人狼物語 三日月国


82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】

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一度逃げ出した少年の怯えた様子を見て、客が声を上げる。

二度と逃げ出す気が起きないほど、痛めつけてはどうか。
手段も程度も問わない、彼が泣き叫び許しを請うほどの罰を与えよ。


少年が嫌がる素振りを見せるのも構わず、その声は響き渡るだろう。

メモを貼った。

 
──あの従業員は、上からこの船に売り渡されたと聞いた

──なら、あれを玩ぶなどいつでもできる事だ。

──そうだ、そうだ。

──今は、新しく入って来た二人のショーに興じるとしよう

────そうしよう、そうしよう。

そのような声を受けて、
嘗て"怠惰"に座す者であり、そして"共犯者"であったものは
鎖を引かれ、従業員に連れられて、舞台の袖へと消えて行った。

きらめく、貴婦人の面影を。否、
最後に残った、“今は従うべき王”の視線を追って、

運の尽きた少年を見る。
役目を終えた珈琲の君を見る。

彼らが虐げられるくらいなら自分が。
自分が彼等の分、客たちの欲望を受け止めれば。

そこにあるのは高尚な自己犠牲の精神などではなく、寧ろその先に待つだろう“喜び”を手にしたいが為の──倒錯した、“溢れんばかりの嗜虐性欲を前提とした”被虐欲!

ステージの狂った様相に、未だ捨てきれぬ屈辱や、僅かな憤りを抱きつつも、異色の双眸は、不思議なほど据わって、客たちを鋭く見定めている──

到底この世のものとは思えない瞳。
それに対する客たちの反応は、様々だ。


あの余裕を粉々に打ち砕くべく、凌辱の限りを尽くせ、と誰かが言う。

アレは中々に生意気で丈夫そうだ。
心なき機械、あるいはこの船が運ぶ搾精生物をあてがえば、きっと見応えのあるショウになるだろう
、と誰かが言う。

それを聴き、仮面の奥の瞳がほんの僅かに陰りを見せる。お前らが直接来ればいいものを。

なんとか【スペシャル☆アニマルパイ】を確保することができた。(3)1d3時間、シマウマanimalの特徴を持つ。

なんだかとってもシマウマだ。

何故か【スペシャル☆アニマルパイ】にありつくことができた。別の時間軸で、animalの特徴を持つかも。

衣服が脱げないと聞いてこっそり別時間軸でパイを食べanimalの特徴を持った。かも。

パイが食べたかった。

拍手と喝采に怯えている。

それが何かもわからないのに「嫌だ」と繰り返している。

挑発するかのように、腰に手を当てた。

チャリ、と鎖が擦れる音がして。
また今日も始まったかと薄く目を開ける。
ここで繋がれて毎日ショーに出されて、
心も摩耗してきたころに、冷や水を差し込まれる感覚があった。

「なっ……!?」

少年が。裸で壁に繋がれたオレに覆いかぶさってきている。
手足の拘束は普段よりきつくなっており、身動きが取れない。
少年は切羽詰まった顔で爪で傷を残すような無遠慮さで、
俺の胸板を、腹筋を、首筋を欲望のままに這わせる。

予想外の『客』の襲来に、流石に顔が歪む。
相手の意を探ろうとその表情を見ようとして、
少年の向こう側に強化ガラス越しの肥客が居るのを見つけた。
好色満面の顔でこちらを見てくるその欲には覚えがある。

成程、そういう趣向かと、吐き気を催した。

――少年はこれを、やらされているわけではない。
ただ全てが自分の意思でもないのだろう。
欲の吐き出し先を、下卑た大人たちに差し出されて、
行き場のない若さが抑えきれないだけだ。

その若い欲の暴走を、それに成す術がないオレを見て、
楽しむ者たちが、この行為の"意思決定者"だ。

吐き気がする。反吐が出る。
この先、この経験が齎す人生の陰を考えると、
金を持つ者の傍に生まれる者も、
金を持たない者と同じくらいに不幸であると思った。

少年が、どう発散していいか分からない己の欲に戸惑い、
初めての経験にオレの身体を切り傷や噛み疵だらけにしていく。
初の褥に作法なんてないのは当たり前だが、
それが鎖で繋がれた相手なら、こうもなる。
征服欲と独占欲と性欲のない交ぜになった感情を向けられ、
必死なその少年の形相に大きくため息を吐いた。

