94 【身内】青き果実の毒房【R18G】
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迷彩
貴方とルームメイトとの間で何があったのか、
何かがあった事すら知らない。
聞き分けの良い弟分へ腕を回して抱きしめ、
「良い子だ」と囁き、背中を撫でてから離す。
悪いと思って、謝れて、
繰り返さないよう考えを改められる事は
立派だ、と、闇谷暁は思うのだ。
→
| (a47) 2021/09/26(Sun) 20:34:44 |
迷彩
「出来ないが?」
出来ない。
「えぇと………身体の違いだな。
子供を授かる器官を持つのは女性だけだ。
俺たちには無いから、出来ない。」
そっと自らの腹部を摩って見せる。
「お前が散々遊んだゴムは、
女性を望まぬ……に、妊娠から守る為の物であり
俺たちの衛生面も保ってくれている訳だ。携帯しておくと良い。
少子化は……もっと大きめの社会的な問題だと思う……。」
少し屈んで貴方と視線を合わせる。
分かったか?と問う様は、明らかに保護者のそれだ。
「……もし
出来たら、取れる責任は全て取る。
手伝うと言うよりは、
行うべき義務を果たし、行える権利を行使すると言うか……
まあ、お前一人にはさせないから安心してくれ。」
闇谷
「うーん、わかった。じゃあ安心だね」
よくわかっていない返事だった。
ゴムなら今も持ってるよ、とポケットから取り出してみせる。
そんな頃合いだろうか。食堂と廊下の間にいた少年の耳に、聴き馴染んだ声が届いた。
軽く身を引き、廊下側へ視線を向ける。
目的の背中に声をかけようとして、噤んだ。
上背の男と話していたから。
何を話しているのだろう、と思ったその時。
背後からでも、明らかに殴られたとわかった。
「何やって、」
咄嗟に出た怒声が、一歩踏み出した足が、止まる。
殴られた張本人から、つい先日聞いたばかりの話を思い出す。合点が入った。
「……、…………」
長く、長く息を吐く。強張っていた肩から力を抜く。
何を話しているかまでは、聞こえなかったけれど。
何となく、予想ができる。
それでも。
視線は、上背の男を睨み付けたままだった。
>>暴行現場
聞き馴染みのある声を持つ人が、聞き馴染みのない勢いで叫んでいるのを耳にした。
普段通りの堂々たる足取りでやってきた少年は、ただならぬ空気の片鱗を拾い上げ 眉を顰める。
「…………迷彩?」
迷彩、絶対分かってないなと思った。
そうして貴方を見送ろうとして────物騒な物音。激しい怒声。
「ッリョウ!
一体何をそんなに…………、」
慌てて駆け寄って、その場を見た。
優しく頭を撫でてくれた人物。
食べ物を共有した人物。
可愛がっている弟分。
全員が異様な雰囲気を纏っていて、これは一体どういう事かと視線を泳がせる。
「……、……大丈夫か?」
一先ず。
迷彩が飛び付かないかも心配だが
殴られていたらしい普川へ寄り、
はらはらと顔を覗き込むだろう。
その場の様子を静かに観察している。その顔には表情が欠片も浮かんでいない。
| >>18 普川 「確かめたくはあったので」 ちょうどいい機会でした。そう述べた。 期待外れだった。そう思い、期待と落胆とを自覚し、吐き気がした。 つらつらと並べられた音を聞き流し、口を開いて―― (20) 2021/09/26(Sun) 22:02:31 |
何とは言わないけどふみちゃん人気だねぇと思いました。
| >>暴行現場 少年の怒声が響いたのは、そのときだった。 声の主へと視線を遣る。 こちらを睨みつける目と、目が合った。 >>+70 少年が一人、こちらへ寄ってきた。 背から手を離し一歩離れた。 >>+72 こちらを観察するような視線を感じた。 何も言わぬのであれば、何を返すこともなかった。 >>c46 場にそぐわぬことを早口で喋る少年を見下ろした。 食事前でちょうど良かったですね。 >>19 強かに他人の腹を殴りつけたばかりの手を、口元へ添える。 (21) 2021/09/26(Sun) 22:07:06 |
| (a51) 2021/09/26(Sun) 22:07:21 |
>>暴行現場
普通ならば、被害者に見える普川に駆け寄るのが当然だろう。
しかし少年は鋭い眼差しのまま、怒気も隠さぬ声色を響かせた。
「なおひー。
ソイツに殴らせるぐらいなら、
次からオレに頼んで
」
親しい人間へ語るにしては凄みの効いた、
嫌いな人間へ語るにしては奇妙な言葉。
自分でもどうしてこんなに腹立たしいのか、よくわからなかった。
普川に対する怒りはない。
自分の夢を嘲った、あの男の一挙一動が苛立たしいのは確かだ。
「……ツッキー、…………いや、いいや」
事情を説明しようとして、優先順位を決めた。
彼のどんな言葉も自分の友人に聞かせたくはない。
……黒塚と普川達 の間へ、割り込むように立った。
庇うように二人へ背中を向けたまま。
正面に立つ、黒い双眸を睨んだ。
自然と真上を見るような体勢になり、どうしても首が痛む。
「もう終わっただろ。帰れよ」
自分がこんなに低い声を出せることなど、知らなかった。
>>現場
「………………えっ?
