人狼物語 三日月国


94 【身内】青き果実の毒房【R18G】

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視点:


えむというのはああいうものなのかなぁと思いました。風評被害を重ねるな。

(3日目廊下)

「ありがとう、迷彩」

最後に頭をそっと撫で、貴戸はルームメイトを抱えてその場を後にする。ルームメイトと呼ぶにはやけに優しい手つきで体を掬い、やけに温かな視線を腕の中で眠る少年に注いでいたが。


(3日目続き) >>迷彩

しばらくして蹲る貴方の耳をくすぐる靴音がやってくる。

「待たせたな。お前の行きたいところに送り届けよう。立てるか?歩けるか?」

まだ放置されていたのであれば闇谷の衣服を回収し、几帳面さが滲む手つきで畳んで手提げ袋に詰めた後。
ぽすん、と軽く頭を撫でる手と共に声が再び降ってくる。

貴戸

貴方が再び訪れた頃には、もう少年の涙は引っ込んでいた。
乱雑ではあるが、中途半端に下ろしていたズボンも上げている。
逆に言えば、それ以外はそのままだった。

「……」

行きたい所。
そう言われた真っ先に思い浮かんだのは、
最も行きたくない所だった。


「オレの部屋は絶対行きたくない。
 それ以外だったら、どこでもいい」

あの性悪なルームメイトは、きっとこのことを知れば揶揄うはずだ。
 
加害者

『同じ』になれて良かったな、と。

食堂にて。

普段通りトレーを持つ……わけではなく。その手にはカメラが渡されている。

取り止められた南波を見やり、それから再びカメラに視線を落とし。遠慮することもなく出るままにため息をこぼした。

「……そんなに撮りたそうにしているのなら、俺のを渡してやりたいぐらいだ、南波。
俺は外の人間が喜びそうなものも撮れる器用な奴だと思って二回続けてお前に投票したぐらいなのだから」

朝になっても食堂に来ない。

寝起きが悪い方ではある。今も昔も規則正しく生活してきてない。でも、今日は食堂に来ない。

一人分にしては多い量のサンドイッチや手鞠寿司を持ってきて席に着いた。

端末から号外記事を眺めている。漢字だらけで、母の名前があること以外は殆どわからなかった。

母を愛している。今までも、これからも。

母が二人いる。尤も、母と慕うのは片方だけだが。

3日目迷彩

即答されて頷く。貴方が水面下で何を抱えているかも気付かずに。
貴方と貴方のルームメイトの間で何があったのか知る由もない。だから、単純に人がいるであろう場所は嫌がっているのだという推測しかできなかった。

「分かった。それ以外の場所で休もう。
今お前に必要なのは心と体を休める時間だ」

頭を撫でていた手を肩へ。とんと優しく撫ぜてから「掴まって立つといい」とそっと手を貴方に差し出す。断られてもどこ吹く風。気にすることなく涼しい顔で移動を始めるだろう。

貴戸

「……ん。ありがと」

礼節に欠ける少年としては珍しい言葉だった。
遠慮がちに手を取り、ようやく立ち上がる。鞄を引き摺りながら、緩慢な動きで貴方に続く。
時々、割れた皿の破片を踏んだ。

食堂にて一人分にしては多い料理を二つに分けた後。
自分一人では食べる気が起きなくて、ふとぼんやりと手遊みにカメラをいじりながら食堂の窓の向こうを見やる。

窓からあまり離れていない場所で、二匹のトンボが仲良さそうに身を寄せ合っている姿が目に止まった。

「…………」

カメラの電源を入れた。

蜻蛉の交尾を撮影し始めた。

駆けつけた色んな大人に怒られた。

芸術点の高い美しいお辞儀で謝罪した。「ですがハメ撮りってこういう……」


朝。
朝と言っても完全に朝の定義から外れている時間。
昼。昼である。

今日も罪のないトンボがハメ撮りの刑に処されている。


「…………〜、」

大欠伸。
眠気を隠すこともしていない。
ダラダラのろのろと
ルームメイトの向かいの席へ腰を下ろした。



怒られた。我ながら意表を突く名案だと思ったのだが。ほら、外の人間だって人以外の交尾を見たい気分だってあるかもしれないし……知らんけど。

「……」

虫の交尾の映像を削除し、嘆息する。手の中に収まるカメラがやけに重く感じて、困ったようにとんと爪で機器を小突いた。

撮影、どうしよう。

天丼は如何なものかと思った。

闇谷

「!」

小豆色の瞳がにわかに丸くなる。
けれどその変化も一瞬のこと。瞬き一つ行えば、普段浮かべる仏頂面に戻っていった。

「……暁。おはよう。調子はどうだ?」

軽い挨拶をしつつ、既に取り分けていた手鞠寿司やサンドイッチをずいずいと貴方に寄せるだろう。

貴戸


「……………ん」

寝起きのローテンション。
貴方を一瞥すると、ぐりぐり瞼を擦ってから

「おはよ」

朝飯は食べない派だが
貴方が渡してくれるものなのでモソモソと口にする。



「腰が悲鳴をあげてる以外は元気。」


それを元気と言うのだろうか?

闇谷

「それは元気と言わないんじゃないか?」


思わず口にした。

「……俺の異能が誰かを癒すものであればよかったのだがな。痛みを感じないようにすることは出来ても傷や疲労の回復は出来ない。
今日は大人しく休んでいろ、暁。何か欲しいものがあるなら言うといい。代わりに動こう」

貴方がやってきたのを見て漸く自分も食事を取り始めたが、そのペースは普段と比べて明らかに落ちている。表情こそ分かりにくいが、貴方を心配そうに見ているのが原因かもしれない。

貴戸

ぐるりと視線を巡らせて
食堂内に、元気な最年少の姿を探し
居ても居なくても、んー、と呟く。

「や、いいよ。
 貴戸にはもうかなり助けて貰ってるし
 歩けない程じゃないし………、」

貴方の手を煩わせる程では、と言い掛けて。


「……甘えて良いんだっけ。
 じゃー甘いもん食べたい。持ってきて。」

 なおひー、静かな方がタイプ?
貴方の背中を見送りながら、言葉を反芻する。
『ちょっとだけ』、どうやら『トモダチ』の定義が違うらしい。見方が違うらしい。……あと、なんだったっけ。そもそも、『どうして』だったっけ?

