111 【身内村】あの日の、向こう側【R18】
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腹に力入れてよ。
[ と愉しげに耳朶を喰みながら、
ベッド部を外したシャワーをそっと、当てて。
人肌に温い湯をほんの少しの水流で、入れて、
流して、綺麗にしなくちゃな。
変態、恥ずかしい、そんな罵倒もどうぞご遠慮なく。
甘んじて受けましょう。
だって腹、下すよりいいだろ?
やっていいって言ってくれたし、と
にっこりと笑いながら、いい加減怒られるまで
しつこく洗浄しようかな。
風呂から出たら、シーツとバスタオルをはがして
洗濯機に突っ込めば、
必然的に俺の部屋へ来てくれるだろうなって、
海斗の顔を思い浮かれるのは、
めちゃくちゃ、いい気分。 ]*
[ 一般家庭の大きさよりは、
多少広いという認識はあるけれど、
それでも、大人の男が二人、入るには狭い。
そんな風呂場に、渋々同行して、
心地良い温度の湯をかけられながら、
背中を向けて、鏡に手をつく。
密着されると、今更だとしても、
すべてが終わった後は、やはり照れくさく
避けるように、出来る限り距離は置こうとする。
真っすぐ鏡を見つめれば、
濡れて曇ったガラスの向こう側でも、
視線が絡みそうで、視線を逸らしながら、
髪を濡らして、シャンプーを泡立てていく。
触れてくる指や手のひらの感触は、
意識しないようにしようと努力するけれど――]
う、……ッ、ん……
さっさと、しろよ――
[ 鏡越しに、羞恥に染めた瞳で睨み
気を抜くと、甘くなりそうな声を耐えながら、
兄貴の手を攫うことなく、自由にさせた。]
……っ、ぅん、掻き出す、だけ、だろ
[ まだ、ひくつく肉壁が、
指を埋め込まれて、嬉しそうに波打って。
思わず、甘え切った吐息が漏れてしまって、
八つ当たりのように、言葉を紡ぐけれど、
無遠慮に動かされてしまうと、
それ以上、文句も言えず、
耳朶に走るもどかしいような、優しい刺激に
肩と、声を、跳ねさせ、意図せず、
言うとおりに、腹に力が入れば、
とろり、と粘度の高い白く濁ったものが、
足の間を垂れていく。
それは、すぐに温い湯に紛れて、足元を通り、
排水溝へと消えて行ってしまった。
あぁ、と熱い吐息が、切なげに漏れる。
出て行ってしまうのが、ほんの少し寂しくて。]
ば、ぁ……か、もう……ちょ、
[ 大体、掻き出しただろうに、
しつこく弱いところを捏ねくり回されると、
垂れ下げっていた俺のものが、
少しだけまた、首をもたげ始めてしまって。
罵倒を口にするけれど、
どこ吹く風と受け流されて、
この野郎と、心のうちで幾度も文句を言いながら、
兄貴が機嫌良さそうに、笑っている声を
蕩けそうになる思考の端で、聞いていた。
風呂の後は、大分ぐったりしていて。
いつもの強がりや反抗心も口にする気にもなれず、
兄貴の部屋で寝かせてくれと、
それでも、多少の言い訳のようなことを
織り交ぜながら、強請ったのだった。*]
[ 本日二度目の風呂と、ついでにシャンプーだったのかも
知らない。
だから長湯をすればのぼせてしまうな、とは
心の片隅では海斗を案じながら、
それでも注ぎ込んだ胤が湯に混じり流れていく様に
視線ごと身体を離すことが出来なかった。
鏡に映る海斗の白い肌に、いくつもいくつも
赤が咲いていて、感じたことがないほどの
充足感に満たされてしまうから。
ぶつけるつもりなどさらさら無かった、
それでも迸らせてしまった嫉妬と執着心を
思い出せば我ながら呆れて苦笑いするしかない。
受け止めてくれた海斗が愛しい。
あんなにどす黒い、穢い欲望なのに。 ]
[ 排水口に消えていく白に、抱きしめた海斗から
吐息が漏れる。
ほんの少し、切なさと寂しさを含んでいるような声に
俺も気付かれないよう眉尻を下げた。
必要以上に丁寧な愛撫を文句も罵倒も聞き流して
