【人】 王子 シール──王都へ── [翌朝は寝不足だろうが何だろうが、予定通りに宿を出立する。 世話になった宿屋の主人からは特別に、うさぎパイのレシピをいただいた] これと同じ材料が手に入れば、 作れるんだな……ありがとう [感謝を伝えながら受け取って、 そのまま横に控えるエースに手渡す。 わたしはこれまでに料理をしたことがないから、 きっと彼が上手く作ってくれるだろう、……。 こあとは、書簡の指示通りに行動した。 指定の場所まで赴いて馬を借りる。 馬が途中でバテてしまわないように休憩を挟みつつ、 それでも出来るだけ急がないと、 日没までに次の宿には間に合わない。 二人で過ごす甘い時間も確保できないまま、 街道を急ぎ、駆け抜けた] (26) 2024/01/29(Mon) 13:17:17 |
【人】 王子 シール[宿に到着すると、予想した通り城から遣わされた使用人が居た。 これまで着回しつづけてきた衣服や装備を一部、 新しいものに交換する。 明日には王都に到着するのだから無用と思ったが、 彼らがここに居るのは監視や警護が主な目的だろう。 わたしたちが予定通りにここへ着かなければ、 彼らはそのまま追跡隊になった筈だ。 そして、彼らの前ではまだ「王子」として振舞った。 「王子に戻りたくない」が、肉親に会うまでは演技を続ける。 当然ながら従者とも部屋を分けられた。 部屋だけでなく、フロアも分けられた。 食事も別々で、使用人たちの給仕を受けながら、 広いテーブルで一人で食べる。 旅の間は常に、彼と同じ食卓で向かい合った。 恋人同士になってからは間もないが、そうなる前からずっとそうだった。二人で一緒の食事は楽しかったし美味しかった。 今の食事は内容が豪華だとしても、とても味気ない。] (27) 2024/01/29(Mon) 13:17:51 |
【人】 王子 シール[移動の疲れもあってか、その日の晩はすぐに眠りに落ちた。 翌朝、馬場の前で跪く従者の姿を認めると声をかける] おはよう、……よく眠れたか? [言葉を交わすのは、宿に到着した時ぶりだ。 たかだかひと晩離れていただけなのに、どこか懐かしい気もする。 ほんの少しだけ頬を熱くしてから、用意されていた馬に乗った] さあ、出発しよう。 [今日も丸一日馬を駆って、王都を目指す*] (28) 2024/01/29(Mon) 13:18:24 |
【人】 王子 シール──城下町の宿にて── [王都に入って城下町まで来ると、馬を下りた。 長距離を移動した馬に感謝を伝えて労うと、 従者と並んで宿へと向かう] 城下町、三年ぶりか……それ以上か 久しぶりだな わたしはあまり、こちらへは来なかったけど、 お前にとっては懐かしいのではないか? [賑わう街並みは、一昨日まで滞在した花街かそれ以上だ。 既に日没を迎えた後だが、人通りは活気に溢れて、 寝静まる様子が見られない。 わたしたちは花街でしたのと同じように、 立ち並ぶ商店の店先を眺めたり、気になるものを手に入れたりして、束の間のデートを楽しんだ。 宿への到着時間は指定されていないと思って油断していた。 まさか、] (29) 2024/01/29(Mon) 14:10:16 |
【人】 王子 シールなに、既にチェックイン済? [ようやく宿に着いてフロントに向かうと、 わたしに用意されている部屋は既に客が入っているという。 しかも、] わたしが? [数刻前にあなたをお通ししましたと、宿の主人は言い張る。 わたしは一瞬目を丸くして、すぐにある考えに思い至る。 まさかと思うが、] ……すまん、その部屋を教えてくれ わたしも向かわせてもらう…───あ、いや、 別に争うってわけじゃない。 し、知り合いなんだ、 ……たぶん [説明もそこそこに部屋番号を聞き出すと、そこへ向かう。 ちなみに城下町だからといって、 王家の人間の顔を皆がすべて知っているかといえば、 そうでもない。 そもそも、わたしは長年旅に出ていて、サインは虚弱で 城からほとんど外に出られない …───はず ] (30) 2024/01/29(Mon) 14:10:46 |
【人】 王子 シール[部屋の扉には鍵がかかっていなかった。 ノックもしないで、いきなり扉を開ける。そこには、] 『遅い、遅すぎる!待ちくたびれたぞ』 [ソファーに足を組んで座り、 不機嫌極まりない様子でこちらを見る彼は、 見た目はわたしと瓜二つの王子、サインだった*] (31) 2024/01/29(Mon) 14:11:05 |
