人狼物語 三日月国


57 在りし日の記憶、邂逅に微睡み

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【人】 分校教諭 添木 卓郎

──図書室へ──

   
何であの時…俺は…!!



[ 時は移り、廃校舎に送られて3日目の夜。
  鈍色のまま変わらない天候は時刻を知るには足りず
  腕時計を持たない俺は、
  周囲の人間の忙しなく動き回っている様子から
  間も無くタイムリミットが訪れる事を感じていた。


  柚乃のかけ声を背に、砂場を後にし図書室へ。
  >>3:176


  …時間がない。ない。
  タロットを見つけられないとはつまり
  ここに永遠に閉じ込められるという事。

  そんな生きるか死ぬかに近い瀬戸際にいながら、
  しかしその傍ら、突き上げるような後悔が
  胸中に押し寄せる。 ]
 
(70) 2021/02/08(Mon) 22:08:32

【人】 分校教諭 添木 卓郎

[ 息を切らせて走りながら
  思い出すのは2日前の夕凪との事。

  失意の中にいた自分を掬い上げようと
  してくれた彼女の言動を、俺は無碍にした。
 
  過去を乗り越えて成長を続ける生徒達と、
  過去に囚われた自分の差に打ちひしがれて。>>69
(71) 2021/02/08(Mon) 22:11:54

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ そしてもう一つ、気付いた事がある。
  この4年間、夕凪を教えていたあの日々は
  無かった事だったのだと自分に思い込ませていたと


  
何故なら、俺は教師で
    彼女は生徒だったから。



  彼女の純粋な想いを分かっていて、
  それでいて、敢えて何も言わずに立ち去ったのだ。


   ──でも、本心は?

   ──この4年間、ずっと。
会いたかった。

 

 
(72) 2021/02/08(Mon) 22:14:45

【人】 分校教諭 添木 卓郎

    
(結局俺が逃げてただけじゃねぇか…!)



[ ここまま俺だけこの場所に
  閉じ込められるならいい。
  ただ、彼女が戻ってこれなくなったら?
  
  また、もし、俺がタロットを手に
  入れられたとして。
  「また、後でな」の言葉だけ残して
  自分だけのうのうと現実世界に戻る?
  ダサすぎやしないかそれ。俺は馬鹿なのか。


  図書室の本に挟まっていたタロットを取り、
  そこから夕凪を探そう。
  そう算段し、絶対に間に合う、と自分を鼓舞した]
(73) 2021/02/08(Mon) 22:23:36

【人】 分校教諭 添木 卓郎

[ そのまま勢いよく図書室に飛び込み、
  そして、目に入ったのは…

  夕凪の姿と、『痴人の愛』と、
  タロットカード。>>44


   せん、せい……?


[ 2日前、あんな風に突き放したのに。
  彼女は変わらぬ態度でこちらを見ている。]


   タロット、手に入れられたんだな。
   良かった。


[ 自分のタロットがまだ無い事など忘れて、
  夕凪だけは助かるのだ…と安堵が広がった。]
(74) 2021/02/08(Mon) 22:33:34

【人】 分校教諭 添木 卓郎



   一緒に、帰ろうか。


[ 夕凪の正面に近づき、彼女が座っているならば
  頭の位置をを下げて目線合わせながら
  そう、声を掛けた。


  もしこのタロットを他の人と使う予定ならば
  その者に譲り、自分は初日見つけたタロットを
  探そうと。

  そのタロットは今同じ部屋の机の上にあり、>>3
  丁度死角の位置にネリーがいるのだが、
  そのことはまだ知らず。
  
  きっと探し始めればすぐに机上の本を見つけ、
  もう一枚のタロットを手にする事が出来るだろう]*
(75) 2021/02/08(Mon) 22:50:18

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 片膝を付き
  座る彼女の顔をよく見ようと覗き込んだ。
  自然、目と目が見合う形になる。
  

  刻一刻と迫るタロットの期限。
  それなのに、
  数分前の焦りが何処かへ消え去ったかのように
  今はこの場の時が止まっているように感じるのは
  何故だろう。]
 
(83) 2021/02/09(Tue) 21:15:22

【人】 分校教諭 添木 卓郎

   
此処には自分の貸した本。
そのタイトルは痴人の愛で
出てきたタロットは、恋人のカード。

導かれる答えは、一つだ。
(84) 2021/02/09(Tue) 21:15:47

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 夕凪はおもむろに居住まいを正す。>>77
  そして、 ]