「――難しいねぇ」


小さな言葉を吐き出し、近づいてきた足音と差した影に首を動かして貴方を見上げる。

「おかえりぃ。
んー……ううん。なんにもないや。なんにもないから、見かけたなおひーに声かけたの。お腹も空いてたし。
なおひーは暇〜?……って聞くと忙しいって言われそうだねぇ」

そもそも厳密に言えば今は暇な時間なんて、あってないようなもののはずだが。

端末を操作し、画面を見ていた。

普段なら教誨で使われる部屋に、ニュースキャスターの音声が反響する。
設置されたテレビには、夕方のニュース番組が流れていた。
それをただ眺めている。
観るのではなく、瞳に映しているだけだ。

笑顔のリポーターが、百貨店の催事場から中継をしている。
画面の中は、見たこともない果物でいっぱいだった。

甘いものを物色した。ヌガーsweetを見つけた。

 リョウちゃん
「リョウちゃんだ。何見てるのぉ?」

ひょこりと、扉から顔を覗かせる。
そのまま貴方の返事も待たずに部屋に入り、近づいていく。

「美味しそうだねぇ。食べたいものでもあった?」

リポーターの声と共に切り替わっていく色鮮やかな果物と、賑わうフロア。
こことは無縁の世界を眺めながらそう問いかける。

先日貴方が何をしたか、知らない訳ではない。
それでもこの少年の貴方への態度はいつも通りだ。
だって、まだ自分には向けられていないのだから。

闇谷

「ああ、分かった」

こくりと頷いて席を立つ。
少ししてヌガーを持ってきて戻ってきた。クルミやドライフルーツが混ぜ込まれた一品だ。

二人で食べられる分を盛った皿をテーブルに置き、一つ摘んで自分の口に運ぶ……かと思いきや。
そのまま闇谷へと菓子を摘んだ指を向けた。空いた片手はお菓子の屑が万が一落ちた時のための受け皿として一方の手の下に添えられている。

「食べられるか暁。口を開けるといい」

貴戸

「ん、ありが…………………………
とう?



ルームメイトが望み通りに甘いものを持ってきてくれた。
糖分は脳を回してくれるから好きだ。
朝は食べない派でも菓子くらいは摘んでいる。

ヌガーへ手を伸ばす。厳密には伸ばしかけて止まる。
貴方が所謂──『あーん』をして来ているではないか。


「………? ??」


貴方を見る。真剣な表情だ。
何を考えているんだ、ここは人前だぞ。

「………えっと、自分で食べられる、
 …………………………けど……………」

「……………、」

「……
あっ、
あーん………」


口を開けた。赤い舌が、白い歯が貴方の目に入る。
放り込まれれば、そのまま咀嚼。
もったりとした口当たりが中々美味しい。うん、と頷いてみせた。

カガミン

声に振り返る。いつも通りの態度に安堵した。

「んーん。今日だから見てただけ」

再び視線は画面に戻る。興味も無いのに、少年はニュースを見ている。普段ならばすぐに寝てしまうだろう内容だが、眠気も見せない。

「今日、母さんの裁判なんだ。最後のやつ」

何の感慨も無く、唇を動かした。

闇谷

貴戸高志は真面目である。
馬鹿がつくほど真面目である。
なので、以前された「はいあーん」のお返しをするべきだと思った。
なのでやった。
ただの馬鹿なのかもしれない。

「……。うん、よく食べたな」

力強く頷いた。
その直前、貴方が菓子を口に収めるその刹那、ほんの僅かに自分の唇を引き結んだがそれもほんの一瞬のことだ。

貴方がきちんと食べたことに満足したのかそれからなんてことない様子で自分もお菓子をつまみ始めたのだった……。

 リョウちゃん
「今日って何かあったっけぇ?」

この少年が興味を引くようななにかがあるのだろうかと、隣でニュースを眺めて。
耳に届いた言葉に、貴方へと視線を移した。

「そうなんだぁ。リョウちゃん、仲良いの?」

少しズレた問いかけだ。
鏡沼は貴方の家庭事情を知らない。それでも、最後の裁判でニュースになるぐらいならば求められる罪状はそう軽いものでもなさそうだとわかってもいいはずなのに。

貴戸


「あー………貴戸、人前でこういう事するのは
 見せつけてるみたいで照れるんだが……。」

頭を掻く。
正直満更でもないのだが、やっぱり人目は気になる。


「嫌ではない……………
嬉しい、が、二人きりの時にやってくれ。




フードを引っ張って表情を隠した。
ヌガーを食べる手がたいへん進む。

「………これ美味いな。」

カガミン

「大好きだよ。
 唯一の家族だし、
オレの為ならなんだってしてくれた




注目を促す、特有の短いメロディが鳴った。
瑞々しい果物の断面を背景に、無味乾燥な文字列が表示される。

メモを貼った。

メモを貼った。



……果物はミキサーに詰め込まれると、
粉々に砕かれスムージーへと生まれ変わる。
リポーターが試飲を始めた直後、
画面が慌ただしいスタジオに切り替わった。

若いアナウンサーがスタッフからコピー用紙を受け取っている。
コメンテーターたちにも同じ物が配られているらしい。腰を低くしながら走るスタッフが、カメラの前を横切った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。



「…………」

画面の中の家族が笑う。

「……やっぱりかぁ」

その笑顔を真似てみた。

 
ママ
なおひ〜〜〜!(クソデカ文字装飾略)
「あ〜。だから料理してる人、多かったんだぁ。……オレはここでしたい事、あんまり浮かばないなぁ」

いつもと変わらぬ間延びした声を出して、にこにこと見上げる。視線がかち合うことはきっと、なかった。

そもそもこの少年は以前から趣味という趣味がなかった。
読書はたまにしていたけれど、それも話題のため。料理は火も刃物も扱うから避けていた。
故に、鏡沼も貴方と同じくだらっとしたり、今のようにヒマそうにしている誰かに声を掛けている事がほとんどだっただろう。

「ほんとぉ?じゃあお話しようなおひ〜!
普通の事とか好きなご飯の話とか、いろいろ〜」

お茶飲みたいだのなんだの言ったりしながら、貴方と暫しお喋りをしただろう。

 リョウちゃん
そうなんだぁと、返事をする前に。聞き慣れた速報の音に画面へと視線を戻す。
以前聞いたニュースかも。よく覚えていないけれど。苗字が一緒だなぁ。
―――死んじゃうんだなぁ。

「あれが、リョウちゃんの?」

視線を貴方に戻す。
貴方の笑顔を見て、へらっと笑った。

「似てないね」


―――切り替わった画面の中で、海を見ながら『家族』が笑う。
先ほどの女性と隣の少年のようだった。
偽物の家族はどれだけ寄せても、本物にはなれない。
本物の家族はどれだけ忌み嫌われても偽物になれない。

「なんだってって、どんな事してもらったの?」

まだ外の人々に気付いていない。気付いても、口にする言葉は何も変わらない。

カガミン

そりゃそうだよ、他人だもん


目線はテレビに向けたまま。

「でも血の繋がった家族だよ」

口角は上がったまま。

「どんな事……うーん、たくさんあるからなぁ」

コマーシャルはまだ続く。夕方という時間帯故か、家族向けの内容が多かった。
スーパーで買い物をする家族。
新居で暮らす家族。
食卓を囲む家族。
全ての笑顔が、似ていない。



それでも少年は笑う。

「ね、カガミンはさ。
 どんなオレのことも
友達
って言ってくれる?」

「仲良くしてくれる?」

大人たちからの口止めは、少年にとってあまりにも曖昧だった。
母の罪を言うなとは言われていないし、
己の異能について言うなとは言われていない。

……それは明言されていないだけで、全て言外に示されていたが。
そんな遠回しな言いつけが、少年に伝わる筈もない。

 リョウちゃん

「やっぱりぃ?そうだよねぇ」

画面の中で『家族』が笑う。

「血が繋がっていたら、他人にはなれないんだよ」


少年もいつものように笑う。

「ふぅん。ずっと一緒にいたの?」

いちいち数えていられないなら、他人同士で長く一緒にいたのだろうかと。そんな軽い問いだ。


そして貴方の問いに、にこやかに口を開く。

「―――前も似たような事言ったけどさ、」



「オレに害がないなら」


「オレはリョウちゃんの事、
『トモダチ』
だって言い続けるよ。
『トモダチ』
は仲良しなんだから、仲良くするのだって当然じゃん」

害があると、判断されたなら。
貴方のカテゴリが『それ以外』に分類されるだけだ。
そうして少年の世界はこれまでと変わらず回っていく。
この少年の世界では、既に『親』と世間一般で称される2名はいないものとして扱われている。

