125 【身内】実波シークレットパラダイス【R18】
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「ただ、人に明かしたくない理由もそれぞれで、
同じく秘密を持っていたからといって寄り添えるとは限らない。同調するだけじゃなくて、譲れないところは譲らなくてもいいんじゃないかって思うんですけど」
ぐて〜と横たわってるので全くサマになってない。
ぱち、ぱち。
あなたに撫でられながら、
ぽかんとした様子で。
「──そ、う、なのかな。
そう、かも。
──神秘が出てきてるんだから、
科学が出てきたって、驚かない、の、かな」
「──」
「──あたし、
あたしのままで、いいの?」
恐る、恐る。
もう、状況と予測から演算結果は出ています。
ですが、言葉にして確認しないといられない様子は、
きっと、怯えがちな少女そのものでしょう。
「俺の秘密が不特定多数の感覚を盛大に麻痺させた気はするし
正直悪い事してる気はしなくもないんだけど
まあよりによって俺の秘密バラした奴にも責任の一端がある」
とはいえこの善か悪かわからない神に限っては
多分きっと、日頃の行いが何より悪い。
つまり結局の所は大体こいつが悪いんだ。
「真尋ちゃん先輩も良い性格してんね〜。
俺は結構好きだよそういうの」
水銀
「少なくとも俺はそう!! むずかしーこと考えるの苦手」
神様や妖狐と友だちになれたのだ。
アンドロイドとだって友達になれるはず。
少なくともこの男は、もうそれでいいと思っているようだ。
「良いんじゃない?
そのままでさ。ロボットだってなんだって、あの時雪うさぎ作って楽しかったって笑ったのは水銀ちゃん自身じゃん。
二人で作った力作、俺はなしにはしないな」
軽くスマホを操作して、あの日撮った”100点の雪うさぎを持って雪玉から逃げ惑う”あなたの写真
を見せてサムズアップした。
「俺を騙して殺した妹は地雷だよ」
これはわざと言っている。
該当者にはバレバレなので言わないが。
久瀬
「一生思い出すなよな!
いや、思い出したら出したで嬉しいとか思いそうだけど……くそがよ
。
つか、落とし物したって和菓子見つかったの?」
「莉桜ちゃんのことが好きなのは変わらないからね」
どの立場からか不明な発言です。
眠たげな眼を偉智に向けたが、いつも通りの半目にも見える。
「──久瀬さん」
「あ、──ありがとう。
深呼吸は、あたし、要らないんだけど──
──教師に向いてるって言われたの、すごく嬉しかったし、
今だってそう。
将来なんて、考えなかったから」
深呼吸が要らないとはいえ、
思考回路を整理する時間は必要です。
とはいえ、その語調や様子は、
先ほどよりは幾分落ち着いたようでした。
「そ、それ保存してたのっ!?」
なんと気付いていなかったようです。
「も、もう、
──でも、うん。
なんか──もしかして、そうなのかも。
──あたしね。
ここにきて、秘密を明かすゲームなんて、
最初、絶対やだ、って思ったけど、
──けっこう、たのしかった、から」
灯る、ちいさな微笑み。
「──戸森さん」
「咲花ちゃん」
「凛乃さん──」
大きく息を吐く、──ようなしぐさ。
ゆるゆると、立ち上がりました。
「──夢──?」
「あ、うん、えと。
運動は、ぜんぜんだいじょうぶ。
防寒と耐衝撃はバッチリだし、
防水防塵規格はIP68だから──
」
デジカメとかでよく聞く言葉が出ました。
ちなみにIP68は、完全防塵で水中使用可です。
「……いや、ここで俺に話し振られたの……
明らかに、人選…ミスって……自分でもわかりますよ……」
気付いたら恋バナを振られていた……
「……えっと、……恋バナって…要するに、自分の事…ですよね……?
だとする、と……あの、俺……多分、永遠に……無理と言うか……」
少し悩んでいる。
確定している訳でもないを話しても無意味かもだし。
唯一不破彰弘と言う男は日本の伝奇や神話系にだけは詳しい。
だから、己の魔法少女の能力の“モチーフ”あるいは“ベース”として使われている物を薄ら理解している。
それが、本当にその神様本人か、或いは単にそれを模した全く関係ない異次元存在が遊んでいるのかは定かではないが。
「……俺、多分
“縁結び”の魔法少女
、なんですよ……
……恋愛成就とか結婚、も大きい…です……
でも、それ……“人と人”を結ぶ事、なんです…よね……
……だから、俺……多分、この中で一番…向いてないんですよ」
その力は他者を結ぶものであって、己と誰かを結ぶものではない。
変身呪文と決め台詞を見ると察しの良い人にはバレるかもしれないが、さすがにここで変身はしない。
「えっあんなに俺に熱烈にアピールしてくれたのに?
