84 【R18G】神狼に捧ぐ祀【身内】
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「くそ……頭が、」
ゆらゆらと。
「……ぼんやりする……」
げほ、と喉につまったものを吐き出すように、
軽くせき込んだ。
ぽたぽたと、汗か、涙のようなものが、少し垂れる。
はてさて、仄暗い中でも学徒は何時も通り変わらない。
一枚、一枚と紙を捲る。
「しかし、しかし。成る程。本を読むにはいい場所ですね」
其の様子は、何一つ代わり映えしない。
何時も通りであった。
すく、と立ち上がる。
拘束はされていない。
見張りはいるようだが。
懐から、扇を二本。すらりと取り出し、しゃんと開く。
ひらひらと布をはためかせながら。
躍る。
踊る。
舞うように生き、舞うために生きよう。
不器用な自分の、それが生き様だから。
舞う。
舞って。
この島の舞いは、独特だ。
他の地方にない、特有の動き、特有のモチーフ。
それはつまり、何か確たるものに根差している。
舞の中から、それをつかみ取る。
踊りながら、自分の身体に刻み込む。
──遠吠えが聞こえた気がした。
「──……狼、か」
ぽつり、と呟く。
脳裏に浮かぶのは、
神々しく、畏ろしく、美しい。
おおかみのすがた。
はらり、はらり、一枚、一枚と紙を捲る。
残った項目も、後わずか。
「さて、いよいよ大詰めだ。仕込みは重畳」
はらり、はらり、一枚、一枚と紙を捲る。
学徒は静かに、天を仰いだ。
何とも侘しき、土天上。
「さて、最後に笑うのは如何なるものか……嗚呼、小生は犬死こそ御免だが、盛り上げるには充分な事は起きるとも」
「しっぺ返しを受けるか、悪が笑うか、或いは漁夫の利を得たものがいるか……」
はらり。最後の項目で、指が止まる。
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