カガミン

「そっか、そうだよね。ヘンなこと聞いてごめんな?」

貴方に顔を向ける。
可笑しそうに笑って、また正面を向く。

「オレね、いつも誰かの身体にいるんだ」

「その身体ね、母さんがいつも用意してくれてた」

「母さんはすごいんだ」

チャンネルを回す。既にどのチャンネルも似たようなものだ。
目的の内容を見つけたのか、リモコンから手を離す。
その番組では、犯人の動機についての解説がされていた。
貴方にちら、と目線をやる。
見ろ、ということらしい。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。



「別に誰の体でもいい。
 ……ああいや、今より小さいのはヤダな。
 今より大きい体なら、誰だっていいんだ」

椅子に背を預け、僅かに遠くなった画面を眺めた。

「もしこの身体を着替えたくなっても、
 カガミンとカガミンの友達には手を出さない。
 約束するよ」

少年の言い分を信じるなら、相手は誰でも良いのだろう。
わざわざ知人友人に恨まれる人間を選ぶメリットもない。

『リョウちゃん』

いつも誰かの身体に
いつも用意して


―――あぁ。
本当に
『血が繋がっていない赤の他人』
『血の繋がりのある家族』
……あるいは『そうであった』のだと。
理解できた。
なんでだっけ?

理解した。
きっと些事だ。


促されて視線を移したテレビから流れる音声を聞く。
貴方の声を聞く。思考に結論を出す。

「そっかぁ」

「それならいいや。心配しなくても、リョウちゃんは『トモダチ』だよぉ」

へらっと笑った。
鏡沼創の認識している『トモダチ』のようなものだと、理解をした。
その上で、自分に害がないのならと貴方を容認した。

「……その身体、今はもう『リョウちゃん』だけ?」

闇谷

指をぴたりと止め、貴方の様子を伺う。
フードを引っ張る仕草を見やりながら脳裏で誰かの声が蘇る。

……本当なら恋人同士がするようなことで、してるのが誰でも、
 見たら恥ずかしくて、見られたら恥ずかしくて、
 二人だけでするはずの秘め事で。


「……ああ、すまない。配慮が足りなかったな。
次からは二人きりの時だけにする」

一度菓子を置いて淀みなくそう答えた。

……ああ、もしかするとこれも秘め事にするべきことなのだろう。暁には悪いことをした。
……。
………………?


何かが頭を引っかく。引っかくが、その正体が掴みきれずに思わず小さく首を傾げた。それも些細な事でしかなかったから、すぐに貴方の話に耳を傾けることにしたが。

「これか。厨房を覗いたら最後の一皿だったんだ。食べ足りなかったらまた後で頼むとしようか」

なお、この後どこかの参加者によって白と黒のヌガーが振る舞われる事になるが……二人は果たして手に取るのか。それはまた別のおはなし。

貴戸

フードは引っ張ったまま。
その奥では頬を赤らめ、視線を泳がせる。

「…………
 …………………
 ………………………その、
 
まだ不慣れで、悪い……。
お前、と、慣れていけたら……良いと、思ってる………。


配慮をさせたい訳でもないのだ。複雑。
照れを飲み込むのに精一杯で
貴方の様子には気付かなかった。



ヌガーのおかわりが欲しい

貴戸

「いやもう食べ足りないな、ヌガー食べよう。
 
絶対食べよう、今すぐ食おう。頼もう。
頼んでくる……っ、から……!」



あからさまな照れ隠し。
腰なんて気にしていられない、立ち上がればすぐに厨房の方へ出向く。
別のお話にはさせないぞ。




「………あったから、持って来た。
 補充が早いな………。」


持って来ながら一つ摘み、白黒のそれを咀嚼。
じきに46%ほど効果が現れないだろう。

闇谷

「???ああ、分かった。
暁、そんなにあのお菓子が気に入ったのか……覚えておくか……」


厨房へと立ち向かう貴方を見送った。あまりの勢いだったので目はまんまるだし首はこてんと傾いた。堅物人間のテンションだけ置いてけぼりだ。

それからしばらくしてやって来た貴方の皿に視線を注ぐ。
先程自分が持ってきた物と違う見た目に、少しだけ興味が芽生える。

「うん?随分早い補充だな。だが先程俺が持ってきた物とは些か中身が異なるみたいだな。味も違うのだろうか……」

続くように菓子を手に取り、口へひょいと運んだ。
すぐに効果はやって来ないが、後ほど18%発情するだろう。

貴戸


「ん、さっきのと違ったか?
 まあ、俺はあまり味の違いが分かる人間でもないし、
 美味ければ良し。甘いと尚良しだ。」


そもそもヌガーが特別好きな訳でもない。
自分が和菓子を好む事は、貴方も知っているだろう。

……ちら、と端末を一瞥。
そういえば貴方は、今日渡されたであろうカメラをどうするのか、と思案して
やっぱり食べるスピードを上げるのだった。

闇谷

「色合いなどが微妙にな。違うと思うが、どちらにせよ満足いく味なら問題ないな」

貴方が和菓子を、特にみかん大福を好んでいることは覚えている。だからこそ、ヌガーを面白い勢いで食べ進めている光景が少しだけ珍しく映ったのかもしれない。

もう一つおまけに摘みながら、一瞬流れた貴方の視線を追いかける。視線の先にあったのは端末だ。でもそれだけでは疑問も何も浮かぶことはなかった。すぐにお菓子や貴方へと目を向けるだろう。

どれだけ穏やかな時間を過ごしていても、貴戸の手元には朝食の席に置くにしては無粋な撮影機器が異物のように鎮座していた。その存在感はまるで逃れる事はできないと言外から伝えてきているようではあったが、本日手渡された少年はまるきり無視をした。

今は貴方と過ごすひとときを楽しみたい。

あまりに拙い現実逃避かもしれない。けれど、それでもいいと少年はルームメイトであり想い人でもある貴方としばらく他愛もない話に興じるだろう。

腹の奥底に火が灯ることに気付くのは、そして己に課せられた義務に苛まれるのは、まだもう少し先の話。

カガミン

その笑顔を見れば、目を細める。
少年は友人関係に疎い。それよりも、利害関係の方がずっと単純だ。
貴方との関係は、無知な少年にも分かり易い。

「よかった〜。皆さぁ……あ、母さん以外だけど。
 身体が違うだけでオレだって信じてくれないんだもん。
 でもカガミンなら大丈夫だね。またすぐ友達になれる」

心底安心した、という口振りで笑い続ける。

が、問い掛けには目を丸くする。
笑顔が消え、数秒間の無言。質問の意味をすぐに理解できなかったらしい。

「……うーん?どうだろ。
 どっちも……みたいなこと言われたかも。
 身体調べた時にオッサンたちが色々話してたけど、
 何言ってんのかよくわかんなかった」

恐らく。
貴方は、人格について尋ねたのだろう。
しかし意図を測り切れなかった少年からは、ズレた返答が返ってきた。

ひとつの身体にひとつの人格。
この少年の中で、それは当然であり、前提であったから。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

