84 【R18G】神狼に捧ぐ祀【身内】
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「くそ……頭が、」
ゆらゆらと。
「……ぼんやりする……」
げほ、と喉につまったものを吐き出すように、
軽くせき込んだ。
ぽたぽたと、汗か、涙のようなものが、少し垂れる。
はてさて、仄暗い中でも学徒は何時も通り変わらない。
一枚、一枚と紙を捲る。
「しかし、しかし。成る程。本を読むにはいい場所ですね」
其の様子は、何一つ代わり映えしない。
何時も通りであった。
| 「……ちっ……」 (2) 2021/07/24(Sat) 21:48:54 |
| 「……僕の出番はなし? 僕は要らない子なの? ”神狼様”にとって、僕は要らない子?」
心底不満そうに足を慣らしている。 (3) 2021/07/24(Sat) 21:54:36 |
すく、と立ち上がる。
拘束はされていない。
見張りはいるようだが。
懐から、扇を二本。すらりと取り出し、しゃんと開く。
ひらひらと布をはためかせながら。
躍る。
踊る。
舞うように生き、舞うために生きよう。
不器用な自分の、それが生き様だから。
| >>4 シラサワ 「……はあ。 もう自棄でも起こしそうだよ。 僕、ずっと選ばれるの待ってたのに……」 五十鈴はがっくりうなだれている。 (5) 2021/07/24(Sat) 22:18:50 |
| 弓を弾く音がする。
「……や、ここの、たり、ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ……か。 誰か使ったのか。 まだ伝わってたんだ、アレ」
戻ってきたのはシキ。 ……もし、”それ”をする者が他にもいるなら、気をつけなければならない。 自分も戻されてしまうかもしれないから。 (7) 2021/07/24(Sat) 22:29:37 |
舞う。
舞って。
この島の舞いは、独特だ。
他の地方にない、特有の動き、特有のモチーフ。
それはつまり、何か確たるものに根差している。
舞の中から、それをつかみ取る。
踊りながら、自分の身体に刻み込む。
──遠吠えが聞こえた気がした。
「──……狼、か」
ぽつり、と呟く。
脳裏に浮かぶのは、
神々しく、畏ろしく、美しい。
おおかみのすがた。
| 「……そう。 そうやって……踊ってなよ。 外の奴がこんな事に巻き込まれなくったっていいんだ。
……神狼は、僕が…………」 (8) 2021/07/25(Sun) 17:25:58 |
| 五十鈴はじいっと、その時を待っている。 上の、そのまた上の、更に上の、もう辿れないくらい上の代から、この時を待っていた。 この時のために、この家系は血を伝えていた。 執念だ。
「……僕とあいつ、最後に立ってるのはどっちだろうね? でも、その前に……あいつと勝負もしなきゃ」 (16) 2021/07/26(Mon) 21:48:15 |
はらり、はらり、一枚、一枚と紙を捲る。
残った項目も、後わずか。
「さて、いよいよ大詰めだ。仕込みは重畳」
はらり、はらり、一枚、一枚と紙を捲る。
学徒は静かに、天を仰いだ。
何とも侘しき、土天上。
「さて、最後に笑うのは如何なるものか……嗚呼、小生は犬死こそ御免だが、盛り上げるには充分な事は起きるとも」
「しっぺ返しを受けるか、悪が笑うか、或いは漁夫の利を得たものがいるか……」
はらり。最後の項目で、指が止まる。
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