81 【身内】三途病院連続殺人事件【R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
「……、……」
瞳を開けた。双眸は紅に染まっている。
目が醒めたのは外だった。
雨がふりしきっていて、"肩が濡れる"。
此処は、あのとき の死体を見つけた場所だ。
「死んでも、魂が残るとは言いようだ。
生者と死者の違いがこんなところにあったなんて。
体験しないとわかりませんでした、今ならわかります。
これが、
命の重さ
ですねぇ?」
男は肩を濡らさなくなった。
いつの間にか腕の中で眠っている黒猫を抱え、
一歩病院へと歩き出す。
霞む意識の中、何かから逃げていた。
しかしどうにも足が重く、思う様に進めない。
一歩踏み出す度に、泥中の意識が浮上していく。
逃げなければ殺される。
逃げなければ生きられない。
────そういえば。
──何から、逃げているのだろうか。
足を止める。
見慣れた廊下と、少し弱まった雨が窓から見えた。
ここは三途病院だ。敵などいない。
銃声も聞こえないし、戦闘機だって飛んでいない。
その筈だ。
一体何故、何を、恐れているのだろう?
セナハラ
貴方が足を止めると、ペタ…ペタ…と背後から足音が聞こえる。
聞き覚えがあるはずだ。
貴方を慕う少年の足音……生きている時は、仕事中の貴方の後ろをよくついてきた。
……ペタペタ……ペタペタ
段々と近づいてくるその足音は背後で止まるだろう。
ニエカワ
ペタペタ。
……ペタペタ。
足音の主を、知っている。間違うはずがない。
ひとつおかしなことがあるとすれば──、
この足音は、もう聞こえない筈であることか。
男は己が死んだ事を、まだ理解できずにいた。
「……、……っ」
兵士が背後に立っている時より、
銃口をつきつけられる時より、ずっと恐ろしい。
恐る恐る、そうっと、振り返る。
視線は当然のように、数寸下へ向いていた。
セナハラ
「──ねぇ」
至近距離、正面から少年は呼びかけた。
「ここだよ、セナハラさん」
ニエカワ
「────ッ!?」
声にならない悲鳴と共に、正面へ顔を向ける。
生前と変わらぬ姿の少年がそこに立っていた。
「……な、ぁ、なんで、」
思わず一歩、後退る。
そんな筈はない。
貴方は間違いなく、この手で殺したのだから。
男は死後の世界を信じない。
霊魂の存在を否定する。
そうでもしないと、気が狂ってしまうから。
セナハラ
「……………なんで…?」
貴方が後退るたび、その距離を詰めるように一歩前へと進む。
「会いに来たんだよ、セナハラさんに……」
その頬に触れようと手を伸ばした。
痩せた細い子供の指が素肌に触れようとしている。
「会いたかった……
」
これは、少し前。
まだ男が命を落とす前。
病院の裏手にスコップを持った男の影が一人。
スコップの影がもう一つ。
深く、深く穴を掘っていました。
少し離れたところにも、もう一つ、穴が掘られました。
一つの穴には小さな骨と薬の入った陶器の壺。
もう一つの穴には黒猫の遺体を入れました。
壺の中には、ニエカワの骨が入っていました。
もう一つ、ニエカワの夢が入っていました。
黒猫はタオルに包まれていましたが、
埋められれば次第に土にかえるでしょう。
どちらも弔う為に、作られた、お墓でした。
技師の墓は、ありませんでした。
知りませんでした、知ろうとしませんでした。
彼女はきっと、どこかに、行ってしまったんでしょう。
ニエカワ
痩せた細い指の腹が、頬に触れる。
「……ぁ、」
その瞬間、思い出した。
喉に触れる指を。首に回された子供の掌を。
脚から力が抜けていく。崩れるように座り込んだ。
「ごめッ、……ごめんなさ、ごめん、なさぃ」
きっとこの子供は、復讐をしに来たのだ。
叶わない約束をした自分を。
殺した自分を。
かつて喰らい殺した人々も、
こうして自分を呪っていたに違いない。
「……ゆるして、」
まだ雨の降りしきる中、濡れない男はその地面を見下ろす。
しゃがみこんで、手を合わせて。
目を細めればどこかに"彼ら"の気配を感じた。
まだ病院のどこかで、誰かを待っているのだろう。
「ああ、結構無事ですね。
かなり深く掘りましたし、……突然掘り出す人も、
墓荒らしする不届き者も獣ぐらいで。大丈夫かな」
同時に誰の墓かかも皆にはきっとわからない。
ここに残る彼らになら知らせてもいいかもしれないが、
今だと外に出てきてしまうかもしれない。
骨があったことが知られてしまうかもしれない。
あの肉が"人"であったことが知られてしまうかもしれない。
……しばらく秘密のお墓としよう。
この病院によくいた猫も一緒に埋めた。
多分、寂しくないだろう。
「もう二度と口を聞けないと思っていたんですけど…。
せっかくまだいられるのなら、
最期ぐらい見届けようと思います。
さて、一体人の魂の寿命はいつまででしょうか?」
セナハラ
「……なんで、あやまるの…?」
温度のない掌で両頬を包む様にしてこちらを向かせる。
「……俺を殺したから?