指切りをする。……小指に込められた力は、指切りにしては少し強かった。きっと、不慣れなのだろう。

 『リョウちゃん』

この少年も難しい関係がわからない。
ふたつに分けてしまえば事足りたのが少年の世界だ。
単純な関係で満たせてしまえたのが、少年の世界だ。

「そりゃあそうだよぉ。だって見た目って大事じゃん?オレだって、この話聞いてなかったらまったく違う人が自分はリョウちゃんだ〜って言い始めても、すぐには信じられないもん〜。

でも、もう聞いたから。次はすぐにトモダチになれるねぇ」

言葉を紡げない貴方を、笑みを消した貴方を、見る。

「あはは。言葉が足りなさ過ぎたかな。
その身体にも、前は誰かがいたんでしょ?
そのヒトはまだそこにいるのかってコトだよぉ」

貴方の中心。心臓のあたりを指す。

「リョウちゃんが新しいリョウちゃんになったら、元のヒトに戻るのか。それともなんにもなくなっちゃうのかって思ったの」

『鏡沼創』はひとの保有できる人格はひとつではないと、理解している。

「なおひ〜。今日のご飯……いなぁい」

にゅっ……
の前にちゃんと声をかけつつ、現れた。もしかして:味をしめた。
あれぇ?いないのかなぁ?と食堂の中に踏み込み、片付けられていない机の下で丸くなる探し人の姿を見つけた。

「なおひーいたぁ。
……どうしたのぉ?頭ぶつけた?」

どう見ても大丈夫じゃなさそうだけど、だいじょうぶ?と聞きながら近くにしゃがみこんだ。

 カガミン

「なんにも……?」

砕かれた言葉を、さらに咀嚼する。
少年には常識というものが欠けていて、自分の知識は全て常識だと思っている。
息の仕方を教えるのが難しいように、無意識下の行いを説明するのは難しい。

「元の人には戻らないよ。
 だから母さんは殺されるんじゃないの?」

それは即ち、殺すことと同義だ。
貴方の想定とこの少年の前提はすれ違ったまま、
しかし少しだけ噛み合ってしまう。

「えっとお……んー、アンパンのアンコだけ食べて、中身をクリームにしたら、それってもうアンパンじゃなくね?
 それってもうクリームパンじゃん?ってオレは思う」

少年なりの例え話であるが、不可逆的なものであることを伝えたいらしい。


少年院、図書室。
調べ物をしようとすれば、多数の人間は必然的にここへ足が向くだろう。

くるくる背表紙を見回して、
異能について優しく説明された本から、料理の入門レシピ本、果ては医学書まで。
いくつかめぼしいものを手に取り両腕に抱える。
腰に鈍い痛みが走れば、僅かに眉を顰めながら。



……この重さ、紙の匂い。
電子書籍には無いもの全てが、好ましい。


椅子を引き、すとんと座る。
集めた本を机に置けば、ぱらぱら適当に読んだり、食い付いて瞳を細めたり。
その内容によっては検閲され、一部だけ見えない部分もあった。




それを暫く続けて、は、と息を吐く。
皺の寄る眉間をぐりぐり押した。

気分転換に、と近くの棚の雑誌を手に取れば、
それは先月の日付を刻んだ週刊誌だった。


(ソロール1/2)


最初は、流し読み。
昼のニュース番組でよく見た司会者や、あまり知らない評論家の偏った意見。マスメディアらしいと言えば、そう。

他と比べれば読めない部分が多い
自分とは関係ない世界の書物をだらだらと読み、その内容の殆どはするりとすぐに抜けて行く。


……が。


ふと、見慣れた名がひとつ目に入れば
作業的に動かしていた手を止め、表紙に戻り、最初から隅々まで読み込み始める。


………
……




一冊を読み終われば、
バックナンバーを探す為に図書室内を走り回った。


そうして時間が経ち、
先月の週刊誌ただ一冊だけを手にして、退室。ドアを閉めれば、そこには再び静寂──書物達の楽園が、戻った。


(ソロール2/2)

密かに決めたことを実行する為には情報が必要だ。
普段は外で読むことのなかった分野の本に触れる為にふらりと図書室を訪れていたが、今は明確な目的のもとカメラを入れた鞄を念の為に持ちながら堂々とした足取りでやって来ていた。

途中廊下で一冊本を抱えたルームメイトとすれ違ったが、ただならぬ様子に声をかける事は躊躇われた。
あれはなんだっただろうか。週刊誌?いったい何故……と首を傾げるも、すぐに答えが出ないので考えることを放棄した。どうしても気になるなら後ほど聞けばいい。

静けさ満ちる書物の楽園。
文字を追いかける楽しさと静けさに身を委ねる穏やかさを知ったのはここに来てからだ。今ではお気に入りの場所の一つになっている。
しかし今はそれも不要なもの。迷うことなく一つの棚へ。区分30、社会科学。

指先を泳がせ、それぞれの背表紙をなぞる。

その時だった。

「……っ」


少年の指がぴたりと止まった。めぼしい本を見つけたからではない。もしそうであったなら、少年は顔を歪めてなどいないのだから。

全身を巡る血液に乗って、身体中に熱が広がっていく感覚。腹の底を見えない何かが無遠慮にざらりと撫ぜるような不快感。一度見つけてしまった違和感に呼応するように溶け出していく思考回路。

何も知らない頃であれば気のせいだと一蹴していた事だろう。しかし、今の少年は同じ状態を既に経験していた。

体が熱い。

軽くこぼした吐息も既に重さが乗っている。指が乾いた本の背中を擦るだけでもやけにくすぐったく感じて、思わず忌々しげに顔をしかめてしまう。
調べ物どころの話じゃない。このまま放っておけば、また前のように──

「──っ、……」

桜色の爪がかりりと棚を引っ掻いた。
相手の顔が脳裏に浮かぶ。前と同じ鎮め方ではいけない。彼は少し前に無茶をして、その名残に未だ苛まれているのだから。

幸いまだ頭は回る。体も動かせる。
それなら今のうちに誰の目にも映らない場所へ行かなければ。

来た時よりもやや早足で、少年は図書室を後にするのだった。

普段よりも忙しない足音を連れながら移動した。自室から遠くへ、なるべく遠くへ。

自室から最も遠い手洗い場に転がり込むようにやってきた。前にも一度だけ来たことがある場所だ。

首を傾げた。

貴戸 高志の姿を探している。

『リョウちゃん』
「うん。新しいリョウちゃんになる時、今のリョウちゃんの中は空っぽになっちゃうのか、それとも戻るのかなぁって。
……そっかぁ。それもそうだねぇ。
じゃあやっぱり、もう死んじゃってるんだねぇ」

残念そうなのは声音だけだ。トモダチになれなかった誰かに同情するような人間でもない。
ならあの判決も仕方ないと冷静に考える。口ぶりから察するに、他にも乗り換えているのだろうから。
―――ホジョだっけ?それだけで、済んだんだなぁ。