二人で過ごしたあの時間も嘘だったって言うのかよ…」
無茶振りされた魔法少女の後ろで冗談だか冗談じゃないんだか
よくわからない事を宣っている。
これは縁は縁でも悪縁だと思う。切った方がいい。
「そもそも彰弘ちゃん名前負けしてっから大丈夫だよそこは」
暴言!
「“縁結び”といえば……出雲の方だったっけ?
兎からそういう話を聞いた覚えがあったりなかったり。
たしか、そう、因幡の白兎とかが……関係あるとか」
神格のある動物のことならわかるのか、ふとそんなことを述べてみる。兎に聞いたというのはマジの兎なのか妖怪兎でもいたのか。それについてはまあ置いといて。
「出雲の神は自らも意中の相手と結ばれているし、
縁結びだからといってだめということもない気はするけど。……でも認識ってのはあいまいだし。
“言葉遊び”が大きく力を持つということも、ままある。術の正しさを決めるのは見るひと次第ですゆえ」
「いや、俺は部とかもあって知りましたが…そこまで、有名じゃない、です……
縁結び、で浮かぶ場所じゃなくて……名前を聞いて…調べたら、こう……
“縁結び、子授け・出産・養育”がでてくる、的な……?」
だから多分、頭に無理やりリボンもつけられてるんだろうな……と勝手に推測している。結ぶものなので。もしかしたら異世界生物の趣味なだけかもしれない。
「うう……累くんはまた酷い事いう……
名前負け、って言うか……
本名も魔法少女の名も守護神も全部に俺が負けてる自信はありますけど……
そもそも累くんはこう……いや……時間を嘘にはしてないけどこう……
……割とみんなに似たような事、してるじゃないですか……」
安易にポイポイ人を拉致ってるみたいだし……
「話を戻すと……神は、そうですね……でもそれ、神だから、なんですね。
俺はあくまで借り受けてるだけで……多分、力の源が……
…………。まあ、だから、皆さんには幸せになってほしいな、って」
給料すらも渡さない神様的存在がエネルギーを与えてくれるわけがないのは、薄々もう男は理解している。その上でこの在り方で生き続けているし、変わる事もないだろうな、と諦観もしている。
「むむ」
「不破はいつも一歩引いたような言い方をする」
まさか、会いたくなったときは行くという言葉を忘れたわけではあるまい。堂本に、妖狐にはできるんだぞ、と胸を張ったのをまた同じように。
「“慣れる”をしてしまったからにはしかたない。
でも……俺はまだまだ神とは程遠いから無理だとしても、いつかはなんか、もっとすごいことができるかもしれない。
そんなとこに山の神も落ちていたりしますからね」
落ちてはいないが。
「仲良くしたひとに幸せになってほしいのは」
「不破だけじゃないんだ」
「うん。俺はみんな気に入っているから、今のところはね」
そんな、ひょんなことで妖狐になったものは、
しかし一人の人間を想い続けてそう成ったものは。
まあ、まだ諦めのひとつもしらないわけである。
「
うん俺にも負けたしね?寧ろ勝負になってなかったねあれは。
にしても皆に似たような事って人聞きが悪いな〜。
実はあんなに熱い夜を過ごしたのは久し振りなんだぜ俺」
落ちてる神、平然と語弊に語弊と語弊を重ねている。
このろくでなしはどっちに取られても不都合は無いため。
「…………。……ありがとうございます。
累くんはともかく、一葉くんと久瀬先輩はいい人ですから。
きっとこれからもいい人に出会えますよ」
やんわりと、何かを濁した緩い笑みを向けた。
本当に、全部信じていて、本当に、カケラも信じてないんです。
「……お二人とも、ご冗談を。
……ああ、でも。誤解から始まったとはいえ……
楽しい思い出ができたのも、幸せだったのも本当です。
……久瀬先輩には、本当に感謝してるんですよ。貰いすぎなくらいでした」
「残念ながらフラれ仲間かはまだ不確定らしい。
何せ俺達みたいなのは一度興味を持ったらしつこいのさあ。
それはそれとして捨てるくらいなら妹にやる〜」
しれっとルームウェアを横流しされようとしている。
棚からジェラピケだ。よかったね妹よ。
「山の神みたいになるのはちょっと嫌かもしれない」
「その気になれば攫ったり隠したり、
極道のものがいたり、スゴイ機構の子もいたり、
そういうのがしつこかったら、たいてい面倒だ」
我がフリ直せというやつ。口が悪い。
「俺がもっと強くなって神になったら、
もっとふわふわになりたいな。そしたらきっとみんな喜ぶ」
発想の程度が狐レベルだ……
君はいい人に出会うというか、いい人ってところから怪しいし。
「なあ今俺はともかくって言った?流しかけたけど
しれっと言ったよな?彰弘ちゃん俺の目を見て同じ事言える?」
まあそれはそれとして、だ。
身勝手な奴には珍しく心底面倒くさそうな溜息の後。
「めんっどくせえなあ人間ってやつは!」
「あのさあ、人から言われた事くらい素直に受け取れないの?