身体をバラバラにしたから…?
先生の肉を食べたから…?
嘘ついたから…?」
貴方の罪を並べ立てる様に一つ一つ問いかけた。
少年に悪意はない。
ただ貴方の事が知りたいだけだ。
ニエカワ
止まった筈の心臓が悲鳴を上げる気がした
。
胃が中身を絞り出すように痛んでいる気がした
。
「……っ、怒ってる、ん、でしょう?」
罰が当たったのだ。
定めに流され、嘆いていれば良かったものを。
人の手で命を選んで、自ら人の道を踏み外して、
……抗ってしまったから。
「な、……何でも、する、からッ…………」
目を逸らせない。
何の力も込められていないのに、
顔に触れる手を振り払う事ができなかった。
「……、許して、ください」
震える声で、唇で、赦しを乞う。
「怒ってないよ…… ──でも」
あの優しくて大人なセナハラさんの怯えた表情に心の奥底が疼く様な感覚が這い上がる
「セナハラさんのその顔……可愛い……」
目を細め、柔らかく微笑んだ。
その笑みがどこか妖しげなのはこの少年の本質か死人だからか
「ねぇ…何でもしてくれるってホント……?
“コレ”は嘘じゃない…?」
ニエカワ
大人として振る舞う余裕など、とうに無くなっていた。
何を言われたのか、理解する前に口が動く。
「ぅ、うそじゃない。……ほんと、本当だから、」
震える手で縋るように、貴方の服を掴む。
その笑顔が、ただ恐ろしかった。
セナハラ
「……じゃぁ…、じゃぁさ……」
耳元にそっと唇を寄せて、内緒話をするように囁きかける。
「セナハラさんが欲しいな
……
ずっとずっと…俺の傍に居てほしい……」
縋るように掴む手が愛おしくて……優しく、宥めるように頬を撫でた。
「セナハラさんが俺のものになってくれるなら、
全部全部……許してあげる
……」
別に最初から怒ってなんかいない。
貴方に恨みも持ってない。
でも、"許す"という口実で貴方を自分のものにできるなら、それでもいいと思った。
ニエカワ
──許してあげる=B
囁かれた瞬間、気付けば頷いていた。
その言葉の、本当の意味もわからないまま。
「ずっと、いる……、います。傍に、います
」
安易に終わりの無い約束を交わした。
視界が霞み、涙が頬を伝っていく。
許されるという安堵から溢れたのか、恐ろしいからなのか、
……何もわからなかった。
セナハラ
「約束
だよ……」
そのまま、ぎゅっと貴方を抱きしめた。
「セナハラさん……大好き……
」
死後漸く望みが叶うなんて、皮肉以外の何物でもないが、少年は幸せだった。
ニエカワ
抱き締められても、温もりなど少しも伝わってこない。
そこにあるのは交わしてしまった約束と、
剥き出しの好意だけだ。
何故好かれているのか、男にはちっともわからなかった。
だからこそ、恐ろしい。
「──……はい。約束
、です」
恐る恐る、背中に手を伸ばす。
この約束を手放してしまえば、
自分は永劫許されなくなると思った。
セナハラ
背に回される手には同じように温度はない。
けれど心が温かくなるような感じがした。
約束をしてくれたから、自分は彼を信じていよう。
セナハラさんは“大人”だから、また約束を忘れてしまうかもしれないけれど、その時はまた思い出させてあげればいいだけだ。
「(──やっぱり…、セナハラさんにはお嫁さん……いらなかったね)」
これはどこかの時間。
死んだ男は、手術室で自分の死体と少年を見つめていた。
聞こえないと知りながら、返事をし続ける。
「きみは何も悪くないんですよ」
以前のように頭を撫でようとして、
己がさせたことを思い出せば、手を下ろした。
「いつか、助けがきますから」
どうせわからないのだから、撫でてもいいとわかっている。
しかし、そんな資格は無い。
「……」
いや、自らそれを捨てたのだ。
──貴方は良い子だから。
──自分の我儘に付き合ってくれると、信じていた。
「ありがとう、」
「ごめんなさい」
あのとき伝えたかった二つの言葉を、小さく呟いた。
あの日、彼を黒猫を抱え見送った。『無事に帰ってきてくださいね』
ロクと話をしている。結構、かなり、ながく、ずっと。
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