「そのままでいい……聞こえてねェフリしろ。
 焦んじゃねェよ。逃げやしねえ」

後ろの大人たちに聞こえない声で言うと、
それでも貪りの対象から声を掛けられたことで戸惑いが混じる。
歳の頃は15くらいの餓鬼に、無理な話かと息を吐いた。

……馬鹿野郎が。本当に。

「……ゆっくりでいい。
 したいようにしろ。今から少し声出すがビビんじゃねえぞ。
 俺が目をつぶったら思い切り顔面を殴れ。手加減すんなよ」

言って、大きく息を吸い込み。

「テッメッ!! 離せこのクソガキ!!
 オレを誰だと思ってやがる、天下のムルイ――」

目を瞑る。戸惑いが感じられるが、頬に走る衝撃。
……いい子だ。笑いが出る。

興を載せた。悪くない。

少年がぎこちなくも乱暴に、躰を貪り始める。
下手糞な愛撫に、躰が反応しやがるのは癪だったが、
相手に痛みを与えるよりは100倍マシだった。
挿入れる場所を探りやがったのは殺してやろうかと思ったが、
無事接合すると腰の辺りが互いに震える。……最悪の気分だよ。

「っ……っ……」

乱暴で、己の快楽しか考えていない腰の動き。
少しは分かって来たのか、指先も撫でるような動きになってきた。

オレは痛みと異物感に吐き気を抑えながら、
ただ揺らされるがままになっていた。

その少年の必死な顔が。
――金に踊らされ、狂わされたかつての自分と重なり。
貫かれながらも、俺は大人に見えない角度で微笑んでいた。

「………ごめんな。
 ………救って、やれなくて」

それは、誰に対しての言葉かは分からない。
少年も急にそんなことを囁かれて、困惑した顔でオレを見る。

そこに愛情はなくとも、身体の刺激で男は容易に果てる。
限界が近いようで、少年の動きにも余裕がなくなってきた。

きっとこの経験は、この少年の人生を歪める。
金が人の人生を狂わせて、誰もが正しくなんて生きられない。
勝つ奴が居れば同じ数負ける奴が居て、
そのたくさんの屍の上に立てるのは一部だけだ。

「っ……でもな。狂っちまった人生の先も
 ………案外っ、悪く、っねェからよ。
 真っ当にっ、誰か好きっ、になって、"お前は"っ、
 ……幸せになれよ」

褥には似合わないセリフだが、
この奈落に居るオレが言ってこそ、意味がある。
一つ亡くせば、全てが終わるわけじゃねェ。
一度負けがつけば、這い上がれないのが人生じゃねェ。
その果てに、こんな船の上で逢える奴だっている。

だから。
――自分に賭けることだけはやめんじゃねェぞ。    。

最後に、強く"締める"と。
少年はあっさりと絶頂に導かれた。

吐き気が込み上げてきて、口元を手で覆った。

身を隠すものすべてが取り払われる。その端正な顔を隠す仮面を除いて。

少年は、台を見上げた。
罪人を磔にする十字架。
自分には似合わないはずなのに。

だって。何もしていない。

「投票された…チップの、数…?」

何を言っているのかわからなくて。
頭の回っていない様子で、少年は今この場における王に問いを返す。

耳を塞ぎたくなるような、大合唱が更なる恐怖を煽って。
その返答すらもろくに頭に入っては来ないかもしれないのだけれど。

船の狂気が抜け殻だった自分に満ちているのを感じる。

罪悪感こそ抱けど、
暗殺者の彼が友人の破滅を喜んだように。

画面の下で
牙を剥いて笑みを浮かべた。

少年は、酷く震えている。
横たわっている器具にも、女の声にも、置かれた状況そのものにも、恐怖を感じて。

「お、おれ の 命」

考えろ。考えろ。考えろ。

家族には、好かれていたと思う。
友達は、多くはなかったけれど。

踊り手は、家族が教えてくれた舞いを広めたくて。
殺しは、小さな弟妹を育てる母親を助けたくて。
―――選択肢がなかったとはいえ、身を犠牲にして、貢献してきたはずだ。

