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【人】 移り気 ジェイド■コトネの秘密抜き 「────昔、世話になった人が居て。スズネという名だった」 ぽつりと告げれば、何の話?と首を傾げてきたから、ヒキコモリの作り話だよとさらりと流す。 その人は、僕を助けてくれた。 身重の身で、"母は強しよ、ひょろっこい貴方なんて怖くはないわ"と、怪我をして動けなくなっていた僕を助けてくれて。 その時の怪我はけっこう長引いたから(知ってる?銀の銃弾は触れたところが腐り落ちて回復に時間がかかるんだ────なんて説明はしなかった)、子供が生まれて、まだ暫くは共に生活していた。 その人はほどなくして事故で死んでしまったけど、僕はその子供、そのまた子供の行く末はずっと見守っていて。 「でも、大戦が起こった時、彼女の血縁の居所を見失ってしまってね」 ずっと不思議そうな顔をしているコトネに、だから作り話だよと口元を小さく緩める。 ────きっと、その吸血鬼は思っている。 彼女の子孫が豊かで幸福な人生を歩めていると良いなとね。 あの人は、君にそっくりな瞳と髪の色だった。 (1) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 6:04:55 |
【人】 移り気 ジェイド「だから、ね。参考までに聞いておきたい」 「君のただ一つの、叶えたい願い事って────何?」 カピバラに叶えられる願いなら、僕にだって叶えられるかもしれないだろう?* (2) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 6:05:11 |
【人】 移り気 ジェイド■キネイの秘密抜き 「お前は、この世に怖いものなんて、あるのかな」 今日はアレをしようコレをしようと愉快そうな子供に、ぽつりと問いかけた。 与えられるべきものをきっちり与えられ、理解者に恵まれ、独善的に振る舞っていても許されるお前。残酷なまでに、実に実に"人"らしい子供。 発想が飛躍しすぎているきらいはあるが、頭の回転は悪くない。 それに思いのほか性根は善良だし世話焼きだ。 "妄言を繰り返すチューニビョーなヒキコモリ"と仲良くしてやろうと踏み込んでくる程度には。 子供の血を啜るのは好みではないけれど。 赤い瞳と伸びた爪を隠すことなく お前の首筋に牙を突き立てたら、 お前はどんな顔になるんだろうな? その傲慢な表情が絶望に彩られるだろうか。 それとも最後の最後まで現実を見ることなく、僕が巫山戯ていると断じてその微笑みを崩さないだろうか。 夢想はするが、おそらくそれを実行に移す事は無いだろう。 この子供が成長してゆく行き先が、ほんの少し、僕は気になっていたから。 (3) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 6:26:10 |
【人】 移り気 ジェイド「────お前は、悩みや願いとは、無縁なように僕には見える」 あと"退屈"とも縁遠いだろうな。 己で運命を切り開く力がある者が、一体何を望むのか。 嫉妬にも似た感情が胸の端をちりりと焦がす。 「"ヒキコモリ"を脱したい僕には、叶えたいものが、色々あるんだよ」 お前はあるの?無いでしょう? あるのなら、僕に聞かせてよ。* (4) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 6:26:43 |
【人】 移り気 ジェイド■ジェイドの秘密開示 「────"グリーンフラッシュ"って、知ってる?」 唐突に出した単語に、コトネもキネイもどんな顔になったろう。 それは、空気が極めて澄んでいる時に限り、水平線で見られる稀な現象。 太陽が沈む直前、あるいは昇った直後、緑色の光が一瞬きらりと走るのだという。 「僕の髪の色に、似ているんだそうだ」 不老不死の身体を持っていても、難儀なものね? 一生ずっと陽光を浴びることが出来ないなんて、 とても可哀想な事だわ。憐れだわ。 昔々、あの人に言われた言葉。 ここ数年、とにかく退屈で退屈で、したい事、見たいもの、何もみつからなくて。 ふとした拍子に思い出した、"グリーン・フラッシュ"なるものに焦がれるようになった。 それが見てみたい。 太陽と共存する己の色は、自分の髪とはきっと似て非なるものなのだろうから。 (12) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 18:42:44 |
【人】 移り気 ジェイド「僕はそれを、グリーンフラッシュを、見てみたいんだ」 きっと彼らはそんな簡単な事、と思うだろう。 カピバラに頼むべき重さなど持たない、些末な願いにしか映らないだろう。 でも、ねえ、カピバラなら理解できるだろう? 陽の光の下を歩けるようになりたい。 ──── 人間に、なりたい 。彼らの前ではそこまでは口に出せねど、 それが僕の本当の願い。* (13) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 18:43:39 |
【人】 移り気 ジェイド器用に血だけをいただく仲間も世には存在するらしいけれど、僕が吸血すると、対象は眷属になるか死んでしまうかの2択になる。 僕は眷族は作りたくなかった。 だから何人も何人も殺してきた。 生きるためだ、仕方ない。 街ですれ違っただけの女や夜の路地裏で絡んできた男。 それはもう、大勢殺した。 でも"あの人"と出会ってから、思うように吸血できなくなった。 道行く人の瞳の奥に、言葉の端に、ほんの一欠片でもあの人の面影をみつけてしまうと、もう襲えなくなった。 飢えに飢えたところで衝動的に人を襲うこともあったけど、その頻度は徐々に落ちて行き、最後に人を襲ったのは何年前だったかな。そろそろ思い出せなくなってきた。 本当のところ、僕にとっては野菜も果物もただの気休め。 何一つ生きていく糧にはならず、血色に近いものを選んでみたところで、日々増していく脱力感がほんの少しその進行を止めるだけ。 (20) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 20:00:48 |
【人】 移り気 ジェイド「────嫌いじゃない」 それでも、コトネが買ってきてくれた缶入りの野菜ジュース──なんでも栄養豊富な高価な品を選んだのであるらしい──は旨そうに見えた。 だからグラスを受け取りこくりと一口飲んで、続く問いにも素直に応えたんだ。 「…………判って貰えるとは、思ってないけど、」* (21) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 20:01:09 |
【人】 移り気 ジェイド■キネイへの返事 >>9 "ボルシチ"なるものを口にしたのは初めてだった。 煮込み系には珍しい、紫がかった赤色をした、不思議なスープ。 だってわざわざ外食などしない。自炊もしない。 買ってきたそのままを食べる果物や野菜しか自分は買ったことがない。 「……"秘密"?そうだね」 ────簡単な事だ。 僕の眷族になれば良い。 口にしたところで彼には正しい意味で伝わらないだろうなと僕は静かにスプーンを動かし続ける。 [でも、おかしいだろう?それはきっと、僕ではないよ」 だってそうでしょう? お前が"小学校に入ったばっかり"なのは、6年前か7年前か。 その時の僕は精々15歳。 キネイが信じる世界の姿においては、15歳から21歳まで見た目が全く変わらない"人"なんて、存在しないんじゃないかな。違う? (22) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 20:04:47 |
【人】 移り気 ジェイド「秘密は、あるよ」 「僕は不老不死だもの」 ────ああ、楽しいな。 彼には本当の事を、さらりと言える。 彼は決して信じてくれやしないだろうけど、 でも、隠さず言えるという事は、なんだか酷く楽しくて。 「僕の"仲間"になる?キネイ」 揶揄うように飄々と告げる。 残念ながら、僕の"願い"はそれとは真逆のものなのだけど。* (23) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 20:05:58 |
ジェイドは、掌の上のオレンジを満足気にころころさせながら去って行った** (a0) Valkyrie 2019/12/29(Sun) 23:00:40 |
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