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【人】 香奈太あれはまだ、僕がホストとして稼ぎに稼いだとき。 Club Angelaはいつナンバー落ちしてもおかしくないほど 野心に満ち溢れた男たちがいた。 僕の次にいた麻央だって、そのひとり。 入ってきてすぐに人気になって、1回はNo.1をとられた。 けれども僕だって、負けん気が強かったから その後すぐにいつもの席を取り戻したさ。 1番上は、 僕 の席だってわからせたくて。 (4) 2021/11/15(Mon) 13:50:36 |
【人】 香奈太まぁ、ホストをそろそろやめるつもりで 次の仕事を考えていた頃だったから もうナンバーに関しては頭になかったかな。 店長と話した上で辞める時期を決めていたんだ。 いきなり辞めたら太客はじめ、 みんなに飛んだと間違えられるからね。 ホストたちに話した後で 指名してくれる女の子たちにも そろそろ辞めるんだって話し始めた。 いろんな反応を貰って面白かったよ。 とは言っても僕の次の仕事の話は 仲良くしている麻央くらいにしか その時教えなかったんだけど。 (6) 2021/11/15(Mon) 15:33:42 |
【人】 香奈太「なら、僕らの隣のテーブルにしよう。 そのほうが、気兼ねなく楽しむことができるよね」 初めての女の子を連れてきた太客のお姫様は その子が見えるテーブルにしてほしいと オーダーをしてきたので、 僕が彼女をエスコートするテーブルの隣を 確保するように女の子に声をかけた麻央に 目配せをしてみたけれど、伝わったかな。>>18 「最近お店に来るたびに魅力的になるよね。 とっても綺麗だから入ってきた時に 天使が舞い降りてきたのかと思ったよ 」 テーブルに着くまでの間にも、 相手を飽きさせてはいけないので こういう話をしながらお客様を褒めて 気分良くボトルを開けてもらおうというのが 僕の接客の軸なんだな。 * (22) 2021/11/15(Mon) 23:58:17 |
【人】 香奈太─ある日のこと 僕はそんなに同伴をしない。 営業のメッセージとか、アフターはよくやるけど。 そんな僕が同伴をするのは太客ちゃんたち。 今日は大黒柱、名前は紫水ちゃんと同伴。 紫水ちゃんはブランド品を眺めては買うから 行き先は大体ハイエンドブランドのお店。 僕は荷物持ちとしているようなもの。 「……紫水ちゃん、まだ選定中? 僕がちょっと離れてても問題ない?」 本人に確認をとって、見回ってくると伝えれば 僕は同じ空間にいるとある女の子に声をかける。 (30) 2021/11/16(Tue) 0:55:55 |
【人】 香奈太「ね、可愛いお嬢さんひとりで来てるの? 良かったら名刺もらってくれないかな?」 ただのナンパじゃないかこれ。 まぁ気にしない気にしない。 僕の目に止まった子は、胸が規格外の女の子。 まだこの時は誰にも言ってなかった次の仕事に 誘いたくなるインパクトのある女の子だった。 いきなりの声かけに、どんな反応取られたかな。 * (31) 2021/11/16(Tue) 0:56:29 |
【人】 香奈太─麻央の隣の席 隣の席は麻央と女の子のタイマンになっちゃった。 悪いようにはしないと思うから、 僕は全力で紫水ちゃんのお相手しなきゃ。 「はーいみんな、紫水ちゃんの飾りボトル きちんと飾ってあげてねー。 紫水ちゃん、僕辞めた後これどうする? 誰か指名してくれるなら そのホストにつけてくれるよね?」 僕と紫水ちゃんのテーブルは、 飾りボトルって呼ばれる、デコレーションされた お酒のボトルとか、凄く芸術的なボトルとかで 埋め尽くされそうになっていた。 僕のお気に入りは、インペリアルウォッカ。 僕の誕生日に紫水ちゃんが下ろしてくれたやつ。 まさかこれをおろしてくれるとは思わなくて 暫くは紫水ちゃんの望むままに同伴とアフターと お付き合いさせて頂いたなぁ… (62) 2021/11/17(Wed) 8:47:39 |
【人】 香奈太「麻央は、いい子だよ。 万年2番だけど、1回は僕のこと超えたんだし」 紫水ちゃんにお酒渡しながら、 しみじみと話してたら辞める前にルイ入れるって 言ってもらえたんだけど、同情かな? そんなこと聞いたら、門出のお祝いだってさ。 「さりげなく、飲まなくていい飾りボトルを おろしてくれる紫水ちゃん本当神様。 まだもう少しだけあるから、 紫水ちゃんの好きなタイミングでおろしてね」 紫水ちゃんは本当気前よくお酒おろしてくれて 飲み要員をたまに呼ぶ必要があるくらい。 新人ホストの顔見たさにヘルプ呼ぶし 辞めるって教えた後からは 次の本指名をきめようとしてる気がするんだな。 (63) 2021/11/17(Wed) 8:48:37 |