肉豆腐……パン………………?」
何も無かったとでも言うような普川。
退屈そうに欠伸をする黒塚。
怒りの感情を隠しもしない迷彩。
そのどれもが、自分の普段見ている貴方達と違っていて
『いつもの』からかけ離れた全てが、信じられなかった。
ここに平穏はないと、
理解していた筈なのに。
一歩、後退り。
二歩目は、足が動かなかった。
フードを被った少年を見やり、その場を静観していた者はようやく動き出した。
藤色が揺れる。いつも通り、変わらずゆったりと。
「……暁」
とん、と名前を呼んだ少年の肩を軽く叩き。
それから、続けて口を開く。
「迷彩。普川先輩。
もう夕飯の時間だ、夕食を食べに行くぞ。移動するなら俺たちの方だ。行こう」
「黒塚。眠いのなら仮眠でも取ってこい。その欠伸をなんとかしろ」
その声色は揺らぎなく。ただ静かに、淡々と紡がれる。感情を殺して周りを見るのは慣れていたから。
言い終えるや否や、フードの少年の手を取って歩き出そうと踵を返す。名前を呼んだ二名にも小豆色の視線を向けて、どうするかを眺めながら。
暴行に関わる二人が普段のままで、最年少が怒りを露わにし続けては状況は悪化していくだけだと判断した。
故に、彼らを一度引き離そうと試みる。彼らが話し合いを望むなら、止めはしないが。
| (a53) 2021/09/26(Sun) 23:02:23 |
| >>暴行現場
「ああ、……そうだな、部屋にいようか」
ここにいるのはそもそも、普川に呼び止められたからだ。 その彼がこれ以上、用が無いのなら留まる理由もないだろう。
「……すみませんが、力加減を誤りました。 何か食うのなら、手当てしてからにしてください」
己が殴った彼の方を向いて、そんな言葉を寄越して。 集まった少年らへと背を向け、立ち去った。その足取りは早くもなく、かといって遅くもなかった。
割り当てられている、数日前までは小さな少年と過ごしていた部屋へと戻るのだろう。 (22) 2021/09/26(Sun) 23:11:37 |
>>暴行現場
「…………」
「……わかっ、た」
冷静な、もしくは淡々とした声が鼓膜を揺らし続ける。
それが何だか寂しく思えて、怒りが少し和らいだ。
結局大きな背中が見えなくなるまで視線を送った後、
踵を返し食堂へ向かう。
人を憎むのは、こうも遣る瀬無いのだろうか。
不特定多数を憎んだことはあれど、
誰かひとりに対してそんな感情を抱いたのは初めてだったから。
「ごめん」
その言葉は、誰に対してか。
小さく溢し、食堂へ入った。
>>普川
最年長の少年と寡黙な少年の暴行現場を見てしまった後の話。
食堂。または、そこへ向かう途中か。
兎に角一緒にいるだろう迷彩少年や闇谷少年の耳には入らないよう距離を取った隙に、最年長者へと詰め寄って声をかける。
「普川先輩。少々よろしいですか」
表情はいつもの仏頂面のまま。極めて落ち着いた様子で、貴方にしか聞こえないであろう声量のまま話を続ける。
「……事情を話したくないのであれば無理に聞きませんが。黒塚に殴ってもらうよう頼んだのは、貴方にとって必要だったからしたことなんですよね?」
>>【食堂】
とは言え、食欲もあまりないらしい。
海鮮鍋foodをゆっくりと食べ進めている。
「……あの。黒つ、アキちゃんとは何ともないから」
「急に怒鳴っちゃってごめん」
ルームメイトの呼び名を言い直し、再び謝罪を口にした。
明らかに何かがあったが、それを言う気はあまりないようだ。
以外に食欲があった。でも魚がいっぱい入っていたので、食べにくそうにしていた。
>>食堂
これは食堂に来た貴戸高志。