しつこく続ければ、3回も出したものがまた
ゆらりと反応を始めているのが、
動かしている手に微かに触れる。
くつくつと含み笑いを噛み締めながら、
それでもこれ以上ふやけてのぼせると危ないなと
理性を奮い立たせて身体を離した。
湯船に浸かるか、もう先に出るか、
どちらにしても海斗が離れればその間に
俺もざっと身体を洗う。 ]
[ ふいに痛みを感じたのは肩で、
視線を落とせば歯形とそこに沿う傷が鮮やかで。
キスマークより深く、きっとそれより
ずっと消えづらい所有印。
さらに満足気に湯気のカーテンの下、ひとり笑んだ。 ]
**
[ 海斗は部屋の窓を開けていて。
俺は一応、酷使された働き者のマットレスに
シトラスの香りの除菌消臭剤をシュシュっとしておいた。
自室に戻る前にリビングに寄って、
親父の好きなジャパニーズウイスキーをちょっと拝借。
グラスを氷と琥珀色の液体で満たして、
それを手に自分の部屋へ戻れば、
幼い頃と同じように、遠慮もなく俺の布団に潜り込む、
変わらず愛しい弟が居て。
酒を一口、ぐいと呑んだ。
喉を焼くアルコールが心地良い。 ]
[ ぽつりぽつりと語られる胸の内。
声はいつもより掠れて、低く艶を帯びて。
妙に大人びて、色っぽく鼓膜を揺さぶる。 ]
……まぁ、な。
どっかで、俺のこと嫌いになって、
離れていってしまうことを望んでた。
それが、幸せだって
思い込もうとしてたから。
[ 返す言葉を、同じように訥々と。
期せずして海斗も同じ気持ちだった、と悟るから、
声はやっぱり同じように少し掠れて。
きっと、俺から終わりを示唆すれば
受け入れるつもりだったのだろう。
避けた唇に、酒が滲みる。 ]
───…… ああ。
おれも、おんなじ。
[ 社会的な道義や、モラルや常識の傘を被って、
目を背けていた自分の感情に、
不謹慎にも嬉しくて、
不覚にも、喜んでしまったから。
だから、腹を括る。
高い酒をそんな飲み方するなと
親父の憤慨する声が聞こえそうなほど、
グラスの中身を一気に呷って。
海斗の覚悟を全部受け止める。
そんな決意を一滴残さず、飲み干すように。 ]
[ ベッドの海斗にゆっくり近づいた。
胸元に押し付けられる温もりを、優しく、
そしてしっかりと抱きしめながら
狭い布団に滑り込む。
あたたかい、離したくない。
離れたくない、誰にも、渡せない。 ]
ああ、そうだな。
ずっと、な───。
[ 自信に満ちた表情でにやりと笑う、
その唇に口付けを落として、髪を撫でる。 ]
ふたりは、いつまでも、
しあわせに、くらしました。
[ いい歳して、デカい図体で、
そんな御伽噺を信じるロマンチックな兄貴でも
海斗は、
しゃーねぇな、良いよって
言ってくれるだろ?─── ]**
[ 少し日焼けした肌に、
白く普段晒されない肌に、
愛しい人にしか見せない肌に、
一片、二片――…
無数に散った
赤
い花弁が、
鏡越しの曇った視界の向こうに滲んで見える。
痕の数だけ、それ以上に、
愛情を感じるように、ふいに胸の奥が熱くなった。
そして、ちら、と
視線をあげれば、兄貴の肩に浮かぶ、
赤い歯型の痕―― 俺がつけた独占欲の
証
。]
* * *
[ 布団に潜り込んで待っていれば、
兄貴は、片手にグラスを持って戻ってきた。
父のとっておき、という奴。
グラスの中で揺れる煌きを、ぼんやりと見つめて
心の内を吐露すれば、おなじだったと、と。]
[ グラスを呷って、喉元が上下する。
その光景すら少しだけ、どきり、としてしまう。
頬が赤くなりそうなのを、隠すように布団を被って
抱きしめられてもいないのに、兄貴の匂い包まれて
これは逆効果だな、と顔をまた出して。
近づく足音に視線をあげて、
抱き寄せながら、一緒にまた横になる。
怖いものなんて、なにもない。
そんなことは、本当は言えないけれど。]
……その言葉、忘れんじゃねーよ?
