【人】 行商人 美濃[うさぎ堂という名の和菓子屋へと足を踏み入れれば、お座敷の上で跳ね上がる兎さんが目に入る。>>19 コロコロと笑いながらお構いなく、と言いかけて。 此処が店で彼女が従業員ならば客の女がかける言葉としては失礼やもと。 耳に入ってきた慌てた様子の声とは裏腹に、手際よく手拭いを届けてくれる姿に、仮面の下で微笑むのを示すように口元に袖を当てて小首を傾げて見せる。] ありがとう。 本当にすごい雨。 [受け取った手拭いで濡れた肩を払い、荷物を下ろして、座敷席へと下駄を脱いで足を伸ばした。 足袋は宿で履き替えておいてよかったと、今は水を含まない爪先の布地に思う。] (21) 2022/09/29(Thu) 14:35:18 |
【人】 行商人 美濃ぜんざいはこの塩昆布のためにあると思う時があるわ…。 [セットで出された塩気に仮面の下の顔を綻ばせる。 上へとずらした仮面の下から朱を引いた唇を覗かせて湯気を上げる餡と栗の乗った匙に息を吹きかけた。 口内に広がる甘くてふわりとした熱気が鼻を抜けて、ふ、と熱さを逃す溜め息が漏れる。 ゆっくりと味わって咀嚼すると、栗の食感と舌に乗った小豆の粒の感触を愉しんだ。 塩昆布を一欠片口に運べば、甘さの残る舌に塩分が心地よく馴染んで。 よく味わって食べたものの、空腹に柔らかい餅が程よく落ちつくまでの時間は存外早かったかもしれない。 湯呑みを傾けながら、店内を見渡す。 お月見企画を行なっていることは団子を始めとしたそれらしい品揃えから窺えた。] (23) 2022/09/29(Thu) 14:36:43 |
【人】 行商人 美濃明日の月は綺麗だと良いわね。 [兎の面もそのためだろうかと、給仕の彼女を見ながら独り言めいて呟く。 観月祭では晴れるのだと、此処へ向かう船内で聞いていた。 此処でしか見られないと噂に聞くほどに、綺麗な満月だと良い。 そのために、女はこの砂漠へ浮かぶ地へと来たのだから。 満足した胃がひとごこちつける間、商品のひとつ、千代紙の束を鞄から取り出して。 紺色に星の散ったような柄の一枚選ぶと指先で折り目をつけながら、明日の空へと想いを馳せた。] (24) 2022/09/29(Thu) 14:37:18 |
【人】 行商人 美濃明日はまた、お団子を買いに伺うわ。 [断ってしまったお勧めの品は、明日への持ち越しとして。 お代と共に、小さな紺色をした兎の形の折り紙細工を給仕へと渡した。 明日の予約の代わりにと。]** (25) 2022/09/29(Thu) 14:37:52 |
【人】 行商人 美濃[うさぎ堂での食事を終えて店を出れば、雨の中の榛名を歩く。 この雨だ、出歩く者は多くないのであろう。 いくらか歩けばもう吹き荒ぶ雨に蛇の目は然程役立たず、髪や服を濡らした。 路上に人の姿はあまり見当たらず。 大事そうに箱を抱えて歩く年嵩の男性を横目に見送る。>>12 余程大事な用事でもあったのだろうかとはこの地に慣れていそうな迷いのない足取りから。 箱の中身が愛猫とは知らねども、鞄の中の、女にとっては大切な箱を思い起こした。 常の榛名はどの程度の賑わいなのだろうと想像して、陽射しの中行き交う人々を脳裏に幻視する。 明日は常より人も増え、賑わうことは確かだろうと思えばいくらか足取りも軽く。 借宿へと戻り再び濡れ鼠となった姿を見せれば、宿主から苦笑を返された。**] (36) 2022/09/30(Fri) 10:41:14 |
行商人 美濃は、メモを貼った。 (a9) 2022/09/30(Fri) 11:03:19 |
【人】 行商人 美濃[宿の部屋に戻れば、湯を勧められたのでありがたく浴場へと向かい体を温めた。 室内用の浴衣へと着替えると、湯冷めを避けて肩掛けを羽織る。 窓を叩く雨音は変わらず。 窓の外、時折駆けていく急ぎ足の通行人を見るとも無しに眺め、持ち歩いていた荷物は濡れてやしないかを確認した。 湯上がりの個人的な空間では仮面を外した窓に映る女と目が合う。 何処へ行くにも外さない仮面は、行商人らしく、と言うとおかしな話だが、女が引き継いだ露店の元店主にあつらえてもらったものだ。 もう随分と昔、少女の時分、故郷の祭り事に現れた店主を初めて見た時の、どこか幻想的な特別さに胸をときめかせて露店の品を眺めた時から、女にとってはこの生業の顔にはこの仮面が欠かせないものだった。 それは店主の仮面の下を知る仲となった後の幸福な時を過ごす間も、ふた目とは会えなくなってから久しい今でも変わることはない。] (44) 2022/09/30(Fri) 19:14:45 |
【人】 行商人 美濃─道中・澤邑─ [雨の中すれ違った男性からの挨拶>>40に、会釈を返す。] ええ、このお天気じゃあ、合羽の方が正解だったやも。 [彼の装いを見て肩を竦めて返せば、教えてもらった箱の中身に納得する。 それはこの大雨でも大事に抱えて歩くわけだと。] 大切にしてもらえてお猫様もしあわせね。 [そんな感想を仮面の下、微笑んで告げた。 箱の中の猫はどんな面立ちなのだろう、白か黒か、三毛猫か、さば、とら、はちわれ、ぶち…など思いを巡らせて。] そちらもお気をつけて。 明日の月見に体調を崩したらつまらないもの。 [気遣いの言葉にはそう返した。 余所者の女に箱の中身を知らせた真意は知らず、明日の話が口をつけば、] 明日はお祭りだから露店を出すつもりなの。 よろしかったら見に来てくださいな。 [猫の気にいる玩具や装飾があるかもしれないと、宣伝ついで伝えておいた。**] (46) 2022/09/30(Fri) 19:17:19 |
【人】 行商人 美濃─道中・澤邑─ [仮面の下からとは言え男性の抱えた箱を見つめて猫の姿に思いを馳せていたからだろうか、お見せしたいのだけどという言葉に緩く首を振る。>>49 彼が懸念する通り、この雨の中では大切な猫が水浸しになってしまうのは尤もだから。 個体差はあっても水を厭う猫は多いし、何より、雨の中迎えに行ったという理由は、それなりあるのだろうとは想像で。 宣伝がてらのお誘いには、見かけたら足を向けてくれるというものだから、] ええ、是非に。 その時に、可愛らしいお顔が見られたら嬉しい。 [猫も祭りへと連れ出すのかはわからないけれど、もし一緒に来るのであれば見られるやもと期待して。 月見団子を買うついでにでも、あの辺りの一角だと場所を示す。 この天気で長話はよくないだろうとは、女としては彼の抱えた愛猫を思えばだったが、同じ考えだったのだろう。 箱を庇いながら家路へとつく背をちらと見送り、晴れるだろう明日の空を想像しながら宿へと足を向けた。**] (52) 2022/09/30(Fri) 22:53:32 |
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