あの人以外の、
誰にも褒められなくても―――



「痛いのは、嫌だ……」

200万ドルの価値は、ないだろう。
けれど、4.65セントでは家族を助けられない。

それならば――――答えは。

少年は、青い顔のまま
『5000ドル』のペダル
に、足を、入れた。
電流を警戒して、奥歯に力を入れている。

許されることを望んでいる。

助けてほしいと思っている。

喜ぶ
客たちの顔を一人一人覚えている。墜とされても変わらない猛禽類の瞳だ。

その光景と、更にその光景を見てる奴を自分が見ていたら生き生きしていた。

電流は大した痛みではなかった。
ほっと息をついて――――

「………ぇ」

何が起こったのか、分からなかった。
凄まじい音がして、何かが刺さるような鋭い痛み。
皮が剥がされ血が噴き出すのを、腕がズタズタにされていくのを、呆然と見て。
一度機械が止まって―――

「あ ああああぁあああっ!!痛い、いたい…っ!!!
 なんで、腕 おれ おれ、まちがって…っ!!」



初めてあった頃の落ち着いた雰囲気はもはやなく、喉を潰すのではないかと思わせるほどの声を上げて、涙をぼろぼろと零している。
痛みに慣れていないのは本当で。
痛い事をされないように、機嫌を損ねないように必死で生きてきたのだ。

少年は、舞いをしなやかに見せるための腕を失った。

それでもまだ、この遊戯は終わらない。

早くこの痛みから解放されたくて。少年は、足を引き抜いて、『4.65セント』のペダルを踏んだ。
自分の価値なんてどうだっていい。早く解放されたい。

喜びしか分からない。劈くような悲鳴の先にあるものしかわからない。

全ての感情が喜びに支配されている。矛盾した気持ちに気づけない。

笑いながら、酷く胸を締め付けられた。

惨憺たる歓楽の一齣をただ舞台の袖から見ている。

骨に刃が当たって、痛みと恐怖で泣きじゃくっている。

目を逸らし口元を覆った。

幼い頃から母親によって丁寧に手入れされてきた左腕を失った。

少年は再び与えられた痛みに、劈くような悲鳴をあげる。
意識を失うこともできず、頭は朦朧とし 視界は霞んで赤色しか写さない。

暗殺のためにナイフを振るった右腕も失い、肩につながる骨すらなくして、
少年は元々抱えていた望みも捨てたかのようにただ
「死にたい」
と思った。

自分に価値なんてない。だから、早く 早く楽にしてほしい。

嗚咽だけが、響く。

ナフが戻ってきたら抱きしめてやろうと思った。

そして沢山沢山褒めて褒めて褒めて褒めて、わらう。

(金持ちの道楽というのは、
 極まれば、正に狂気的だな)

 200万ドル。
 ただ日常を生きるだけでは、手に入るどころか、
 目に入れることすら叶わない”非日常”の証。

 それが、
 こんな簡単に、一人の少年に注がれている。
 たった一人の少年の、弄ばれ尽くされた人生。そのカタストロフィに金額を付け、価値を積み立てる。

          怒り、 不快、  絶望

 湧き上がる
歓喜、狂喜、悦喜
───

 陶酔や恍惚の様相をみせる客たちを見るたびに、倒錯した明るい感情が湧き上がる。血の池が満ちて、ギラギラと悪趣味な照明を反射する舞台。それに相応しい感情で自分の内が満たされている。

他者の精神を掌握して弄ぶのが愉しくてしょうがない。

執念深い男だと、何度も言っていた。あとは、2人。

皆の身を、心から案じている。その先に喜びを見出してしまうだけ。

共犯者の一人が何処かで何かえらい事になっている気がしてきた…

滅茶苦茶愉快なものが見れた気がして地上を見れるカメラ探せないかなと思った。

また地上が愉快になった気配を感じ取った。

お手上げです(昨日ぶり二度目)。

(3)1d10

折角だから自分が立ち去った後の瓶10本の録画みようと思った。

「ふーん見られたくないようなのが……」と言う顔をした。

ビデオを見るのは今日は許しておいてやった。

優しいね。

仕方ないのでラサルハグと遊ぶことにしました。

ラサルハグとあやとりで遊ぼうとしている。

さり気なく地上と墓下で意思疎通が図られたのを感じた。テレパシー?