[ ずっと、な―――。
その言葉を信じるから。 ]
[ 髪を撫でる感触が気持ちよくて、
さすがに疲れた身体から力が抜けていく。
子どもに聞かせる御伽噺。
寝物語の絵本の終わりの言葉。
しあわせな しめくくり
ふわふわとした、微睡みの中で、
それを耳にしながら、ふにゃと、
仕方がねーな
夏生だから、許してやるよ、って
至極幸せそうに、破顔った―――― **]
| [ あれから、何度か切り出そうとして、 他の奴らの邪魔が入ったり、タイミングを掴めず、 首につけられたキスマークのことは、聞けず仕舞い。
何か、切っ掛けはと思っていれば、 以前、借りた参考書のことを言われて、 そういえば、返してなかったことを思い出す。] あぁ? あ、あぁ……今は使ってねーや 明日、持ってくるか――
それか、急ぎなら今日取りに来るか?
[ いつもの調子で、明日。 と終わらせようとして、一瞬だけ考えて。
いい機会かと、家に誘ってみたが、 割と察しのいい此奴が、 ずっと俺に何も言ってこなかったことが、 少しだけ、引っかかっていた。
分かってて、避けていたんじゃないかって らしくなく、少し伺うような瞳で見つめてみたが] (1) 2021/12/13(Mon) 23:20:31 |
| [ 友人を家に誘ったのは、大分久しぶりだ。 兄貴と恋人関係になる前は、時々誘っていたが、 夜遊びに出ていた兄貴とは、 そう多く顔を合わせることはなかっただろうが 数度くらいはあっただろう。 今日は、早く帰ってきてないといいんだけど、 キスマークをつけたと思われる奴と、 意図せず、顔を合わせることになったら、 そこだけ少し心配だったが、真相を確かめないと、 睦月との距離感を考えあぐねて、 気持ちが悪いのも確か。 二人で一緒に電車に揺られて、 お互いスマホを見ながら、時々、最近のドラマや 他の友人に彼女ができたとか、フラれたとか、 他愛もない話をしながら、家路についた。] (3) 2021/12/13(Mon) 23:20:38 |
| ちゃんと手洗えよ、 あとは、リビングで、 適当に座って待ってろよ
[ カチャリ、と鍵を開けて入った家は、 変わらず、この時間は誰もいない。
ただいま、なんて小さく律儀に口にしながら 自分はさっさと手洗いを済ませて、 返すものを先にとってこようと、 俺は、一人、二階へ向かった*] (4) 2021/12/13(Mon) 23:20:45 |
| おっかしーな、 ここだと思ってたんだけど [ 仕舞ったはずの場所に、目的の参考書がなくて。 記憶を辿るように、部屋をぐるりと見渡す。 空調の聞いていない部屋は、 少しずつ、涼しくなってきたとはいえ、 さすがに暑くて、とりあえず窓を開けて、 薄いハイネックのシャツの首を、伸ばして、 パタパタと仰いだ。 項に並んだ、赤い花弁が二片。 多少薄れて、薄桃色に近い色合いになっていた。 暑いが、絆創膏を貼るのは、逆に目立つし、 こうして消えるまで隠しておこうと思っている。
だが、完全に消えるまでに、 睦月には、きちんと確認をしておきたい――] (14) 2021/12/14(Tue) 9:48:30 |
| ってのに、見つからねー
[ 引き出しの中を見たがなく。 本棚を上から順番に、確認する羽目になり、 ぶつくさ、言いながら探していれば、 階下で物音がして、兄の呼ぶ声が聞こえれば] やっば、
[ 兄貴が帰ってきた。] (15) 2021/12/14(Tue) 9:48:32 |
| すぐ行くから、 睦月に変なこと言うなよ!