たったそれだけの事もできないわけ?
ああそうだたったそれだけの事が難しいんだろうなあ?
人間ってのはそういうもんなんだもんなあ?」
「無い頭捻ってないで俺がそうしろってんだからそうしろよ。
俺の意思決定に抗うなよ。
神を言い訳にするなよ。
うだうだ屁理屈捏ねて自分に都合良く責任転嫁して
逃げようとしてんじゃねえよ、意気地なし!」
「おっ、宗崎雪だるま作るのか?
俺も転がすぞ!!」
空気を読まない男。
豪快に雪玉を転がし始めた。
「まっかせろ!!
今でっかいのを一つ作ってやるぜー!!」
ごろごろごろごろ。
こっちの雪玉の成長度は
10 。
「そうかも」
「あんまりでかいと雪うさぎが泣いちゃうかもだしな」
優しい王様なのだ、きっと。
これは何処かの時間軸。堂本棗は夢の中に居る。
――それは普段会うことが出来ない人と会える場所。
「……エリーゼ?」
『あぁ、棗。ようやく会えたわね』
「そりゃ……会えるわけないでしょ、同じ身体にいるのに」
『ふふ、それはそうなんだけど』
「どうして泣いてるの」
『……気づかなかった……、でも、悪い涙じゃないわね』
「嬉しいってこと?」
『そうかも』
これは何処かの時間軸。堂本棗は夢の中に居る。
――これは、ある僕らの夢の続き
『棗が私の願いを叶えてくれたから。
私は願って、やっと殿下の魂の傍にたどり着いたんだもの』
「俺は……別に、何もしてない」
『私がやりたいと思っていたことを、やってくれたわ。
……好きな人、いるんでしょ?』
ずっと見てたんだもの、知っているわ。
「いっ……いる、けど。でも!」
『ばっかじゃない?
でももへったくれもないですわ、このおバカ。
いいですこと? 私の時間は前世で終わったの。
でも、あなたの時間はこれからですわ。
魂が受け継がれても、あなたの時間はあなたのもの
』
『迷ってもいいじゃない。その気持を……大切に出来るなら』
君は、そこで、呆れて笑って。じゃーね。の神じゃなかったの?
そうこうしてるうちに別の話題への興味が混ざったので、
その目はもう孤独な魔法少女の方を向いていない。
誰かみたく強引に連れて行く気概もなければ、
あとは長い時間でちょっと頑張ってみるくらいだから。
「写真、そう、俺は撮ってもらいたい」
「携帯もなにも持ってないから、
俺は俺の写真を一枚ももっていなくって」
ひとまずは下げられたスマートフォンを見て。
「これから先、この顔をやめた時、
思い出せなくなったらみんなが困るかなと」
次会った時別人の顔になったら、そらまあ驚かれるだろう。
「──」
「──公にしちゃいけないことは、変わらない。
変わらないけど──」
「──あたし、
ここに来られて、よかったな。
自分が自分のままで居てもいいって
いってくれる人がこんなに居るなんて、
思わなかった」
「あたしも撮りたいな、写真。
いっしょに、撮りたい。
あたしの目がカメラだったらな〜」
なんだか、急速に開き直ってきたようです。
耐久性を褒められたので、防弾とか防刃とか防爆も搭載しようか悩んでいる。
「えー、何々。
みんな写真撮るの?
俺もみんな撮りたい!」
神というものの前には、人間の予測なんてあてにならない。
これは何処かの時間軸。堂本棗は夢の中に居る。
――これは、ある僕らの夢の終焉。
「でも、俺。
記憶があって嫌だって思ったことはない。
ずっと大事で、大切で、エリーゼを手放そうと思わない」
『それとこれは関係がありませんわ。
私はただの傍観者、だけど消えたりしませんのよ。
ずっと、ずっとあなたの心の奥底にいるの。私より昔の前世の人たちと一緒に。
消えずにずっと、あなたの魂にきっと刻まれてる』
『棗なら、大丈夫。
だって世紀の悪魔と呼ばれた、この私の後世なのよ。自信をもちなさい、バカ、バカ棗』
「さっきからバカって言いすぎじゃん!?」
言われて嫌な、バカじゃないけどさ。
今、俺を見る君は、絶望にくれた顔なんかじゃなくて、幸せそうに笑ってる。
『あなたの時間をしっかりと歩いていくあなたを、私は誇りに思うわ』
だから正直に生きてね。
奏でる。欠けたもの同士で目指す星。『きらきら星変奏曲』のツインを。初めて誰かと一緒に。
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