まだ、意識を失うことを許されない。
体を動かされるたびに激痛が走る。

視界の霞みと、意識だけは開けてきた。

いっそ殺してくれたなら。

金だけを家族に寄越して、放っておいてくれたなら、良かったのに。

それが叶う場所でないと、気づいているけれど。


「……ぜんざ」

掠れた声が、漏れる。
これ以上のことが、あるのかと。

涙が、溢れる。助けてと、言いたかった。

え、今?という気持ちになった。付き合いますが。

「12段はしごって奴ができねぇからやってくれ」した。

本を見てもいまいちよくわからないので手渡した。

あやとりは赤色と青色があります。

やり方さえわかれば大体の事はできます。

赤色のあやとり紐を受け取った。

12段はしごが事故った

両手が大変な事になった。

「お前何1人で拘束SMプレイしてんの?」と言った。

わからない……になった。助けてほしい

仕方ない、解けなかった

下手な縄で縛るより拘束できるから覚えたら?と思った。

前向きに考慮しておく事にした。

それはそれとして詰んでいる。

舞台裏で誰かが変なことしてるのを感じ取った。

ゲーミング右眼ほど酷くはない。少なくとも、絵面は。

ゲーミング右眼のことは忘れた。

そもそもあやとりなら引きちぎれるんじゃねえか?いいぞ千切っても。

痛い事には痛いし大変なのであんまりしたくはない。

仕方ないので引きちぎる事にした。できなかった

この世の終わりみたいな顔になった。

「お前結構太々しいな」と口に出た。

腹を抱えて笑っている。

お手上げです(数時間ぶり二度目)。

よく分からないが念を送ることにした。よりギチギチになった。

よりおしまいになった。もう助からないぞ。

SMプレイをするか真面目に考えだしている。

今は首輪付きなので余計に絵面がひどい。

ヤバいのは手首に巻き付いてる方なので「折り紙ができたら解いてやろう」した。

もっとゲーミング右眼より酷い絵面になってほしい。

両腕縛り(物理)で折り紙に挑戦する事になった。

幼い弟妹が満足に暮らせていけるように、ナイフ捌きの技術を磨いた右腕を失った。

「猫折って」と自分が出来なかった奴を折り紙1枚差し出して来た。

本は仕方ないのでちゃんと開いてあげてます。

頑張ってみる事にした。できなかった

もうだめかもしれません。

凄い不満そうに見つめている。じーーーーーーー。

喜んだ。
詳細は伺えないがなぜかウキウキだ。

もう一度やってみる事にした。立体的で可動部のある猫ができた

なんとかなりそうだ。

「これ本にある猫と違う!」となったが、動かして遊んでいる。

満足したので鋏で紐を切ろうとしたのに切れない。

俺、さっき渡したのワイヤーか何かだったか?と思った。

もうだめかもしれない。

そこに居られないのが残念だ。

強度を確かめに青糸で12段はしごに再挑戦してできた

首を傾げた。

満足したのでそっと手首拘束になってる上に、はしごと猫を乗せて立ち去った……

んんんんん…………

研修が終わるまでそのままだったらきっと解いてあげただろう。がんばれ。

仕方ないので従業員に切ってもらった。業務を滞らせてはいけない。

諸々の大惨事が起きていることは知らず、ボル(9)1d10を作っていた。

ややお叱りを受けた。

ここまで計画通り。

ディーラーの彼女を労った。同じ時間帯で。

仲が良いのだろうか?バーナードと?