[ その一言だけ、返して。 参考書探しに急いで戻った*] (16) 2021/12/14(Tue) 9:48:34 |
| [ 本棚の奥に仕舞っていた参考書を見つけ出して、 慌てて引っ掴んで、階段を下りていけば、 一見、和やかそうにソファに座って、 二人は、コーヒーを飲んでいた。]
睦月、待たせて悪い ほら、これだろ?
[ たん、と足音を鳴らして、兄を無視して、 睦月の方に近づくと、本を差し出した。
それから、ちらっと兄貴の方に視線をやって、] じゃ、こいつ駅まで送ってくる
[ 親指で、友人を指せば、 そのまま、くるりと踵を返して、玄関へと向かった。] (33) 2021/12/14(Tue) 22:41:47 |
| [ 駅まで送ることを断られれば、 さて、話す機会をどうするか。 そんなことを考えながら、玄関に立って、 靴を履く姿を眺めていれば、出ていく間際に此奴。 いとも簡単に、俺が悩んでいたことを さらっと謝罪してきやがった。] はぁ? ちょっ、 睦月っ!!! [ しかも、こっちの文句は聞きやしないときた。 この野郎、と悪態を吐きながら、 それでも、結局許してしまおうとしている俺がいる。 はぁ、と深くため息をつけば、 たんたん、と、不機嫌を隠さない いつもより足音でかくリビングに戻る。] (37) 2021/12/14(Tue) 22:42:09 |
|
それで? メシって何の話だよ?
[ 腕組みをして、弟ではない顔を向ければ、 なんと返ってきたかな。
どんな答えでも、溜息を吐いて。 ソファに座った兄貴を後ろから、 そっと、抱き寄せれば] (38) 2021/12/14(Tue) 22:42:11 |
| 犯人……わかったけど、 まぁ、大丈夫だろ? [ もう隙は見せないし。 あの様子なら、反省はしているようだし。 少し甘いかもしれないが、 兄貴が文句を言わないのなら、このまま あのことは忘れるつもりで、そう零した。 あとで、なんか奢れよくらいは、送っておくけど。 今は、一つ悩みが解消して、 胸の中に蟠りが、多少解れたから。 腕の中のぬくもりに体重をかければ、 首筋に顔を埋めて、ちゅっと軽くキスをして、] (39) 2021/12/14(Tue) 22:42:17 |
| 心の奥底で、ずっと粘つき、燻っていた。 ―――― 許されない 恋 心。 あの日、 捨 てようとした想いは、 あの日、掬われ繋がり 重 なった。 (40) 2021/12/14(Tue) 22:59:53 |
| 枯れさせなければ、いけなかった 恋 草は、 その色をより色濃く鮮やかとなって、 この先も季節を超えて、咲き誇り続ける――… (41) 2021/12/14(Tue) 22:59:55 |
| 絵本や童話、御伽噺たちとは違う。 これは現実だから、物語の締めくくりも、 誰にとやかく言われる筋合いはない。
あれから先も続いている。 この物語は、幸せなものなんだって。 読者のいない物語なのだから、
結末が幸せかどうかは、 ―――――――― 俺たちが決めていいだろ?
だから、これからも俺たちは紡ぎ続ける、 (42) 2021/12/14(Tue) 22:59:57 |
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