【人】 因幡 理恵──閑話休題・まだ夏毛のころ── [街歩いてたら都合よく例のモブ>>11に声かけられました。「りえちゃんフウタから聞いたよ結婚おめでとうーあんまりからかうなよなー」のろのろ亀と違って逃げようと思えば速攻逃げられたけど、まあ普通に立ち話になった。] 人「あいつ、りえちゃんのために料理習うって?」 兎「へぇ、そんなこと言ってたのか? それは楽しみじゃの、まあ別に理恵はその辺の草でもかまわんが、前みたいに」 人「あっ(察し)そっか……りえちゃん、実家ではそんな辛い時もあったんだな……」 兎「別に普通じゃが……夏はたくさん草があっていいな。冬は雪の下の草を探すのが大変でな。つってもあの頃はまだ子供だったからあんまり覚えとらんが」 人「もういい……もういいんだ無理に思い出さなくて……良かったなまともな旦那に恵まれて……あいつは不愛想でちょっとずれてるが悪いやつじゃない、今までの分も幸せにしてくれるよ……」 兎「???」 [なぜか涙ぐんだモブに首を傾げると、空気を変えようとしたのか、モブが話題を移した。] (22) 2020/12/26(Sat) 14:13:37 |
【人】 因幡 理恵人「そういえばさ! あの時腹膨れてたのは子供じゃなくて脂肪だって? 幸せ太りってやつか〜? いいねいいね熱いね〜!」 兎「んーまぁ脂肪と言えば脂肪もあるだろうが……もっと固いぞ。石みたいに」 [その一言でモブが蒼白になった。 石みたいに固い、脹らみ。 それ、しこりじゃね? モブは視線を泳がせ、重苦しく「そうか」とかなんとかもごもごした。 フウタは「あれは本当に脂肪じゃ」とか言ってたが>>12、ひょっとしたらあまり知られたくなかったのかもしれない。しかし取れたということは予後は良かったのだろう、そう無理に納得して、話を切り上げようとした。] 人「何はともあれ祝福するよおめでとう君と君の好きな人が百年続きますように……」 兎「百年は死ぬじゃろ(わっはっは)」 人「そりゃあそうだ!(わっはっは)」 兎「もって二、三年ってとこかの? 理恵の家族もそんなもんで死んだし……おぉ!?」 [ダバァと目から滝を流し始めたモブに若干引いて、兎は数歩後ずさる。] (23) 2020/12/26(Sat) 14:15:07 |
【人】 因幡 理恵「う゛う゛う゛う゛〜〜〜〜〜ッ! なんて……なんて過酷な人生なんだ……こんなことがあっていいのかよ、耐えがたきを耐え、忍び難きを忍び、やっと幸せになれたっていうのによ……! はぁっ!? さてはそのために料理を……!? 余命幾ばくもない嫁さんの体を想って……!?」 な、なんじゃ突然…… [ひと際大きな声を上げたモブに、目を丸くして更に後ずさる。がしっと腕を掴まれそうになるのを俊敏に避けながら、腰を落として逃走準備を整えた。 モブはお構いなしで、空振りした腕を目玉に押し当て、ずびずびと鼻水を啜っている。] 「分かった! 俺にできることがあったら何でも言ってくれ! 金なら心配するな、あいつを仕事には困らせねえよ……だからりえちゃんも安心して、治療に専念するんだぞ!」 [モブが仲間になった! 理恵は困惑した! 「お、おぉ……なんの話じゃ?」「いや無理に言わなくていい、分かってる、分かってるから……」モブはうんうんと頷くと、「じゃ、早速俺は実入りの良い仕事探してくるかな! じゃあなりえちゃん、二人の時間を大事にしろよ!」苦しそうに笑い、颯爽と去っていった、意味が分からない。 ぬるい風が吹き抜けた。あとにはぽつんと取り残された兎が一羽。] (24) 2020/12/26(Sat) 14:15:30 |
【人】 因幡 理恵[結局何言ってるのか最後まで分からなかった。たしか治療がナントカ…… 別に病気なんぞ何一つ患っていないが、兎として生まれた以上、数年の命。自分にとっては長くも短くもない、そういうものだ。 けれど、とフウタを思う。当たり前のように受け入れていた、八歳という年齢。その年まで兎が生きていられるだろうか。あるいはそれ以降も。 亀は何年生きるのだろう。自分が居なくなった後も、フウタが生きているとしたら、どれほどの時間を片割れだけで過ごさねばならないのだろうか。] そしたらあいつ……どうなるんじゃ? [浮かんだ疑問に、答えは見出せぬまま。] (25) 2020/12/26(Sat) 14:16:56 |
