【人】 女子大生 マユミ[ キャンパスを歩けば、大抵の人がアタシに振り返る。 交友関係も広かったから、挨拶をしてくれる子も多数。 SNSに何か発信すれば、 通知が数分鳴りやまない程、ファボが付く。 典型的なきらきら女子大生、 それが 船越真結実 と言う女だ。「マユ〜、ランチ行こうよ!」と声がかかる。 ] OK、行こ行こ!気になってたカフェあるんだ〜。 [ 弧を描く唇には、 お気に入りのコスメブランドの新色グロスが輝き、 にこやかに振られた指先は、 涼やかな色で描かれた花柄のネイルアートが彩る。 ] (34) 2022/06/06(Mon) 23:13:04 |
【人】 女子大生 マユミ[ 船越亜結実 はどうだったか?……本当に遺伝子は同じなのだろうか? そう疑いたくなるほど真逆の性質を持っていた。 俯き気味に歩く姿は、誰の目にも留まらない。 SNSに真結実と同じものを撮って上げても、 ファボが二桁ついたことがない。 典型的な、陰キャ女だった。 しかし努力の甲斐あって、 今の所は妹への擬態が見破られてはいない。 "亜結実"だった頃は、 精々ファンデーションにフェイスパウダーを重ねて、 雑にチークをはたいて、 色付きのリップを塗る程度だった。 真結実が死んでから、私が"真結実"になってから、 必死になってファッション誌を見ながら研究した。 きらきらした片割れの人生を乗っ取るは、 そんなに簡単な事ではないということ。 ] (35) 2022/06/06(Mon) 23:14:07 |
【人】 女子大生 マユミ[ 私と真結実は、 大学近くのマンションに二人で暮らしていた。 実家は少し遠くて、通えない距離ではないけれど、 移動時間があまりにも勿体ない。 どうせ二人とも同じ大学の同じ学部生なのだからと、 両親が家賃を負担してくれて、生活費は二人で折半。 そのマンションが燃えたのが、今からおよそ半年前。 燃える家具の下敷きになった真結実は、 どう考えても助かるとは思えない状況で、 私は一人無事逃げ出した。……見殺しにしたも同然だ。 煙を吸ってしまったせいで、 マンションの入り口付近で意識を失ったけれど、 それほど大きな怪我をすることもなく、 救急隊に助けられた。 ] (36) 2022/06/06(Mon) 23:15:31 |
【人】 女子大生 マユミ[ 病院で目を覚ました時、 母が「貴女だけでも無事で良かった!」 と抱き着いて、 それで真結実の死を確信した。 ナースコールで呼ばれた看護師が、 私の様子を確認して、 「記憶に問題はありませんか? お名前をフルネームで言えますか?」 そのように聞いてきて、私は……。 ] はい。 私……いえ、 船越真結実 です。[ この瞬間に、船は偽物にすり替わった。 ] (37) 2022/06/06(Mon) 23:16:33 |
【人】 女子大生 マユミ[ ずっと一緒に暮らしてきて、 学校もずっと同じだった。 だから、真結実の大抵のことは知っている。 火事の後、真結実のスマホは そのまま使い続けるのは無理でも、 データの方は割と無事だったので、 真結実がエデンに投稿したものは、 恐らく全て把握している。 タイムカプセルを開けるように、 丁寧に一つずつ味わった。 真結実の人生が輝いていたのは知っている。 それでも、専用のイヤホンから流れ込む 多幸感の甘美さたるや。 ―――魅了された。 今この幸福は、私の手の内にある。 真結実のしてきたような努力を 一切してこなかった私だけれど、 これからは私が、 失われてしまったこの得難い人生を守るのだ。 浅ましくも、そのように自己弁護したこともある。 ] (38) 2022/06/06(Mon) 23:17:44 |
【人】 女子大生 マユミ[ 友人たちとのランチで、弾む恋バナ。 「あの時、マユが機転効かせてくれて助かったよ〜」 なんて言われて、友人に肘を小突かれた。 どうやら真結実が咄嗟についた嘘が、 彼女の恋路を守ったらしい。 ] あ〜、そんなことあったね! まぁほら、困った時はお互い様ってことで。 アタシが困った時は助けてよね。 [ その言葉に別の子がハッとして、 「それってミナコじゃなかった?」と言って、 周囲の気温が下がる。 ……しまった。とはいえ、 こう言う事はよくあるので。 ] (40) 2022/06/06(Mon) 23:18:45 |