どこかの誰かさんのワクワクキッチンにより2回もえらいこっちゃになったので、もう食堂の食べ物は信じられなくなってきた。
ということで厨房を借りて夕食を作ることに。特別上手と言うわけではないが、レシピがあればそつなくこなせる少年だ。
白米にじゃがいもとにんじんの味噌汁、更に肉豆腐にもやしとツナの酢和え。デザートにしゃりしゃりの梨を切ってご用意。それを二人分持ってきた。
片方は闇谷に。もう片方は自分へ……と思ったのだが、迷彩の箸の進みが遅いことに気付くと肉豆腐の皿を少年の前に差し出した。
「迷彩。その鍋は嫌か?俺のものと交換しよう。此方に渡せ」
てきぱきと色々動いている。話は闇谷が聞くだろう……なんて丸投げしながら。
>>【食堂】
一人で去っていく黒塚にかける言葉が見つからないまま、
手を引かれてそのまま食堂へ。
普川の方へは、ルームメイトが向かっている。任せて良いだろう。
ゆるりと席に着いて、暫くして、
ルームメイトが手料理を運んできてくれる。
先程話したばかりの肉豆腐だ。
「……俺は、
迷彩が何もなく怒鳴るような奴だと思わない。」
それと同時に、黒塚も。
何もなく誰かを殴るような奴ではないと思う。
「無理に聞くつもりは無いが、
俺がお前を心配している事だけは覚えておいてくれ。」
味噌汁を啜る。
「……部屋、帰り辛くないか?
とりあえず今日はうちに来るか……?
このじゃがいもの味噌汁美味いな……。
」
暴行現場を見た。
集まってなにやら騒いでいるのも。
みんな大変だなぁと、他人事のように思いながらそれを眺めていた。
だって他人事だもの。
自分に振るわれなければ、何が行われようと構わなかった。
……あ、でも早く仲直りしてもらった方が変な空気にならなくて楽だなぁ。
そんな事を思いながら皆が解散していくのを確認して、ちょっと遅れて食堂へと向かった。
>>【食堂】
「うん、じゃあ、お願い」
肉豆腐を差し出されれば、 素直に応じた。
本当は豆腐もあまり好きではないが、魚や野菜に比べればましだ。
皿を持ち、まとめて二本掴んだ箸で掻き込むように食べ始める。
かけられた言葉には咀嚼をしながら小さく頷いた。
「部屋はもうずっと帰ってないよ。
テキトーな空き部屋使ってるからヘーキ。
二人の邪魔にはなりたくない」
ずっと、と少年は言うが、企画が始まる前までは当然自室で寝ていた。
空き部屋で寝ているのはここ数日の話だとわかるだろう。
数口飲み込めば、重い口を開いた。
「……何もなかったんだよ。向こうにとってはさ。
だから余計にムカつくっていうか。
オレの気持ちが、どこにも存在してないみたいで」
崩れた豆腐を見つめながら、ぽつりと呟く。
>>【食堂】
「邪魔な訳あるか。
……寂しくないか?」
な、と、ルームメイトを一瞥。
からっぽな空き部屋で、彼は一人何を思うのだろう。
そんな勝手な想像だけが頭の中にある。
言い忘れていたいただきますと有難うを告げて
箸先を行儀悪く迷わせ、豆腐を割いた。
「……何かあったんだな。」
きっと何か、迷彩が大切な話をして
黒塚がそれを無視でもしたのか。
何にせよ、タイミングの悪い事故……のようなものか、と
一先ずは気楽に捉えた。
大きなことが起こっているとは、あまり考えたくはなかった。
>>【食堂】
「邪魔じゃないなら、うん。今日はそっちで寝る」
温かい手料理など口にしたのは、ここに来てからだ。
きっと栄養もあって美味しいけれど、それでも何かが足りない気がした。
「でも寂しいのは、今に始まったことじゃない」
友人に作ってもらった食事を残すのは気が引けた。
調理に割いてくれた時間を無かったことにするのと、同じだと思うから。
