84 【R18G】神狼に捧ぐ祀【身内】
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「くそ……頭が、」
ゆらゆらと。
「……ぼんやりする……」
げほ、と喉につまったものを吐き出すように、
軽くせき込んだ。
ぽたぽたと、汗か、涙のようなものが、少し垂れる。
はてさて、仄暗い中でも学徒は何時も通り変わらない。
一枚、一枚と紙を捲る。
「しかし、しかし。成る程。本を読むにはいい場所ですね」
其の様子は、何一つ代わり映えしない。
何時も通りであった。
| 島民達から声が聞こえる。 『一人の印が消えたのだから』『今日の印は二人に』と。
物語の頁は捲られ、運命は此処に決する。
煽り立てられ動くものたちが、 木の装飾を持つものを見ているぞ。
──…そして、 "口先だけ"で"煽り動かしていた"この男は。
「……しゃあなしやな。」
どこにも逃げられはせず、そう呟いた。
祭りに書生が戻ってくれば、男の顔を見たのなら。 (1) 2021/07/24(Sat) 21:37:26 |
| >>3言葉を装って、笑みで隠して。 瑕を覆い、曖昧で彩ろう。 「わからんなぁ、誰が選ばれるかなんてな。 いっそ祠に願ってみたらどうやろな。 案外いけるかもしれへん。」 いっそ執念のような五十鈴に、 保証はできせんけどなと言葉を続けながら。 道化は笑う。笑っている。 (4) 2021/07/24(Sat) 22:08:14 |
すく、と立ち上がる。
拘束はされていない。
見張りはいるようだが。
懐から、扇を二本。すらりと取り出し、しゃんと開く。
ひらひらと布をはためかせながら。
躍る。
踊る。
舞うように生き、舞うために生きよう。
不器用な自分の、それが生き様だから。
舞う。
舞って。
この島の舞いは、独特だ。
他の地方にない、特有の動き、特有のモチーフ。
それはつまり、何か確たるものに根差している。
舞の中から、それをつかみ取る。
踊りながら、自分の身体に刻み込む。
──遠吠えが聞こえた気がした。
「──……狼、か」
ぽつり、と呟く。
脳裏に浮かぶのは、
神々しく、畏ろしく、美しい。
おおかみのすがた。
| 「ほんに百年に一度やなぁ。」 誰しもの思惑が交錯し、火が爆ぜ、 空を彩るは何色の花火なのだろうか。 全員を眺め、男は呟く。 「……責任なんぞ取れんなぁ。」 男は道化、男はなんの力も持たない。 故に、他力本願とするしかなかったのだ。 だから煽り立ての真似事をしていた。 例えそれが、今日に神狼の怒りを買うとしても。 これが道化とされた男の精一杯の抗いだったのだ。 何年か島で暮らして、島民に情が沸いていない訳が無いのだから。 はは、好き放題やらせてもらったよ。 (12) 2021/07/26(Mon) 10:56:30 |
| >>14「勝負か、俺が賭け出来るようなん、 まだあったんかいなぁ。」 男は笑う。 これまでに己の出来ることはしたはずだ。 結果に潰えるか、はたまた。 「最初から恨む要素なんてあらへんよ。 俺はこの島が好きやからな。」 この島外に広がる海と同じ色を瞳に持つ男は、 そう言って笑っている。 きっと、最後の瞬間まで笑っている。 空の下、海の底。 空には成れない同じ色。 (15) 2021/07/26(Mon) 19:57:49 |
| (a2) 2021/07/27(Tue) 20:29:08 |
はらり、はらり、一枚、一枚と紙を捲る。
残った項目も、後わずか。
「さて、いよいよ大詰めだ。仕込みは重畳」
はらり、はらり、一枚、一枚と紙を捲る。
学徒は静かに、天を仰いだ。
何とも侘しき、土天上。
「さて、最後に笑うのは如何なるものか……嗚呼、小生は犬死こそ御免だが、盛り上げるには充分な事は起きるとも」
「しっぺ返しを受けるか、悪が笑うか、或いは漁夫の利を得たものがいるか……」
はらり。最後の項目で、指が止まる。
「正鵠を射る者は、必ず現れる。さて、汝は如何なる事象なりや────?」
学徒は、問いかけた。
うすら笑いを浮かべたまま、有終を待つ。
……嗚呼、其れにしても、だ。
「可惜夜とは、良くぞ言ったものだ……─────。」
学徒は静かに、本を閉じた。
| 「祭りも終わりやなぁ。」 男は最後まで、笑っている。笑ったまま。 「……綺麗な花火、見れるとええな。」 彼岸花 を一輪、拾い上げて。 (18) 2021/07/27(Tue) 20:52:11 |
| 彼岸花の花言葉を、贈ろう。 血塗られた爛れた過去に、さよならを。 (19) 2021/07/27(Tue) 20:59:14 |
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