【人】 因幡 理恵[……入道雲が姿を消し、薄い綿のような雲が散らばる季節になるにつれて、妙な夢を見るようになった。 遠くをフウタが歩いている。自分はまだ乳を吸うのがやっとで、満足に歩くこともできない。けれど自分はみるみる成長して、フウタの歩みものろいから、追いかけ始めればあっという間に距離を縮めた。 フウタ、と手を取って並ぶ。他愛ないおしゃべりに夢中になっていれば、つないでいた手が離れた事にも気づかなかった。 強風に煽られるように、足がぐんぐんと前に進む。フウタの声が遠くなっても、戻れない。歩みは流れに押されてますます加速し、一か所にとどまることも叶わない。振り返ってフウタとの距離を確かめることも。 行かないでくれ、という悲痛な願いは、性能の良い耳でやっと聞こえるかどうか。いつのまにか、かなり離れていた。 首が勝手に動き、ようやっと振り返る。かすむほど遠くなったフウタに、眉を下げた。] すまんの、フウタ。 こればっかりは、理恵にはどうしようも無いのじゃ。 [伸ばされた腕>>5にふっと意識が戻る。 夢はあっという間に霧散して、記憶をたどっても思い出せない。 目覚める間際、フウタに寄り添う小さな影を見た気がする。しかしそれも定かではない。 頼りない記憶をたどるのは早々に諦めて、今目の前にある鼓動>>17に集中した。] (26) 2020/12/26(Sat) 14:18:50 |
因幡 理恵は、メモを貼った。 (a2) 2020/12/26(Sat) 14:29:58 |
【人】 因幡 理恵[肉食を強制されたわけでもないが、問いかけられれば>>27、「んー」まじまじと摘まんだ肉を見て、ぱくっと口に入れた。 もぐもぐ時間をかけて咀嚼して、こくっと飲み込んだ。] 味はするし、からしと違って嫌いでもない。 じゃが、肉は食い物に見えん。 [魚も同じで、豆や豆腐は平気。納豆は別あれ腐ってるじゃろ。 感覚的なものなので、それ自体が形を無くしていれば気にせずばくばく食べたりする。豚汁の汁もそうだし、豆腐と野菜のつみれに多少の鶏肉が混ざっていても平気。 夫が甘いのをいいことに、わがまま放題言っては、遠慮なく吸収していった。 酒は許してもらえなかったけど。 「なんでじゃ美味いぞ」「力も出る」ぶぅぶぅ文句を言っては強行しようとするも、叶わないと知ると「……分かった。じゃあ片付けてくる」こそっと酒を抱えて盗み飲みを試みたり。] (36) 2020/12/27(Sun) 19:00:19 |
【人】 因幡 理恵[周囲の理解と協力により、押入れの要塞は数日の長きにわたって持ちこたえていた。 守っちゃ駄目なんだけど。 すっかり渡すタイミングを見失ったクリスマス仕様のラッピングを、どうしようかなーと時折眺めたりしつつ、アルバイトの無い日は年末の大掃除に勤しんでいた。 フウタが買い物に行った日も、ちょうど仕事が無かった。 飽きっぽいほうだが、掃除は案外楽しい。特に雑巾ダッシュ。 三角巾の下で耳をぴこぴこさせつつ、若干イっちゃった目でズダダダダダッとひたすら廊下を往復していると、「ただいま」耳がフウタの声を拾った。「フウタ!?」] お帰りなのじゃフウタどうじゃしっかりおつかいに励んだか理恵はすごく床をきれいにしとったぞキレイと言えば頼んどった「亀齢(日本酒)」はあったかあれはすごいらしいぞ口に含むととろっとした口当たりから続くふるうつの香りが鼻を抜けて後口はしっかり酸とピリ辛の余韻があるらしくてな辛口なんじゃが飲み口はとても軽いんじゃとどうじゃ美味そうだと思わ [ハイになりながらズダダダダッと駆け付けると、ちょうど「連れて行ってあげたらどうかしら」のあたり>>33だった。] りゅうぐうじょう…… [ぴたっと足が止まる。 何やらその後もおばあちゃんがありがたいこと>>34を言ってた気がするが、懸念に気を取られてまともに頭に入ってこない。 フウタが振り向くと、じりじり後ずさりして「理恵りゅうぐうじょう知ってる」「ご先祖様から引き継ぎしてる」「そこ海の中じゃろ」「海は嫌じゃ」「息ができん」「みずぎは寒いし」「うらしまは気合で乗り切ったんじゃろが」「理恵は無理いや無理とまでは言わんが」「全然怖くないけど」「ほんと余裕じゃが」矢継ぎ早に言い訳を並べたが、フウタの説明>>35を受ければ「……つまり陸にあるのか?」「大きな風呂ってぷうるみたいに深くないか、足はつくか?」「本当に海じゃないんじゃな?」「風呂はフウタとも入れるのか?」おばあちゃんの前とか気にせずに混浴可か確認して、「なら行く」コクコクと頷いた。] (37) 2020/12/27(Sun) 19:02:43 |
【人】 因幡 理恵[その後。 荷造りをしながら、ふと尋ねた。「りゅうぐうじょうは寒いのか?」 フウタかおばあちゃんから肯定の言葉が返ってくれば、ぱっと顔を明るくして、「待ってろ!」ズダダダダダッと押入れに走った。 めちゃくちゃに尻尾を振り回しながら、渡しそびれていたのがありありと伺えるプレゼントをフウタの胸にぐいぐいと押し付けて、「これも! これも持ってけ!」「あったかいらしいぞ」「実は見越してた」 プレゼントは、深い緑色のマフラー。カシミヤ製のそれはだいぶんいい値段だったが、そこは駄菓子屋の福利厚生パワー、フリーターの理恵でも支払えた。 ……値段以前の問題として、プレゼントを選んだ経験のない理恵がマフラーにたどり着くまでに、多くの人間の 徒労 協力があったのだが、それはまた別の話。]** (38) 2020/12/27(Sun) 19:05:30 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 エピローグ 終了 / 最新