薄く色づいた野菜を、肉と一緒に食べ進めた。
「そう。オレにとっては、何かあったんだよ」
貴方に心配はかけたくない、という気持ちはある。
だから、何も心配いらない。
そう意味を込めて、短い説明をした。
「……夢の話、した。
そしたら、笑われた。それがムカついた。そんだけ」
大人が禁じた、愚かな夢だ。
しかし少年にとっては、ようやく見つけた生きる希望だった。
本当は願っている。再び元の生活に戻れることを。
本当は期待している。もしかしたら、自分たちが許されるのではないかと。
世界はそんなに甘くない。
子供は知っているつもりで、ちっとも知らなかった。
>>【食堂】
「………良いよな?
今日だけと言わず、いつでも。」
言って、気付く。
勝手に決めても良いものだろうか。ルームメイトへちらりと視線を送る。
布団は……近くの部屋から持ち込んで来ても良いだろう。そんなことを考えつつ。
「……煩かったらすまん。」
自分は何とも思わないが、ルームメイトの声が大きい。
……寂しさは紛らわせるのではないだろうか。
「…………、」
貴方の夢。
かつて自分勝手に口を挟み、怒らせたもの。
背中は押せないが、貴方の思いはよく理解していた。
「悲しいな。」
彼のために、何が出来るだろう。
探偵だ何だと名乗っておいて、余計なところで飛び込む癖に、いざ目の当たりにすると足が止まる。戻れないな、と、自虐の言葉と共にもやしを飲み込んだ。
「話して、笑われて……何か言われたか?」
普川
「そうですか」
手短に反応する。殴られる事を求めた理由に関してはその程度だった。
貴戸がもっと反応を見せたのは、その先。貴方の謝罪に関してだった。
「……俺が切り込みたかったのはそこです。
事情はどうあれ、殴るという行為は良い顔をされないものだ。己が当事者じゃないとしても。
だから、もし求めるなら人の目に触れないところでやる事をお勧めします」
目的であった話を伝える。話し終えるまで眉根は八の字に下がり、些か困惑の色を滲ませていた。
「…………先輩、謝り慣れていますか?」
迷彩を歓迎している。断る理由が無いし、心配する気持ちがあるのは相方と同じなのだから。
| (a61) 2021/09/27(Mon) 15:47:53 |
>>【食堂】
「うるさい方がいい」
家に誰かがいるのが当たり前だった。
それでも時々、留守番をしたことがある。
テレビを付けたまま、硬い布団で寝たことを覚えている。
悲しいと言われれば、ややあって頷く。
あの時は恐怖心を覆い隠す為に、怒りを募らせたけれど。
怒りと恐怖の下に、悲しみがあったことに今気が付いた。
「え、うーん……」
何か、と言われて思案する。
あまり思い出したくない記憶を、隙間から少しだけ覗き込む。
黒い瞳と目が合って、すぐに目を逸らす。
「母さんに報いる気がないんだな、とか」
「だったら今ここで死んでも同じだ、とか」
少年の夢は、そう言われて当然の形をしていた。
ルームメイトの言葉は全てが正論だと、きっと誰しもが納得する。
それが正論で生きていけない子供の神経を逆撫でした、ただそれだけの話だ。
普川
殊更困った顔をした。少し考える為に瞼を下ろす。小さなため息を一つついて、それから瞼を持ち上げる。
「そうですか。
……先輩。その言葉に誠意がこもっていようがいまいが、口から出た発言には責任がついて回ります。
別に俺は、貴方が自ら殴られるのを求めることに思うことは特にありません。先輩には先輩の事情がありますから」
淡々と言葉を紡いでいく。
「……ただ。こうして口先だけでも約束してくれたのに。それを破ってしまったら。……いいや、破るだけなら別に良い。