   『さわってもいいですか。』
  

[ 意外な言葉に
  何が何やら分からぬまま首肯すると。

  す…と流れるような動きで
  彼女の指が髪に触れた。]
 
(85) 2021/02/09(Tue) 21:16:33

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 細く柔らかな指は髪に絡むように動いた後、
  そのまま額を、目元を、
  伝うように滑る。


  彼女の指先は少し冷たかっただろうか。
  だが…それに触れられた場所は熱を持ち
  自分でも呆れ戸惑うような火照りを残してゆく。

  
  沿わせた指先は頬まで来たところではたと止まり、
  そのまま小さな手のひらが、左頬を包んだ。]
 
(86) 2021/02/09(Tue) 21:17:46

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ そして離される、彼女の手。
  離されてもなお
  触れられていた左頬は、じんと灼けつくように熱い
  

  ……4年前に初めて出逢ってから。
  廊下で模試の成績を誉めた時も。
  俺の無実を訴えて続けてくれた時も。

  ずっと、彼女の想いは変わっていなかった。

  ならば今度こそ、俺が応える番じゃないか。]
 
(87) 2021/02/09(Tue) 21:18:42

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 自然と湧き出る感情のままにそう答え、
  続いて告げられる言葉に
  最初から分かっていたさ、と言わんばかりに頷き
  微笑む。]
 
(88) 2021/02/09(Tue) 21:22:17

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ そう言って、
  丁度腕を上げた夕凪の手を左手で取る。
  そして、そのままの体制で
  右手で夕凪の肩に触れ、自分の元へ引き寄せた。]*
 
(89) 2021/02/09(Tue) 21:43:53

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ ──そして、刻は来る。


  地面が唐突にヴゥンと音を立てた。
  2人で握りしめたタロットは
  段々と眩い光を放ち始め
  その光は放射状に広がり
  2人の居る空間だけを包み込んだ。
  

  眩むようなまばゆさに目を細めたのち。
  最後に、去りゆくこの地を目に焼き付けようと
  空間を見渡す。]
 
(90) 2021/02/09(Tue) 21:45:04

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 結局この場所は何だったのだろう。

    ──ネリーは。スバルは。

    ──過去から来たという柚乃は。


  再び気を失う直前、
  自分らの居る空間の床が
  ぼろり、と崩れるのを、見た気がする。


    ──まるで、建物の倒壊のような。]
 
(91) 2021/02/09(Tue) 21:48:31

【人】 分校教諭 添木 卓郎



[ 疑問は渦巻きつつも、
  掴んだ恋人のタロットを手放す事は決してなく。
  

    あと一秒でも、一瞬でもいいから
    目の前の大切な人と時を共有していたい。


  再び気を失う最後の瞬間まで
  そう、考えていた。 ]**
  
  
 
(92) 2021/02/09(Tue) 21:50:01

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 文字通り、崩れていく世界の
  その中心で。

  溢れんばかりに満たされる心と
  比例するかのように湧き上がる、
  一つの不安があった。


    ──この場から帰れば、此処で起きた事を
      全て忘れてしまうのではないか?


  俺は全て忘れてしまうのだろうか。
  ここで出逢った人も、この場所を探索した事も
  それによる気付きも、


    ……夕凪と再会した記憶も。 ]

 
(93) 2021/02/09(Tue) 22:11:14

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ ならば、せめて。
  今この瞬間だけは、
  目の前にいる彼女と感情を分かち合っていたい。


  先程彼女を引き寄せた時に >>89
  既に伝えた言葉を。


  繰り返し、繰り返し、耳元で囁く。]
 
(94) 2021/02/09(Tue) 22:12:23
(a1) 2021/02/09(Tue) 22:13:40

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 不意を突かれた夕凪は、
  無防備にわぁと声をあげる。>>97

  この4年で成長したと思ったが
  こういうのは初心なままだな、と思う。


  …だが、それはわずかなのちに裏切られた。]
 
(115) 2021/02/11(Thu) 1:35:46

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ そのまま大人しく腕の中に
  収まってくれた…と思いきや、
  彼女は自ら、首元に顔をうずめて来る。

  首筋のこそばゆさが伝えるのは
  小刻みの呼吸。

  次第にそれが落ち着いた…と思った刹那
  ふいに、彼女の唇が重ねられた。]
 