大人しく正座した。反省はしているのかよくわからない。

流石に。信じられないものを見る目で、“天使”が造られていく見た。

嘗て共犯者だった"暴食"の言葉は真実だったのだと理解した。

なんだか嫉妬された気を感じて勝ち誇った顔をした。

ラサルハグは嫌いだがラサルハグで遊ぶのは好きだ。

真面目にあれは悪趣味とかじゃなくて俺とジャンルが違うと思った。

噎せ返るほどの悍しい匂いに、表情は笑っていても、目が震えている。

条理を笑い飛ばすような光景に、正気が削り取られるような感覚を覚えた。

「は、はは」と嗤いを溢す。まだ狂気へ、堕ちきれていない。



天使?これが?
神の国に御坐す使い、それが、こんな、
命を冒涜し、“神聖さ”など笑い飛ばし、引き裂いて踏みにじっても足りないような───

理解を拒む。脳が、本能が直視することを拒む。
だが目を離せない。
賓客らの歓声が、演奏が、頭を掻き乱す。

此れを望み、愛する客は、最早
我々と同じ人間と言ってもいいものだろうか?
狂騒は心を蝕む。焦点は最早定まらない。

────ちっぽけな正気を守るために、目を瞑った。

侵されるような倫理道徳を持ち合わせていない。初めから。

ただ仕事の事を考えている。

「っ、……ふ…」

脂汗が滲む。
未だかつて、入院すらしたことのない少年は どの器具が何の役目を担っているのかも分からない。
ただ、されるがままに。痛みを堪えていた。

血とは別に、透明な薬が追加されたのをぼんやりと見ていると
背中に何かが刺される感覚と、遅れて。
以前堕とされた時の、玩具による刺激とは比べ物にならないほどの―――
快楽


「あ、ああ―――!?い、っ、が……!」

剥がされる、打ち付けられる。
そのたびに、仮面の下の目が見開かれて、歯を食いしばる。
口の端からは、唾液がこぼれて 下半身は意思と関係なく硬く勃起して体と台に挟まれながらも 何度も白濁を吐き出しては、また硬くなって少年の体力を奪う。

悲鳴とも喘ぎともつかない声が口から零れていく。


―――ふと、体が持ち上がる。背中の皮膚が引っ張られるような痛みと、全身に響くように広がる快感に、頭にまた思考に靄がかかる。
恍惚とした表情を浮かべた、羽を生やした少年は、血の匂いの中で 地上に立つ従業員達をぼんやりと見下ろしている。

強く双眸を閉じる。目を合わせたら、“連れて行かれる”。そう錯覚した。

メモを貼った。

担架へ横たえられた少年は、意識がもうあるのかないのかわからないような状態だ。

ただ、送金するという言葉を聞いて。ほんの少しだけ、口元に笑みを浮かべた。
本当に、意味が分かっていたのか定かではないけれど。

哀れな少年は、愛される天使となって この船で生きていくことになる。
少年の願いは、もう叶わない。

"従業員"になった。

意識が落ちるまでの間に、色んな人のことを考えた。

頑張ったから、褒めてくれるだろうか。

話をして、また特製パイをたべられるだろうか。

踊りを────踊りを?また、見てもらえるだろうか。

また、励ましてもらえるだろうか。

それから、色々な事を考えながら。意識は闇の中に沈んでいった。

 
────さあ、こちらも幕を上げよう。

踊り子の少年の華々しい舞台が幕を引き、
観客は興奮冷めやらぬ様子で口々に鮮烈なショウを讃え
そして、目当てのものを観終わった者から捌けて行く。
それから、次なるお目当てを求めて、観客が減る事など無い。
それらの様子と、今一時の休息の後。

そして再び幕は上がる。
脚付きの台に乗せられた、成人一人よりやや背丈の高い箱
それを運ぶ従業員達を付き従えて、
"怠惰"に身を滅ぼした者が今一度舞台へと上がる。
その装いは一転して"裏切者"であった時と同じ、
白を基調とした上等なスーツに目元だけを覆う簡素な仮面。
けれど誰の趣向か、依然としてその首元には
何かに、或いは何もかもへ隷属を示す首輪が存在を主張している。

「皆様、大変お待たせ致しました
これより演目は従業員テンガンの研修へと移り……
進行は不肖この『ラサルハグ』が務めさせて頂きます」

恭しく一礼をして、箱の傍の従業員へと合図を送る。

「特別協賛者のジェラルド様に、どうか盛大な拍手を。」

そして、破裂するような拍手、腹の底に響くような喝采と共に
パンドラの箱は開かれ、概観悍ましくも蠢く肉塊のような
粘液滴る触手の塊で形作られた生物が姿を顕にした。

「そして──テンガン。あなたがこの舞台の主演です
『彼』と共に、どうかこの演目を大いに盛り上げるように」

自らが手引きした男を呼び招き、
潔癖な白い手袋に覆われた指先がその背をなぞり上げる。
語りは台本を読むように明晰で、滔々と流れ──

「彼はジェラルド様にご提供頂いた"開発品"…
どうぞ傷を付ける事の無きようお願い致します
…ああ、怯える必要はありません。彼に獲物を害する意図は無い
ただ、そう、『食事』を求めているだけなのです……」