【人】 王子 シール──双子の王子── [目の前にサインがいる光景が信じられなくて、 扉の付近で茫然としていると、 さっさと入って扉を締めろと促される。 従者も呼ばれたので、この部屋には三人だ。 突っ立ってると目障りだからと、ソファーにも勧められる。 言い方が不遜だが、気遣いは細やかだ] 『俺の作ったスケジュールでは、 もっと早くここに着いたはずだぞ。何故遅れた?』 [なるほど、あの書簡に記された鬼スケジュールはコイツが組んだのか。と理解するも、問われた内容については答えられず、代わりに首に巻いたショールに軽く手を添える。 城下町で買ったばかりのコレは、エースが見立てた。 まさか、これを選んでいたから遅くなりました、とは口が裂けても言えない…] (32) 2024/01/29(Mon) 15:09:51 |
【人】 王子 シール[サインがお忍びで来たいが為に、 この宿には城の使用人たちが居ないのかもしれない。 それは察する事ができたが、そもそも何でサインが ここに居るんだろう] 何故ここにいる? わたしに会うなら、こちらから城へ向かったのに そもそも、体の具合はどうだ? [気になる事を立て板に水で問うたら、 一度に聞くなとキレられた。それもそうか。 ならば、サインから話し出すのを待とうと、彼の手元を見たら、] おい、お前……それは、ワインではないのか? 飲んでいいのか、というか飲めるのか? わたしにも寄こせ [身を乗り出して杯を取り上げようとしたら、当人からの抵抗に合うばかりか、横からも従者が「失礼」と前置いて、わたしを毅然と止めようとしたかもしれない。ずるい、ずるいぞ] (33) 2024/01/29(Mon) 15:10:31 |
【人】 王子 シール[ちなみに、ワインは成人になる前から飲めたそうだ。 虚弱体質のくせに飲めるんだへーと思ったら、どうも今は虚弱ではないらしい] どういうことだ? [と、問えばようやく聞けた。 今から三年前、わたしが旅に出てしばらくしてから体質は向上し、 今では剣術や馬術もある程度嗜むらしい。なんと。 どうしてそうなったと聞けば、] …────、 [わたしにとっては、受け入れがたい内容だったが、残念ながら筋は通っているようだ。 つまり、わたしがサインの体を弱らせていた原因なのだと。 王家の双子で男女は凶だという予言との因果関係は不明だが、 双子の男女が近くに居てはよくない、 という結論にはなったらしい] (34) 2024/01/29(Mon) 15:12:07 |
【人】 王子 シール信じられない。 そんな戯言、鵜呑みに出来るか [せめてもう一度一緒に住んでみて、サインがまた弱ってくればその説を信じてもいいが、このままでは引き下がれない。 まるで、わたしが悪いみたいじゃないか] …… [すぐに言葉が出てこなくて、 わたしは沈痛な面持ちで項垂れた。*] (35) 2024/01/29(Mon) 15:12:32 |
【人】 王子 シール[サインが城へ戻る前の、ほんの僅かな時間に、 旅の土産話を聞かせてあげようか。 花街で偶然手に入れたSENBEIを茶請けに、 剣術武闘会の話をしたり、 試練の間の話は……うん、出来ないな。 バザーでぼったくられそうになった事も……言えない] (38) 2024/01/29(Mon) 17:18:32 |
【人】 王女 シール──即位の日── [サイン王子が成人になってから間もなく、 王城では即位式が行われた。 現国王は老齢のため退位し、 第一王子のサインが新国王に即位する。 儀式に第二王子シールの姿はなく、 代わりに遠い異国の地から贈られたという、 祝文が読み上げられた。 シール王子については、のちに、 その国で姫君と恋に落ちて永住を決めたという噂が、 国内でまことしやかに流れた。 …───サイン王の治世が、始まる] (40) 2024/01/29(Mon) 18:24:58 |
【人】 王女 シール[王城の中庭は解放され、王の即位を祝福する国民で溢れ返った。 王城のバルコニーから新国王が姿を表すと、 皆が一斉に手を振り、祝福の声を上げる。 その群衆の中に、わたしたちは居た] 見えるか? ……ああ、かなり遠いな。 でも、姿は判るぞ……立派になった。 [こちらから向こうは、かろうじて見えても、 向こうからこちらは、気付くまい。 父から継いだ王冠と錫杖、深紅のローブなど。 王の象徴たる装いに身を包んで、小柄ながら既に威厳すら感じる。 ……身内のひいき目かもしれないが。 その姿を目に焼きつけてから、振り続けていた手を下ろす] (41) 2024/01/29(Mon) 18:26:07 |
【人】 王女 シール……さて、わたしたちも行こうか。 [また、宛てもなく旅をするか。 それとも、二人で暮らす家を探すか。いずれ子を産んで育てるなら、人々が優しい土地が良い] (42) 2024/01/29(Mon) 18:26:39 |
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