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【人】 坊っちゃん バラニ――祝祭の終わり、噴水広場にて―― [夕暮れが近い。 この三日間街に漂っていた熱狂が喧騒が少しずつ、遠ざかっていく。 終わりが近いのだ。 今年の冬の祭りも、賑やかに、そして緩やかに尾を引きながら、いつもの日常へと戻っていく] ……明日からまた仕事だなぁ。 [小さなため息がひとつ、零れる。 今度はいつ、ゆっくりと休むことができるだろうか。 子供たちと話をするのはまた少しお預けになるかもしれない。] (31) 2021/12/14(Tue) 23:41:37 |
【人】 坊っちゃん バラニ[遠くから、声が聞こえる。 傍らの子を迎えに来た母親の声だ。 おかあさん、とその声に応える顔と声は本当に嬉しそうで。 じゃあね、と僕へ振り向いて手を振れば 君にも同じように手を振ってから母親の許へ。 小さく会釈する母親に此方も会釈を返すと、 座っていた噴水の縁から腰を上げて君のそばへ] 昔の話をしてたんだ。 ……遠い、遠い昔の。 まだ、君にも聞かせたことのない王子様のお話。 (37) 2021/12/14(Tue) 23:44:17 |
【人】 坊っちゃん バラニうん。 だって、今の君は親方さん預かりだろう? もちろん、ご両親にもだけどさ。 [筋は通さないとね。 この街の商人としても、男としても。 とはいえ、今から娼館に突撃するほど野暮なことはない。 そんなことをするくらいなら、…ねぇ?] (127) 2021/12/15(Wed) 22:32:34 |
【人】 坊っちゃん バラニ[それから…そうだ] …少し、試させてほしいことがあるんだ。 本当に、ちょっとだけ。 [少し真剣な、だけど悪戯めいた顔をすると、そっと君の前で両手を広げて。 君が、その身体を預けてくれるなら、その背と腰に腕を回して] ……ん、っく…。 [決して格好良いとは言えない一声と共に、君の身体を持ち上げよう。 所謂、お姫様抱っこという奴を] (128) 2021/12/15(Wed) 22:35:03 |
【人】 坊っちゃん バラニ[時間にすれば、本当に十数秒といったところ。 それでも、僕の腕で持ち上げた君の身体を 宙に浮かせることくらいは叶ったはず] ――…。 [僕よりほんの少し背の高い>>1:-115 君の身体を抱き上げたまま、くるりと一回転してみせて、 それから満面の笑みと共にそっと君を地面におろした] ……あまり格好つかないな。 [はは、と肩で息をしながら、それでも。 ずっと自分にはできないと思っていたことができて 喜びは、隠し切れない] 次はもっと、君を抱き上げて街を歩けるようになるよ。 [そのときには、もう少し君より大きくなれているといいな。 君と並んで、格好つけられるくらいに]* (129) 2021/12/15(Wed) 22:36:02 |
【人】 坊っちゃん バラニ――後日談/向日葵―― [あの祝祭の日から一年。 そのあいだに、いろいろなことがあった。 あの日僕にも渡された秘薬の流通が滞り>>176 親方さんは暫くこの街に留まることになった。 (僕にとっては幸運と言えなくもない) そのあいだに僕はあちこちに掛け合うことになる。 親方さんもそうだけど、幼馴染のご両親や兄弟、その家族たち。 それからうちの両親や祖父母にも。 尤も、うちの両親を説得するのはそれほど問題でなかったけど。 何しろ、どれほど良い縁談を勧めてものらりくらり躱し、娼館へいけと言ってもまともに聞き入れない、そんな不肖の息子が自分から相手を連れてきたのだ。 自分たちの代で商売を畳むことを半ば本気で覚悟していた身としては孫(祖父母から見ればひ孫か)まで生まれるというのだから、その喜びようは尋常じゃなかった。] (234) 2021/12/16(Thu) 23:56:28 |
【人】 坊っちゃん バラニ[そうして>>177 生まれてきた子の片方…僕に似た金色の髪の子をポルが、 ポルに似た紫銀の髪の子を僕が抱いて、 街外れのその店まで歩いていく] だから土産は僕が持つってば。もう。 [なんだったら僕がこの子たちを抱っこするから。 そう言っても聞き入れてもらえないのが、悲しいところ。 あの祭りから一年。 『契約』が破棄された影響が少しずつ出てきたのか、 僕は遅い成長期を体験していた。 鍛えればその分、ちゃんと力がつくし、背も伸びる。 もっとも育ち盛りはとっくに過ぎているから 一気に伸びるというわけにはいかないけれど それでも、ポルの背に追いついただけでも十分嬉しい。] (235) 2021/12/16(Thu) 23:59:00 |