「そういえば、前に言ってたリョウちゃんの夢ってこれと関係あるのぉ?」

バァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 なおひー
「なおひー?……あ〜」

こてんと首を傾げ、ふと思い当たった。
自身も似たような状態に、先日なったばかりだ。
そして流し見ていた端末の中に。
同じような貴方の姿を、見た覚えがある。


「トモダチのお願いなら聞くけどぉ、そのままで大丈夫ぅ?そのまま収まるの、そこでずっと待てる?」

したくないと先日言い合ったばかりだ。だけど、今の状態では何もしないで過ぎ去るのを待つ事も辛いと知っている。

「どっか違う場所に行きたいなら手伝うし、呼びたい人いたら連れてこよっか?」

いつものような口調で、珍しく気遣いのようなものを見せた。それが望まれるか望まれないかは、わからないけれど。

 カガミン

「うん。ま、空っぽになったら死んじゃうよね」

からりとした感想を返す。貴方の感想は、きっと正しい。
少年は母親の手伝いをしていたにも関わらず、人を殺めたことがない。
息子の為に人を殺める程の母親に育てられたのが、
大事に大切に目を塞がれ育てられたのが、
貴方の隣にいる子供だ。

「夢はね、そう。今までも、そのつもりで動いてたけど。
 ……早くここを出なきゃなぁ」

夕方のワイドショーは慌ただしく、しかし徐々に落ち着きを取り戻していく。
画面の中には、かつての類似事件について言及が始まった。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

メモを貼った。

 カガミン

いつのまにか、視線は貴方へ向けられていた。
どこかの誰かの朽葉色が、何の因果か栗色の髪を映す。
ゆらり、立ち上がる。

「ね、カガミン。オレさ、今スゲー最悪な気分なんだ」

どこかの誰かの指が、貴方の頬をなぞる。

「滅茶苦茶にしてよ。どんな酷いことしてもいいからさ」

どこかの誰かの掌が、貴方の項に触れる。

「痛くてもいい。なんかもう、どうでもいい」

 カガミン
 
「……
『トモダチ』
のお願い、聞いてくれる?」

どこかの誰かの唇が、弧を描いた。

バァン!!!!!!!!!!!!!!!!バキッ……

 リョウちゃん
「いないって事は、死んでるって事だからねぇ」

真っ当な感覚を持つ家族に育てられたにも関わらず、根本から歪んで育ってしまった少年はいつも通り。
貴方の話を聞いても緩やかな笑みを浮かべている。

「外でしかできない事なんだぁ?」

―――画面越しに声が響く。
あぁ、似たような事を話していたなと。
コマーシャルに切り替わるまでの話を聞いてぼんやり思った。

やっぱり、ヒトは普通じゃない事を怖がって。
なにかと理由をつけて離したがるのだ。

リョウちゃん
『普通』を過ごす子供達へと映像が切り替わったと同時に、横から物音が聞こえた。

こちらを見下ろす朽葉色が、伸ばされる手が見えた。

「そうなんだ」

上を、下を。触る手つきが何を意味するかなんて。
ここ数日ですっかり学習してしまった。

「痛いの、あんまり好きじゃないんだけど」

叩くと、自分の手も痛いじゃん。
いつものように軽い口調で言葉を紡ぐ。

『普通』じゃない子供達は、机の横で微笑みあった。

『トモダチ』

「でも、オレが痛くないならいいよぉ。
『リョウちゃん』
のお願い、聞いたげる」

ここでするの?と声をかけて、渡されていた鞄の中身を思い浮かべる。
……どれを使うんだっけ。挿れる側は初めてだ。初日に見たビデオの中身もよく覚えていない。

リョウちゃん詳しそうだから、やってもらおっかな?
自分で準備させるってプレイもあるって聞いたし。

そんな事を、考えて。
朽葉色をじっと、見つめた。

 『トモダチ』

テレビの向こう側はどんな世界だろう。
想像してみても、複数本のケーブルと埃っぽいテレビの裏側しか思い描けなかった。

「叩くのが嫌だったら殴って。
 殴るのが嫌だったら、んー……鞄にさ、道具入ってたよね。
 それ、何でも使っていいから」

最後の言葉を聞けば、周囲を見渡した。誰もいなければここでもいい。

「……」

視界の中に、黒髪の男を二人見る。
背丈の近い男を見た瞬間、自然な笑みが浮かび──
上背の男を視界に捉えた瞬間、その笑顔は失せた。

「場所、変えようか。適当な部屋でいいよね?」

液晶画面が歪んで映り込む眼鏡へ、視線を戻す。
鞄を片手に抱えると、先導するように歩き出した。
机と椅子の間を縫うようにすり抜け、出入り口で一度振り返る。
貴方を待っていた。

 『トモダチ』

「殴るのも、痛いじゃん。
んー……わかった。
まぁ、使って欲しいのがあったら、言ってねぇ」

貴方の言葉に頷き、振り向いてようやくこちらを見ていた二名を認識した。
同じように鞄を掴み、貴方の後を追いかける。
部屋を出る際に、やっほ〜と二人に軽く手を振って。

そうして、貴方と連れ立ってどこか適当な部屋へと向かった。



普川にだけ笑いかけ、手を振り返した。

 なおひー

「オレだよぉ。
うんうん。わかったぁ。じゃあ動……動くのかなぁ、これ」

近寄ってきた貴方をなんとか立たせて、肩を貸す。

「……おも〜い。なおひー、鞄はちゃんと持っててねぇ」

早々に泣き言を言ったものの、よいしょよいしょと近くの空いている部屋まで共に移動していっただろう。

なお食器はそのままだ。きっと誰かが片付けてくれるよぉ。

>>闇谷

これは少年がテレビを見る前。彼が起きて直ぐのことだ。
とはいえ、時刻はとっくに朝と呼べる時間を超えていた。

小さな背中を丸め、食堂の入り口で足を止める。
そうっと中の様子を窺った。
目的の人物がいないと見れば、別の場所へ向かう。
明らかに人を探しているが、何故だか気まずそうにしていた。

迷彩

昼。食堂。
貴方の姿が無い事は分かっていた。
だからこそ、貴方の姿を見つければ音を立てて椅子から立ち、自身の鈍痛にも構わず駆け寄る。

リョウ!!


貴方が逃げないならば駆け寄り、
少し迷ってから頭部へ手を伸ばす。撫でる。

「昨日は中途半端で悪かった。
 辛かったな。もう平気か……?」

あのお菓子の苦しさは、ある程度理解しているつもりだ。
とにかく、貴方の体調はどうだろう。
それはもう心配そうに、おろおろと貴方を見据えた。

闇谷

貴方の声を聞いた途端、安堵した。直後、自分の行いを思い出す。
咄嗟に爪先は反対側を向いたものの──、逃げるには至らなかった。

「……ツッキーの方が辛かったでしょ」

撫でる手付きの優しさに、昨日交わした約束が繋がった。

「オレはもう大丈夫。あの、……。
 ごめんね。もうあんなことしない。
 ヘンな物も食べないように気を付ける」

恐る恐る顔を上げる。
上手くできるかはわからないが、笑ってみせた。



ところで、と言葉は続く。

「えぇと、
赤ちゃんはできた?

