【人】 「怪人」 ファントム―影街「ヴンダーカマー」― 『忘却』。 彼女の言葉が甘やかな響きとなって頭の中に広がる。 確かに、全てを忘れてしまえばいい。 自らの身に起こった事も、とうに人の身でない事も、自らがした行いさえ忘れて、何事もなかったかのように、舞台へ上がる。 ――全ての痛みを忘れ去って、幸せな日々に戻っていく。 ゆっくりと、手が小瓶を握りこむ。 蓋を開けて、口元へと運び、中身を流し込むと、喉が液体を飲み下そうとする――― (126) 2022/11/21(Mon) 23:06:35 |
【人】 「怪人」 ファントム「 ――…がふっ!げはっ! 」すんでのところで、薬を飲み込むことは無かった。 うずくまり、喉に流れ込んだ薬を吐き出す。 なぜ、みすみす薬を吐き出したのかは、己にもわからない。 土壇場になって我知らず怖気づいたのか、心の底では「魔女」を信用しきっていなかったのか――はたまた別の何か。 (127) 2022/11/21(Mon) 23:06:53 |
【人】 「怪人」 ファントム「…クリスティーヌ」 止むことのない怒りと引き換えにしても、忘れてはならないものを思い出して、踏みとどまったか。 (128) 2022/11/21(Mon) 23:07:04 |
【人】 「怪人」 ファントム「すみません、店を汚してしまった。」 なんとか、息を整えて立ち上がる。 無理やり吐き出した影響で、肺がずきずきと痛んだ。 「…代わりに、一つ注文が出来ましたよ。 何の意味もない、子供騙しのような薬を一つ下さい。 例えば、しばらく笑いが止まらなくなるとか、一日だけ猫ひげが生えるとか、しっぽが生えるなんて…。 そんなものがいい。 コイツの寿命に、忘れ薬と交換に出来る価値なんてないのだから。 そうでしょう?」 『彼ら』の命に、自分の記憶と引き換えにする価値などない。 だからこそ、くだらない彼らの命に見合う報酬を魔女に求めた。* (129) 2022/11/21(Mon) 23:07:25 |
【人】 「怪人」 ファントム――現在/中央広場 ユスターシャと―― 彼の緩んだ頬>>111を目掛けて、人差し指がぷにっ!っと突き刺さる。 「珍しい魂の持ち主のようだから様子を見に来たが。 この街を気に入ってくれたようで嬉しいよ。 その為に、君が払った代償はあまりに大きすぎるがな。 」最期の一言だけは、彼に聴こえない様に。 彼が、どういった経緯でこの街に来たかはわからない。 けれど、この眼に映る彼の魂は、もう…。 (142) 2022/11/21(Mon) 23:44:58 |
【人】 「怪人」 ファントム「君に、この街を楽しむコツを一つ教えてあげよう。 それは『歌う』事だ。 この街の人々はな、楽しい時には歌うのだよ。」 言うなり、靴底を慣らしてリズムを取り、鼻で音を鳴らす。 言葉も、歌詞も必要ない、ただ心が求めるままに音を響かせる。 目線で、彼にも同じように促しながら。* (143) 2022/11/21(Mon) 23:45:07 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a28) 2022/11/22(Tue) 0:14:38 |
【人】 「怪人」 ファントムー追想 『クリスティーヌ』ー 「もっと自由に歌ってもいいんじゃない?」 かつて、とある女性にそう言われた事がある。 身なりも言葉遣いも上等なもの、恐らく上流階級だったのだろう。 けれど、どういうわけか彼女の顔は右半分が焼け爛れ、誰もが気味悪がって、積極的に関わりを持とうとしなかった。 だが、ひとたび彼女が歌声を響かせれば、あらゆる人が耳を傾けて立ち止まる。 まさに、天の使いが降りてきたかの如くだった。 彼女は「クリスティーヌ」と名乗った。 当時の私は、まだ十をいくつも過ぎていない子供で、見様見真似で彼女の真似をしていた。 そんな時に掛けられたのが、先の言葉であった。 (152) 2022/11/22(Tue) 7:33:14 |