【人】 坊っちゃん バラニ[でも] ……えっと、"はじめまして"。 [こんにちは、とはにかむように、 僕は彼女に微笑ってみせる。 ――たとえ、彼女と『俺』のあいだに何かあったとしても それがどのような因縁だったとしても。 僕にとって大切なことは、今だ。 可愛いお嫁さんがいて、 その人と懇意にしている優しい女の人。 そして、僕らの娘が、彼女に懐いていること。 そして、ポルクスの額に口づける その仕草が、とても優しい、親愛に満ちたものであること] (238) 2021/12/17(Fri) 0:00:10 |
【人】 坊っちゃん バラニ[賑やかな遣り取りはそのまま、 僕らや子供たち、そして家主の彼女、 総勢5人の賑やかなお茶会へ。 お邪魔しますとお言葉に甘えさせてもらいながら それから、彼らの話す言葉に耳を傾けよう。 今までいろんな話を彼女や街の人たちにしてきたけれど 今、こうやって二人の話を聞くのが、 この穏やかな空気がとても、愛おしいと感じる] (240) 2021/12/17(Fri) 0:01:18 |
【人】 坊っちゃん バラニ[そうして、そういう楽しい時間に限って 瞬く間に過ぎていくもので。 はしゃぎ疲れたのか、 すぅすぅ腕の中で寝息を立てているクリスを抱いて お邪魔しましたと家路につきかけたとき。 レナが伸ばした先にあったのは可憐な白い花] …。 [この花は、とは聞けなかったけれど。 ―――…贈り物だというそれに、 つい、なんとも言えない顔をしていたかもしれない。 どういう意図を持って渡されたものかはわからない。 それでも、……その花に込められた意味を考えると それは決して軽々しいものではないのだろうと] (241) 2021/12/17(Fri) 0:01:49 |
【人】 坊っちゃん バラニ……今日は、ありがとうございました。 [とはいえ、殆ど初対面の自分が 踏み込もうとするのはあまりに不躾が過ぎる。 逡巡するような間の後に、漸く口にできたのはそんな言葉] ……、………。 ……いつか、巡り会えます。 貴女が、それを望むなら。 [ぽつりと呟いたそれは、 もしかしたら聞こえたかもしれないし 夕暮れに吹く風に掻き消されてしまったかもしれない] (242) 2021/12/17(Fri) 0:03:29 |
【人】 坊っちゃん バラニ[帰り道、すっかり眠っているクリスを抱きながら] ……ポル。 [夕暮れの中、妻の名前を呼んで。 腕の中の娘たちごと、抱きしめよう] …この子たちがもう少し大きくなったら、 綺麗なものを見に行こう。たくさんの、ね。 [かつて、記憶の中の俺や勇者たちが旅をした世界。 アクアマリンやエメラルドの色に輝く南の海も、 西の山脈を越えた先の豊かな穀倉地帯も、一面の花畑も。 君たちに見せたいと想うものを僕はたくさん知っている。 そして、記憶の中だけではなく、 その景色を、いつか君たちと一緒に見に行きたい。 そうして、あたたかな空気と共に、僕らは家路につくのであった]* (243) 2021/12/17(Fri) 0:04:59 |
【人】 坊っちゃん バラニ――後日談/とある行商人との会話―― [君と結ばれて少し後、僕はある人と会っていた。 ポルクスが親方と呼ぶ、行商人の彼。 忙しい合間にどうにか時間を作ってくれたであろうその人に こうしてあらためて会うのはやっぱり緊張した。 それでも、一商人として、そして一人の男として 今回のことに筋を通さなければならない。 彼の弟子であるポルクスを愛していること、 真剣に交際と、結婚を考えていること。 このことを彼もとい彼女の両親と家族にも報告すること。 そして先程告げたことについての了承を求めてから。 彼に、深く頭を下げた] (299) 2021/12/17(Fri) 23:08:36 |
【人】 坊っちゃん バラニ『未来』というのは少し語弊があるかもしれません。 でも、そうとしか言いようがない。 ……彼女と、一緒に生きていたいと思いました。 他の誰でもない、彼女と幸せになりたいと思いました。 臆病者の僕が、勇気を貰いました。 非力で虚弱で情けない自分が、変わりたいと思いました。 何もかもを自分の運命のせいにしていた自分が、 自分が望む未来を生きるために、 ……そのために前を向こうと、そう思いました。 全部、ポルクスのおかげなんです。 彼が僕に向けてくれる、その想いが、 僕にたくさんのものを与えてくれた。 [運命は確かに変わった。 それを確信しているのは、きっと今は自分だけだけど] (301) 2021/12/17(Fri) 23:10:39 |
【人】 坊っちゃん バラニだから、今度は僕が。 僕の意志で、僕の心で、僕らが共に歩む未来を贖いたい。 たとえ反対されたとしても、 僕は自分の望みを違えないし、 ポルクスと共に在ることをやめるつもりもない。 ―――…それが、僕の答えです。* (302) 2021/12/17(Fri) 23:11:23 |
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