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【人】 魔神 ハーレフ■アールアレフの秘密抜き アールアレフって不思議な人。 昼間は暑いからお家に呼んでよって言ってみたら、呼んでくれた。 良いのかな。私が言うのも難だけど。 おーりん…だっけ? 珍しい林檎も気軽くくれるくらいの人だから、良いのかな。 「………」 すごくきらきらな茶器で出されたすごく良い香りのするお茶に口をつけながら、対面に座っているアールアレフをちらちらと見やる。 花の名を持つ彼女は、名前に負けない綺麗な顔をしてるんだよね。 偶に薄布の向こうから覗けるその目が、特に印象的。 きっと死んでしまったって言う旦那さんも、美貌に惚れ込んだんじゃないかなぁ。 笑い声はちょっと不思議だけど…それすら彼女を彩る要素でしかないもの。 ────だからこそ、気になって仕方なかった。 (1) ときいろ 2019/06/14(Fri) 0:18:12 |
【人】 魔神 ハーレフ「ねぇ、アールアレフはなんでぽきゃの誘いに乗ったの?」 どうしても聞いてみたくて、思い切って聞いてみる。 ねぇ、教えてくれるのかな。 綺麗なのに綺麗なだけじゃ無さそうな、あなたの胸の裡。* (2) ときいろ 2019/06/14(Fri) 0:19:36 |
【人】 魔神 ハーレフ■ヘイダルの秘密抜き ヘイダルは、わかりやすい。 すれ違いざまに財布をスリ取る彼の妙技を屋根の上から眺めて。 裏路地に入った所で目の前に降り立ったら、目がまん丸くなってたの。 びっくりしたのかな。びっくりするよね。 「“収穫”どう?」 天気のお話をするみたいに、小首を傾げてそう聞いてみる。 だって生きる為に必要なんでしょう?全部。 でも逆に言うと、ヘイダルは生きるのは問題なく出来てるって事だよね。 アールアレフの願いは想像も付かないけど、彼なら少し分かるかも。 唯生きるだけじゃなくって、もうちょっと、誇りとか見栄とかそんな感じの“良い暮らし”に繋がる何かを願いたいんじゃないかなぁ。 実際今まで私に願った人、そんな感じだったもの! 実体験だから自信あるんだぁ。ふふふ。 ────だから、まっすぐ聞いてみる事にした。 (3) ときいろ 2019/06/14(Fri) 0:20:16 |
【人】 魔神 ハーレフ「ねぇ、ヘイダルはどんな願いを叶えたいの?」 そうやって問えば、教えてくれるでしょう? だって、ヘイダルの目は、強い願いを抱えた人の目だもの。* (4) ときいろ 2019/06/14(Fri) 0:21:17 |
【人】 魔神 ハーレフ■ハーレフの秘密開示 私の世界は基本的にとっても狭い。 比喩というより物理的に。 もしかすると精神的にも狭いのかな…でもそれは生の大半をランプの内壁を眺めることに使ってたのが理由だから、そうあっても良いよね? 魔神は自らの為に力を使ってはならぬ。 自分の意志でランプの外に出ることは罷り成らぬ。 喚び出した主人の命に従い、3つの願いを叶えねばならぬ。 ランプの魔神のルールは私をがんじがらめにして、離さない。 私が真鍮製のランプの中。 内壁に鉄を探す遊びに慣れているのは、そういう理由なのだ! (21) ときいろ 2019/06/14(Fri) 18:55:22 |
【人】 魔神 ハーレフ「偉大なるご主人様、願い事をどうぞ!」 喚ばれる度、私は同じ言葉を繰り返す。 皆口々に願いを告げて、私はそれを笑顔で叶え続ける。 だって何て言ったって賢くも素晴らしいご主人様の願いだもの! 何よりランプの魔神ってそういうものだもの! ………でもね。私とお喋りしてくれるご主人様は一人も居なかった。 皆、私になんて見向きもしない。 私を見る目は、“私”を見てない。 私の後ろにある“3つの願い”を見てるだけ。 願いを叶えたらそれで終わり。サヨウナラ。 私はまたランプの中で待って、待って、待ち続けて、そして誰かがまた魔神を喚ぶ。 ────でも3つ願いを叶えたら、やっぱり私はランプに逆戻り。 (22) ときいろ 2019/06/14(Fri) 18:55:56 |
【人】 魔神 ハーレフ…………じゃあ、“私”ってなんなんだろう? いつからか、そんな事を考えるようになった。 喋るバターならぬ喋るランプ? 願いを叶える機能を持ったランプが、偶々喋るだけ? “私”が此処に居る意味って、何? 願いが叶って嬉しそうな人を見るのは好きだけど、でも。 ランプの中じゃ、誰も問いに答えてくれない。 (23) ときいろ 2019/06/14(Fri) 18:56:29 |
【人】 魔神 ハーレフでも私はめげなかった! 私が魅力的じゃないから、まだ“3つの願い”と同じ…ううん、その付属サービスとしての価値もないくらいだから、“私”を見てもらえないのかなぁって。 面白おかしく喋る練習も、笑顔の練習も、沢山したよ。 時間はたっぷりあるもの。 建物が全て砂に埋もれて消えてしまう程に! ────次は、次こそは! 一万回駄目だったからって、次も駄目とは限らない! そう思って、色んなご主人様にお仕えした。 色んな人の願いを叶えた。 次こそはもしかしたら、願いのついでに私の話を聞いてくれる人に会えるかもしれない…って思いながら、ランプの中に戻る事を繰り返した。 分かってる。無駄な努力かもしれないって事くらい。 でも努力したからって結果が伴うとは限らないけど、努力しなかったら残るのは後悔だけだもの! (24) ときいろ 2019/06/14(Fri) 18:57:22 |