(116) 2021/02/11(Thu) 1:36:10

【人】 分校教諭 添木 卓郎


 [ タロットから放たれた光は眩しさの臨界に達し
   あとは闇の帳が降りるのみ。

   周囲の空間は現実味を伴わず
   夢かと錯覚してしまいそうなほどだ。]

 
(117) 2021/02/11(Thu) 1:37:04

【人】 分校教諭 添木 卓郎



   ──なんだ。
     ちゃんと大人になってたじゃないか。
  
   ──生徒の成長ってのは
     いつだって早いもんだな。


[ 塞がれた口角は自然と上を向く。
  そして、もう一度強く彼女を抱きしめようとした
  その時── ]
 
(118) 2021/02/11(Thu) 1:37:46

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 目の前の光景、感触
  その他五感の全てが

  ブツンとブレーカーを落とされたかのように
  消え去った。]**
 
(119) 2021/02/11(Thu) 1:40:00

【人】 分校教諭 添木 卓郎

──after──

[ 掌に乗せた顎がずるり、と滑り
  顔面が机に衝突しかけるのを
  すんでのところで耐える。

  どうやら俺は頬杖をついて
  デスクの上で眠っていたらしかった。

  上体を起こし周囲を見渡せば
  ここは無人の職員室。
  しかし、立ち込める埃臭さも鈍色の空も
  そこには無く。

  窓を見やれば、茜色の空に照らされた
  波一つない海面が、きらきらと輝いていた。

  平和な日常だ。気怠さを感じる程の。]
 
(127) 2021/02/11(Thu) 23:26:09

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ ついさっきまでいた空間は、
  夢を見ていた…にしてはあまりに
  生々しいモノで──特に最後に夕凪と抱き合った
  感触は未だに全身に──
  彼女の付けていたルージュが
  自分の唇にしっとりと残っているような
  錯覚を覚えた。]
 
(128) 2021/02/11(Thu) 23:27:25

【人】 分校教諭 添木 卓郎


  『……先生が急に居なくなって。
    私たちが先生を軽蔑したと、先生がそう
    思っていたなら、
    今も、そう思っているなら

    それは違うよ、って、皆伝えたかったの。』

 
(129) 2021/02/11(Thu) 23:27:57

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ …確かめる術は、ある。
  4年前の出来事についての事実確認。
  そして、夕凪と記憶を共有しているか否か。
  それでこの摩訶不思議な体験の裏付けが出来る。
  
  あの時は自分と夕凪の事に必死だったが
  元の世界に戻ってこられた今となると
  あの場で知り合った者達──ネリーや柚乃、スバル
  (彼らは全員間違いなく帰還できているだろう)
  と連絡先を交換しておけば良かったな、と考えた。

  そうだったら事が一件落着した今からでも
  この事象についてある程度の説明を加えられた
  かも知れない。]
 
(130) 2021/02/11(Thu) 23:28:38

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ しかしまずは…知っている人を訪ねるのが先決だ。
  当然、理由は事実確認だけではない。

  夕凪に貰った暑中見舞いの葉書。
  ここに書かれた住所に行くには、
  1日2度出港のフェリーに乗り、各停に揺られ、
  そこから飛行機に乗らねばなるまい。

  本日は金曜日。
  他に何も考えられぬまま
  俺は職員室の席を立つ。]
 
(131) 2021/02/11(Thu) 23:30:01

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ 窓越しに遠く、
  こじんまりとしたフェリーが船頭を
  本島に向けようと動いていた。

  日は沈みかけ、上空を包む夕陽の色は
  最後の輝きを振り絞らんと言わんばかりに
  紅く燃える。

  文字通り水を打ったような地平線は少しも
  歪むことなく、燃える光を受け止めて煌めいた。

  ──
夕凪
の時間帯だ。]
 
(132) 2021/02/11(Thu) 23:30:52

【人】 分校教諭 添木 卓郎


[ きっと、この赤く燃える色は彼女によく
  似合うだろう。


  気付けば手中に握り込んでいた恋人のタロットを
  一瞥し、今度は今いるこの世界で
  彼女ともう一度向き合おうと、
  出港する船に向けて歩き出した。]**


〜『もしもの未来』に続く?〜

 
(133) 2021/02/11(Thu) 23:34:11
 




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