 もしできてたら、オレひとりで育てるからさ……」

貴方の顔と下腹部を交互に見る。
昼の食堂に、少年院ではまず耳にしないであろう問いかけが響いた。

迷彩


辛いか、との言葉には
乾いた笑い声を返して、

「そうだな、今は食べ物に気を付けた方がいい。
 何が起こるか分からないからな……
 信頼できる奴の前で食べるようにする……とか。」

自分でも、それ以外でも。

不器用にでも笑う貴方を見れば、
やっと胸を撫で下ろすことが出来た。
貴方の事がとても気掛かりだったから。

「良い、お前が大丈夫なら。
 失敗を繰り返して、知っていけば良い。……、」


…………。

……………………?

?????????????

迷彩

「待ってくれ何の話だ迷彩。」


視線が己の前で上下して
貴方を撫でていた手が止まる。



「……どうして……そう思った……?」


否定から入ってはいけない。
どうしてそんな考えになったのか探りつつ、

「俺は女性じゃないから赤ちゃんは出来ない……。
 出来たとしてもすぐには分からないんだ、
 一年……くらいか?
 時間を掛けて育んでいくものなんだ……迷彩……。」

性教育の時間。
これからは毎日捕まえて何かしら本でも読み聞かせようかと本気で考えている。

「あと事実どうであれ
 お前ひとりに任せるつもりは
 毛程も無いから安心してくれ………………。」

今も南波に投票したいと思っているぞ。お前ならいいものが撮れるのではという根拠の無い期待だ(?)。

闇谷

今胸を支配する気持ちの名前は、昨日初めて知った。
……許されるのは、嬉しい

て、
いて、受け入れてもらえたように思えるから。

「ん、……ありがと。
 次からは食堂で食べるようにする」

同じ轍は踏まない。でなければ、貴方たちの赦しを無下に扱うことになってしまう。
そんなことは絶対にしない。そう改めて決意した。

闇谷

そんな決意の直後。

「……え、赤ちゃんできないの!?」


リョウちゃん、本気で驚いた。冗談ではなさそう。

「中で出したら赤ちゃんできる、って母さん言ってたから。
 へ〜、だからショーシカなんだ……」

わかってるのかわかってないのか、
深妙な面持ちで頷いている……。
おそらくあんまりわかってない。

「でも、もしできたら育てるの手伝ってくれる……ってこと?」

何故か今だけ二頭身くらいに見える。

迷彩

貴方とルームメイトとの間で何があったのか、
何かがあった事すら知らない。


聞き分けの良い弟分へ腕を回して抱きしめ、
「良い子だ」と囁き、背中を撫でてから離す。

悪いと思って、謝れて、
繰り返さないよう考えを改められる事は
立派だ、と、闇谷暁は思うのだ。


迷彩

「出来ないが?」


出来ない。

「えぇと………身体の違いだな。
 子供を授かる器官を持つのは女性だけだ。
 俺たちには無いから、出来ない。」

そっと自らの腹部を摩って見せる。

「お前が散々遊んだゴムは、
 女性を望まぬ……に、妊娠から守る為の物であり
 俺たちの衛生面も保ってくれている訳だ。携帯しておくと良い。
 少子化は……もっと大きめの社会的な問題だと思う……。」

少し屈んで貴方と視線を合わせる。
分かったか?と問う様は、明らかに保護者のそれだ。


「……
もし
出来たら、取れる責任は全て取る。
 手伝うと言うよりは、
 行うべき義務を果たし、行える権利を行使すると言うか……
 まあ、お前一人にはさせないから安心してくれ。」

闇谷

「うーん、わかった。じゃあ安心だね」

よくわかっていない返事だった。
ゴムなら今も持ってるよ、とポケットから取り出してみせる。
そんな頃合いだろうか。食堂と廊下の間にいた少年の耳に、聴き馴染んだ声が届いた。

軽く身を引き、廊下側へ視線を向ける。
目的の背中に声をかけようとして、噤んだ。
上背の男と話していたから。



何を話しているのだろう、と思ったその時。
背後からでも、明らかに殴られたとわかった。

──テメェ!
何やって、」

咄嗟に出た怒声が、一歩踏み出した足が、止まる。
殴られた張本人から、つい先日聞いたばかりの話を思い出す。合点が入った。


「……、…………」

長く、長く息を吐く。強張っていた肩から力を抜く。
何を話しているかまでは、聞こえなかったけれど。
何となく、予想ができる。
それでも。
視線は、上背の男を睨み付けたままだった。

>>暴行現場

聞き馴染みのある声を持つ人が、聞き馴染みのない勢いで叫んでいるのを耳にした。
普段通りの堂々たる足取りでやってきた少年は、ただならぬ空気の片鱗を拾い上げ 眉を顰める。

「…………迷彩?」



迷彩、絶対分かってないなと思った。
そうして貴方を見送ろうとして────物騒な物音。激しい怒声。


「ッ
リョウ!

 一体何をそんなに…………、」

慌てて駆け寄って、その場を見た。

優しく頭を撫でてくれた人物。
食べ物を共有した人物。
可愛がっている弟分。
全員が異様な雰囲気を纏っていて、これは一体どういう事かと視線を泳がせる。


「……、……大丈夫か?」

一先ず。
迷彩が飛び付かないかも心配だが
殴られていたらしい普川へ寄り、
はらはらと顔を覗き込むだろう。

その場の様子を静かに観察している。その顔には表情が欠片も浮かんでいない。

何とは言わないけどふみちゃん人気だねぇと思いました。

>>暴行現場

普通ならば、被害者に見える普川に駆け寄るのが当然だろう。
しかし少年は鋭い眼差しのまま、怒気も隠さぬ声色を響かせた。

「なおひー。
 ソイツに殴らせるぐらいなら、
次からオレに頼んで


親しい人間へ語るにしては凄みの効いた、
嫌いな人間へ語るにしては奇妙な言葉。

自分でもどうしてこんなに腹立たしいのか、よくわからなかった。
普川に対する怒りはない。
自分の夢を嘲った、あの男の一挙一動が苛立たしいのは確かだ。


「……ツッキー、…………いや、いいや」

事情を説明しようとして、優先順位を決めた。
彼のどんな言葉も自分の友人に聞かせたくはない。

……黒塚と普川達 の間へ、割り込むように立った。
庇うように二人へ背中を向けたまま。
正面に立つ、黒い双眸を睨んだ。
自然と真上を見るような体勢になり、どうしても首が痛む。

「もう終わっただろ。帰れよ」

自分がこんなに低い声を出せることなど、知らなかった。

>>現場


「………………えっ?
 肉豆腐……パン………………?」


何も無かったとでも言うような普川。
退屈そうに欠伸をする黒塚。
怒りの感情を隠しもしない迷彩。


そのどれもが、自分の普段見ている貴方達と違っていて
『いつもの』からかけ離れた全てが、信じられなかった。

           ここに平穏はないと、
                理解していた筈なのに。




一歩、後退り。
二歩目は、足が動かなかった。

本当は少し怖い。ただの強がりだった。

強がるのが上手くなった。以前に比べれば、ずっと。

フードを被った少年を見やり、その場を静観していた者はようやく動き出した。
藤色が揺れる。いつも通り、変わらずゆったりと。

「……暁」

とん、と名前を呼んだ少年の肩を軽く叩き。
それから、続けて口を開く。

「迷彩。普川先輩。
もう夕飯の時間だ、夕食を食べに行くぞ。移動するなら俺たちの方だ。行こう」

「黒塚。眠いのなら仮眠でも取ってこい。その欠伸をなんとかしろ」

その声色は揺らぎなく。ただ静かに、淡々と紡がれる。感情を殺して周りを見るのは慣れていたから。
言い終えるや否や、フードの少年の手を取って歩き出そうと踵を返す。名前を呼んだ二名にも小豆色の視線を向けて、どうするかを眺めながら。

