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【人】 忘れ屋 沙華「朝はなから賑わうじゃねえか、時報鐘要らずだな己等は。」 ユヅルの宿で朝食とくつろいでいた沙華も、喧噪を聞きながら狸寝入りを洒落込むほどにまで倒錯はしていない。 「玄人じみた吟遊詩人まで居たと来やがる。」 ぼそっと学徒を評したのは記録係をとって代られる危機を感じたからか。 >>22 「偏食の気は相変わらずかい、舞子君。」 普段の接点こそ程度は知れないが、この記録係が毎年と島を往来する面白い住人に目を付けていない筈もなし。 その細手は一見慰めるように五十鈴の頬をなでようとさえするのだが。 「今年に限ってやけに精がでるじゃねえか」 「何か訳でもあるのかい。」 ついて出るのは詰めるかのような問いだった。 尤も聞くだけ聞いて、この大事な島人をあやすのに適した人物が他に出るであるなら その場を譲りもしそうなものだが。 (24) 2021/07/21(Wed) 6:39:07 |
【人】 忘れ屋 沙華>>37 「まったくもう、答えになっていねえよ。」 そういう声音は先ほどのように迫ったものでもなくなっており。 「もつ肉の鮮度を競おうつうたら、何も心の臓から取ってでもって他をダメにする奴があってたまるか。」 「己さては偏食祟って手料理の一つも覚えにやがらねえな?」 冗談ともつかない正論で的外れな説教をすると、頬に伸ばしていた手をより後ろへ回しながら顔を寄せる。 走り回って乱れたであろう五十鈴の髪を、そのままちゃっちゃと結びなおした。 「しゃきりとしとけ。それこそ己が"左"の奴に舞で負けてもみろ、神涙永年の面目丸つぶれだろが。」 気丈にしていたら練り物の屋台に食紅塗ったもん用意しとくよう言ってやろう。 そんな言葉を最後にしたか、それ以上の言及をする気はなさそうだった。 (38) 2021/07/21(Wed) 14:04:02 |
【人】 忘れ屋 沙華>>56 「"どないもなにも"なあ…。」 存外嘘臭さのない意見で返され、渋々なのか口火を切り始める。 「しょうがねえだろう 俺ができるのは先走る奴を程々諦めさせてやることと、 ちょっとばかり事の有る無し誤魔くらかす程度のことなんだから」 「別に怒鳴ってまで俺にし得えねえ事をしたがる奴まで止める義理はねえよ、それが分相応て物だろ。」 怒鳴るはおろか腹から声をだすことさえ有った試しはないが。 「己は己が煽り立てた火について、後々被せる鍋蓋を用意しねえだろと言ってるのさ。」 こういう自他を見限った性根であるからこそ 或いは島長にも未だ見逃され、ともすれば泳がされているのかも知れない。 「当然俺も敢えて好んで割りを食いたいとは思わねえが、なあ。」 火種を己の手に負える大小にまでしか暖めようとせず。 或いは手に負えなくなるとみるや自らその火を絶つまでするだろうか。 そこまで徹底した 責任感 という奴を果たして持っているのか、この乾いた言葉からだけでは誰も判断し得ない筈だ。 「今日の明日ので変わらないとは昨日もいったかな そういう祭り だとも、ぼっちゃんの方が心得があるらしいぜ。」 (57) 2021/07/22(Thu) 5:25:48 |
【人】 忘れ屋 沙華>>58 「つくづく口が達者で嫌になるぜ。 なにを摘まんでも小奇麗に比喩しやがって。」 時折じりじりとした苛烈さを孕んでいた語勢も既に鎮んでいた。 「手前が明日くたばる方に賭けながら賽を振る奴もたしかに居ねえや。」 「俺ァ水を刺し過ぎたかね、万屋。」 焦げ付くものがあり過ぎて。 見たいものもみれなくなっちまっているのかもな。 花火は、好きだったな。 わざわざ形容していなかったとしてもシラサワが何を見ようとしているのかは十分伝わっただろう。 「己のみじめな線香花火がおっこちる所までは、滅さずと見ておいてやるよ。」 「せいぜいあがけ、『言うは易し』というのが俺の一番嫌いな文句だ。」 にまりと口脇を曲げていた。 (59) 2021/07/22(Thu) 14:41:46 |
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