【人】 「怪人」 ファントム彼女には、随分と多くを学んだ。 声の出し方ではなく、生きることを楽しみ、心に歌をのせる方法を。 段々と私は大人になり栄誉も金も手に入ったが、それでも彼女の元へ通い続けた。 そうしてあの日も私は彼女の元へ向かった、『彼ら』がつけてきているなど、気づくわけもなく。 (153) 2022/11/22(Tue) 7:33:30 |
【人】 「怪人」 ファントムそうして、あの日。 私は全てを奪われて、表舞台から姿を消した。 ーーけれど、あの日いなくなったのは私だけではなく、彼女も一緒だった。 誰にも顧みられることなく、私以外の記憶から忘れ去られた。 私一人であれば、魂を売り渡すこともなかったろうに。 かくして私は、復讐へと身を落とすことになったのだ。* * (154) 2022/11/22(Tue) 7:38:56 |
【人】 「怪人」 ファントム―影街「ヴンダーカマー」― 「ーー薬の埋め合わせは、近いうちに。 まだ、この店に連れてこないといけない奴らがいるのでね。 貴方にも、損な話ではないでしょう?」 そう、まだ復讐を果たしていない。 彼女に捧げる供物なら、すぐに調達できる。 「カラス、ね。 そうですね、これがいい。 この程度が、今の僕には丁度いい。」 これが、彼らの結末。 実にくだらなくて、無用な薬。 小瓶を懐に仕舞い込んで店の出口へと足を向ける。 さっさと薬のツケを、彼らの命で精算させてもらうとしよう。 ーー程なくして、彼女の店に中身入りの袋が複数届くだろう。 彼が復讐を果たし終えて、報復する相手がいなくなるまで。 (161) 2022/11/22(Tue) 15:16:48 |
【人】 「怪人」 ファントムーーそうして、随分と時が経ち。 すっかり忘れていた薬を飲んだ事で、カラス頭の謎の怪物がラ・コスタ中で歌い騒いだ事は、また別の話になる。 (162) 2022/11/22(Tue) 15:19:11 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a34) 2022/11/22(Tue) 15:31:50 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a35) 2022/11/22(Tue) 15:32:47 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a36) 2022/11/22(Tue) 15:33:52 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a38) 2022/11/22(Tue) 18:23:07 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a43) 2022/11/22(Tue) 22:32:40 |
【人】 「怪人」 ファントム――現在/中央広場 ユスターシュと―― 靴底で石床を叩いて、リズムをとる。 彼の歌をリードし、自分は彼のあとを半拍ほど遅らせて歌い上げる。 今の自分は、彼のフォロワー。 彼の歌を支えて、より歌に込められた想いを強調する。 例え、彼の語彙が拙いものであっても。 例え、歌う事を知らなくても。 きっと、歌う事の魅力は伝わる。 (220) 2022/11/22(Tue) 23:21:44 |
【人】 「怪人」 ファントム「その調子。 大丈夫、一人じゃない。」 伴奏も、歌詞も、楽譜もない。 けれど、ここには彼がいる。 そして、彼には声がある。 歌う事を楽しんでいる。 余計なものは必要ない。 私は、彼に寄り添うだけでいい。 何より、彼の歌に寄り添うのは私だけでもない。 直ぐに、彼も気付いてくれる。 (221) 2022/11/22(Tue) 23:22:36 |
【人】 「怪人」 ファントムその証拠に、通り過ぎていく足音が、少しずつ減っている事に彼は気付いたろうか。 行き交う人々の目線が、自分たちに集まり始めている。 彼の歌に魅せられて、より多くの人が集まり始めている。 ――どこからか別の声が歌に混ざり始めた。 小さな、子供の声。 どこにいるかはわからないが、確かに彼の声に合わせて歌い上げている。 どこかで、誰かがリズムに合わせて指を鳴らし始めた。 彼の楽しげに歌う様子に、誰かが応じている。 「自分も、共にこの瞬間を楽しんでいる」と、言葉を使わず彼に伝えているのだ。 どこからか、リュートの音が歌に重ねられる。 靴で石床を叩く音が、男性の声が、女性の声が――。 彼の歌を中心に、多くの人の歌が一つに重なっていく。 それは、知らずその場に居た踊り子>>218>>219の耳に届いたろうか。 (224) 2022/11/22(Tue) 23:23:17 |