無機質な仮面、その奥の無感情な虹彩はそのままに

「──では、いってらっしゃい」

うっそりと囁いて、
その背を押した。


その力はそれなりに強く、そして唐突だった。
恐らくは、
殆ど四つん這いになる形で
この悍ましい生物に
あなたはその身を預ける事になるだろう。

筆舌に尽くしがたい“天使”の誕生を目の当たりした心の瑕に、漸く平静が齎されてきた中、主役は舞台の中心へと導かれる。

「……」

客層が変わり、歪んだ歓喜に満ちていた異色の双眸が、かつての落ち着きを一応は取り戻している。
怠惰を表す彼を見ても、御目当ての演目に沸き立つ客を見ても、無感情にそこに立って。下手な抵抗や動揺は、無闇に観客らを喜ばせるだけと知っているから。

不意に背中を押されると、僅かに眼を見開いて。何かを思う前に──待ちわびた獲物を、夥しい数の触手が我先にと受け止めた。

腕と脹脛に、粘液を纏わせたソレらが何重にも絡みつき、服の隙間を見つけては何の抵抗もなく入り込んでいって。哀れな被食者の肌を伝って淫靡に体液が伝り落ちていく。

それはまるで生物が“御馳走”を前に涎を垂らしているかのようにも、見える。



(触れられた部分から次々と、堪え切れないほどの熱が襲い掛かってくる……ッ、催淫作用、か……!)

仮面をつけられた男の唇は屈辱により引き結ばれ、身体は悩ましげに揺れ、内側からいくつもの触手が服を押し返す光景は、布の下で行われる“捕食行為”を、事細かに物語る。

その生物の食事のために、徹底的に“雄の快楽”が与えられていることを、その場にいる誰の目にも明らかに映るだろう。

序幕も程々に、かちゃかちゃと音を立てて器用にベルトが外される。程なくして靴とズボンが、屑籠のない場で剥かれた果実の皮のように、無造作に投げ捨てられた。
四つん這いとほぼ変わりない形で拘束された従業員の、布の少ない下着は、どちらのものか分からない体液が淫靡に湿らせていて。

最も敏感な部分と、未だに指すら受け入れたことない後孔にも、絶え間なく弄ばれながら触手の粘液が塗り込まれていくのが、乱暴に引き伸ばされる下着の隙間から露わになる。

「くッ、ん゛、……ッ!
 ───ッ、う、ぁあ゛ッ」

強く歯を食い縛っても、暴力的な快楽に声が噛み殺し切れない。観客たちが沸き立つことに対しても、怒り<歓喜>を感じ取れない。気味の悪いほど、身体の負担を減らすように扱われて、酷く調子が狂う──

随分と気に入られたようですね?


逆光を背負い、冷たく無感動な蛇の目がその哀れな姿を見下して
白手袋の指先が貪られる男の顎を掬い上げる。
そして、その指が真一文字に引き結ばれた唇を割り開き
熱い口内に滑り込み、震える舌を抑える。
その隙間から潜り込もうとする触手もあるだろう。

こうすれば、あなたが歯を立てる事などできないと確信している。
別に歯を立てられたってどうとも思わないのだけど。

「けれど…ええ、快楽に悶え、なお耐え忍ぶ姿も魅力的でしょう
ですが、そればかりではならないのです。」

絡め取られ、咥え込まれる被食者のすぐ傍にあっても
"怠惰"がその毒牙に掛かる事は無い。
今となっては如何なる性も宿さないその身体は、
決してそれの"獲物"足り得ないのだろう。

「ああ……これでは彼の表情が窺えませんね
──いいえ、皆様どうかご安心ください。
彼が与えられる快楽に悶え、身を焦がすその様は
舞台後部のモニターにて鮮明にご覧になる事ができます」

また一つ、合図を送る。
それと同時に、舞台奥に設置された大きなモニターに
何処かに仕掛けられたカメラの映像が映し出された。
さあ、そこに映るあなたの姿はどのようなものだろう?