暴行に関わる二人が普段のままで、最年少が怒りを露わにし続けては状況は悪化していくだけだと判断した。

故に、彼らを一度引き離そうと試みる。彼らが話し合いを望むなら、止めはしないが。

手を取られれば、されるがままに。

「黒塚、」 空いた方の手を伸ばして

その手を下ろした。

>>暴行現場

「…………」

「……わかっ、た」

冷静な、もしくは淡々とした声が鼓膜を揺らし続ける。
それが何だか寂しく思えて、怒りが少し和らいだ。

結局大きな背中が見えなくなるまで視線を送った後、
踵を返し食堂へ向かう。

人を憎むのは、こうも遣る瀬無いのだろうか。
不特定多数を憎んだことはあれど、
誰かひとりに対してそんな感情を抱いたのは初めてだったから。

「ごめん」


その言葉は、誰に対してか。
小さく溢し、食堂へ入った。

椅子に腰掛ける。いつも以上に姿勢が悪かった。

>>普川

最年長の少年と寡黙な少年の暴行現場を見てしまった後の話。
食堂。または、そこへ向かう途中か。
兎に角一緒にいるだろう迷彩少年や闇谷少年の耳には入らないよう距離を取った隙に、最年長者へと詰め寄って声をかける。

「普川先輩。少々よろしいですか」

表情はいつもの仏頂面のまま。極めて落ち着いた様子で、貴方にしか聞こえないであろう声量のまま話を続ける。

「……事情を話したくないのであれば無理に聞きませんが。黒塚に殴ってもらうよう頼んだのは、貴方にとって必要だったからしたことなんですよね?」

>>【食堂】

とは言え、食欲もあまりないらしい。
海鮮鍋foodをゆっくりと食べ進めている。

「……あの。黒つ、アキちゃんとは何ともないから」

「急に怒鳴っちゃってごめん」

ルームメイトの呼び名を言い直し、再び謝罪を口にした。
明らかに何かがあったが、それを言う気はあまりないようだ。

以外に食欲があった。でも魚がいっぱい入っていたので、食べにくそうにしていた。

何なら野菜もあまり好きではない。最早苦行だった。

>>食堂

これは食堂に来た貴戸高志。
どこかの誰かさんのワクワクキッチンにより2回もえらいこっちゃになったので、もう食堂の食べ物は信じられなくなってきた。
ということで厨房を借りて夕食を作ることに。特別上手と言うわけではないが、レシピがあればそつなくこなせる少年だ。

白米にじゃがいもとにんじんの味噌汁、更に肉豆腐にもやしとツナの酢和え。デザートにしゃりしゃりの梨を切ってご用意。それを二人分持ってきた。

片方は闇谷に。もう片方は自分へ……と思ったのだが、迷彩の箸の進みが遅いことに気付くと肉豆腐の皿を少年の前に差し出した。

「迷彩。その鍋は嫌か?俺のものと交換しよう。此方に渡せ」

てきぱきと色々動いている。話は闇谷が聞くだろう……なんて丸投げしながら。

>>【食堂】

一人で去っていく黒塚にかける言葉が見つからないまま、
手を引かれてそのまま食堂へ。

普川の方へは、ルームメイトが向かっている。任せて良いだろう。


ゆるりと席に着いて、暫くして、
ルームメイトが手料理を運んできてくれる。
先程話したばかりの肉豆腐だ。

「……俺は、
 迷彩が何もなく怒鳴るような奴だと思わない。」

それと同時に、黒塚も。
何もなく誰かを殴るような奴ではないと思う。

「無理に聞くつもりは無いが、
 俺がお前を心配している事だけは覚えておいてくれ。」

味噌汁を啜る。

「……部屋、帰り辛くないか?
 とりあえず今日はうちに来るか……?
 
このじゃがいもの味噌汁美味いな……。

暴行現場を見た。
集まってなにやら騒いでいるのも。

みんな大変だなぁと、他人事のように思いながらそれを眺めていた。
だって他人事だもの。
自分に振るわれなければ、何が行われようと構わなかった。
……あ、でも早く仲直りしてもらった方が変な空気にならなくて楽だなぁ。

そんな事を思いながら皆が解散していくのを確認して、ちょっと遅れて食堂へと向かった。

>>【食堂】

「うん、じゃあ、お願い」

肉豆腐を差し出されれば、 素直に応じた。
本当は豆腐もあまり好きではないが、魚や野菜に比べればましだ。
皿を持ち、まとめて二本掴んだ箸で掻き込むように食べ始める。

かけられた言葉には咀嚼をしながら小さく頷いた。

「部屋はもうずっと帰ってないよ。
 テキトーな空き部屋使ってるからヘーキ。
 二人の邪魔にはなりたくない」

ずっと、と少年は言うが、企画が始まる前までは当然自室で寝ていた。
空き部屋で寝ているのはここ数日の話だとわかるだろう。
数口飲み込めば、重い口を開いた。

「……何もなかったんだよ。向こうにとってはさ。
 だから余計にムカつくっていうか。
 オレの気持ちが、どこにも存在してないみたいで」

崩れた豆腐を見つめながら、ぽつりと呟く。

漂ってきた臭いに(´・д・`)な顔をした。

>>【食堂】


「邪魔な訳あるか。
 ……寂しくないか?」

な、と、ルームメイトを一瞥。
からっぽな空き部屋で、彼は一人何を思うのだろう。
そんな勝手な想像だけが頭の中にある。

言い忘れていたいただきますと有難うを告げて
箸先を行儀悪く迷わせ、豆腐を割いた。


「……何かあったんだな。」

きっと何か、迷彩が大切な話をして
黒塚がそれを無視でもしたのか。
何にせよ、タイミングの悪い事故……のようなものか、と
一先ずは気楽に捉えた。
大きなことが起こっているとは、あまり考えたくはなかった。

>>【食堂】

「邪魔じゃないなら、うん。今日はそっちで寝る」

温かい手料理など口にしたのは、ここに来てからだ。
きっと栄養もあって美味しいけれど、それでも何かが足りない気がした。

「でも寂しいのは、今に始まったことじゃない」


友人に作ってもらった食事を残すのは気が引けた。
調理に割いてくれた時間を無かったことにするのと、同じだと思うから。
薄く色づいた野菜を、肉と一緒に食べ進めた。

「そう。オレにとっては、何かあったんだよ」

貴方に心配はかけたくない、という気持ちはある。
だから、何も心配いらない。
そう意味を込めて、短い説明をした。

「……夢の話、した。
 そしたら、笑われた。それがムカついた。そんだけ」

大人が禁じた、愚かな夢だ。
しかし少年にとっては、ようやく見つけた生きる希望だった。
本当は願っている。再び元の生活に戻れることを。
本当は期待している。もしかしたら、自分たちが許されるのではないかと。