【人】 「怪人」 ファントム――セッションを終えて―― 彼の歌が止まり、人々がまた流れ始める。 まるで何事も無かったように。 けれど、確かに彼は自身の『美』を人々へと刻んだのだ。 「なに、君が楽しんで歌ってくれたおかげで、私も楽しかったよ。 それより、後ろを見たまえ。 早速、君のファンが出来たようだ。」 彼の背後には、手を振る小さな少女。 最初に声を乗せてくれた子だろうか。 彼に向けて、実に楽しそうな笑顔を向けている。 「――私はファントム。 歌いたければ、またいつでも呼ぶといい。」 最期に、それだけ言葉をかけた。 彼が再びこちらに目を向ける時には、きっと影に溶けた様に、私の姿を見つける事は出来ないだろう。* (225) 2022/11/22(Tue) 23:24:00 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a48) 2022/11/22(Tue) 23:35:48 |
【人】 「怪人」 ファントム――中央広場/リュディガーと―― 「私たちのセッション、気に入って貰えたかね? 名前は知らないが、君の事は知っているよ。 いつか、リュート引きの彼女へ作品を渡していたろう?>>92 あれは実に良い作品だった。 彼女の音色を、色とりどりの魚が泳ぐ様子に表現されている。」 こちらに興味を示した様子の彼女>>244へと話しかける。 ――勝手に拝借した彼女の自由帳を手に開きながら。 (250) 2022/11/23(Wed) 10:24:04 |
【人】 「怪人」 ファントム彼女が度々「passione」に顔を出す>>85のは知っていたし、少し前にも舞台を見ていた事>>86は知っている。 チップと共に自身の描いた作品を渡している事も、だ。 故に、こうして迷うことなく自由帳に手を伸ばしたわけだが。 「君は、現実に存在するものは描かないのかい? 美しいものなら、現実にもあちこちに溢れてるだろうに。」 思えば、リュートの彼女へ送った作品も、以前見た別の作品>>14も、彼女たちを直接描いたものではなかった。 だから、なんとはなくに気になったのだ。* (251) 2022/11/23(Wed) 10:24:16 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a58) 2022/11/23(Wed) 10:31:11 |
【人】 「怪人」 ファントム――中央広場/リュディガーと―― ユスターシュとは一旦別れたつもり>>225ではあるが、もしかしたら再度こちらの姿を見つけて、後を追いかけてきていたりするかもしれない、そこは彼次第である。 彼がいないなら、自分の方から彼にまた会った時にでも、イラストを渡しておけばいいだろう。 そう思い、二枚とも受け取ろうとする。 「抽象の為にあえて本人は描かない、か。 なるほど、道理だね。 あぁ、でも、なんだか―…」 その先の言葉は、ほとんど無意識的に発されたもので耳をたてなければ聞こえない程小さな呟きだった。 (288) 2022/11/23(Wed) 19:00:36 |
【人】 「怪人」 ファントム「…すまない、出過ぎた言葉だった。」 絵画の素人が、やすやすと口に出すべきでない言葉を口にしてしまったと、謝罪を述べた。 手渡された金貨とイラストを受け取り、まじまじと見つめる。 「良い作品だ。 大切にさせてもらうとも。」 本心だ、贈られた品を粗末に扱ったことは無い。 ひとしきり礼を言い終えた後、自分もその場をあとにしただろう。* (292) 2022/11/23(Wed) 19:01:03 |