“真実”、を

全部全部全部全部全部思い出しました。

与えられた役割を果たした。

"演者"の仮面の裏で、彼もまた、


無遠慮な指に不満げに唸り、強く噛むことこそはしないものの、拒絶するように歯を立てて僅かに抵抗の色を見せる。
だが隙間から触手の侵入を許してしまえば、狙い通り、粘液の効果で否応なしに力が削がれていく。

「かはッ、ひゅ、〜〜〜ッ!
 ……ッ……ぉ゛ッお゛……!」

口蓋、頬の裏側、舌。思い思いに鋭敏な口内を蹂躙し、粘膜に分泌された液体は徐々に全身を苛み。飲んではいけないと解ってはいるのだけど、突き込まれた数本の触手にしつこく喉奥を叩かれ、ごきゅ、と明確な嚥下の音を鳴らしてしまう。

だらしなく開いた口からは時折、熱を持った吐息と低音域の嬌声が溢れ、身体の屈服が近いことを意思に反して示して。

その精神をも犯し尽くそうと、捕食者は残された衣服さえも次々と奪っていく。

程なくして、撮影機器の前に肉厚な胸板、豊満に揺れる臀部、雄々しい背中や腹筋が、惜しげもなく晒された。女性の持つ柔らかな曲線とは違った、ともすれば彫刻すら連想する程の鍛え抜かれた肉体は、余すところなく触手が絡みつき、形を変え、今や尊厳の欠片も奪われて快感を貪っていた。



それだけには留まらない。まだ肌を覆うものがある。ほんの一瞬の隙を突いて、“触手が仮面を奪う”。身体だけではなく、動揺に揺れる青と白の両眼も、僅かに恍惚に弛んでいた表情の全ても露わになる。

焦燥と、えも言われぬ心細さが胸に走った。
『貸し与えられた従業員の証である仮面を、無意識のうちに身体を覆い隠してくれるものの、最後の砦としていた』
ことを思い知らされ。剰え今の自分はそれすらも無い。丸裸で、産まれたままの姿で、衆目に晒されている。

沸き立つ観客。怒号に、揶揄する声に、淫猥な言葉に──それらが呼び水となり、身を最早物理的に焦がさんと錯覚してしまいそうなほどの羞恥、屈辱と、実に倒錯的な快感が突如身に襲い掛かった。

「ッあ、くっ、嫌、ガッ──!!」

弄ばれるままに身体が強張り、一度目の吐精をする。淫らにコーティングされた触手たちは歓喜して、自身と、獲物の身にそれを塗りたくった。
アイマスクのように、触手が両眼を覆いながら仮面を付け直す。それでもまだ“食事”は終わらない。休むことなく蠢いて、獲物を責め立てている。

いっそ哀れな程に無力な抵抗はもはや甘噛みに過ぎない。
鋭敏に昂りつつある口蓋をやわらかくなぞりながら、
滑らかな手袋に覆われた指がずるりと引き抜かれる。
無意識が唯一のよすがとした仮面を奪われ、素顔を曝され、
そしてみじめに絶頂する男を冷たい瞳が見下ろした。

「──── 一回目。ああ、でも…
彼もお客様も、まだまだ満足されてはいないようです
どうか頑張ってくださいね、テンガン。
それがいつまでになるかは僕にはわかりませんが…」

揺れる瞳も、くぐもった啼き声も、悩ましくも浅ましく揺れる躰も
今この場では決して同情の対象足り得ない。
観客はその姿に熱狂し、更なる辱めを煽り立て、歓喜の声を上げる
そして、"怠惰"はそれに応えるべく、与えられた役を演じるだけ。
縋る事は自由だが、決して誰も助けてなどくれないのだ。

「彼が、そしてお客様が満足するまで……
あなたがどんなに嫌だと叫ぼうと、この演目は続くのです
それに、あなたもまだ足りないでしょう?