それで万が一、暁が再び困ってしまうようなことがあれば」
▽
「俺は貴方をもっと叱ります。
覚えておいてくださいね」
「…………はあ」
ため息が止まらない。
「……俺は本当は、こんな事を言うつもりじゃなかったのに。
…………俺は先輩に、お礼をいう用事があったのに」
迷彩と闇谷が廊下で重なりあっているのを見た日。
真意がどうであれ、普川の言葉によって背中を押されて行動することができたのだ。律儀で生真面目な少年はその件に関してあとできちんとお礼を言おうと考えていた。
それなのに、今こうして飛び出した言葉はなんだ?感謝とはまるきり違う棘を含んでいる言葉ではないか。
「…………はあ」
ため息が止まらない。
的外れな言葉を耳にしながら、自身も食堂へ向かった。
>>【食堂】
がたん!
音を立てて立ち上がる。
「───ッごめん、」
咄嗟にそう、口から出た。
苦しい記憶を開かせて、
あまつさえ言葉にさせてしまうなんて。
そこまでさせるつもりじゃなかった。
なんて言葉は、ここ以外だって通用しない。
知りたがって貴方の傷に触れた。
悪い、と呟いて再度椅子を引く、座る。
「……同じな訳ないだろ、
違うよ、違うんだ、リョウ……。
お前は望まれて産まれてきたんだ、
そんなことあってたまるかよ……!」
ここには居ない男の言い分も、理解できなくはない。
それでも情のせいか、目の前の少年の事ばかりが大切に思えてしまって
本当に、探偵失格だ、と瞳を細めた。
箸を取り落としそうになって、置いた。
>>【食堂】
立ち上がった貴方に、少年は目を丸くした。
大したことを話したつもりなど、微塵もなかったから。
死ねと言われたことが悲しかったわけじゃない。
自分の夢を、生きる理由を、
ちっぽけなものだと扱われたことが悲しかった。
貴方の感傷が、理解できない。
「やっぱりそうだよね?
ここで死んだら、同じじゃないもん」
故に。
的外れな言葉を、そうと気付かず平然と返した。
「でもさ、でもさ。望まれて産まれただけじゃ、」
ほんの数年で見える世界と常識は一変した。
無学な少年でも、大人達が何を言わんとしているかは察しがつく。
「────生きるのを許された、ってことにはならないよ」
これは曲論だらけの少年が学んだ、数少ない正論だ。
少年の言葉の何処かを拾い上げて食事をつつく箸を一瞬ぴたりと止めた。
何事もなかったかのように食事を進める。ふと家族の事を思い出したが、もう関わりのない話だ。
>>【食堂】
口を一文字に結ぶ。
具材が沈殿していく味噌汁の色が、薄くなっていく。
貴方はいつだって変わらず、理解してくれない。
けれどそれで構わない、理解し合うだけが『友人』ではない。
だから。
「生きるのに許可なんて、いらない。
誰の許可が必要で、
誰にダメだと言われて死ぬんだ。
もっと好きに生きて、良いんだよ……」
好き勝手に、言葉をかける。
「リョウは、
誰かに許されないから死ぬのか?」
貴方からそんな言葉が出た事が悲しいと、
そんな想いだけは、知って欲しいから。
「だったら俺は、
お前が死ぬのを許したくない。」
正論なんて、くそくらえ。
箸を拾い上げて席を立つ。少しだけ、胸が苦しくなった。
思考の海に浸り続ける。人は、いつから人に許可を求めるようになってしまったのだろう?
| 黒塚 彰人は、手を伸ばし、“お前”の頬を一度、撫ぜた。 (a68) 2021/09/27(Mon) 20:56:30 |
| (a69) 2021/09/27(Mon) 20:57:25 |
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