【人】 魔神 ハーレフ今だって“いつか御主人様に解放してもらう事”を、諦めてる訳じゃない。 “その御主人様”に気に入ってもらえるようにまだまだ色んな特技を練習中なの! 手品とかも出来た方が良いのかなぁ? 腹話術なら出来るんだけど、動きを伴うものは練習しようにも難しくって。 でもね、やっぱり人に期待してるだけでもいけないと思うんだ。 待ってるだけじゃだめ。 根本的に、変えないといけないんだ。 私が魔神だから、いけないんだ。 だからぽきゃの誘いに私は飛び付いた! 契約を交わして、初めて私の意志で出た世界は驚くほど広かった。 笑顔が止まらなかった。笑顔の練習なんか要らなかったかなぁ。 私ね、ちゃんとこの幸運を手に入れて自由になるの。 自分の力で、“ランプについた喋る機能”から。 私じゃない私に、変わってみせるの!* (25) ときいろ 2019/06/14(Fri) 18:58:12 |
【人】 魔神 ハーレフ「いかさま用のさいころ?」 綺麗とは言い難いほったて小屋の床にちんまり座って(ヘイダルのお家には椅子が無かった!)、作業中の彼の手元をじぃっと覗き込む。 私は魔神なので、わざわざ手作業で何かはしない。 ご主人様の望みさえあれば何だってすぐ作れるもの。 だからこそ面白くって、やり方を覚えてみたくて眺めていた。 でも私の視線に何を思ったか、ヘイダルは呟く。 真剣勝負だから、私達との勝負には使わないって。 「え?心配してないよ?」 私はぱちくりと瞬いて、そう返した。 分かりやすいと思ってたけど、案外変なとこを気にする子だ。 ヘイダルが筋の通った子だと言うのは、この数日でも良く分かってるもの。 『した事やしなかった事を後悔したくは無い』 『自分で自分に胸を張れない事はしたくない』 たぶん、その辺の感覚は彼も私も似てるんだと思う。 (26) ときいろ 2019/06/14(Fri) 19:22:26 |
【人】 魔神 ハーレフしばらく、沈黙が落ちた。 ヘイダルは黙々と手を動かしていて、私はそれを見ていた。 私はお喋りが大好きだけど、この静かさは悪くない物だった。 そしてぽつりと落とされた問い掛けは何処かあったかいもの。 この空間に満ちる雰囲気と、同じ。 「ヘイダルは、優しいねぇ」 いつものぽんぽん跳ねるような声音を抑えて、私は微笑む。 「私、願いを叶えたがってるかな。 外から見たらそうなのかな…でも確かに、拒むよりは叶えたいよね? だって、その方が皆幸せだものね」 別にそれは暇人とか物好きでやってる訳じゃないけど。 ランプの魔神のルールに縛られてるって理由だけでやってる訳でも無い。 私を暗くて狭いランプから連れ出してくれるご主人様の事は、いつだって大好きなのだ。 それが例え数舜の事だって、お喋り出来なくたって、構いやしない。 確かに“私”を外に出してくれているのも事実だから。 ─────でもね。 ─────願いを叶える私が、願って良いなら、ね。 (27) ときいろ 2019/06/14(Fri) 19:23:08 |
【人】 魔神 ハーレフ「私はね、“自由”になりたいなぁ」 それが、私の願い。 囁く少女は幸せそうに目を閉じて、くふりと小さく笑った。* (28) ときいろ 2019/06/14(Fri) 19:24:12 |
【人】 魔神 ハーレフ「うん!そうだよ!」 相変わらず良い匂いのする屋敷の応接間で、元気良く答える。 私がとっても長生きと言うのは、別に隠す事じゃない。 アールアレフの願いを聞いても特段意見は変わらなかった。 「私は、何か?魔神とは、何か?」 でも不思議な事を聞かれて、瞬いて繰り返す。 私に問うアールアレフは…なんだろう、何だか少し堪えているみたい。 私は魔神だけど心は読めないので、言ってくれないとわからないんだけどなぁ。 永遠の若さが欲しいって言ってたから、魔神の秘密を気にしてるのかなぁ。 邪推してみたところで答えは分からないけれど。 「ごめんね、“私”が何かは良く分からないの」 まず最初に素直に謝ってみる。 だってそれはね、寧ろ私が質問したいくらいだよアールアレフ! “私”ってなんなんだろうね? (29) ときいろ 2019/06/14(Fri) 19:41:28 |
【人】 魔神 ハーレフ「でもね、“魔神”が何かなら分かるよ! 願いを叶える機能を持ったランプの、“付属品”だよ!」 ふたつ目の問いには胸を張って自信を持って答えた。 魔法の品の付属品だから、永遠に若い。 ついでに美しいかもしれない。 それこそ、アールアレフが望むように───。 (30) ときいろ 2019/06/14(Fri) 19:41:51 |
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