【人】 「怪人」 ファントム――中央広場/イルムヒルトと―― 「浮かない顔だね。 けど、前のように迷っているわけじゃない。 何か見つけられたのかな。」 当たり前のように、彼女のとなりへ腰かけながら声をかける。 彼女に何があったかは知る由もない、けれど何かが変わった事はわかる。 (294) 2022/11/23(Wed) 19:34:32 |
【人】 「怪人」 ファントム「弾いてみればいいじゃないか。 リュートはそこにあるだろう?」 腰掛けていた花壇から立ち上がり、ゆっくりとステップを踏む。 踊るように、軽やかに。 ――けれど、その動きは酷くつたなく、たどたどしく、やがてマントの裾を踏んづけて、地面に派手に尻もちをついた。 「やれやれ、彼女ほど上手くいかないものだ。」 愚痴を言えども、けれど自分の姿を軽く笑い飛ばしながら。 「 『運命は、貴方を居るべき場所へと運ぶ。』 有名な劇作家の言葉だ。 私には歌が、貴方にはリュートが、彼女には舞いがある。 何を迷う必要があるのかね?」 そう、彼女へと問いかけた。* (295) 2022/11/23(Wed) 19:34:51 |
【人】 「怪人」 ファントム弾いてもらいたい歌は、心の中に決めている。 本当は、いつかのバーでのように三人一緒が良かったが、それはそれで今度の楽しみとしよう。 一度、二度と咳払いをして、喉の調子を整えると、ゆったりと歌い上げる。 (314) 2022/11/23(Wed) 21:06:05 |
【人】 「怪人」 ファントムTwinkle, twinkle, little star, きらきら光る お空の星よ How I wonder what you are まばたきしては みんなを見てる 小さな子供に歌う様に、ゆるやかに、のびやかに。 彼女の中で溢れる情熱を沈める為に。 ここに居ない、星を瞳に宿すもう一人の為に。 Up above the world so high, きらきら光る お空の星よ Like a diamond in the sky. みんなの歌が 届きますように どれだけの人が、今ここで歌に耳を傾けているだろうか。 歌に貴賤は無く、聴く者も区別はしない。 皆、心を一つにしているのだから。 Twinkle, twinkle, little star, きらきら光る お空の星よ How I wonder what you are まばたきしては みんなを見てる 歌は、延々と続くだろう。 彼女の中の情動が収まるまでは。* (315) 2022/11/23(Wed) 21:06:21 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a72) 2022/11/23(Wed) 21:10:32 |
「怪人」 ファントムは、メモを貼った。 (a73) 2022/11/23(Wed) 21:14:17 |
【人】 「怪人」 ファントム語り掛ける様に、歌い続ける。 か細く、小さく、けれどのびやかに。 ――私の事を、「鏡のようだ」と彼女は言う。 確かに、ある意味では鏡なのだろう。 相手の心を拾い上げて、歌として表現する。 けれど、肝心なのは歌を聴いた者が何を想い描くかだ。 私が拾い上げて歌に込めた想いを、誰かが受け取り、さらに形を変えて、誰かに伝える。 それこそが、『美』の本質であるのだから。 (322) 2022/11/23(Wed) 21:56:07 |
【人】 「怪人」 ファントム― 歌い終えた後で ― ひとしきり歌い終えた後には、すっかり空も暗くなって星がまたたいている。 珍しい魂の彼と、彼女のリュートと、今日は実に楽しい日だった。 「もう少しこの星空を見ている事にするよ。 毎度、ひとりでに消えてばかりでは芸がない。」 再び花壇に腰かけて、何をするでもなく星空を眺める。 歌い踊る事も楽しいが、こうして自然の『美』に思いを馳せるのも悪くない。 話しかけられることでもなければ、しばらくそうしているとしよう。* (323) 2022/11/23(Wed) 21:56:21 |
(a76) 2022/11/23(Wed) 22:32:53 |
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