【人】 香奈太「 ………近くなったな、距離 」ふと隣のテーブルを見ると、 麻央が女の子に触れて距離を縮めてる。 そのやり方は間違いではないんだけど 女の子が勘違いをしちゃうから やりすぎないようにって言ったことがある。 でも、女の子がそれを希望しているのなら 麻央はその希望に応えているだけなのか、と 先輩として心配になるような、落ち着いているような。 店を辞めてからまさか、 あんな形でこの女の子ときちんと会話をするとは この時の僕は想像もしていなかったよ、麻央。 * (64) 2021/11/17(Wed) 8:49:53 |
【人】 香奈太─ブランド店舗にて 僕が彼女に声をかけた理由はふたつ。 ひとつ。可愛くていい体つきだった。 ふたつ。親がいないから成人済のはず。 流石に未成年を引き込んでも、ね? だから声をかけるなら成人してそうな子で 磨けば宝石になってくれそうな子。 というわけでこの子に声をかけたわけだけど 当たり前に嫌そうな顔されたよね。 「ナンパともいうしスカウトともいうかな。 もし、興味が湧いたら連絡ほしいなと思ってさ。 君みたいな子がうちに来てくれたら、 事務所としても盛り上がりそうだからね。」 (65) 2021/11/17(Wed) 10:06:21 |
【人】 香奈太名刺はホスト用じゃなくて、 次の仕事用のやつを手にしてたんだ。 それには制作会社社長の肩書きだから 普通の女の子たちなら食いつくかなと思ったけど 目の前の女の子はどうだったかな。 それでも怪訝そうに見られたなら、 その日はそこで諦めて紫水ちゃんのところに 戻って増えていく荷物を見て どこに持っていくの、なんて聞いたんだ。 「あの女の子って、このお店よく来ます?」 出ていく前に情報収集を忘れない。 よく来ると言われたなら、まだチャンスがある。 そう思って、紫水ちゃんについていくんだ。* (66) 2021/11/17(Wed) 10:10:23 |
【人】 香奈太名刺の肩書き読んでもらえたら ちょっと感触良かったと思わない? え?わかんない?仕方ないなぁ…。 「僕がもうすぐ立ち上げる会社なんだ。 大きくはないけど、有名な人も移籍してくるよ」 目の前の子はある程度疑うことを覚えてるらしい。 本当に移籍予定のアイドルとかモデルとか、 数人名前言ったかもしれない。 多分それでも興味を示してもらえないだろうから ひとりで足繁く、とまではいかないけど 同じお店に通ってみたよ。 (92) 2021/11/18(Thu) 22:30:44 |
【人】 香奈太 こういう子を飼いたいなって思ったのは 僕だけの内緒話ね。 家に住まわせてあげたいような感じ。 ほら、犬ってそんな感じじゃん? (93) 2021/11/18(Thu) 22:31:36 |
【人】 香奈太気を取り直して、いつの日だったかな。 このブランドが新作を販売する日くらい? また会えたなら、身銭を切るよ僕も。 「新作全部プレゼントしてあげよっか」 勿論、タダではないけれども。 これを受け取ってくれるなら、 僕の名刺も一緒に受け取ってもらわないと。 それか、近くまで送らせてほしいなぁ。 ま、別に帰るのはホテルでも僕は良いんだけど。 僕の申し出は彼女に受け入れられたかな?* (94) 2021/11/18(Thu) 22:31:59 |
【人】 香奈太あの日、僕は隣の卓に来たホストに 彼が思っていたより何倍も厳しく注意した。 いや、驚くのも無理ないよ? でもそれを見せちゃいけない。 女の子を不快にさせるのは 僕たちホストがやっちゃいけないことだから。 とは言っても、紫水ちゃん見送った後の話。 「ねー紫水ちゃん?ぼくが辞めた後、 女優やってみない? ……紫水ちゃんとなら僕結構いいやつ、 あっ、メッセージ送る。 紫水ちゃん、僕のこと指名してくれてありがと」 (106) 2021/11/19(Fri) 0:36:03 |
【人】 香奈太別に紫水ちゃんとは恋人じゃないよ。 恋人になったなら僕はお店に来させない。 そんなわけで紫水ちゃんの背中が 見えなくなるまで見つめて、 軽く手を振っていると別のお客さんが。 僕は休む暇なしです最後まで。 (107) 2021/11/19(Fri) 0:36:27 |
【人】 香奈太とまぁ、そんな感じで時は流れて。 僕は初めて入ってNo.1をキープした あの店を辞めて、制作会社立ち上げたんだ。 芸能人も何人か移籍してきて、 毎日僕誰かと対面してる気がする。 紫水ちゃんは……どうだろうね? 気になるなら、教えてあげるけど。* (108) 2021/11/19(Fri) 0:36:48 |
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