世界はそんなに甘くない。
子供は知っているつもりで、ちっとも知らなかった。

>>【食堂】

「………良いよな?
 今日だけと言わず、いつでも。」

言って、気付く。
勝手に決めても良いものだろうか。ルームメイトへちらりと視線を送る。
布団は……近くの部屋から持ち込んで来ても良いだろう。そんなことを考えつつ。

「……煩かったらすまん。」

自分は何とも思わないが、ルームメイトの声が大きい。
……寂しさは紛らわせるのではないだろうか。





「…………、」

貴方の夢。
かつて自分勝手に口を挟み、怒らせたもの。
背中は押せないが、貴方の思いはよく理解していた。

「悲しいな。」

彼のために、何が出来るだろう。
探偵だ何だと名乗っておいて、余計なところで飛び込む癖に、いざ目の当たりにすると足が止まる。戻れないな、と、自虐の言葉と共にもやしを飲み込んだ。

「話して、笑われて……何か言われたか?」

普川

「そうですか」

手短に反応する。殴られる事を求めた理由に関してはその程度だった。
貴戸がもっと反応を見せたのは、その先。貴方の謝罪に関してだった。

「……俺が切り込みたかったのはそこです。
事情はどうあれ、殴るという行為は良い顔をされないものだ。己が当事者じゃないとしても。
だから、もし求めるなら人の目に触れないところでやる事をお勧めします」

目的であった話を伝える。話し終えるまで眉根は八の字に下がり、些か困惑の色を滲ませていた。

「…………先輩、謝り慣れていますか?」

ルームメイトの視線 には快く同意、賛成を見せた。

迷彩を歓迎している。断る理由が無いし、心配する気持ちがあるのは相方と同じなのだから。

>>【食堂】

「うるさい方がいい」

家に誰かがいるのが当たり前だった。
それでも時々、留守番をしたことがある。
テレビを付けたまま、硬い布団で寝たことを覚えている。

悲しいと言われれば、ややあって頷く。
あの時は恐怖心を覆い隠す為に、怒りを募らせたけれど。
怒りと恐怖の下に、悲しみがあったことに今気が付いた。

「え、うーん……」

何か、と言われて思案する。
あまり思い出したくない記憶を、隙間から少しだけ覗き込む。
黒い瞳と目が合って、すぐに目を逸らす。

「母さんに報いる気がないんだな、とか」

「だったら今ここで死んでも同じだ、とか」

――――なあ、そうは思わないか。リョウちゃん?

少年の夢は、そう言われて当然の形をしていた。
ルームメイトの言葉は全てが正論だと、きっと誰しもが納得する。
それが正論で生きていけない子供の神経を逆撫でした、ただそれだけの話だ。

普川

殊更困った顔をした。少し考える為に瞼を下ろす。小さなため息を一つついて、それから瞼を持ち上げる。

「そうですか。
……先輩。その言葉に誠意がこもっていようがいまいが、口から出た発言には責任がついて回ります。
別に俺は、貴方が自ら殴られるのを求めることに思うことは特にありません。先輩には先輩の事情がありますから」

淡々と言葉を紡いでいく。

「……ただ。こうして口先だけでも約束してくれたのに。それを破ってしまったら。……いいや、破るだけなら別に良い。
それで万が一、暁が再び困ってしまうようなことがあれば」


「俺は貴方をもっと叱ります。
覚えておいてくださいね」



「…………はあ」

ため息が止まらない。

「……俺は本当は、こんな事を言うつもりじゃなかったのに。
…………俺は先輩に、お礼をいう用事があったのに」

迷彩と闇谷が廊下で重なりあっているのを見た日。
真意がどうであれ、普川の言葉によって背中を押されて行動することができたのだ。律儀で生真面目な少年はその件に関してあとできちんとお礼を言おうと考えていた。

それなのに、今こうして飛び出した言葉はなんだ?感謝とはまるきり違う棘を含んでいる言葉ではないか。

「…………はあ」

ため息が止まらない。
的外れな言葉を耳にしながら、自身も食堂へ向かった。

貴戸 高志へ感謝の意味を込めて頷いた。 

>>【食堂】



がたん!

音を立てて立ち上がる。

「───ッごめん、」


咄嗟にそう、口から出た。
苦しい記憶を開かせて、
あまつさえ言葉にさせてしまうなんて。

そこまでさせるつもりじゃなかった。
なんて言葉は、ここ以外だって通用しない。
知りたがって貴方の傷に触れた。

悪い、と呟いて再度椅子を引く、座る。

「……同じな訳ないだろ、
 違うよ、違うんだ、リョウ……。
 お前は望まれて産まれてきたんだ、
 そんなことあってたまるかよ……!」

ここには居ない男の言い分も、理解できなくはない。
それでも情のせいか、目の前の少年の事ばかりが大切に思えてしまって
本当に、探偵失格だ、と瞳を細めた。

箸を取り落としそうになって、置いた。

>>【食堂】 

立ち上がった貴方に、少年は目を丸くした。
大したことを話したつもりなど、微塵もなかったから。

死ねと言われたことが悲しかったわけじゃない。
自分の夢を、生きる理由を、
ちっぽけなものだと扱われたことが悲しかった。


貴方の感傷が、理解できない。

「やっぱりそうだよね?
 ここで死んだら、同じじゃないもん」

故に。
的外れな言葉を、そうと気付かず平然と返した。

「でもさ、でもさ。望まれて産まれただけじゃ、」

ほんの数年で見える世界と常識は一変した。
無学な少年でも、大人達が何を言わんとしているかは察しがつく。

「────生きるのを許された、ってことにはならないよ」


これは曲論だらけの少年が学んだ、数少ない正論だ。

少年の言葉の何処かを拾い上げて食事をつつく箸を一瞬ぴたりと止めた。

何事もなかったかのように食事を進める。ふと家族の事を思い出したが、もう関わりのない話だ。

>>【食堂】



口を一文字に結ぶ。
具材が沈殿していく味噌汁の色が、薄くなっていく。

貴方はいつだって変わらず、理解してくれない。
けれどそれで構わない、理解し合うだけが『友人』ではない。

だから。

生きるのに許可なんて、いらない。

 誰の許可が必要で、
 誰にダメだと言われて死ぬんだ。
 もっと好きに生きて、良いんだよ……」

好き勝手に、言葉をかける。

「リョウは、
 誰かに許されないから死ぬのか?」

貴方からそんな言葉が出た事が悲しいと、
そんな想いだけは、知って欲しいから。

「だったら俺は、
 お前が死ぬのを許したくない。」

             
正論なんて、くそくらえ。

闇谷の話の途中で箸を滑らせて落とした。

箸を拾い上げて席を立つ。少しだけ、胸が苦しくなった。

箸ごと手を冷水に浸しながら考え続ける。

 




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新規◎秘話◎

普川 尚久
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溺れたかったのさ

市川 夢助
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犠牲者 (5)

遊城 憲義(2d)
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闇谷 暁(3d)
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かかってこい

鏡沼 創(3d)
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貴戸 高志(4d)
5回 残 たくさん

si俺達は昔から

榊 潤(5d)
2回 残 たくさん

俺は置きで戦う

処刑者 (3)

迷彩 リョウ(3d)
13回 残 たくさん

ギャハハハハ……

南波 靖史(5d)
0回 残 たくさん

ぴよぴよ

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朝倉 弘
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