【人】 女子大生 マユミあ、そうだったっけ? ごめんね。火事の後は細かい記憶がちょっとね……。 [ 流石にこれを言われて、深追いできる人間はいない。 細かな記憶の齟齬は、全てこの一言で片を付けていた。 ランチが終われば、私は病院に行く予定だったし、 それぞれにも用事があったのでそのまま解散。 ] (41) 2022/06/06(Mon) 23:19:36 |
【人】 女子大生 マユミ[ 実家の近所に、かかりつけの病院がある。 真結実はマンションに引っ越してからは、 それほど行かなくなったようだけれど、 私は少し距離が離れても、その病院に通い続けた。 やっぱり新しいお医者様と接するのは、 緊張するじゃない。 私の事を分ってくれている人の方が、信頼できるし。 担当医は東雲早希先生。>>13 人当たりの良い、柔らかな印象の人で、 陰キャの私にも比較的接しやすい人物だと思う。 火事の時に搬送されたのは大きな病院だったけれど、 そんなに大したことはなかったから、 すぐにまた、こちらの病院に通うようになった。 主に片頭痛用の薬と、 火傷痕に塗る軟膏を貰いに行っている。 ] (42) 2022/06/06(Mon) 23:21:10 |
【人】 女子大生 マユミ[ 受付で手続きを済ませ、待つこと暫し。 名前を呼ばれれば、診察室に入った。 ] やっほー、先生。 今日も頭痛薬と軟膏、貰いに来たんだけど? [ 軟膏は兎も角、頭痛薬を貰う頻度は、 "真結実"のそれよりも格段に増えている。 元々姉妹揃って頭痛持ちではあったけれど、 真結実は私よりも頭痛を起こす頻度が低かった。 多少の違和感を覚えたりはするかもしれないが、 これだけで私が"亜結実"であると勘づくとは思えない。 流石に片頭痛を薬に頼らず乗り切るのは無理だった。 飲んでいた薬が同じで本当に良かった。 ]** (43) 2022/06/06(Mon) 23:21:57 |
【人】 女子大生 マユミ[ 母の胎から先に出てきたのが、アユミ。 ただそれだけの理由でアユミは姉となり、 ただそれだけの理由でマユミは妹になった。 双子の子供がいれば、 親としてはお揃いの服など着せたくなるもの。 私たちも相当幼い頃は、 同じ服を着せられることが多々あった。 けれど、揃えようとすればするほど、 落差が際立つことに早々に気付いてしまった。 ] (82) 2022/06/08(Wed) 18:44:13 |
【人】 女子大生 マユミ[ 長子を見て育った弟妹は、 容量が良い傾向にあるなんて言われているけれど、 殆ど同時に生まれた双子にも、適用されるのかしら。 ……随分と皮肉な話ね? 東雲の跡取りと持て囃された嫡男の挫折。>>73 好き好んで触れたがるほど、 個人的にはゴシップを好む質ではないけれど、 人の口に戸は立てられないと言うでしょう。 流石に何も知らない……とは言えない。 直接の関わりはなくとも、 難儀な長子同士、身勝手な親近感を覚えたりもした。 周囲の人間からしたら、 堪ったものではないのも分かるから、 過剰に同情したりもしないけど。 ] (83) 2022/06/08(Wed) 18:44:56 |
【人】 女子大生 マユミ[ 早希先生が担当になったのは6年前。>>55 船越家は一家総出で、 東雲医院のお世話になっていたから、 病院のお手伝いをしていた学生の頃から知ってはいた。 入れ替わりの引継ぎの時はまず先に真結実の、 「先生、おめでと。凄いじゃん!」などと、 私からしてみれば、 距離感を間違えているとしか思えない発言の後に……。 ] こちらこそ、宜しくお願いします。 私は特に頭痛薬を取りに来るので、 お世話になることが多いと思います。 [ 控えめに返した。 確かに、お医者様の世話にならないに 越したことはない。 でも死ぬまでお世話にならずに、 生きられる人など多分いないだろう。 頭痛持ちである以上、 定期的に世話にならざるを得ないし、 社交辞令でも宜しくする気がある方が有り難い。 ] (85) 2022/06/08(Wed) 18:46:44 |
【人】 女子大生 マユミ[ 今、目の前にいる嘘吐きは、 先生の目にはどう映っているのかしら。 なんにせよ私の想定以上に、 先生と真相の距離は近いのだと思う。 ] 最近、気圧が不安定だからしんどくて……。 いつものお薬、同じ量貰えます? 火傷痕もね。これでいい? [ ブラウスの袖をまくり上げて、 マキシ丈のスカートの裾を掴んで引き上げた。 足の火傷は幸い脹脛から下だから、 そんなにまずい感じの絵面ではない。 搬送された大きな病院では、時間が経過することで、 いずれ殆ど分からなくなると言われたが、 今はまだ 赤 いまま。 ]** (88) 2022/06/08(Wed) 18:50:20 |
