろうか。
妹のために、何をしてやれたのだろうか。
きっと全く手が足りなくて、届いていなくて、
だからきっと、
――きみにとっての、頼れる兄ではなかったね。
結局ここでも間違えた。
無理を通してでも、話をするべきだった。]
「まりかをきらいになったの」
(まさか、そんなはずがない)
「いっしょじゃなきゃやだ」
(おれだっていやだよ、あのひとは"娘"を愛してはいるけど、
それは"真里花"じゃない、きみを愛してくれない)
「まりか、おにいちゃんがきらいなとこ
ぜんぶ、なおすから、――だから!」
兄ちゃんは、世界で一番真里花が好きだよ。
これまでも、これからも、ずっとだ。
嫌いなところなんて、ひとっつもない。
ほんとうだよ。
[ずっと間違えてきたなら、ここだけは間違えるな。
なんとしてでも間違えるな。
きみを愛してるよ。
ずっとずっと、これからも。
だからきみの頼れる兄であるために、
虚勢を張ってでも笑って見送るから、
――どうかこの笑顔を憶えておいてほしい]
要らない子
おれが悪い子だから、一緒には行けないんだ。
[無力だった。
文字の上では笑顔で居られる。
声音だけは平常に取り繕っていられる。
何も出来なかったから、それだけは果たそう。
――本当に、合わせる顔がない。
妹にも、頑張れと背中を押してくれた友人にも。]
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