絶望は、実に音も無く這い登る。
その生物の纏う粘液は獲物の躰を否応なしに快楽に昂ぶらせ、
そして、その暴力的なまでの快感は
哀れな好餌が"餌"を供する事ができなくなるまで
苛み続けるのだ。

やおらに靴音は鳴り、"怠惰"は嬲られ続ける男の正面を離れる。
そしてその隣へと膝を付き、男の背筋をそうっとなぞり上げた。


絶頂の余韻も引かぬ間に、視界を奪われたまま、只管頭が焼き切られるような快楽を注ぎ込まれて、弛緩した肢体は最早されるがままになっている。
快楽から逃れようと腰をどれだけ逸らしても、何処までも手は追ってくるから諦観する。学習性無力感、ともいうべき反応。

四つん這いの体勢を崩し、倒れ込むことだけは、四肢に絡みつき、縛るものが許さない。ぎち、とその状態で縫い付けて。

“観客のお客様”たちに、より楽しんでいただけるよう、獣が犯されているような痴態を固定して差し上げて。そんな高尚なこと、触手が理解しているはずもないのだけど。

「───ッ、ぐ、ぁは゛っ!
 ……くそ、悪趣味も、大概にッ──ぃ!?」

 背中に指が滑り、走る擽ったさすらも、今は甘い痺れと化して腰骨に走って。股間のモノは詳らかに快感から生まれる欲望を拾って、いきり勃つ。



身体を丸めて荒い呼吸を繰り返し、“怠惰”へ、再び何か文句の一つでも吐き出そうとする。だがその前に、後孔を一回り太さを増した、男性器にも近い形のソレで擦りあげられて思わず口を閉ざした。

体力はまだ余っている。だけど抵抗できるほどの気力はもう無い。散々舐り尽くすような愛撫を受けた窄まりは僅かに綻びを見せていて、熱い視線を感じると呼吸でもするような蠕動をみせて。触手を押し当てられると、いやらしく吸い付くように。
だが如何しても経験の浅い穴は、どうにか異物を押し返そうとしていて。

痺れを切らした生物が獲物を腋から抱え無理矢理に立たせると──

「や、めッ……!っお゛……ッ!!」

──その肉の棒の上に、腰を落とさせた。
自らの体重が重しとなって、引き締まった入り口を優しく、無情に抉じ開けていく。直腸にまで粘液が染み出していき、尻の全てが性感帯に作り替えられていく、ような。

ある程度まで挿入を終えられて、満足そうに触手生物は男の膝の下も支える。四つん這いとは違った、痴態を全て暴き出すような体勢。ゆっくりと突き上げられるたびに、気の狂うような快感が背骨を伝って脳天にまで登っていく。

「その悪趣味さえもを喰らおうとしていたあなたは…
ああ、単なる一時の錯覚でしたか?」

悶え苦しみながらも吼え立てる獣を淡々とあしらって、
焦れたようにも性急な触手の動きとその暴虐に晒される男
抗う気力を失った哀れな玩弄物の姿に、
仮面の奥で、無感動な瞳を細めた。

「ねえ、テンガン」

悍ましくも奇怪な生物に背を預ける形となった男に、
"怠惰"はしなだれ掛かるように覆い被さる。
潔癖な白に覆われた指が、精巧な彫像のような腹筋を撫で上げて
それから、汗の伝う顎をなぞり、頬を寄せた。

「今この時だけは、彼や観客に従順で居た方が
あなたにとっても、楽なんですよ


新たな餌食と早とちりをした触手が首筋を這い回る。
強制的に、けれど蟠る一方の熱にぞわりと皮膚が泡立って
ああ、でも、今はただ、この役に殉じなければ。

だから、

白蛇は仮面をずらし、唇を奪い、その呼吸を呑んだ。

息を詰め、逃がす先の無い快楽を叩き付けられ
耐えようのない熱に打ち震える男の快楽にわななく舌を
やや体温の低く、二叉に裂けた舌がなぞり上げる。

人々を神に背くようにと唆す蛇
或いは、遍くを欺く二枚舌«スプリット・タン»。

職務の遂行に必要なあらゆる処置を受けた
優秀な裏切者、『工作員』の証。

『工作員のラサルハグ』は知っている。
壊れない為には、ただ全てを受け入れるしかない
のだと。

いつまでかはわからない、けれどこの船に身を置くのならば
あなたはそれを理解するべきだ。

メモを貼った。

 




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