女子大生 マユミは、メモを貼った。 (a5) 2022/06/08(Wed) 19:06:42 |
【人】 女子大生 マユミ[ 小児科のエマ先生。>>91 低めの身長の所為か、実年齢よりも少し若く見え、 子供にしてみれば親しみやすい、 いい先生なのだろうと。 見かけただけで、碌に話したこともないけれど、 そんな印象は持っていた。 私としては "早希" も"恵真" も、お洒落な名前……としか思わなかったけれど、 確かにありふれた印象は無いから、 当人たちには苦労もあるのかもしれない。 私たち双子の名前は響きに合わせて 漢字を当てただけで、 "亜"に悪意が込められていた訳ではない。 けれど、言葉の意味を知ってしまえば、>>25 勝手に因果を感じてしまうのも無理からぬこと。 ] (110) 2022/06/09(Thu) 18:33:22 |
【人】 女子大生 マユミ[ 年の近い妹さんは優秀で、それこそ性別が違えば、 跡取り枠の争奪戦になったりしたのかしら? 医療ドラマを見ていて思っただけだけれど、 家族経営の小さな病院であったとしても、 "病院の跡取り"というステータスはかなり強い筈。 それこそ、医師としての技量や、 男としての器なんてどうにでもなるくらいの手札。 ……なんて好奇心はあったけれど、 それこそ、こんな低俗な話はしないのが鉄則な内容ね。 私以上に真結実が気にしていたけれど、 これはあくまで姉妹間の内緒話。 叔父様の話も妹はしっかり秘密を守っていたわ。>>90 ] (111) 2022/06/09(Thu) 18:34:14 |
【人】 女子大生 マユミ[ 姉妹が似ていなくて得をしたのは初めてだった。 真結実が好む明るい色の服で身を隠し、 真結実が好むブランドのコスメで顔を塗り潰して、 真結実の言動をなぞるだけで、 名ばかりの下位互換は、 "テセウスの船" の体裁を保てた。 ] (112) 2022/06/09(Thu) 18:35:09 |
【人】 女子大生 マユミ[ ―――と思っているのは私だけだったみたい。 パンドラの匣が口を開け牙を剥くのは、 悲劇が喜劇に落ちるのは、必然。 ] (113) 2022/06/09(Thu) 18:35:55 |
【人】 女子大生 マユミ[ 私という"真結実"が初めて対面した早希先生。>>96 先生は目を瞑ることを選んだ。 瞼が真実を覆ってくれたから、 私には不都合は見えない。 ] 二人暮らしをしていたマンションが 火事で大変なことになって……。 幸いこの程度で済んだから、 搬送された病院から退院してきたとこ。 [ 火傷と火災の話はしたけれど、 "船越亜結実"の死は、聞かれなければ言わなかった。 この頃は私も動揺していたし、 言わなくてもどこかで知る機会が あるかもしれないと思っていた。 自分から話すと、ぼろが出てしまいそうだったしね。 ]* (114) 2022/06/09(Thu) 18:37:29 |
【人】 女子大生 マユミ[ そんな風に変わりなく過ごしている内に、 私の成りすましも少しは精度を上げたかしら? "ユミちゃん"と"先生"のやり取りは恙なく。 >>97>>98 ] あ、助かる! いずれまたミニスカートだって穿きたいもんね。 オバサンになっちゃう前に、治さなきゃ。 薬に耐性が付いちゃって、 効かなくなっちゃうんだっけ? その上さらに頭痛が激しくなるとか? こわー。肝に銘じときます。 [ ミニスカートなど殆ど穿いたことのない私だから、 治ったら本当に穿くのかどうかは微妙な所。 別に真結実だって、 ミニスカートばかり好んでいた訳でもないし。 ] (115) 2022/06/09(Thu) 18:39:50 |
【人】 女子大生 マユミ[ でもきっと、そういう訳にもいかないのだろうな とは思っている。 夏場にピンヒールのサンダルを履き、 素足を惜しげもなく晒す。 その姿は、キャンパス内でかなり目を引いていた。 惹きつけた目の中には特別な目が一対。 同大学の法学部所属、広末慶人。 ハイスペックイケメンと大学内ではお馴染みの 船越真結実の彼氏。 彼がそういうファッション好むという事は、 真結実の幸福体験を覗き見て知っていた。 ]** (116) 2022/06/09(Thu) 18:41:37 |
(a7) 2022/06/09(Thu) 18:51:07 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新